魔法少女リリカルなのは? ふもっふ   作:八神れっふぃー

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サビーナ、海鳴視察任務 いちっ!

 私の名前はサビーナ・レフニオ。アマルガムの構成員です。

 ……え? アマルガムってなんだって? 現代人なんだから文明の力を使いなさい。そんなもの、ググれば出てきますよ、ググれば。

 

「いや、サビーナ。ググったぐらいでアマルガムの情報が出てきたら大変なんだけど」

「……ハァ。レナード様はおめでたい頭をしておられますね」

「おかしいな、キミはそんなキャラだったかな」

「あの情報検索システムを嘗めない方がよろしいかと。彼らの情報網は異常です。私も何度かお世話になりました」

「無視かい。……お世話って、何に?」

「攻略サイトに決まっているでしょう。まさかステラを助け出す方法があるとは思いませんでした。まったく、私もまだまだ未熟ですね。シンくんを悲しませる結果にならなくて良かったです」

「うん、知らない間にキミは変わってしまったんだね。まさか初登場でこの僕がツッコミに回されるとは思ってなかったよ……ハァ」

 

 そう言って大きな溜息を吐くこのお方は、アマルガムの幹部ミスタ・Agことレナード・テスタロッサ。私はレナード様とお呼びしている。まあ、上司なわけだから仕方が無い。ハァ。

 

「……どうして、キミは、今、溜息を吐いたのかな?」

「それで? 私を呼んだ理由はなんですか?」

「無視かい」

 

 ……ふぅ。やはりレナード様はお疲れのようだ。私が発する言葉全てに噛みついてくる、これでは話がまったく進まない。

 これはやはり、あれでしょうか、私を女として求めている、ということなのでしょうね。ふっ、それでは仕方ありません。

 

「さぁ、どうぞレナード様。この私を思う存分貪ってください」

「やっぱりキミはおかしい! 今回が初登場だというのに何があったんだ! それと描写出来ない格好をするんじゃない! 色々と面倒なことになるから!」

 

 レナード様がお怒りなので、着崩していた……というかそこらへんに放っていた服を着直す。まさか欲情よりもツッコミを優先するとは……流石はレナード様。私が惚れた男です、ポッ。

 

「……どうしてキミが頬に手を当てて顔を赤くしているのかは知らないけど……うん。任務だよサビーナ。日本の海鳴市ってところの視察任務だ」

「視察任務、ですか? 何故私が?」

 

 私も確かに実行部隊という役柄ですが、視察任務ならば私以外の誰でも良さそうなものですが……そういえば海鳴と言えば、千鳥かなめ……ウィスパードがいる街で――

 

「最近になって『魔法』が確認された街、でしたか?」

「ああ、そうだよ。どうもジュエルシードっていう「ジュエルSEED?」……ロストロギアが街中にばら撒かれたらしいんだ。おそらく近いうちにこれを察知した管理局が来る。もし管理局に彼女がウィスパードだということがバレたら――」

「え、ググったら普通に出るんですからもうとっくに知られてると思うんですけど…………すいません嘘です」

 

 レナード様が憤りとか虚しさとかその他諸々が混じり合った複雑な目で見てきたので、慌てて訂正する。いけないいけない、調子に乗ってからかいすぎるとこうなるから気をつけなければ。

 

「では私の任務は千鳥かなめを早急に連れ去ることですか? ですが、視察任務と言うのは……」

「いいや、文字通り視察任務さ。まだ管理局には彼女がウィスパードだということはバレていないだろうしね。ただやはり……信頼のおける部下を一人は彼女の傍に置いておきたい」

「それはつまり私にこの場で脱げと「違う」…………意気地なし」

 

 少し俯いて、顔を赤くしながらボソッと呟いてみたり。

 

「…………」

 

 ……ふっ。レナード様はどうやらツンデレなようです。今はデレになりかけているツン、と言ったところでしょうか。ぷるぷると震わせた拳を振り下ろすか振り下ろすまいか迷っている姿こそその証拠。ふふふ、照れ屋さんですねレナード様は。

 

 

「……耐えろ、今は耐えるんだレナード・テスタロッサ……!

 ――あー、とにかく。千鳥かなめを監視してほしい。そして、管理局が彼女に危害を加えようとした場合は……分かってるね?」

「ええ、分かっています。このAS(アームスレイブ)デバイス『ヴェノム』を使えばよろしいんですよね?」

 

 私は懐からアルファベットのIを模した形のペンダントを取り出す。

 ASデバイスと言うのは、基本的には魔導師が使うデバイスと変わらない。ただ、ASをそのままバリアジャケットにした感じだ。武装はASが使うような武装を全て魔力で補うようにしたものですが……このデバイスの真価は、ASに乗らずに生身でラムダ・ドライバが使えるということ。魔導師が使うようなデバイスとはレベルが違います。

 まあ、製造に無駄にコストがかかるので、現状でこのデバイスを持っているのはレナード様にミスタ・Fe、ファウラーに私、それと……名前を忘れてしまいました。確か……もみ上げでしたかね? まさかテストでASデバイスをぶっ壊すとは思いませんでしたが。

