「――というわけなんだよ、はやて」
「ふもっふ」
散歩から帰ってきたヴィータとボン太くんが、散歩の途中であった出来事について説明……。
「してへんしてへん。『――というわけ』使って説明したことにしちゃ駄目やって。ちゃんとそこの……二人? の説明しぃ」
ヴィータとボン太くんの後ろにいる二人(?)を指差す。その先には、栗色の髪をツインテールにした私と同じぐらいの歳の女の子に、喋るフェレット。
……うん。おかしいのは分かっとる。フェレットが喋るなんて明らかにおかしいとは思う。けど、私にはもう分からないんよ。『何がおかしい』のか、さっぱり分からへんねん……。
「えー、面倒なんだけど……」
「ふもっふ……」
「我が儘言わへんの!」
ぶーたれる二人(?)を一喝。私が少しシリアス風にしたと思ったらこれや! 大体私の感覚が麻痺してる原因は一にボン太くん、二にボン太くん、三にロリケンリッター……間違えた、ヴォルケンリッターなんやで? 少しは反省しぃ! ……いや、今となってはみんなが傍にいない光景が想像出来へんけども!
「はやてちゃんはツンデレね! 本来だったらシグナムの領分な気がするけどね、ツンデレは」
「ツン……デレ? 何だそれは。強いのか?」
「ふもっふ……ふもふもふもぉ……」
「『ツンデレ……それは至高、それは神秘、人が生み出した最大最強の技だ……』って言ってる」
「なん、だと……? それを使いこなせることが出来れば、今の忌々しい小さき身体のひ弱な力から解放されるか……? こうしてはいられん! 行くぞシャマル! 特訓だぁ!」
「ええ、シグナム! まずは『あんたなんか〜』からのフレーズを練習よ!」
「……ふもっふふも」
「『……って、クライドが言ってた』……クライドって、誰?」
「一旦黙りぃ! シャマルがどうしてその単語知ってるかだとかクライドって誰とか色々ツッコミどころあるけども、私のツッコミが間に合わんし、二人……げふんげふん、一人と一匹が呆然としてるやろ!」
「僕は人だよ!? どうして訂正したの!?」
たまには私もボケたかったんや……というか人なんやね、このフェレット。てっきり私は魔法少女モノとかで必ず出てくる謎の生物系の何かかと思ってたわ。
「まぁ、ヴィータとボン太くんに聞くよりそちらさんに聞いた方が早いわな。そこな女の子に……フェレットみたいな何か。説明してくれへん? 何があったか」
「あ、はいなの」
「僕は一体どんな生物として認識されてるの!?」
……あ、ボケれる。なんか嬉しい。
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「――というわけなんです」
フェレットみたいな何か、もといユーノくんが説明を終えた。凄いなぁ……ユーノくんが『――というわけ』使っても、全然手抜きしたと思えへん。細かく説明したと錯覚するぐらいや。……いや、実際してたんやけど。
「えーっと。纏めると、ユーノくんはジュエルSEEDっちゅー危ないもんを拾いに来た」
いやー、魔法ってそない危ない物もあるんやなぁ。願いを叶える宝石やったはずなのに、次元震やらなんやらを起こすんやって。本末転倒っちゅーやつかなぁ?
「正しくはジュエルシードですけど……はい、それで合ってます」
「ふむ。で、それを集めている最中に怪我をして、なのはちゃんに拾われ……あれ、なのはちゃんおらへん」
さっきまで近くにおったはずやのに……一体どこに「あ、ああ! それじゃ駄目なの!」ん?
「その配置じゃ宇宙怪獣が包囲を突破しちゃうの! ここはイデオンを突っ込ませて、イデのパワーを上げて……!」
「ふもっふふもふも!」
「『駄目だよ! せっかくイデオンガン禁止でここまでやってきたのに、今更その制限を破るなんて!』って言ってるぞ。あたしもボン太くんに賛成だ。ここは勇気の力でMAP兵器を使うしかねーだろ」
「駄目だよ! 変なこだわりは捨てないと駄目! 戦いは火力、それに尽きるの!」
「……なぁ。ここはダイゼンガーで――」
「あれはボス専用! 多数との戦いにはこれでもかってほど向いてないです! シグナムさんは黙っててください!」
「なっ……だ、ダイゼンガーのどこが悪いと言うんだぁ!」
「親分の思想を否定するわけではないけど、この場では役立たずなの! とにかくイデオン、イデオンなの!」
「アホ! ここはバンプレイオスのMAP兵器で……って、何しとんねん!」
思わずノリツッコミかましてもうたわ! なんで私とユーノくんが真面目な話してる最中にみんなでテレビの前に集まってスパロボやっとんねん!? しかもα!
