「…ふっ!」
鎖でつながった短剣が自由自在に動く。その様はまるで蛇のようにも思える。
短剣は偽徒の急所を巧みに貫く。
偽徒は低い断末魔徒とともにその生命活動を止めた。
柳洞寺の山門には無数の偽徒が夥しい数で柳洞寺の中にいる人間を殺そうと殺到する。
山門に少しでも立ち入ったものからライダーは的確に、正確に討取ってく。
しかし、偽徒の数には限りがあるようには思えなかった。
「これではキリがありませんね。宝具を使えればいいのですがっ!」
ライダーの宝具、騎英の手綱を使用するには大きな隙間が必要になる。
少しの侵入は許すが敵を殲滅することもできる。しかし、それは彼女だけであったらだ。
柳洞寺には動けない生存者が多くいる。
彼らのためにも一匹も入れてはならない。
「っ…!」
偽徒はその数をだんだんと増やしていき。今にも溢れださんばかりだ。山門前で抑えて入られるのも限界があるだろう。
気を緩めずに短剣を操る。
無駄なく、最短で最小の動きで急所を貫く。
「ライダー!!」
背後から思わぬ声が聞こえ思わず振り向く。
「桜!?貴女は柳洞寺の中にいてくださいと言ったはずです!!」
一瞬できた隙に数体の偽徒の侵入を許してしまった。
偽徒はライダーを無視し、桜へと迫り、襲いかかった。
「サクラ!!!」
偽徒が桜に飛びついた瞬間、彼女の口が少しだけ動く。
すると今まで変哲もなかった桜の影から紫の斬撃が地を這うように繰り出され、偽徒を真っ二つに切り裂いた。
「私だって…少しは闘えるんだから!!」
気づけば桜が身につけていた衣服の右腕の部分だけがいつの間にか黒を貴重とし、赤の縦線が入ったものに変わっていた。
「サクラ、ダメです。貴女には攻撃する魔術は早すぎる!それに彼らは貴女がどうこうできるほどのものではない!」
偽徒は桜が魔術を行使することができることを知り、その行動パターンを変える。
桜を中心に円を描くように駆ける。
「……っ!」
桜の表情が微かに歪む。いくら魔術を行使できるとはいえ、それが当たらなければ意味がない。
このままでは手も足も出ずに殺されるのが関の山。
眼前の無限にある闇を止めるか、主人を守るか。
迷う時間はない、ライダーは偽徒を抑えるのをやめ、主人を守らんと一瞬動きを止める。
それとほぼ同時に桜の周りを駆けていた偽徒がその脚を止め、一気に襲いかかる。
ライダーが脳裏に主人が引き裂かれるイメージが浮かんだ瞬間、思わぬ声が寺の境内に響いた。
「ライダー!動きを止めないでその門に溜まってるのを抑えなさい!!」
その声がした途端、桜に襲いかかった偽徒達は空から降り注いだ魔弾によって消し飛んだ。
振り向かずとも魔弾を撃ったのが誰かはわかった。
しかし、叫ばずにはいられなかった。
「リン!!」
ライダーの叫びに遅れて桜も叫ぶ。
「姉さ…ん…」
ギリギリの所を姉に助けてもらったのだから嬉しいはずだ。
しかし、その表情は何故か少し引きつったものになっていた。
それもそうだ。自分の姉が…あんな…。
「あらら?凛さん、何故か皆さん固まってますよ?」
何処からか割烹着を着たメイドさんをイメージさせる明るい声が聞こえる。
そして、赤面する凛。
「全部あんたのせいでしょうが!!!」
それもそうだ、凛の赤を基調とし、金の装飾が施されたゴスロリにマント、さらに猫耳、尻尾の姿を見れば誰でも固まってしまう。
驚愕のあまりにライダーも門から侵入する偽徒のことをすっかり忘れていたことを思い出し、急いで門へと視線を戻す。
そこにはもう一人、凛とは対極に青を基調としたゴスロリにマント、さらに猫耳尻尾、金髪の縦ロールの女性がライダーに代わって偽徒を抑えていた。
「仮にも英霊ともあろう者が敵と対峙している中でよそ見とは捨て置けませんわね。」
いや、そんな格好で格好良いこと言われても…。などと思ってしまうが、今はそれどころではない。
「サクラ、大丈夫ですか?!」
主人へと駆け寄る。
どうやら外傷はないようだ。黒と赤の変異は今は治り、元の変哲もない服へと変わっていた。
「姉さん…その格好は…。」
「そんなことは置いておいて。桜、まだヘタレこむのは早いわよ。空から全体を見てたけど、"あいつら"も来たみたいよ。」
「あいつら?」
「そ、文字通り"正義の味方様"がね。」
凛は偽徒に荒らされ瓦礫まみれになった街を見つめながらそう言った。
「凛さん、そんな感じで場面を切り替えようとしてもダメです。」
突然、凛が持つステッキが異議を申し立てた。
「ッ…!!良いじゃない!こんな格好してるのは全部あんたのせいなんだから大人しく次の出番を待ちなさいよ!?」
「そうはいきません。こんな凛さんをイジらなけれ…もとい、しっかりと説明してあげないといけないですし。」
こんな緊急事態なのに呑気にコントを決める一人と一つ?。
そんな姉を見て思わず唖然する桜。
そこに一喝。
「そこ!何コントをかましていやがりますの!!そんな暇があるならこちらを抑えるのを手伝いなさい!!。」
その言葉につられ、山門を見るともう偽徒が溢れる寸前だった。
「っ!ルビー、あんたへのお仕置きは後回しよ。今はあいつらを抑えるわよ。」
「はぁ、了解しました。マスター。」
「ため息はつかない!!!」
瞬間、凛の表情がスイッチが切り替わったように変わる。
ステッキを持つ左手を右肩に乗せるように構え、ステッキに指示を出す。
「ルビー!チャージ開始!!」
凛の後ろに5つ、前に巨大な魔法陣が描かれる。
その魔方陣はエンジン音のような音を立て、駆動を始め、光が増していく。
「チャージ完了。いつでも行けますよ、凛さん。」
ステッキが準備ができたことを知らせると凛は獰猛な笑みを浮かべる。
照準は偽徒が溢れそうになっている山門。
これほどの魔力なら偽徒を殲滅するのも可能だろう。しかし、そこには大きな問題があった。
それは、山門と凛との間に青い魔法少女がいることだった。
それを知ってか知らずか、凛が叫ぶ
「避けなさい!ルヴィア!!!」
因みに叫んだのは撃ってからというのは秘密である。
そして、視界が白い光に染まった
アイデアが浮かばな…い…(ガクッ