魔法少女は動かない   作:鷹売りのタカさん

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2つのスタンド、アングラとドラゴン・フォース

「い、いったい・・・どうなってるんだ・・・それに、あの男は・・・」

 

事の一部始終を見ていたユーノにとって、目の前の出来事はあまりに衝撃的過ぎた。

 

シグナム達を倒したと思われるアフムドと呼ばれる男。なのは達には視認できない奇妙な存在『ホワイトスネイク』。アフムドから重なるように発現した炎を纏う存在『アングラ』。そして・・・自分達が足元にも及ばなかった連中に優勢を崩さない奇妙な青年と、青年の操る力『ドラゴン・フォース』。

 

全てが謎に包まれていた。

 

遺跡の発掘を生業とする一族を出身とし、次元世界最大のデータベース『無限書庫』の司書長を務め、考古学を専攻する自身にとって、未知との遭遇や体験は慣れている。逆にこれまで一度も体験したことがなく、見たことも聞いたこともないような事に遭遇すること自体が珍しい。

 

全ての事象には『記録』がある。ここまで複数の人間が扱うことができ、見ることができる者とそうでない者がいる。これほど不思議な力に『記録』がないはずがない。見たところ目の前のアフムドという男とピッツァという女は地球外出身の人間。少なからず文献や情報がどこかにあってもおかしくはない。しかし、一切ないのだ。

 

完全なる未知の世界。魔法とは別の強き力。

 

ユーノは不謹慎ながらも、目の前の未知に気分が高揚していた。だが同時に恐怖していた。

 

(あのホワイトスネイクっていうヤツも言っていた・・・真の恐怖とは未知のものに遭遇することだ、と・・・)

 

ユーノは不思議とこの言葉に納得していた。

 

かつて自身の失態が原因となって海鳴市に災いをもたらし、一人の女の子を危険な世界に巻き込んでしまった事件。後に『PT事件』と呼ばれ事の中核であるロストロギア『ジュエルシード』の力を見たとき、恐怖していたのだ。当時、責任感がなによりも勝っていて、恐怖と言う感情を自覚できなかった。だがまさしく、今は自覚できる感情――――恐怖。

 

(危険だ、ここは・・・はやくシグナム達をここから移動させないと・・・)

 

ユーノは一刻もはやく仲間を連れて現場を離れることを考えた。あまりに危険な現場を安全に仲間を連れて逃げる事を最優先としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立てよ、ホワイトスネイク・・・まだ一発だぜ・・・」

 

 

怨敵を目の前にしたジョシュアにとって、ホワイトスネイクの仲間であるアフムドやピッツァなどは眼中になかった。

 

彼の心中は獣のように、ただ純粋に目の前の得物を仕留めるという凶暴な感情で埋めつくされていた。

 

「グ、グゥゥ・・・な、なかなか強力なスタンド、じゃあないか・・・正直おどろいたぞ・・・あの時怯えることしかできなかったションベン小僧が、この短期間で随分と成長したな・・・やはり、生かしておいて正解だった。本気でそう思うよ・・・これで私が本気で戦うに値する、存在になったというわけだ・・・だが、今は時間をかけちゃあいられない・・・」

 

「なにをゴチャゴチャ言ってるのかは知らないが・・・そっちから来ないなら・・・こっちから行かせてもらうッ!」

 

ジョシュアが『ドラゴン・フォース』を発現させたまま、その拳を構えさせ、ホワイトスネイクに向って駆け出した時だった。背後から強烈な存在感と殺気を感じ、振り向かざるを得なかった。

 

 

「だから・・・後は任せるぞ――――アフムド・アブドゥル」

 

 

ホワイトスネイクがそう呟いた瞬間、振り向いたジョシュアに拳が振り下ろされた。ジョシュアはとっさにドラゴン・フォースの腕をクロスさせて、防御の姿勢を取る。そして振り下ろされた拳を受け止め、改めて相手を見ると、そこにはアフムドと、そのスタンド『アングラ』がいた。

 

 

「さっきからよォォォ、俺らを無視しすぎじゃあねぇか~~? いくらホワイトスネイクにお熱でもさぁ、ちったぁ相手してくれよォォ」

 

 

「悪いな・・・って言葉を返すべきだろうが・・・全然悪いって気がなければ、言わなくてもいいって思う・・・だが、テメェに『悪い』の代わりに言葉を返すなら・・・『くたばりやがれ』、だぜ――――ドラゴン・フォース、そのままだ! 屋上に同化しろ!」

