魔法少女リリカルなのは? ふもっふ   作:八神れっふぃー

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ボン太くん、謎の少女と出会う

「はぁ〜……ドでかい家やなぁ」

「でしょ? 地下に巨大ロボットとかありそうだと私は前々から踏んでるんだけど」

「なのはちゃんってもう手遅れなんやね」

 

 小学三年生にして手遅れレベルにまでなっているなのはちゃんに憐みの視線を向けた後、私は眼前にそびえたつ豪邸を見る。どっちかって言うとアレや、借金大量に背負った執事がいそうな感じの豪邸やな。無駄に不死身で無駄に女顔で女装すると無駄に可愛いって感じでロックオンと恋に落ちるんやけど悲愛に終わってまう感じの。……あかん、なんか電波受信してもうた。気をしっかりと持つんや、愛沢咲夜…………誰やそれ!

 

「そんなことより早く中入ろうぜ。地下にあるロボットなんてコンパチ以外にねーんだからな」

「ふも! ふもふもっふ!」

「『待って! 地下の王道はマジンガーだよ!』? おいおいボン太くん。あれは地下っつーよりプール下じゃねぇかよ」

 

 変な電波のせいでショボイノリツッコミを強制されてしまったことに落ち込んでいる私の視界のど真ん中で、既に手遅れな私の家族が少女にあるまじき——ボン太くんが少女かは知らんけど——会話を交わしながら眼前の豪邸に向かって歩いて行く。そりゃもう堂々と。

 

「私たち招待された身なんやから、もう少し慎ましく——」

「そんな委縮してたら何も始まらないなの。

 一緒に行こうなの! 君島ぁぁぁぁぁ!」

『私の将来の夢(リミットブレイク)はシェルブリットです』

「ちょっ、眩しっ」

 

 赤い宝石——確かレイジングハートやったか?——を上空へ向けて投げるなのはちゃん。すると投げられたレイジングハート(なんか変なこと言ってる)がなのはちゃんの叫びに呼応して光を放つ。

 そして光が収まった先には、何故か落胆しているなのはちゃんとレイジングハートがいた。いや、何がしたいん?

 

「く、くそぅ……一体何が足りないなの……!」

『おそらく速さかと。……私は、シェルブリットになれない』

 

 何やってるか知らんけど、近所迷惑やで。

 

「急に……間違えた、前々からおかしいと思ってたけど、今日は一段とおかしいでなのはちゃん。誰や君島って」

「サビーナさんにレイジングハートと一緒に完徹して見てたから余韻が……なの♪」

「さっきの台詞言った後やと、可愛らしい仕草されてもなんかもう色々と駄目や」

 

 可愛らしい仕草——どんな仕草なのかは想像にお任せする——を披露したなのはちゃんに冷たい視線を向けてやる。どっちかっていうとなのはちゃんは『夢を……夢を見ていました』の方なんやけど……また電波か。

 あ、サビーナさんっちゅーのは最近なのはちゃんの家に居候し始めた人らしい。なんか海鳴にしばらく定住するらしかったんやけど、その間ずっとホテル暮らしらしくて、それだったらとなのはちゃんが自分の家に居候させてスパロボ……げふんげふん、一緒に暮らそうと提案したらしい。そしてお父さんたちにそれを話したら即了承されたと。どうもなのはちゃんのお兄さんが一番喜んでいたらしい、『一緒に魔法剣エーテルちゃぶ台返ししようぜ!』とか物凄い良い笑顔浮かべてたってなのはちゃんが言ってた。サビーナさんも『不束者ですが、よろしくお願いします。……シン×ステラは私の正義(ジャスティス)』って言って嬉しそうにしてたとも教えられた。

 まぁ、仲が良いのは良いことやと思う。決してツッコミするのが面倒になったわけやあらへんよ? 絶対、絶対や。

 

「——と。そんなことを考えているうちに豪邸の中に入っていたのである」

《……はやて? どうしてそんな変な口調なの》

《久しぶりの出番やからな、何をどうすればいいか分からなくなってるんよ。

 しかしユーノくん、唐突に出てきたな》

《うん。正直言って出るタイミングがここしかないと思ったから。

 これからは僕もツッコミ手伝うよ》

 

 私のメタ発言にもツッコめない辺り、ユーノくん大分必死みたいやな。でもなユーノくん、今の状態のユーノくんほど出しにくいものはないねん。念話でしか喋れへんってツッコミとして致命的やで?

