Muv-Luv Alternative ~鋼鉄の孤狼~   作:北洋

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第14話 伊隅ヴァルキリーズ 2

【12月6日 3時36分 小田原西インターチェンジ跡】

 

 高速道路のアスファルトの上に戦術機の残骸が転がっている。

 不知火、陽炎、撃震……およそ車の交通が不可能と思われる程巨大な残骸たちが瓦礫の山を作り、それらの腰のアーマー部分には「烈士」の二文字が刻まれていた。

 

『状況終了。全員、生きているな』

「……ヴァルキリー0、問題ない」

 

 部下の生存を確認するみちるの声に、キョウスケを含む隊員たちは各々の言葉を返していた。

 横浜基地を出発した補給部隊と合流した「A-01」は、夕呼の指令に従い旧小田原西インターチェンジ跡に前線司令部を設営、防衛線を構築した。

 その防衛線が完成したのはおよそ2時間前。

 まるで完成の機を見計らったかのように、夕呼から「A-01」に通信が入ったのをキョウスケは思い出す。

 

 

【箱根に配置していた部隊が将軍殿下と接触したわ】

 

 夕呼の発言に「A-01」全員に衝撃が奔っていた。

 将軍がいる帝都城は第一帝都東京 ── 戦火の真っただ中にある。戦術機が跋扈する戦場を、誰にも気づかれずに生身で脱出できるものなのか? キョウスケの疑問はそこに集約されていた。

 加えて箱根は、キョウスケたちのいる小田原より帝都から離れている。

 発見された将軍は影武者なのでは? そう疑念を抱いたのはキョウスケだけでなかったようで、「A-01」の誰からともなく質問が上がっていたが、夕呼はそれを否定し一蹴した。

 夕呼が断言している。

 発見された将軍が本物でだという確証がある。言葉を交わさずとも「A-01」はそれを理解した。

 

【伊隅、悪いけどチェックアウトの時間よ。準備、できてるわよね?】

【願ってもないことです、副司令。── では、以降の我々の仕事は ──】

【連中を舞台に上げない事よ。舞台の幕を下ろすのは、主演じゃなく裏方だってことを思い知らせてあげないさい】

【はっ!】

 

 

 この会話の十数分後、「A-01」は帝都方面から箱根へと進撃するクーデター部隊との遭遇戦に突入した。

 結果は見ての通り ── 敗者は残骸となりアスファルトを舐めている。

 クーデター部隊は他機種混成の寄せ集めのような連中だったが、用意周到に待ち構えた「A-01」の前に叩き伏せられていた。「A-01」側の死傷者はゼロ、被弾などの損害もほぼゼロ。「A-01」全員に手配されている高性能の不知火に、武と夕呼が開発した新OSを組み込んだ結果が如実に現れていた。

 なにより、旧小田原西インターチェンジ跡に防衛線を構築できたことが、遭遇戦の勝利に大きく貢献していた。

 クーデター部隊が陸路を使って最短時間で箱根へ向かおうとするなら、「A-01」の待ち構える小田原西インターチェンジ跡を通過せざるを得ないからだ。

 仮に敵がこのルートを迂回しようとすれば、将軍を脱出させようとする国連部隊への増援は間に合わず、防衛線突破に策を練る時間を浪費しても同様の結果に終わる。

 増援の遮断。

 夕呼が小田原西インターチェンジ跡に「A-01」を配置した理由は正にそれだった。

 

(……博士は将軍が箱根に現れるのを知っていた……?)