 

 

ドラゴン・フォースは右腕で防御していたアングラの腕を掴み、そのまま下半身を屋上と同化させた。すると屋上のアングラの真下の部分がグニャリと変形し、拳の形となってアングラに襲い掛かった。

 

 

「こいつはよぉ・・・なかなか厄介じゃあねーか・・・・クッ!」

 

 

アングラはもう片方の腕でその拳をガードする。しかし、また別の部分から同じように、アングラに攻撃は襲い掛かる。

 

ドラゴン・フォースに掴まれた腕は振りほどけそうにもなく、もう片方の腕で真下からの猛攻に対応していた。

 

 

「うおおおおおッ! こ、こりゃあ・・・マジにつれーぜ!!」

 

 

「へぇ、けっこうがんばるな・・・だが、忘れてないだろうな。俺の左腕は今手持ち無沙汰なんだ。ならこれはどうするべきだと思う? ・・・答えは聞いていない。正解は『殴りぬける』、だぜ――――オラァッ!!!」

 

 

「グハァッ!!」

 

 

アングラは放たれたドラゴン・フォースの拳を防御できず、受けることしかできなかった。そのまま殴りぬかれ、アングラと、その本体であるアフムドは吹っ飛んだ。

 

 

 

その時だった。

 

ドラゴン・フォースの腕が突然火を噴いた。それと同時に、ジョシュアの腕も、まるで爆発を間近で受けたような傷を負った。

 

ジョシュアは、突然のことで理解が追いつかず、呆然と爆発した自身の腕を見た。そして、なにが起きたかを理解すると。一気に腕に激痛が襲い掛かり、負傷した腕を抱えてうずくまった。

 

 

「な、なんだってッ!? いつ攻撃された・・・!! す、スタンド能力・・・これが・・・ヤツのスタンド能力か・・・!!」

 

 

アフムドの方に目を向けると、彼は殴られた部分をさすりながら立ち上がっていた。そして、ジョシュアの方を見ると、にやりと口を歪ませた。

 

 

「なんだぁ? ずいぶんとイタそーだなぁ・・・そりゃそーか。これが俺のアングラの真の能力――――『アングラ-スプレッド・ユア・ファイア(汝の炎を放て)』。・・・ホワイトスネイク、見ての通りですぜ。ここは俺一人で充分ですよ。先に撤退しといてくださいよ」

 

 

「そうだな・・・。だが、油断はするなよ。ジョースターの血統というのは最後の最後まで何を仕掛けてくるか分からない。徹底的にやるのだ。任せたぞ・・・行くぞ、ピッツァ・モッツァレラ」

 

 

「了解しました、ホワイトスネイク。・・・アフムド、この結界は維持しておくわ。だけど1時間程度したら解除するようにしたから、それまでに終わらせて」

 

 

「1時間てよぉ、長すぎねぇ? 10分もかけねーぜ」

 

 

「期待してるわ。・・・転送魔法の準備をします。20秒ほどで済ませます」

 

 

ピッツァはデバイスを取り出すと、何かを呟き始めた。

 

ジョシュアは、ホワイトスネイク達が撤退しようとしていることに気付くと、腕を抱えながらホワイトスネイクに向って駆け出した。

 

 

「待ち、やがれ・・・!! ホワイトスネイク!!」

 

 

「ホワイトスネイク、準備が終わりました。いつでも転送できます」

 

「そうか、では行くぞ。・・・・さらばだ、空条ジョシュア」

 

 

ホワイトスネイクとピッツァが魔力の光に包まれる。ジョシュアは更にスピードを上げ、ホワイトスネイクに向っていった。

 

 

「まだだ! 逃げるんじゃあない!!! ホワイトスネ――――ッ!!?」

 

 

その叫びは、最後まで言われることはなかった。

 

 

突然だった。先程のようにジョシュアの足元が爆発したのだ。それにより、ジョシュアの足は重傷を負い、走っていた勢いのまま屋上を転げまわった。

 

 

「グゥウッ!! ま、まただ・・・またこの爆発。いったい、何なんだ・・・!!」

 

 

ジョシュアは必死に頭を働かせるが、腕と足の両方に重傷を負っている状況で、まともに考えることはできなかった。ただ、激痛に呻くしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

