アフムドとかいうヤローを追ってビルを飛び降りたはいいが、まだヤツの能力を理解しきれていない。
ヤツの能力で受けた傷はドラゴン・フォースを俺自身に同化させ、傷の周囲の肉を寄せ集めて抉られた部分を埋めた。痛みは残るが、出血は抑えられる。応急処置ってわけだ。長くは持たない。
だが、おかげで頭が冷えた。大分冴えてきたぜ。
ヤツの能力・・・多分爆弾か何かだろうが、俺は一切それらしきモノを見ちゃいない。視認でいないほど小さい爆弾か、マジで目に見えない爆弾かの2択。後者は多分ないだろうが、前者でもかなり厄介だ。どこを防御したらいいのか分からない。
しかも2度目の攻撃の感じだと、恐らく設置もできる。「ドラゴン・フォースが同化した位置がたまたま地雷原でした」とか、マジで笑えねぇ冗談だ。
様々な考えが頭の中で交錯している内に、段々と地面が近づいてきたので、一旦思考を止めてドラゴン・フォースをビルの壁に同化させる。その部分を変形して腕を作り出し、俺自身を腕につかませて地面にゆっくりと着地させた。
地面に降り立ったとき、後ろから気配を感じて振り返る。
そこにはアフムドが立っていた。ヤツのスタンド、アングラを傍に佇ませ、ギラついた目で俺を睨んでいる。
「風向きがよォォ、変わったなぁ・・・」
「なにいってんだ?」と普段なら言い返すところだが、今だけはヤツの言っている事が理解できた。
優勢劣勢とかいう話ではなく、実際に風の向きが変わっているのだ。それも唐突に、本来ならありえない変化。風向きが変わったことを考えるまでもなく理解できる。
最初はなにかの攻撃かと思ったが、そんな感じではない。むしろ何かに歓喜しているような、心地よい風だった。心なしか風の声が聞こえるような気さえした。
自然現象じゃあない。明らかに人為的なモノだ。新手のスタンド使いか・・・? だがそれにしては攻撃してくるわけでもない。
何もしてこないなら今は考える必要はない。今は目の前のクソッタレ野郎をぶちのめすことが優先事項だ。
ヤツも同じことを考えたようだ。アングラが拳を構え、ヤツの前に立っている。
「傷を治したか・・・テメェのスタンド能力、同化する能力か・・・肉を埋めるってこともできるのか。便利なスタンドだ・・・だがよぉ、それなら俺はテメェの治療が追いつかねぇくらい燃やしてやるよ・・・!」
ヤツとアングラは俺に向って駆け出してくる。俺もスタンドを構えさせる。ヤツの爆弾をこの目で確認できるか試すため、集中してヤツを見張る。
「俺のアングラとテメェのスタンド! 俺の方が上って事を今分からせてやるぜ!! これで終いだ! 『アングラ-
ヤツの手から何かが放たれたのは理解できる。だか、その軌跡が見えない。
ヤツは足を止め、不適に笑うと言った。
「見ようとして、その場を動かない・・・悪手だぜ、そいつは・・・もう遅い、終わりだ、空条ジョシュア」
「チッ・・・こいつぁ、マジにやばいぜ・・・避けようにもどこに避けりゃあいいのか分からねぇ・・・同化も間に合わない。万事休すか――――」
「――――1時の方向、3メートル先だよ。速度はゆっくり、放物線を描いて飛来する」
「ッ!?」
突如聞こえた声に驚き、その方向を向く。誰かがゆっくりとビルから降りてきているのが見える。まるで空を飛んでいるように。
「驚いている暇は多分ないよ。でも回避は十分間に合う。左がいい・・・2メートルも離れれば十分。ヤツと距離を置くんだ」
謎の声は俺の心を読んでいるかのように言い続ける。仕方なくその声に従い、俺はその場から飛び退く。
しかし、俺が先程まで立っていた場所にはなにも変化がない。怪訝に思いながら俺はその位置に近づこうとする。だがその時また謎の声が聞こえた。
「動かないで。そこには近づいちゃあ駄目だ」
今度は後ろから聞こえた。俺は何時でも攻撃できるようスタンドに拳を構えさせ、振り返った。
「お、おまえ・・・さっきのヤツか・・・まさか、この声は、おまえが・・・?」
そこにいたのはビルの屋上でホワイトスネイクと戦った男だった。
男は俺の声を無視して、その辺の石ころを手に取ると、放り投げた。石は俺がさっきまで立っていた場所に落ちる。すると、突然その石が爆発した。
「!! こ、これは・・・」
「これがヤツの能力・・・強い風圧、衝撃に反応して爆発する超小型爆弾」
