HUNTER×HUNTER・IF   作:第7サーバー

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グリードアイランド②

大切な暦が一部欠けて

残された月達は盛大に葬うだろう

けれど星の遣いを怒らせてはいけない

反転して蝕されてしまうから

 

菊が葉もろとも涸れ落ちて

血塗られた緋の眼の地に臥す傍らで

選択は星の遣いに託される

逆らうのもいいだろう手足を失い高みへ行ける

 

幕間劇に興じよう

新たに仲間を探すもいいだろう

向かうなら東がいい

きっと待ち人に会えるから

 

狩人狩りを始めよう

考え方は悪くない

愛でるべき宝に届かずも

季節違いの彼岸桜が花開く

 

「さてと、欲しい情報は大体手に入れた」

「答えが出たのか?」

「うん。間違いないよ。このゲーム“G・I(グリードアイランド)は、仮想世界ではなく、現実世界のどこかで行われている……!!!」

「どーゆーこと?」

「全ては“念”能力で説明出来るんだ。街の人々は“ゲームマスター”によって操作、あるいは具現化された人形。島のモノも重要なアイテムは具現化されたモノだろう」

 

「どうしてわかる?」

 

「コルトピは相手の“念”能力まではコピー出来ない。シズクの掃除機は例え無生物でも“念能力で具現化された物”は吸えない」

「確かにボクは“カードからアイテムに変える能力”まではコピー出来ない」

「私の場合、その制約で敵の罠とか見破ったりするから」

「確信を持ち始めたのは団長達がゲームに飛んだとき。みんなの肉体まで消えただろ? もしも本当にゲームの中へプレイヤーが入っていくとすると、考えられるのは魂が肉体から離れてゲーム機に入るってことで、体はその場に残るはず」

「……仮想世界に体を持ち込む必要はなく、条件的に肉体と魂の分離のような生命に関わるものよりは、プレイヤーを強制ワープさせたと考えた方がしっくりくるということか」

 

「そう! オレ達は現実世界にいる!!! ――これだけ大がかりな舞台。地図が本当ならこの島全体でコトリタナ共和国くらいはある。“ゲームマスター”は1人じゃない……!」

 

「確かに、その条件でこのゲームを成立させるためには、強力な“念”能力者が複数人必要だな」

「なるほどねー……で、だからどう……なの?」

「ここからが本番。他のプレイヤーから(強制的に)聞いたこのゲームのクリア報酬覚えてるか?」

「何だっけ?」

「忘れる? フツーそういうこと。コンプリートした指定ポケットのアイテムカードから3つ選んで、現実世界に持ち帰り、使用することが出来る」

「そう。それは島の外でもアイテムが有効に使えることを示している。このゲームが現実のどこかで行われているなら、わざわざ時間をかけてクリアしなくても、簡単に持ち帰れるかもしれない。3つといわずお宝全部」

「なるほど」

「やる価値あるね」

「100種類のアイテムのうち、まだオレ達は数種類しか知らない。なるべく早く全て把握したいトコだな。他にどんな便利で貴重なアイテムがあるか……」

「……よし。当面の目標は変わらず、“呪文カード”、“神眼(ゴッドアイ)”の入手。あとは……フィンクス達との合流だな」

 

 

「ちっ……こいつも安い方の地図か」

「でも“呪文カード”沢山、持てたね。“衝突(コリジョン)”便利よ。1人でしか使えないけど」

「んじゃ、いったん別行動にするか。1週間後に、マサドラ集合ってことで」

「OK」

「どっちが多くプレイヤー殺すか競争な」

「いいけど。カード奪ってから殺るよ」

 

 

「……あのさ、マチ」

「何?」

「気になるならあなたも行けば?」

「べ、別に気になってなんか……!」

「そう? その割にはここ数日何度もゲーム機の周りで見かけるけど」

「そんなのみんながいつ帰ってくるかわからないからってだけよ」

「別に誰かがいないのなんていつものことじゃない。ヨークシンで全員集まったのも3年2ヵ月ぶりよ」

「……わかってるわよ。ただ、団長からの命令もないから暇してるだけ」

「だから、暇なら行けばいいじゃない」

「そこまで暇じゃないわよ!」

 

「「…………」」

 

「何かごめん……」

「ううん。別にかまわないわ」

 

 