難しい事じゃあない・・・俺の能力『汝の炎を放て(スプレッド・ユア・ファイア)』はよぉ・・・。

 

 

俺のアングラの腕から放てる見るのも困難なほどに小さな『爆弾』・・・それが爆発の元だ。

 

直接触れて相手に付着させるも良し。遠くから投げて付着させるのも良し。地面に設置して地雷のように扱うのも良し。

 

万能の爆弾だ。

 

起爆方法は至極簡単だ。

 

風・・・ほんのちょっぴりでいい。強い風圧を受けるだけで、爆弾は簡単に爆発する。

 

 

 

あの野郎・・・空条ジョシュアに腕を掴まれている時に、こっそりヤツのスタンドの左腕に付着させておいた。そしてヤツが俺を殴った・・・その時の風圧で、爆弾は爆発。

 

 

足元で爆発したのは、ヤツとホワイトスネイクの間に爆弾を放っただけ。後はヤツがそれを踏むだけで爆発。

 

 

まさに『汝の炎を放て(スプレッド・ユア・ファイア)』ってわけだ。

 

 

考えればすぐに分かりそうなくらい簡単な話だ。だが喰らってる側からすればそうじゃあない。爆弾は小さくとも爆発は一級品。激痛でろくに頭も働かない状況下で、俺の能力に気付くのは困難だ。

 

 

そこらへんでのびている騎士共を倒したのもこの能力だ。武器を振りまわして動き回るヤツに爆弾を仕掛けるのは赤子の手をひねるようなモノ。

 

 

後は・・・空条ジョシュアを片付けるだけだ。

 

クロノ・ハラオウンやユーノ・スクライアはすでに『レディオ・ガ・ガ』の策に嵌っている。高町なのは達はディスクを抜いた後はそのままでいいという命令。

 

 

この仕事もあと少しってわけだ。

 

 

空条ジョシュアがこの能力に気付く前・・・ヤツを始末する。

 

 

俺のアングラと『汝の炎を放て(スプレッド・ユア・ファイア)』は無敵だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風、だ・・・!

 

 

わ、分かりかけてきたぞ・・・。

 

ヤツは小さな爆弾を操っている・・・視認が難しいほどに小さなヤツだ。それをあのジョシュアって男の腕に付けたんだ・・・恐らく捕まっている時に・・・。

 

彼、ジョシュアは多分このことに気付いていない。あの負傷だ。無理もない・・・。

 

でも、あの能力は地面にも設置できるらしい・・・。これじゃあシグナム達を移動させるのも難しくなってくる。

 

この屋上は・・・今まさに地雷が大量に埋められた危険地帯になっている。

 

アフムドを何とかできれば、転送魔法で僕やシグナム達を移動させられる。

 

隙を・・・隙を見つけるんだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何がなんだかわかんねぇっつーような面してんなぁァァ・・・メチャ気分がいいぜぇ、こいつはよォォォ」

 

 

アフムドは激痛に呻くジョシュアを見ながらニヤニヤと笑っていた。

 

ジョシュアは必死に原因と対策を考えるが、既に2箇所の重傷を負った状態ではろくに考えることも動くことも出来ない。アフムドもそれを分かってジョシュアを笑っているのだ。

 

 

「クククク・・・おもしれぇが、あまり時間をかけちゃあいられねぇ。ホワイトスネイクの命令だ・・・・テッテー的にぶっ殺す。けが人だからって容赦はしねぇ! これでとどめだぜ、空条ジョシュア!!」

 

 

アフムドがジョシュアに向って駆け出した。その距離がぐんぐんと縮まっていき、やがてあと少しというところで、アフムドは足元に違和感を感じた。

 

 

「なんだぁ・・・この床・・・沈むぞ」

 

 

アフムドの立っている部分が沈んでいる。だが勢いよく沈んでいるのではなく、ゆっくりと沈んでいるのだ。

 

 

「グッド、その位置だ。・・・『ドラゴン・フォース』、この屋上の下の階の部屋・・・ちょうどおまえの立っている部分だ。そこには柱がある。ドラゴン・フォースをその柱に同化させ、変形させた」

 

 

やがて床が沈んで行くのが止まった。

 

 

「そう――――スプリングに変形させた。たった一回しか跳ねないがな・・・トランポリンみてーにボヨヨンって跳ねるぜ・・・飛んでいきな」

 

 

ジョシュアがそう言った瞬間、沈んでいた床が勢いよく元の位置に戻り、その勢いでアフムドはビルから高く飛ばされ、屋上から落ちていった。

 