その威力は、先程まで俺が喰らっていた爆発の比ではなかった。喰らったら確実に死ぬ、そう言いきれるほどの爆発。ヤツは完全に止めを刺そうとしていたのだ。
見極めるために受け止めていたら俺は木っ端微塵に吹き飛んでいただろう。
つまり、俺はこの男に助けられたというわけだ。
「感謝するぜ・・・おまえの声がなけりゃあ、今ごろ俺は死んでいた」
「・・・さっき、君は僕を助けてくれた。そして僕は、戦うことを決意できた。感謝するのは僕の方さ」
こいつの目・・・さっきまでは小動物のように怯えきった目をしていたが、今は違う。闘志に溢れた『男』の目だ。たった今スタンド能力に目覚めたのだろう。
不思議と親近感が湧いてくる。
「おまえ・・・名前は・・・?」
「ユーノ。名乗らせてもらうよ、ユーノ・スクライアだ。ユーノでいいよ」
「ジョシュアだ。ジョシュア・空条・アナスイだ。ジョシュアでいい」
直感的に感じることが出来る。多分似ているんだろう、俺とコイツは。
多分ユーノも思ったんだろう。似ている、と。
少し穏やかな雰囲気になったが、それも長くは続かなかった。
能力を見破り、スタンド使いになって戻ってきたユーノを、アフムドが強烈な殺気を発して睨みつけていた。
「・・・ジョシュア、しばらく手出ししないで、僕にやらせてくれないか・・・こいつには借りがある」
「素質があるとは思っていたがよぉ・・・まさかたった今、この状況でスタンドに目覚めるのは、正直驚いたぜ・・・」
「・・・さっきぶりだね、おまえとは・・・シグナム達がやられた借りは、かえさせてもらう・・・!」
「やってみな!! やれるもんならよぉ!!! アングラァッ!!!」
アフムドがスタンドを出してユーノに殴りかかる。
速い。接近戦も十分に強いことが伺える。
しかし、ユーノはその攻撃の軌道を最初から分かっていたかのように、紙一重で避け、最小の動きでヤツとの距離を詰める。
「なんだ・・・この動きは・・・!?」
「――――無意識に脇腹を守っている・・・さっきのジョシュアの攻撃は、効いてないわけじゃあないらしい」
ユーノはそう呟くと、膝を上げ、アフムドの脇腹を蹴り上げた。
「グァッ・・・!! テ、テメェ・・・ぶっ殺す!!」
アフムドはアングラでユーノにひたすら殴りかかるが、その拳はかすりもしない。全て紙一重で回避され、その度にユーノが攻撃を加える。
「ちょこまかと蝿みてーに動きやがって・・・! なんでだ・・・なんであたらねぇ・・・!!!」
「風は・・・見えるもの全ての情報を教えてくれる。目で見るよりも正確に・・・。右手の筋肉が張ってきているよ。疲れたのかい?」
「な、なめやがってこのガキがァァァッ!!!」
完全に頭に血が上っている。顔を真っ赤にしてユーノに殴りかかるが、やはり一発もかすりもしない。
「大分遅くなってきているよ・・・簡単に避けられ――――ハッ!」
ユーノの動きが一瞬鈍った。そして、突然体を捻り、後ろに飛び退こうとした。
その瞬間、ユーノの目の前の空間が火を噴いた。ヤツの能力だ。怒りに任せて一心不乱に攻撃しているように見せて、この機会を伺っていたのだろう。
その目論見は見事に成功し、ユーノは回避が若干間に合わず、ダメージを負った。動けないほどではないだろうが、先程のように動くことはできないだろう。
「たとえ分かっていても、完全に避けるとなると難しいみてーだなぁぁ・・・! やっとテメェのその面によぉ・・・一発叩き込めそうだぜ・・・!!」
ヤバい・・・このままじゃあユーノがやられる。俺はドラゴン・フォースを出して、アフムドに向って走り出した。
*
ジョシュアが近づいてきているのをアフムドは目の端で捉えた。
「動くんじゃあないぜッ!!」
アフムドが腕を振るうと、それとほぼ同時にジョシュアの目の前の地面が爆発した。ジョシュアは喰らいはしなかったが、迂闊に動くような真似はできない。アフムドの攻撃は牽制には十分だった。
「投げる、速さ、か・・・速いか遅いか、だけで・・・爆弾のタイプが変わるなんて・・・」
「気付いたか、ユーノ・スクライア。ご名答だ」
ユーノは『イミグラント・ソング』から得た情報をもとに敵の能力を言い当てる。
アフムドはにやりと笑うと、突然拍手をした。
「エクセレントッ! 正直、ユーノ・スクライア・・・おまえの成長には驚かされたぞ。この短時間でここまで俺を追い詰めるほどに成長するとはよぉ、ぶったっまげたぜ、いやマジで・・・だがよぉ、それもここまでだぜ」