「――ハッ! 誰かが俺のことを噂している気がする!」

「気のせい」

「そ、そろそろ機嫌を直してくれよ。実際使ってないだろ」

「……そうね」

「あ! そうだ! それよりも重要なことがある!」

「何よ」

「“呪文カード”の袋を服の中に張り付けておくんだ! 俺が見るのはいいが他の奴に見られるのは――って何故か蜂に囲まれてる!!?」

「忠告ありがとう……そんなことばっかり考えてるから、対処方法もすぐに思いつくのね」

「ご、誤解だ! 俺は紳士――」

「どこがよ!」

 

 

~~中略~~

 

 

「修業はこの岩石地帯でやるわ」

「ま、妥当だな。要はここに出るモンスターを1人で倒せるようになればいいんだろ?」

「それは最低限の目標ね。あたしはウイングみたく甘くないわよ。覚悟はある?」

「はい!」

「ええ」

「そっちは?」

「大丈夫」

「ん、じゃ、早速はじめるか――!」

「?」

「座って。本出して適当に雑談してるふりを。あたしの背後に敵がいる」

「!」

「気配を探ろうとしないで! 敵に緊張が伝わる。何か話してて」

 

「……ねェ、何で気付いたの?」

 

「殺気。敵はあたし達、殺す気だわよ。わずかだけど漏れた殺気、女子供ばかりで油断したんだわね。そのことからも敵が結構、場数を踏んでることがわかる」

「え、強くないぞ?」

「……だから、あんたは自分の感覚で考えすぎなのよ! 子供の“念”能力者は実は相当いるけど、戦闘に向く能力者で、しかも手練れの子供なんてほんのわずか。ベテランなら誰でも経験上それを知っているのよ」

「知ってたって強くないことに変わりないだろ」

「敵は経験豊富さゆえにあたし達を見て油断した! でも、すぐに自分を諌めて気配を消した! 僅かな殺気とそれを消した早さ。総合して言えば“相手の気配”から敵の手強さを感じとることが出来るんだわさ」

「? 気配消えてないぞ」

「だー! あんた一々うるさい! あんた的にはそうでも、このコ達は敵の位置を感じられてないんだわさ!」

「そうなのか……」

 

「……どうすればいい?」

 

「あんた達の意見は?」

「このまま5人で行動する」

「“呪文カード”で街に飛ぶか、スターに追い払ってもらう」

「同じく」

「……それじゃ、修行になんないでしょーが!」

「え、オレ達に何とかしろってこと?」

「それはムリ。あんた達じゃまだこの敵には勝てないわね」

「じゃ、どうすんだよ」

「まずはあたしが接触する。それからどうするかは敵次第だけど、あたしの戦い方を見てなさい。学べることはあるハズよ」

 

「くくくくくく。切ってやったぜお前の髪……オレはな。愛用のハサミで切った人間の髪の毛を、食う! ことで! 本人さえ知り得ない肉体の情報を知ることが出来る。肉質……病気の有無、遺伝的資質、強さ、お前の身体を全て把握し、その上で存分に……」

 

「この変態がーーーッッッ!!!」

「げぼぅ!!?」

「てめェ、例え相手がスゲー年上でもそれはダメだろが! 一応俺にも教えろや、ゴラァ!!!」

「…………あんた」

「うおっ、強い」

「あたしはあんた達に戦いを見てろって言ったハズなんだけど……?」

「いや、だって、ほら……髪は女の命という言葉もあるらしいから」

「その気持ちは評価しないでもない。だが、相手が望んでもいないことをやっても好意を得られないことを覚えておきな」

「フ、バカな! 俺は“ヒーロー”だ! 俺はこういう感情に突き動かされる場面において、相手に嫌われるかもしれないからで行動をしなかったことはない!」

「……思った以上にバカみたいだわね。あんた」

 

「ゲッホ、ガハッ……」

「起きなさい。カード、全部出して。――チャンスをあげる」

「……」

「2週間! そこの3人の攻撃をかわすこと。それが出来たら見逃してやる。もしも、決定打を浴びて悶絶したり起ち上がれなくなったら、やっぱりあんたを殺す」

「!」

「攻撃を……受けなきゃいいんだな?」

「ええ」

「奴等がどうなろうと……攻撃さえ受けなきゃいいわけだ?」

「その通りだわね。但しルールが一つだけ。岩壁にかこまれたこの空間。ここから出ないこと。破れば失格。その場合も殺す」

 

「ポンズの髪を食っても殺す。絶対に完全に完膚なきまでに殺す」

 

「……ま、それも一応覚えておきなさい。多分、本気だから」

「あ、ああ……」

「オレ達は?」

「あんた達もここから出てはダメ。ここから出たり2週間以内にあいつを倒せなければ、あんた達には罰を与える」

 