 

「うおおおおお!! 空条ジョシュア・・・あの野郎・・・やってくれるぜ!」

 

 

ジョシュアはそんな言葉が聞こえたが、今は無視した。そして、こちらを見ていたユーノの方に目を向けて言った。

 

 

「え~っと・・・そこのあんた。今なら逃げられるぜ。そこらへんで寝てる奴等・・・あんたのお仲間だろ? ヤツは今ここから落とした。俺は今からヤツを追うぜ。あんたもさっさと逃げな」

 

 

「えッ・・・あ、ち、ちょっとまって!」

 

 

ユーノの呼びかけに応えることはなく、ジョシュアはビルから飛び降りていった。

 

ユーノは辺りを見回し、項垂れながら言った。

 

 

「彼は・・・あんな危険な男と戦っている間も、ずっと僕達の方を気に掛けてたっていうのか・・・。彼は、いいヤツだ・・・それなのに・・・僕は、逃げることだけを考えていた・・・いつもそうだ・・・危険な相手に何もできず、いつも別の誰かがなんとかしてくれている・・・。それじゃあ、だめなんだ・・・! 逃げてばかりでは、何もできない・・・!」

 

 

――――イイコト言ウジャアネーカ・・・アト一歩ダゼ、ユーノ――――

 

 

ユーノは背後から突然聞こえた声に驚いて振り返ったが、そこには何もいなかった。

 

 

――――見ヨウト思ッテ見エルモンジャアナイゼ。俺ハオマエガ生マレタ時カラズット傍ニイタゼ・・・声ダッテカケテタ・・・ヤット届イタガヨ、マダ足リネェゼ、ユーノ――――

 

 

「・・・そうか・・・君は・・・僕なんだな・・・? 君を隠しているのは・・・僕の恐怖なんだな・・・。そうだよ、なんで僕は恐怖してるんだ・・・!! 仲間をボロボロにされて、見ず知らずの人に気に掛けられて、なんでまだ逃げようなんて甘っちょろいことを考えてるんだ・・・!! あんな、クソッタレ野郎に・・・まだビビッているのか!」

 

 

ユーノは勢いよく立ち上がり、顔を上げた。その目に、怯えの色は全く見えなかった。

 

『闘志』。それこそが今のユーノの心を占めるたった一つの感情だった。

 

 

「恐怖とは、殻だ! 僕の心を覆う、分厚い殻のことだ!! そして、僕は、今! そう、たった今、殻を破った! 自分を・・・恐怖を、『乗り越えた』!!!」

 

 

そう言ったユーノの傍には、大きな案山子が佇んでいた。真っ黒なローブを纏い、魔女が被っているような大きな三角の黒帽子を頭に被った案山子が、ユーノの傍にいた。

 

そして、ユーノの周りには何もいないのに、何故か彼の耳には様々な声が聞こえていた。

 

 

――――目覚メタゾ! ユーノガ目覚メタゾ!!――――

 

 

――――届イテル・・・僕等ノ声ガ・・・!――――

 

 

――――聞コエルカイ。我々ノ『唄』ガ――――

 

 

そして、全身黒色の案山子がユーノの方を向き、言った。

 

 

『ヤット、会エタナァ・・・聞コエルダロウ・・・風ノ声ガヨォ』

 

 

「君が・・・スタンドだっけ? 彼らが言ってたのは・・・。えと、名前は・・・あるのかい?」

 

 

 

『俺達ニ決マッタ名前ハネェヨ。オマエハ風ト共ニアル。コノ姿ダッテ特ニ意味ハナインダゼ。ダガ俺ヲ・・・『俺達』ノ事ヲ呼ブナラヨォ・・・『イミグラント・ソング(移民の歌)』・・・コレガ名前ニナルゼ。風ハ常ニ流レテイル。ソイツラノ声ヲ・・・『唄』ヲ聞クンダゼ。オマエハ・・・俺達ニ命令スルンダ。風ト共ニアルオマエハ、ソレガデキル』

 

 

「『イミグラント・ソング』・・・・分かったよ。まずはシグナム達を移動させる。そうしたら・・・『僕等』もこの下に向おう。戦うんだ、僕等も・・・!!」

 




スタンド『イミグラント・ソング』:イギリスのバンド『LED zeppelin』の楽曲『Immigrant Song』より抜粋。
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