アングラは拳を握り締め、ユーノの前に立つ。そして今まさにとどめの一撃を叩き込もうとした瞬間、突如ユーノの傍に何かが降り立った。
アングラは手を止め、その何かを警戒して少し距離を置いた。
そこにはユーノのスタンドの像である案山子がいた。それを見てアフムドは吹き出し、そのまま爆笑した。
「ぎゃははは!! それがおまえのスタンドか? ずいぶんと脆そうだぜ!」
アフムドの言葉を無視し、案山子はユーノの方を向き、言った。
『ユーノ、オマエハ勘違イシテルゼ。風ノ声ヲ聞クダケガ、イミグラント・ソングノ能力ジャアナイゼ。俺ダゼ・・・俺ハ、オマエト風ノ絆ノ『シンボル』ダ。風ト共ニアルンダ。風ニ『命令』スルンダ。風達ハ待ッテルゼ、オマエノ言葉ヲヨォ・・・』
「・・・・・・・・」
「何をゴチャゴチャ言ってるのかは知らねぇが、とにかく、おまえのスタンドは脆そうだが、なにしでかすかわからねぇ。よって・・・より安全に、確実に処刑する!!」
アングラはユーノから距離を置いたまま両腕を前に突き出す。ユーノはイミグラント・ソングで、その腕に付けられた大量の爆弾の存在を感じ取れた。ジョシュアは見ることはできないが、その構えと言動からこれから何をやるかは理解できた。
「ま、マズイ・・・ユーノ! 逃げろ! 魔法でも何でも使え!!」
「無駄だ! 空を飛んだところで、撃ち落すのは容易ッ!! ここから逃げるには転送魔法くらいしか使える魔法はない! そして、転送魔法は発動までに時間がかかる。俺の勝ちだ! ユーノ・スクライア!! そしてその後、空条ジョシュアをぶち殺し、我等が王、ホワイトスネイクは余裕を持って次の計画を実行できるのだ!!!」
アングラは、アフムドの声に呼応するかのように腕を振り上げた。
「最後の『アングラ-
アングラが振り上げた腕を思い切り振り下ろす。そして、爆弾が放たれる。
だが、その時だ。
爆弾がアングラの腕を離れた瞬間、突如暴風が吹き荒れ、全ての爆弾に火をつけた。
――――――おい・・・なんで爆弾がよぉ・・・俺の前で火ぃ噴いてんだ・・・?
アングラが放った全ての爆弾が一斉に爆発した。その爆発はこれまでの比ではなく、圧倒的な大爆発だった。
爆風が吹き荒れる中、アフムドはアングラで必死に防御していた。そして爆発が収まると、アフムドは足を引きずりながら舞い上がる土
煙の中から姿を現した。
「な、なんとか・・・生きてる。俺自身の能力であるがゆえ、耐性がついていたのか・・・だが、戦えそうにない・・・一刻も早く逃げなくては・・・」
アフムドが土煙が自身の身を隠してくれているのを利用し、撤退を謀った。しかし、先程のように突然強風がアフムドを襲った。その風は、全ての土煙を払うには十分だった。
重傷を負ったアフムドの前には、ユーノとジョシュアが立っていた。
「イミグラント・ソング・・・こういうことだったのか。風と共にあるとは・・・声を聞くだけではなく、会話することにあった。そして『彼ら』は僕の言葉を守ってくれた」
「アフムド・アブドゥル・・・これからおまえにできる事は『覚悟』、それだけだぜ・・・これをくらったあとの覚悟だけな」
ジョシュアはドラゴン・フォースを発現させ、ユーノはイミグラント・ソングで風の塊を造りだした。
―――――うわぁああああああああ
「「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァッ!!!!!!!」」
アフムドは2人の猛攻を何の防御もせずにまともにくらい、そのまま数十メートルも吹っ飛んでいった。
「――――やれやれだぜ」
「――――やれやれだよ」
←TO BE CONTINUED
ジョシュア・空条・アナスイ:スタンド名「ドラゴン・フォース」
ユーノ・スクライア:スタンド名「イミグラント・ソング」
アフムド・アブドゥル:スタンド名「アングラ」
やっと一つの戦闘が終わりました。
やはり難しいですね・・・戦闘描写と言うのは。いつも苦労させられます。
一応、本作品は荒木先生の手法に則り、スタンドの能力としっくりくるような洋楽のバンド、曲、アルバムタイトルの名前を使うようにしています。
これが一番大変な作業です。私の音楽フォルダの中からそれを選び抜くのは至難の業です。
意見、指摘等がございましたら感想に書いてください。
多少の批判があったほうが私も成長できますので、お願いします。