 

 キョウスケは推測する。帝都、小田原西、箱根の位置関係は考えれば、この場所は防衛線構築に最適の場所ではあったが、虎の子の部隊を配置するには少々へんぴな地点でもある。

 勘や推測だけで「A-01」を配置するには決め手に欠ける。やはり夕呼は何らかの情報を得ていて「A-01」に命令を下したと考えるのが妥当だった。

 

(……だからと言って、俺がやることは変わらんが……)

 

 本作戦におけるキョウスケの配置は強襲前衛(ストライクバンガード)だった。

 近接戦闘を得意とするキョウスケだったが、スペック面で劣る撃震に乗っているため突撃前衛(ストームバンガード)からは外されていた。機動力の低さを補うため、87式突撃砲1丁を犠牲にして92式多目的追加装甲を装備している。また最少戦闘単位(エレメント)にばらけた際の戦力を均一化するため、相方はみちるの不知火・白銀になっていた。

 新OSの恩恵で、並のクーデター兵にキョウスケは引けを取っていない。ただし遭遇戦における撃墜数はゼロだったが……──

 

『── 敵の増援部隊を確認しました。高速道路に沿って、真っ直ぐこちらに向かっています! 数は12機!』

総員傾注(アテンション)!』

 

 ── 前線司令部(HQ)の涼宮 遥からの報告にみちるが声を張り上げた。

 

伊隅ヴァルキリーズ(われわれ)は人類を守護する剣の切っ先。いかなる任務であろうとも必ずそれを完遂する。いい機会だ、連中に香月副司令直属部隊の威信を示してやれ!』

『『『── 了解! ──』』』

「……了解」

 

 低いキョウスケの返事は、張りのある女の子たちの声に掻き消されていた。網膜にはやる気に満ちた彼女たちの表情が映し出されている。だがその新任の子たちが作った表情の下に、実戦と死への恐怖が隠れていることを見逃さない程度には、キョウスケは平静を保てていた。

 

(……戦闘に雑念は無用だ……そう、こんな時、キョウスケ・ナンブは迷ったりはしなかった……)

 

 彼女たちの戦う理由を聞いてなお、キョウスケの気力はまだ回復していなかったが、トリガーを引く覚悟だけは決めていた。

 ただ、自分が生き残るために。

 

 

 

   ●

 

 

 

 クーデター部隊の機影がレーダーに赤い光点として表示され、程なくして小田原西インターチェンジ跡に銃声が鳴り響き出す。

 

『全機散開! 各個に敵を撃破、1機も通すな!』

『『『 ── 了解! ──』』』

 

 みちるの命令を皮切りに「A-01」の不知火が次々と飛び出していった。事前に決められた相方と共に、防衛線を突破させまいとクーデター部隊に砲撃を開始する。

 クーデター部隊は元を辿れば帝都を守護する精鋭部隊のためか、新OSに換装した不知火に圧倒されず、中々にしぶとさを見せている。

 各機が応戦するさなか、キョウスケの撃震も動き回っていた。

 

「…………」

 

 網膜に投影される敵の位置情報、動向や自分の勘を頼りに、無言のまま引き金を引き続ける。87式突撃砲から徹甲弾が矢のように放たれるが、それは相手も同様で、機動性の劣る撃震では全てを回避することは難しかった。

 そう長くない間隔でキョウスケ機に被弾の衝撃が奔る。ただし銃弾は全て92式多目的追加装甲で受けているため、未だにに直撃はない。しかしクーデター部隊の不知火との単純な速さ比べで、キョウスケの撃震は完全にスペック負けしていた。

 跳躍、射撃、回避。

 円環の如くそれらが何度も繰り返される。

 前衛を張っているキョウスケの撃震。第三世代の不知火で、第一世代の撃震の撃破に手間取っている事実にしびれを切らしたのか、キョウスケ機を狙っていた不知火の1機が突出してきた。

 接近しての射撃で、キョウスケを早々に退場させるつもりらしい。

 

「…………」

 

 敵の行動を確認してコンマ数秒、キョスウケは回避行動を取らず、あえて前面に飛び出していた。

 フットペダルが跳躍ユニットに火を噴かせる。両機が接近しているため距離は一気に縮まる。クーデター部隊の不知火が反射的に発射した36mm弾を、キョウスケは92式多目的追加装甲でいなし ──

 

「……取ったぞ」

 