 ……あかん、もう電波なんてレベルやない。何かエレクトリックウェーブ的なものを受信してるとしか思えへん。

 

《はやて。それはつまり電波だね》

 

 キリッという擬音が出そうな顔をするユーノくん。ドヤ顔すなや、ウザいねん。

 

「アリサちゃーん! 私、速さが足りないらしいんだけど、どうすればいいの!?」

「知らないわよ、また徹夜でアニメ一気見したの? ……っと、いらっしゃい。あなたがあのボン太くんの保護者の八神はやて?」

「あ、はい、そうです」

 

 なのはちゃんの意味が分からん言動を適当に流し、私を見てくる金髪の女の子。なんやろ、この子とは仲良く出来そうな気がする。友達的な意味でもツッコミ的な意味でも。

 ……あ、今更やけど、私たちは数日前にボン太くんが助けたっていうアリサ・バニングスっていう子の家にお招きされた。自分を助けてくれたボン太くんとその家族にお礼が言いたいらしい。

 しかし、ボン太くんは一体どんな状況のこの子を助けたんやろ? それは聞かされなかったから少し気になるなぁ。もし道端で転びそうになったのを助けたとかやったら、お礼なんて恐縮過ぎて——

 

「本当にありがとう。あの時ボン太くんが来てくれなかったら私は、私は……………………もみあげを凄く長くされるところだったわ」

「身体に大事はないですか!? もみあげは無事ですか!?」

 

 自身のもみあげを愛おしそうに触るアリサちゃんに私は駆け寄る!

 そんな、そんなつらいことが……よくやったでボン太くん! キミは八神家の誇りや! ……って、あれ?

 

「そういえばその【もみあげの救世主】ボン太くんはどこに?」

《はやて。その称号はどうかと思う。キリッ》

《うっさい、黙りぃ。ただツッコミしただけでそない自慢げにするんやない。ぬっ殺してやろか?》

 

 速さが足りないだのもっと、もっと輝けぇぇぇ——とかレイジングハートと話しているなのはちゃんの肩の上に乗っているユーノくんを恐喝して黙らせて、周囲を見回してみる。

 が、ボン太くんの姿はどこにも見当たらない。ボン太くんと一緒にいたヴィータも同様。影一つ見当たらない。どこ行ったんや?

 

「ああ、そうそう。ボン太くんとヴィータって子はあなたたちが来るのを待ってる間暇だからって、庭にいる犬たちと遊びに行ったわよ。……それが一分前だったかしら」

 

 私が疑問に思っていると、アリサちゃんが疑問を解消してくれた。

 ……ったく、あの二人は。少しは大人しく出来ないんやろか——

 

『だ、誰だてめぇ! 一体何者——』

『黙れ! そして聞け!

 我が名はフェイト! フェイト・テスタロッサ! 我こそは——悪を断つ剣なり!』

『ふも、ふも……!?』『なん、だと……!?』

『…………ふっ、今のは決まったね』

 

 …………。

 なんか変なの聞こえたーーーー!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

↓おまけ『今日のヴォルケンズ(良いタイトル募集中)』

 

 

 

 

 私の名はシグナム。闇の書の守護騎士ヴォルケンリッターが将だ。

 今私は、家の近くの商店街に来ている。主はやてが友人の家に行くと言うので、今日の買い物を代わりに引き受けたのだ。普段世話になっている分、こういうところで恩返しをせねば……ただでさえ身体が小さいから、主はやてに余計な迷惑をかけてばっかりだからな。どんな些細なことでもやらなければ。

 

「あれ、シグナムちゃん。一人でどうしたの?」

「あ、かなめ殿。いえ、主はやての代わりに買い物です。これからスーパーに行こうかとしていたところです」

「へぇー! 相変わらず偉いねぇ、シグナムちゃんは!」

 

