「ボン太くんって言うんか? 謎の生物さん」
「ふもっふ!」
一応確認のためにもう一度名前を呼んでみると、謎の生物さん――ボン太くんは『肯定だ』とでも言わんばかりに元気良く返事を返した。
ボン太くんかぁ。まぁ、確かにこの見た目はなんか知らんけど『ボン太くん!』って感じがするしなぁ……って、何でそんな感じするんやろ? プレッシャー? いや、それはなんか違うか。
「ふも?」
「ん? ああ、大丈夫やよ。ちょっと考え事してただけやから」
俯いて考え事をしている私を見て具合が悪いとでも思ったのか、ボン太くんが心配そうに声(鳴き声?)を掛けてきた。
「ふも、ふーも?」
「あはは、ホンマに大丈夫やから。心配してくれてあんがとな」
ボン太くんが何て言ってるのかは全然分からへんのやけど、心配してくれてるってのはなんとなく分かる。
……まぁ、ホンマになんとなくなんやけど。
「……あ、そや。というかボン太くんはどうしてここにいたんや? はい、ペンと紙」
ボン太くんが何故ここにいるのか、という真っ先に聞かなければいけないことを聞いていなかったので、ペンと紙を差し出す。名前書けたんやからどうしてここにいるのかも書けるやろ。
ボン太くんはペンと紙を受け取って、紙をテーブルの上に置き、作業に勤しみ始めた。
……しかし、なんであんな指も何もない平ったい手でペンを持てて、更には文字も書けるんやろ。これから先、決して分からないであろう疑問が出来てしもうた。まだ八歳やのに。
「ふもっふ!」
「お、書けたんか? どれ、見してみぃ」
「ふーもっ!」
ボン太くんが差し出した紙を受け取ると、ボン太くんは『自信作だ!』とでも言わんばかりに防弾ジャケットを着た胸(?)を張った。
ただ紙に書くだけなんやから、自信作も何もないと思うんやけど……どれどれ。
「『神さまに『キミ、夢想転生してきなよ』って言われた後、目が覚めたらここにいたんだよ』……ふむふむ、なるほど……って、アホか!」
「ふもっ!?」
私がテーブルに紙を叩きつけると、ボン太くんは驚いて、『何故!?』とでも言いたそうな声を上げる。
いや、だっておかしいやろこれ! 神さまが出て来たで!? 夢想転生出て来たで!? なんや、その神さまは世紀末の神さまなんか!?
「ハァ……まぁ、ええわ。とりあえず気づいたらここにいた、で。しかし、これからどないしよか……」
「ふも?」
「いや、ふも? やなくてな? キミに関わることなんやで?」
まだ出会ってから十分も経っとらんのに、ボン太くんが何言ってるかなんとなく分かるようになってしもうた。悪いことではないんやけど、何故か複雑や。
「……そや。この後、石田先生んとこ行くんやった。石田先生に色々と相談してみるかな」
「ふも……ふもっふ!」
……この、意味が分からなかったけどとりあえず元気良く返事しとけばいいって考えてそうな生物について、色々とな。
「あー、その前に朝ご飯やな。ボン太くんも食べるやろ?」
「ふもっふ!」
「よし、そんじゃ適当になんか作るから待ってて―――」
と、そこまで言って気づいた。気づいてしもうた。
「……ボン太くんって、そもそも食べ物食べられるん?」
「……ふも?」
八神はやて、八歳。
再び、分からないことが増えそうな予感です。