 ── 左腕で保持していた追加装甲を不知火に叩きつけた。

 追加装甲表面の六角形の突起が不知火の胴体部 ── 管制ユニット周辺に接触した刹那、不知火に向かって起爆、弾き飛ばす。不知火は仰向けに倒れて沈黙した。

 追加装甲に搭載された指向性爆薬が、打突で起爆し敵不知火の管制ユニットを潰していた。操縦していた衛士は即死だろう。

 

(……もう、後戻りはできんな……)

 

 残りの不知火の砲撃を追加装甲で受け流しながら、キョウスケはそんな事を考えてしまう。

 戦争は命の奪い合いだ。生き残るために引き金を引くことを咎める者は誰もいない。けれどもキョウスケは、異世界の人間を手に掛けてしまったことに、後ろめたさを覚えずにはいられなかった。

 生き残るためだ。仕方がない。そう割り切るのは簡単だ。

 ここは戦場で、自分は戦場でこそ活きる兵士だ。自分の戦う目的のために引き金を引き、奪った命の重みを背負いながら生きていく ── それが兵士だ。今先ほどキョウスケが屠った相手にも、間違いなく戦う理由は存在している筈だった。

 敵を撃つ覚悟はある。撃たれる覚悟もある。しかしキョウスケの戦う理由は、今、この期に及んでもあやふやなままだった。そんな自分が敵を殺した……その事実が妙に胸に引っかかる。

 

(……戦い方は身体に染みついている……)

 

 頭にシコリが残ったままでも、キョウスケの体は動いてくれた。敵の不知火の攻撃を躱し、時に追加装甲で受け、撃震を動かしていく。

 「A-01」の不知火の中に混じっているキョウスケの撃震 ── 他機よりも明らかにスペックの劣るため、敵にとっても絶好の的なのか、複数の機体が狙いを定めて襲ってきた。

 飛んで火に入る夏の虫だ、とキョウスケは敵の攻撃を先読みして回避 ──

 

 ── 直後、キョウスケ機を狙っていた不知火がほぼ同時に爆散した。

 

 上がる火の手に何の感慨もなく、キョスウケは突撃砲のカードリッジを交換する。

 

『いいぞ南部、その調子で敵機を引き付けてくれ』

「……ヴァルキリー0、了解」

 

 キョウスケの最少戦闘単位の相方 ── みちるの声に、キョウスケは撃震に前進を再開させた。

 キョウスケ機の背後には、月の光に照らされて滞空する不知火・白銀の姿があった。

 

 

 

      ●

 

 

 

 不知火・白銀の中で、伊隅 みちるは衝撃を受けていた。

 

 みちるは不知火・白銀の常軌を逸した性能に対して、自身の衛士として常識が根底から覆されるのを身を持って体感している。

 改修された試作01式電磁投射砲の大口径弾の連射で、クーデター部隊の不知火を複数同時に撃破した ── 軽量化され取り回しやすくなり、大口径弾が連射可能となり、小口径弾は装弾数を上げ戦闘機動中も連射できるように36mm弾に変更されているが、それは些細な事でしかない。

 みちるは不知火・白銀に搭載された「テスラ・ドライブ」に感銘を受けていた。

 

(とにかく、機体が軽い。重量が軽いという問題ではない……テスラ・ドライブの重力制御とはこれ程のものなのか)

 

 不知火・白銀は改修前より軽量化されたが数字以上に軽く感じる。慣性制御機能の影響か、機動も従来の戦術機では不可能に思える動きも容易にこなし、まるで機体に羽は生えたような感覚を覚えていた。

 新OSの恩恵で、追従性も従来機の比ではない。

 もはや不知火・白銀は第三世代戦術機を超えた。第四世代戦術機と呼んでも遜色のない代物に仕上がっていると、みちるには思えた。

 

(流石は香月副司令謹製、と言ったところか)

 

 微笑を受けべながら、みちるは相方の響介機の動向を網膜に投影した。

 クーデター部隊の不知火が2機、響介の撃震に向かっている。その光景にみちるの手が動き、不知火・白銀が音もなく急加速した。

 みちると響介が取っている戦法は単純明快なモノだ。防御に徹した響介機に向かってくる敵機を、不知火・白銀が神速の一撃で墜とす ── いわゆる囮戦法というモノだった。

 