 スーパーに向かう途中に私の前に現れたのは、千鳥かなめ殿。

 以前朝のランニングをしていたら、そこで出会ったお方だ。かなめ殿は陣代高校という学校で生徒会という組織の副会長を務めているらしい。どうやら副会長というのは生徒を指揮する立場らしいのだが……それゆえか、かなめ殿には何か大きなものを感じる。初めて会った時も、初対面の私に対して優しく接してくれたりなど……将来は大物になるだろう。

 

「そんなことはありません。主はやてに養ってもらっている身、この程度では今まで受けた恩の一欠片も返せていないでしょう」

 

 そう、主はやては偉大なお方だ。役立たずな私たちを優しく受け入れてくれて、そればかりか衣食住も世話してくれるなど……私は一生あのお方についていこう。

 

「……そのはやてちゃんって、確か8歳とか言ってなかったけ……? まぁ、いいや。それじゃあ一緒に行きましょうよ。私もこれから買い物に行くところだったのよ」

「そうなのですか? ではご一緒に」

「ええ、行きましょ行きましょ! ……一人だと怖いしさ」

 

 途端、明るかったかなめ殿の表情が暗くなる。

 む? 一体どうしたのだ?

 

「どうしたのですか、かなめ殿? どこかお具合でも……?」

「ああ、違うのよ。最近しつこくまとわりついてくる奴がいてね? 特に害はない……わけじゃないんだけど、四六時中まとわりつかれたら、流石にね……ハァ」

 

 憂鬱そうに溜息を吐くかなめ殿。

 な、なんだと!? かなめ殿にそのような狼藉を働く者がいるというのか!? ゆ、許せん。許せんぞ!

 

「かなめ殿! その不届き者の名は?」

「え? ああ、相良くん……相良宗介って言うんだけど……それを聞いてどうするの? さっきのなら気にしないで、ただの愚痴だからさ。シグナムちゃんは私の買い物に付き合ってくれれば嬉しいな」

「…………分かりました」

「うんうん! かなめさんは素直な子が大好きよ!

 さっ、行きましょ。特売セール終わっちゃうよ」

 

 そう言って歩き出すかなめ殿。その背を追おうと足を踏み出そうとした瞬間——私は背後に顔を向けた。

 

「……」

 

 そこにいたのは、黒髪をざんばら切りにした、左頬に十字傷があるヘの字口の男。

 身に着けているのはかなめ殿が通っている高校の男子の制服。だが、私には分かる。奴は戦士。それも、凄腕の戦士だ。いくつもの戦場を超えてきたのだろう……それほどの闘気が溢れ出ている。おそらく……いや確実に、今の私では相手にならないだろう。

 だが、奴がかなめ殿が言っていた相良宗介というやつなのか? あのような闘気を出す者が、何故かなめ殿にまとわりついたりなど……ハッ!

 

「「……」」

 

 私と相良宗介は見つめ合う。そして、私たちにはそれで充分だった。

 ……そうか。貴様はかなめ殿を護るために……ふっ、その程度のことを見抜けないまでに私は腑抜けていたのか。まだまだ未熟だな。

 私は静かに親指を上げて頑張れ、と相良宗介に伝える。すると相良宗介は身に纏う闘気を一層濃くさせる。

 ふっ、流石だな相良宗介。貴様なら、かなめ殿を護り切ることが出来るだろう。

 

「お前の力……信じるぞ相良宗介」

「何してるのシグナムちゃん? 早く!」

「あ、はい、すみません! 今行きます!」

 

 背後の相良宗介に敬意を込めた視線を向けた後、私はかなめ殿の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「……こちらウルズ7。ウルズ6、聞こえるかウルズ6」

『あいよ、こちらウルズ6。どうしたソースケ。カナメに何かあったか?』

「いや……お前に聞きたいことがあるんだが、ミスリルに8歳程度の構成員はいたか?」

『は?』

「桃色の髪をポニーテールにした、つり目の少女だ。……見覚えはあるか?」

『いや、見たこともねーし聞いたこともねーけど……その子がどうしたんだよ?』

「……すまん。知らないんならいいんだ。ではな、クルツ。近所の女の部屋を覗き見するのは程々にしておけ。お前は隠しているつもりだろうが、マオにばれていたぞ」

『…………そ、ソースケ。それは一体いつ頃の——ブツッ』

「……あの少女。一体何者なんだ……」


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