 ……あ、ちょっとそこ。この小説にそんな設定いらねーだろ、とか言わないでください。後々重要になってくるはずですから。多分、きっと、恐らく。

 

「そう、それだ。ラムダ・ドライバを使いこなしさえすれば、管理局のエースとも対等に渡り合えるはずだよ。

 …………ところで、どうして待機形態をI字型にしろ――なんて言ってきたんだい? 別に大した手間じゃなかったけど、『私専用、とかみたいじゃないですか』みたいな答えだったらはっ倒すよ」

 

 後半のツンは華麗にスルーして、レナード様の疑問に私はASデバイス『ヴェノム』を首に提げた後、微笑を浮かべ答える。

 

「シンくんの機体、インパルスですよ。レナード様」

「ああ、だからIか…………というかドヤ顔止めろ。はっ倒すぞ」

「ふむ。このままではレナード様がご乱心なされそうなので、私はさっさと任務に行かせてもらいます。では!」

「あ、待つんだサビーナ! はっ倒す前に言っておかなきゃいけないことが……!」

 

 背後から聞こえるレナード様の制止の声を無視し、私は走る。

 ふっ、アレ的なお説教ならともかく、言葉のお説教を受けるつもりは全く、これっぽっちと言っていいほどありませんよ!

 

「最近海鳴に異様に強い謎のぬいぐるみが――って、行っちゃったか。まあ、彼女なら多分大丈夫だろ……色々な意味で」

 

 

      =============================

 

 

 というわけで、やってきました日本の海鳴市。

 ふむ、私はこれからしばらくこの街で過ごすのですか。見たところ悪い街ではなさそうなので良しとしましょうか。

 

「くぉらぁぁぁ! 待てやぁぁぁ! 大人しく私の出世のためのポイントになれごらぁぁぁ!」

「せ、先輩! 飛ばし過ぎですよぉ! ここ商店街ですよぉ!?」

「ふっ、そんなの知らんわ! 私を! 止められる奴なんて! この世界にいなぁぁぁぁぁい!」

「……う、うわあああああん!」

 

 平和な街ですね。この街ほど平和という二文字が似合う街はありません。ふっ、ASで駆けた戦場はこうして考えると地獄以外の何物でもないですね……。ええ、シンくんにステラと長時間離されるとかもう苦痛と言うほかないです。

 

「でい! おら! おらぁ!」

「ふもっ! ふもっ! ふもっふぅ!」

「じょ、嬢ちゃんとボン太くん……だよな? そんな力入れてやったらゲームが壊れ――」

「ええい、まどろっこしいなぁ! アイゼン! このモグラを叩き壊せぇ!」

『俺のドリルは! 天を衝くドリルだぁぁぁ!』

「ふもっふもぉぉぉぉぉ!」

「嫌ぁぁぁぁぁ!」

 

 しかし、こんなにも平和で良いのでしょうか。これではまるで休暇を貰ったみたいではありませんか。

 ……ああ、しかし任務はちゃんとこなすんですから、少しぐらいならゆっくりしても構いませんよね。普段激務に追われる私のためのレナード様の気遣いです、素直に受け取りましょう、私偉い。

 

「さてそれではまずは当面の住居に…………ん? あれは……」

 

 視界の端に多大な違和感を感じ、そちらに目を向ける。その先にあったのは、ゲーム屋。いや、正確にはゲーム屋の前に陳列されたゲーム。

 多種多様のロボットたちが描かれた、一目見ただけで心躍るパッケージ。

 あ、あれは、まさか……!

 

「だ、第二次スーパーロボット大戦Z―破界篇―……!?」

 

 ば、馬鹿な! 今日はまだ発売日ではないはず……はっ、もしや、これが噂に聞く早売り……? くっ、流石は日本のゲーム屋、やることが違いますね……!

 

「ふっ……ですが、これはまさに神の悪戯。どうやら残り一本のようですが……ありがたく頂いていきます」

 

 私はゆっくりと第二次スーパーロボット大戦Zに手を伸ばす。ふふふ、こうして再びシンくんに出会えるなんて……こんなに嬉しいことは――――

 

「あっ」

「えっ?」

 

 あと少しで手が届くところで、私の手に小さな手が当たっていた。

 視線を横にずらすとそこには、栗色の髪をツインテールにした小学生ぐらいの女の子……いや、待ちなさいサビーナ。彼女の目をよく見るんです! 彼女の目は、あの目は……!

 私が女の子を睨みつけていると、女の子も私を睨みかえしてきた。チィッ、やはり私の推測は当たっていたようですね……!

 

「……お姉さん。あなた、もしかして――」

「……お嬢さん。あなた、もしかして――」

 

 そして、私と女の子は同時に言葉を発する!

 

「リアルロボット厨ですね!?」

「スーパーロボット厨ね!?」

 

 この子は……この子は、敵だ!

 ――この出会いが、私の唯一無二の親友となる少女――高町なのはとの、最初の出会いだった……。


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