「というかなのはちゃんはどうして自然に混ざってんの!?」
「……勇気は決して負けない、なの」
「答えになってへん!」
なんや、この子! 普通の子かと思ってたのにまさかのスパロボゲーマーかいな! 私の周りにはまともな人はいないんか!
「ふもっふ」
「『はやても同じようなものだよ』? 失礼やな! 私はキョウスケ一筋や!」
「私、はやてちゃんとは仲良く出来そうだよ。ねぇ、バスタービームって魔法で再現出来ると思う?」
「なのはちゃんは地球滅ぼす気なん!? せめてトロニウムバスターキャノンやろ!」
「それも大概だと思うの」
……ハッ、いつの間にかなのはちゃんのペースに引き込まれとった! 駄目や、駄目やで! この場で唯一の常識人である私がしっかりせんと! ……ユーノくん? ユーノくんはフェレットっぽい何かやから除外で。
「だから僕は人なんだけど……で、なのはに協力してもらってジュエルシードを集めてたんですが……そこのボン太くんって人(?)がジュエルシード破壊しちゃって……」
「何やってんの、ボン太くん!?」
散歩中に随分ととんでもないことしでかしたんやな!?
「ふ、ふもっふふもふも!」
「『ち、違うよ! 壊れたのはヴィータが踏んだせいだよ!』だって!? いやいや、待てよ! 確かに踏んで壊したのはあたしだけど、壊れる寸前までダメージを蓄積させたのはボン太くんだろ!」
「いや、どっちもどっちやって!」
不毛な争いを始めるヴィータとボン太くん。
もう駄目や、この二人(?)……自由にも程があるわ。
「あー……ユーノくん。罪滅ぼしって言っちゃなんやけど、ボン太くんとヴィータ、好きに使ってええよ」
「え、でもそんな……」
「大丈夫やって。この二人相当強いらしいからよっぽどのことがない限り「ストップ、はやてちゃん!」ん? シャマルどうしたん?」
何故かシャマルが興奮した様子で突然叫んできた。な、なんや? どないしたんや?
「どうしたシャマル? 突然大声を上げて」
「斬艦刀・雲曜の太刀……これは使えるかもしれんな」
不審に思ったザフィーラとシグ……は違った、ザフィーラがシャマルに尋ねる。ザフィーラの問いに対してシャマルは「気づいてないの!?」と言い、
「ジュエルシードは聞いた限りでは相当な魔力を秘めているロストロギアらしいじゃない? そして私たちの身体が小さい理由は闇の書のプログラムが破損しているから……だけど、それは魔力さえあれば直るものなの」
「……まさかシャマル。ジュエルシードの魔力を闇の書に渡せば、俺たちは……」
「ええ、元の姿に戻れるのよ!」
「我に断てぬモノな……元に戻れるだとぉ!?」
何やらテンションが上がり始めている、ヴィータを除いたヴォルケンリッターの三人。
良く分からない展開に私とユーノくんは置いてけぼり、ボン太くんとヴィータは喧嘩中、なのはちゃんはスパロボ中……なんで人の家のゲーム勝手にやってるん?
「……よし、ユーノとか言ったな。私たちヴォルケンリッターもジュエルシードを集めるのに協力しよう」
「え、あ、はい……って、ええ!? だ、駄目ですよ! あなたたちの魔力じゃとてもジュエルシードには――」
「ふっ、見くびるなよ……レヴァンティン!」
慌てて引き留めようとするユーノくんの制止も聞かず、シグナムは首に提げていたレヴァンティンを構え、
「我らヴォルケンリッター! 例え目の前にどのような敵が現れようとも……って、重い……」
「……私たちは負けないわ! 元の姿に戻るまでは!」
「大船に乗ったつもりでいてくれ」
「……はやてさん……?」
ユーノくんが不安そうな目で私を見てきた!
……。
「……頑張って!」
「ええええ!?」
多分やけど、この時の私の笑顔はとても輝いていたと思います。