Muv-Luv Alternative ~鋼鉄の孤狼~   作:北洋

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《閲覧にあたっての注意事項》
第5部は本作の中で最も「残酷な描写」が強くなります。本作に「残酷な描写」タグを付けたのはこの章のためです。苦手な方はご注意ください。
また作者のオリジナル要素が最も強くなる章でもあり、マブラヴの原作キャラは「第5部」の間は全く登場しませんのでご了承ください(再登場は6部からの予定)。



第5部 許されざる者 後編 ~Beowulf~
第5部プロローグ 涙


 

 

 

 

 

 

 

 

 気が遠くなるほどの昔、宇宙の中心で ──

 

 

 

 

 

 

 

「助けてくれ!」

 

 ── 悲鳴によってソレは目覚めた。

 

「殺さないでッ!!」「嫌だ、嫌だあぁぁっ!!」「うああぁぁぁっぁ!!」「やめろぉぉぉっ!!」「死にたくないよぉ!!」「殺せぇッ、殺せ!」「オッノーーーーレッ!!」「くそったれぇーー!!」「アンタのせいで! アンタのせいで!!」「兄ぃぃいさあぁぁぁぁんっ!!」「死ね! 死んでしまえ!」「ここは地獄だ……!」「異民族なぞ殺し尽くせぇ!!」「将軍さまぁ! 将軍サマァ!!」「狂ってやがるッ、どいつもこいつも ──!」「いやだぁッ、ボクにはできない!」「やれ! 俺たちの悲劇をこれ以上繰り返さいためにも!!」「何故ッ、何故こんなことを……!」「こ、こっちに来るな!」「撃たないで!!」「ぎゃああぁぁっ!!」「母さんッ、かあぁさんッ! お母さん助けて ────

 

 

 ── 無数の並行世界からの悲鳴によって ──

 

「うおおおぉおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ ─────── 」

 

 ── 悲鳴によって……──

 

 

 

 

 

 

 

    オ レ ハ   イ ラ ナ イ

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──…… ソレは涙を流した。

 

 いつなのか、どこなのか、それは誰なのかもわからない。

 だがいつでも、無数にあるどの宇宙でも、同じだと、ソレは感じていた。

 世界には悲劇が多すぎる。

 悲劇のない世界はないものか。ソレは模索しながら全ての次元を見据えてきた。

 悲劇のない世界。

 悲劇のない世界。

 悲劇のない世界。

 悲劇のない世界。

 悲劇のない世界。

 過去、未来と……何度見たことか……結局、そんなものはない。

 知っていた……ソレには理解できていた。だからソレは何もしない、ただ傍観し ──── 涙を流すだけだった。

 ソレは泣く。しかし泣いた所で、物事は何も解決はしない…… ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……── だが、ソレから流れ落ちた涙は違っていた。

 

 

 

 

 

── 世界には悲劇が多すぎる

 

 

 ソレが落とした2粒の涙が声を発した。

 落ちた涙の1つが ── 涙は形を変えていく。

 涙は全ての光を吸い込んでしまいそうな……どす黒い光体に変貌し、それから声は聞こえていた。男性とも女性ともつかない中性的な声だった。

 

 

 

 

 

 

── 破壊し……喰い殺す……

 

 

 

 

 

 涙から生まれた、その黒い光体がぼそりと呟いた。

 

 

── 悲劇を生み出す不完全なるものを、全て……全ては、静寂なる世界のため……涙を流さずに済むために……

 

 

 そう言い残すと、黒い光体は消えてしまった。

 行先は分からない。

 きっと何処かの次元の宇宙に根を下ろすのだろう。

 

 

 その様子を、ソレはただ見ていた……自分が手を下して何が変わるわけでもない。

 だから……好きにすればいい。

 

 

 ソレは ────── 太極はただ世界を見続けるだけ……

 

 

 時代も定かでない、気が遠くなるほど昔の出来事だった ──……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【???】

 

 ……── 夢を見ていた。

 

 夢を見ている俺の名前は……キョウスケ・ナンブ。

 

 そう、俺の名前はキョウスケ・ナンブ ──── 確かにキョウスケ・ナンブなんだが、同時に、俺はキョウスケ・ナンブではない。

 俺はキョウスケ・ナンブ本人であり本人ではない ── キョウスケ・ナンブの因子集合体という特殊な存在だ。ありとあらゆる並行世界から集められた「キョウスケ・ナンブ」の可能性の結晶体……とでも言えばいいのだろうか?

 

 そんな俺の中にある無数の因子の中でも、とりわけ大きく影響を与え、今の俺を形作っている強い因子を大因子(ファクター)と呼ぶ。

 

 俺は3つの大因子が骨組みとなり、そこに「キョウスケ・ナンブ」の小さな因子が集合してできあがった……と、香月 夕呼は教えてくれた。

 戦闘技術(・・・・)の元になっている大因子。

 身体(・・)を作る大因子。

 精神や記憶(・・・・・)を構成する大因子。

 この3つが俺に強く影響を与え、また強さや不可思議の現象を引き起こす原因になっているに違いなかった。

 

 武のいる世界に俺が現れ、これまでに起きた常識外の様々な出来事。

 

 それはアインストの力 ── 並行世界の自分の体すら変化させていた力……身体を構成する大因子の力だと俺は思い込んでいたが…………違う。

 違うものだと、俺は思った(・・・)

 理由はない。ただ、そう感じてしまったんだ。

 

 だから俺は……いや俺たち ── 香月 夕呼やG・J、ジーニアス・ブロウニングと名乗ったG・Bは知らなければならなかった。

 俺の中に潜んでいるナニカの正体を。

 

 

 俺はこれから垣間見ることになるだろう……俺の大因子の内の1つが経験したはずの出来事を、俺はこれから追体験することになる ──……

 

 

 

 

 

 

 

 

 ── それは語られなかった他なる結末

 

           とてもおおきくて

 

            とてもくるっていて

 

              とてもざんこくな

 

               終わってしまった、愛と悲しみの物語 ──

 

 

 

 

 

 

 

 Muv-Luv Alternative~鋼鉄の孤狼~

       第5部 許されざる者 後編 ~Beowulf~

 

 

 

 

 

                          to be continued ──……

 

 

 




本編(第29話)は翌日に更新予定です。

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