「ただし、ポンズのトイレやシャワータイムは許可する」

 

「……許可する。それ以外に一つだけあんた達にも条件を付ける。同時に攻撃を仕掛けていいのは2人まで。見た感じ3人同時の攻撃は決まる可能性が高いから」

「ポンズの“発”も使用禁止。“女王蜂の毒(ポイズンパフューム)”を使えば多分あっさりと条件を達成出来るから」

「そうなの? ……ならば使用禁止。初めてまともなことを言ったわね」

「俺はいつでもまともだ!」

 

「(“女王蜂の毒(ポイズンパフューム)”って何? 名前で何となく想像つくけど)」

「(その通りだと思うわよ。私の武器は元々蜂と薬品だからね)」

「(そうなんだ。何でスターはそれ知ってるの?)」

「(実験台。まあ、あいつは治癒力とか免疫力も強化してたのか、オーラでバリア的に防いだのかで効かなかったけど)」

「(へー)」

 

「あんた“ビノールト”だわね」

「……ああ」

「賞金首ハンター、ビノールト。しかし、奴自身も賞金首! 好物は人の肉。特に20才の女の肉がいいんだっけ?」

「22才だ」

「てめェ、やっぱり生かしては――」

「“左遷(レルゲイト)”、使用(オン)! スターを攻撃!」

「ちょっ、おまっ」

「あんたがいるとややこしいから、2週間ほど帰って来ないでいいわさ。適当に冒険でもしてな」

「バカなーーー!!?」

 

「「「…………」」」

 

「飛んで行っちゃったねスター……」

「まあ、あいつも味方の動きには警戒してなかったというか、あるいはボケとして状況を受け入れたのかもな」

「“呪文カード”ですぐ戻って来るんじゃない?」

「あれで、スターも状況は理解してるハズさ。自分の存在があんた達の成長を阻害してるってことをね」

 

「――ビスケ! てめェ、何しやがる! “同行(アカンパニー)”を持っていたからいいようなものを……」

 

「「「「…………」」」」

 

「で、誰が状況を理解してるって……?」

 

「――“左遷(レルゲイト)”、使用(オン)! スターを攻撃!!!」

 

「ぬわっ、ビスケー!!!」

 

「おー、逃げてる。超逃げてるぜ、あいつ。“呪文カード”の攻撃ってあんなに逃げられるもんなんだな」

「あ、ビスケに邪魔された」

「貴様ーーー!!!」

 

「いいから、2週間は帰ってくるんじゃないわさ! “呪文カード”がもったいないでしょーが!」

「ならば、ポンズ! 生きて帰ったら結婚――」

 

「……あいつもボケに全力捧げてるなー。わざわざ変なフラグ残していったぜ」

「ポンズ、スターが帰って来たら結婚するの?」

「するわけないじゃない……」

 

「さ。邪魔者もいなくなったことだし、始めるわよ。――始め!!!」

 

 

~~中略~~

 

 

「どこだよ、ここ……。地図――って、地図はゴンが持ってんじゃねェか……ん?」

「お?」

 

「「…………」」

 

「――何だ、お前もプレイしてたのかよ」

「ああ。そーゆーお前は、フィンクスだっけか?」

「そうだ。よく覚えてたな。女連中以外興味ねェのかと思ってたぜ」

「興味はないが、それくらいは覚える」

「そうか」

「そうだ」

 

「「…………」」

 

「よお。ちょっと勝負しねェか?」

「勝負?」

「これ最後の“衝突(コリジョン)”だったんだよ。無駄になるのはごめんだし、お前と戦りあってみたいってのもある」

「俺は別に戦いたくない」

「そう言うなよ。他の奴等と違って命は取らないでやる。お前を団員にしようなんて声もあることだしな。ただ、俺が勝ったらお前のカードは全部もらう」

「……なら、俺が勝ったら、マチ達のことを教えてもらうぜ」

「あ?」

「ウボォーギンって奴とその内容でケンカをする約束をしてた。でも、あいつは死んだんだろう? だから、お前が代わりを務めろ」

「……おいおい。その名前を出されたら手加減はしてやれねェぜ?」

「問題ない。あいつにも言ったことだが、素敵な女性が関係してるときの俺は超強い!」

「上等!」

 