「いいぞ南部、下がれ」

『……ヴァルキリー0、了解』

 

 バックステップで攻撃を回避しつつ後退する響介機に敵機が喰いついてくる。

 不知火・白銀にステルス機能はない。敵機もこちらでレーダーで捕捉しているだろうが、響介の撃震と不知火・白銀の間は距離が離れており、すぐに支援攻撃はないと踏んでか追撃を止めない。

 不知火・白銀を上空に浮遊させたまま、みちるは網膜上で敵機をロックオン ── 迷うことなくトリガーを引いた。

 電磁投射砲内で加速された大口径弾が銃口を飛び出し、直後、不知火の胸部に穴をあけて爆散させた。

 

(では、こちらも試すとしよう)

 

 試作01式電磁投射砲には銃口が2門ある。

 1つは先ほど発射した大口径弾を撃つ銃口。もう1つは小口径弾を発射する銃口だったが、機動力重視の不知火・白銀が足を止めて連射するのはナンセンスと評した夕呼が、多くBETAに十分通用する36mm弾用の砲塔として改修していた。

 36mm弾なら戦闘機動中も機動力を落とさず銃弾をばら撒ける。

 みちるは電磁投射砲の弾種を変更し、もう1機の不知火に向けて不知火・白銀を降下させた。地上から不知火が迎撃してくるが、不知火・白銀にはかすりもしない。

 銃身の長い電磁投射砲で加速された36mm弾は、突撃砲よりも有効射程が長く、不知火・白銀が着地するより前に敵機は蜂の巣になって爆散していた。

 

「……ふぅ」

 

 あっという間に5体の敵機を撃破したみちるは一息をついた。

 不知火・白銀は速く、レスポンスも良い。その反面高い操縦技術と集中力を要求される。「テスラ・ドライブ」搭載機への搭乗が初経験のみちるにとって、不知火・白銀を自在に動かし続けるのは相当の体力を消耗する作業と言えた。

 

(早く慣れないと……)

 

 みちるは気合を入れ直すと、響介に通信を繋いだ。

 

「よし南部、次だ」

『……了解』

 

 響介の撃震が再び前進。不知火・白銀は友軍機を狙撃で援護しながら戦域を飛び回った ── 戦闘開始からおよそ3分後、動いているクーデター部隊は誰1人としていなくなるのだった。

 

 

      ●

 

 

 

【3時54分 厚木基地 作戦司令室】

 

「ぜ、全滅!? 送り込んだのは12機の不知火だぞ!! それも3分も持たずにだと!?」

 

 クーデター部隊の将校が集まる作戦司令室で、恰幅の良い髭の男が喚き散らしていた。男が憤慨しているのは、旧小田原西インターチェンジ跡に送り込んだ増援部隊が、敵部隊との接触してすぐに音信不通になったことに関してである。

 帝都を脱出した将軍が箱根に現れたとの一報を受け、クーデター部隊は戦力の大移動を画策していた。

 目的は将軍の身柄の確保。将軍の恩赦を受けなければ反逆者として処罰されるクーデター部隊にとっては、正に今後の展開を左右する重要な作戦と言える。

 しかし ──

 

「半数が白い不知火もどきにやられたらしいぞ!」

「ええぃ、国連軍部隊の戦術機は化け物か!?」

 

 ── 将軍の所在地までの陸路を確保するために送り込んだ先遣隊が、ことごとく旧小田原西インターチェンジ跡で消息を絶つことに、クーデター部隊将校たちは焦りの色を隠し切れなくなってきている。

 無様にすら見える取り見出しようを、駒木 咲代子は冷静に観察していた。

 

(……まるで見透かしたかの如く、要所である小田原に防衛線が敷かれている。将軍が箱根に現れることを知っていたかのように、だ。相手の指揮官は相当の切れ者、そして置かれているのは虎の子の精鋭部隊……といった所か)

