やけに濃い血の匂いがする。
アーチャーは先が見えないほどくらい下水道に通じる大きな空洞を見つめる。
ここがアレの拠点に間違いはない。
周りは既に暗闇のカーテンを下ろし、空は星々が瞬いている。
月がとても綺麗だ。
そうだ、"俺"が彼女に会ったのもこんな月夜だった。
己がまだ未熟だった記憶を呼び起こす。
過去の記憶が擦れてしまった今でもあの時は未だに鮮明に思い出せる。
月の光を背景に。輝く金の髪、煌めく銀の鎧。夜に溶けるような鮮やかな蒼。
セイバー、君なら正しい答えを出してくれるだろうか。
私は今間違ったことをしているのかもしてれないのはわかっている。しかし、それでも進まねばならないのだ。
「やれやれ…。早速お出迎えか。」
「投影…開始」
アーチャーの目の前に二体の異形が現れる。片方はまるで狼の形に異常に大きな爪
、もう片方は人のような佇まいに尻尾、そして剣のように変形した腕を持っている。
強化の魔術を己の体に通すことで身体能力を限界まで引き上げる。
「早々に其処を退いてもらおう。お前達の主人を守ろうとするのは素晴らしいと思うが、あれはもうすでに限界だ。」
しかし、偽徒は唸り声を上げるばかりだ。
それもそうだ、彼らに個はないのだから。
「では、押し通させてもらう!」
一瞬で偽徒との間合いを詰める。そのスピードは最早人の目では追いきれず、まるでその場から消えたようにしか見えないほどだ。
躊躇いなく短剣を一文字で斬り払う。それで終わる、筈だった。
「っ!?」
片腕が剣の様になった偽徒は恐るべき反応速度でアーチャーの斬撃に反応し、それを巧みに逸らしたのだ。
剣を振った力に逆らわず、そのまま回し蹴りを当てることで二体の偽徒を吹き飛ばし間合いを広げる。
「どうやら、今までのやつらとは少し違う様だ。ならば、少し本気を出しても問題は無かろう。」
短剣を持つ両手をだらんと下ろす。
「掛かってくるといい。貴様らの攻撃全て受け流してみせよう。」
獣型の偽徒が最初に動き出す。
獣型は跳躍し、上からその鋭い爪を振り下ろす。
しかし、そんな攻撃はアーチャーにとっては取るに足らない攻撃だ。
少し体を横にずらし紙一重で避ける。
「大振りすぎだ。それでは受け流す迄もない。」
しかし、偽徒も一筋縄では行かない。
アーチャーが避けたところを狙いもう片方の剣の腕を持つ偽徒が襲いかかる。
「ほう、連携が出来るとはな。だかしかし」
アーチャーを切り裂こうとした剣は何処からともなく射られた剣に弾き飛ばされる。
「相手の能力を分析せずにせめるとこうなる。」
一気に踏み込む。
剣を持つ偽徒は態勢を立て直しきれずに喘いでいる。これなら容易に殺せるだろう。
「ふんっ!」
一気に切り裂く、まずは一匹。そう思ったが、殺したのは剣を持つ偽徒ではなかった。
獣の偽徒がその残骸を霧散させる。
「身代わりになる感情を持っているとはな。だがしかし、所詮殺す順番が変わっただけだ。」
態勢を整えた剣を持つ偽徒が突っ込んでくる。
「一匹になれば突っ込むことしか能がないのか。」
受け流す態勢に移る。
偽徒の突きは確かに脅威的なスピードではあるが英霊には遠く及ばない。
攻撃を受け流し、そこを切り裂きくことで決着する。
偽徒の刺突に合わせ剣を受け流そうとした。その瞬間、何か只ならぬ悪寒に全力で間合いを開ける。
確かに偽徒は突きを行っていた。
しかし、その突き技が飛んできたのは"上"からだったのだ。
その攻撃はまるで…。
「まるでゲイボルクだな。しかし、本物には遠く及ばない。今のは因果逆転ではなくただ切っ先が屈折したものに過ぎない。わかっていれば脅威にもならない。」
何故、偽徒がそれを使えるのかは謎のままだがそれでも関係ない。
次の瞬間、偽徒に無数の剣が降り注いだ。
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意識が覚醒する。
今までとてもいい夢を見ていた気がする。
眠りから覚醒した士郎には良い夢に浸るよりも先にアーチャーを追わなければいけないという強迫観念に襲われる。
「っ!」
勢いよく起き上がろうとすると体に激痛が走る。だが立ち止まるわけにはいかない。
今は早くあいつを追わなければいけない。
激痛が走る体に鞭を打つ。
それを見つけたライダー、桜、イリヤが駆け寄ってくる。
「シロウ、今は安静にしなくてはいけません。」
「先輩!今は体を大切にしないと!」
「シロウ!」
その三人の顔を見てやっと自分の状況を認識する。
「そうか、俺は山門でアーチャーと闘って…。そうだ、偽徒を率いていた子は!?」
ライダーに問いかける。
「彼女はシロウが気絶するのと同時に偽徒と共に姿を消しました。」
「そうか…。それじゃ、早く行かないとな。」
「先輩!?行くってその体でですか!?」
体のことを考えるのは後回しだ。
今は一刻も早くアーチャーを追わなければいけない。
無理矢理体を起こす。
俺が眠っていたのはどうやら隆洞寺の客間のようだ。
体を引きずりながらも部屋を出る。
縁側にはイリヤが立ち塞がっていた。
「シロウ…本当に行くの?」
「…ぁあ。あの子は…。あの子は俺の妹だから。それに約束したんだ。あいつを助けるって。」
それを聞いてイリヤは溜息をつく。
「シロウならそう言うと思ったわ。じゃ、私も連れてって。」
………。
はぁ!?
とりあえず眠い。後書きに書くようなことじゃないけど
眠い。