「くっ……てめェ、バケモンか。いったい何回腕を回せば、オレの“廻天(リッパー・サイクトロン)”が効きやがるんだ」

「仕方ないだろ。お前の攻撃力が上がる度に、俺のオーラも増加するんだから」

「千日手ってヤツかよ……! あーくそっ! なら、手数で圧倒してやるよ……! いくら反射で防御出来るっつっても、限界があんだろ!」

「知らねェよ。限界が来たことはない!」

「そうかよ!!!」

 

「おい……もう3日だぜ。てめェ、いい加減倒れろよ」

「やだね。お前こそ降参してマチ達のことを教えろ」

 

「「…………」」

 

「……チッ。やめだやめ! これ以上戦ったら、切り札を使わざるを得ねェ! そうしたら殺しちまうからな!」

「あ? お前が死ぬの間違いだろ」

 

「「…………」」

 

「まあ、とにかくだ。オレはフェイタンとも勝負してんだ。てめェとばかり戦ってられねェ」

「敗けを認めるんならマチ達のことを教えろよ」

「オレは敗けてねェだろ。てめェもオレを倒せなかったんだから、これは引き分けだ」

「ふざけんな。お前の都合で止めたんだから、俺の勝ちだ」

 

「「…………」」

 

「ふぅー、なら一つだけ教えてやる。マチ達は――つーか、オレ達全員、流星街の出身だ」

「流星街?」

「知らねェか? 世界のゴミ捨て場だ。オレ達の本拠地(ホーム)もそこにある」

「つまり、そこに行けばマチ達に会えると!」

「いや、どいつもこいつも世界中飛び回ってるからな。そんな頻繁に帰るわけでもないし、行けば会えるってもんでもねェ」

「何だ……使えない情報だな」

「情報は情報だろ。んじゃ、オレは行くぜ。団長達もここに来てるから会ったらよろしくな」

「マチ達は!」

「ん、ああ、シズクなら来てるぜ」

「それを先に言え! そっちの方が重要だろーが! そうとわかってれば、お前と3日も戦りあってねェよ!」

 

「知るかバカ。じゃあな。“再来(リターン)”、マサドラ!」

 

「あ、待て! “同行(アカンパニー)”で俺をシズクの下へ――くそっ! 勝手な奴め! ……とりあえず、俺もアントキバかマサドラに……いや、“漂流(ドリフト)”でどっか別の街に行ってみるか……ん?」

 

「おや」

 

「……おいおい」

「お前もここに来てたとは奇遇ね。ちょっと勝負するか。あの時の決着をつけるよ」

「今度はお前かよ……!」

「?」

 

 

~~中略~~

 

 

「きゃん! メガネメガネ……」

「これだろ? 大丈夫か」

「あ、ありがとうございます……」

 

「あイタ! ちょっとドコ見て歩いてんのよ!」

「ああ、ゴメン。怪我は――じゃなくて、そっちこそ気をつけろよ! お前の方からぶつかって来たんだろ!」

「何ですってーっ!」

 

「いーじゃねーかよ。つきあえよ」

「放して! 大声出すわよ!」

「へっへっへっへっ」

「出すなら出せよ。誰も助けちゃくれないぜ」

「この街にはオレ達、ダンダ団に逆らう奴なんていねーのさ!」

「“ヒーロー”参上!!!」

 

「――何て、素晴らしい街だ。恋愛都市アイアイ!」

 

仮初の愛に惑わされ

貴方は深い霧の中を突き進む

抜け出ることは叶わない

真実は貴方の背中にあるのだから

 

「じゃ、団長、“神眼(ゴッドアイ)”で全部の指定ポケットカードの内容を確認出来たことだし、そろそろ戻ろうよ」

「……そうだな。いや。オレはここに残ろう。1人くらいは残っていた方がいいだろう。カードも預かっておく」

「あ、そっか。ゲームを出るとセーブデータのない人間のは消えるんだっけ」

「セーブ出来てもフリーポケットのは消えるらしいけどね。それにゲームに10日以内に戻って来ないと指定ポケットのカードも消える」

「でも、どうせ全部奪うんだろ?」

「それはそうだが……これほどのゲームを作り上げた連中だ。何かしら対策を取っている可能性もある」

「なるほど……。確かに保険はあった方がいいかも知れませんね」

「ああ。それから、ノブナガが望むなら、ここに連れてこい」

 

「ノブナガ?」

 