 

 眼前の風景と切り離し、咲代子は思考する。

 

(陸路で殿下をお迎えに上がるには小田原は避けては通れない。いや、他の経路も無くは無いが、山岳地帯を越えたりと小田原経由に比べ時間の浪費が大きすぎる。お迎えが遅くなればなるほど、殿下は敵の手により我々の手が届かぬ遠くへと連れ去られてしまわれる……)

 

 迅速こそ、この作戦で要だと咲代子は理解していた。

 にも関わらず、クーデター部隊将校たちは話し合いは纏まりを欠いていた。問題は現場で起きている。司令室で怒鳴り合っているだけでは何も解決しない。

 沙霧 尚哉は熟考しているのか、目を閉じ腕を組んで椅子に腰かけていた。沙霧のことだ、この事態を解消する妙案をもうすぐ導き出すことに違いない。

 

(……ならば、自分にできることは1つだけだ)

 

 咲代子は意を決して口を開いた。

 

「沙霧大尉、ここは私が出ましょう。精鋭部隊をお貸しいただければ、小田原に展開している国連部隊を撃滅してみせます」

 

 沙霧は目を開き、咲代子を見つめてきた。

 真っ直ぐで強い眼光。咲代子は強く凛々しい沙霧の顔つきが好きだった。彼に上官以上の感情を抱いている自分に薄々気づきながらも、咲代子は自分にできる最善を進言する。

 

「それに小田原で戦闘を行えば、連中の視線は厚木より逸らされます。まもなく、厚木に配備されていた航空機発進の準備も整う……仮に私が敗れ、全滅したとしても、少なくとも私が戦っている間に連中の注意が厚木に向くことはないでしょう。

小田原に駐屯している国連部隊は脅威ですが、戦闘を放棄してまで厚木まで進行することはできない。その間に大尉は空挺作戦(エアボーン)を実行に移す事ができると愚行します」

「……駒木中尉」

「沙霧大尉、ご指示を。私の命、存分にお使いください」

 

 騒がしかった司令室を一瞬だけ静けさが支配した。

 その沈黙を破るのは、クーデター首謀者である沙霧 尚哉、ただ1人。

 

「すまんな。駒木中尉、やってくれるか?」

「はっ!」

「今は道を別にするが、殿下のご奉迎を終えた後、私と貴様の道は再び1つに交わろう。その時まで、死ぬなよ」

「お言葉ですが大尉、この駒木 咲代子、犬死するつもりなど毛頭ございません。小田原に居座る国連部隊を蹴散らし、全滅の二文字の一報を入れてみせましょう!」

「ああ、頼んだぞ」

 

 沙霧の声に咲代子は敬礼を返し、急ぎ司令室を後にした。

 ハンガーに向かって廊下を掛ける。沙霧の言葉に喜びを感じていたが、それを噛みしめる間も今は惜しい。

 自分が小田原に向かっている間に、沙霧は空挺作戦にて将軍を迎えに行くだろう。

 空挺作戦 ── 佐渡賀島にハイヴがある日本で、航空機を飛ばす事は光線級BETAに標的として認識されることを意味している。光線級BETAの射程は半径380km。これは障害物となる山岳地帯や水平線から航空機が姿を見せただけで、容易に撃墜されることを意味していた。

 一般的に航空機や爆撃機の出番は、戦術機で光線級BETAを狩りつくしてからとなる。すべての衛士に教育過程で叩き込まれる常識だった。

 逆に言えば、航空機で将軍を迎えに行くという手段は、相手の裏をかける妙手となりうる。

 しかし陸路を確保し、そこから将軍を迎えに行く方法が、最も堅実であることに疑いの余地はなかった。

 

(やるわよ咲代子、あの人のためにも私は絶対に負けられない……!)

 

 沙霧への思いを胸にしまったまま、咲代子は精鋭を連れて旧小田原西インターチェンジ跡へと向かうのだった ──……

 

 


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