「“No.31”、“死者への往復葉書”を使う。すでにシズクの本で“複製(クローン)”を使ったから問題ない」

「あ……団長の占い、最後の一つはこれのことか……」

「だろうな。だからこその保険でもある。他の奴も使いたければ、そのときに言ってくれ」

「……は、いらねェよ。あいつが葉書なんて書くタマかよ」

「その通りね。でも、ノブナガは使うかもしれないね」

「特に仲良かったからね……。わかったよ、団長。ノブナガに伝えておく」

「ああ。任せた」

 

狩人狩りを始めよう

考え方は悪くない

愛でるべき宝に届かずも

季節違いの彼岸桜が花開く

 

 

~~中略~~

 

 

「そういえば……スター、帰ってこないね」

「ん、ああ。そうな。もう、2週間経ったよな。ま、あいつのことだから無事だとは思うけど」

「どうせ。バカやってるんでしょ」

「だろーな。でも、この穴掘りいつまでかかかるかわかんねーし、あいつひょっとしてクリアしちまったりしてな」

「え~~~っ! それは困るよ!」

「ま、“カード化限度枚数”とかあるし、そう簡単じゃねーだろーけど。気になるなら、“交信(コンタクト)”でもしてみるか?」

「あっ、そっか! それで連絡とれるんだよね!」

「ここじゃ、ケータイ使えねーからな」

「やろうやろう! ビスケ、いいよね!!?」

「ま、それくらいならかまわないわさ。確かにこうも音沙汰がないと逆に不気味な感じだしね」

 

「“交信(コンタクト)”、使用(オン)! スター!」

 

『ん、ゴンか? どーした?』

「どーしたって、スター、今何してるの? もう、2週間経ったよ」

『え、ああ……修業は終わったのか?』

「ビノールトのとはね。あいつ自首するって。今はマサドラまで穴掘りしてるトコ」

『そうか』

「スターは? カードどのくらい集めたの?」

『――フルコンプしたぜ』

 

「「「「えっ!!?」」」」

 

『恋愛都市アイアイの彼女達の心はすでに俺のものだ!』

「……え? 恋愛都市?」

『ふ、くくく……はーっはっはっはっはっはっ! ここはいいところだぞゴン! しかし困難な道のりでもあった! 何故なら、彼女達との恋が成就すると彼女達はカードになってしまうからだ! そこで俺は考えた! どーしたと思うゴン!』

「えっ、どーしたの?」

『“ゲイン”によって、カードを諦めることで、再び彼女達と出会ったのだ!』

「あ、そーか」

『それだけじゃないぞ! 彼女達の中には全く別のアイテムに変わってしまう者達もいた! そればっかりは“ゲイン”を使ってもどうにもならない! どーしたと思うゴン!』

「えっ、えーっと……」

『ふふふ、イベントは一度消化しても、またその場所を訪れれば始まるという特性を利用したのさ! そして、カード化するギリギリを見極めて退く! これによって、他の誰よりも好感度が高い状態でありながら、彼女達の存在を維持出来るのだ』

「な、なるほどー」

「無駄にハイスペックだな。あいつ……。普通そんなこと思いつかねーし、実行しねーし、成功しねーよ」

『今やこの都市は完全に俺のためのハーレムだ! うわはははははっ!!!』

 

「「「「…………」」」」

 

「オレ達が修行してるって言うのに、あいつ……」

「ま、まあ、スターらしいよね」

「どこまでも自分の本能に忠実な男ね……」

「……」

 

「「「ひっ!!?」」」

 

「……ちょっと、行ってくるね。いいわよね? ビスケ」

「は、はい! 好きにしていいです!」

 

「“磁力(マグネティックフォース)”、使用(オン)! スター!」

 

「「「…………」」」

 

「こ、怖かったわさ……」

「あーあ、スター死んだな。いや、死なねーけど。死んだ方がマシかも」

 

『え、ポンズ? おー、久しぶりだな! って、ちょっ!!? 何故にいきなり臨戦態勢!!? まっ、待て! 待った! ひぎゃーーー!!?』

 

「「「…………」」」

 

「……あ、“交信(コンタクト)”の効果、切れた」

 

 

~~中略~~

 

 

「じゃ、あたし達は修行を続けるから、恋愛都市アイアイには近づかないで、あんたはちゃんと冒険しなさい」

「わかった……次はどれくらいだ」

「……そうねー、今やってるこれが終われば、今度はここにいる怪物を捕まえさせるから、1ヵ月ってトコだわさ」

「そうか。ビスケ、これを」

「あら、これは……」

「“No.4”、“美肌温泉”。好きな場所に作って疲れを癒してくれ。言っとくが、ガキだからってポンズとの混浴は許さないからな。それと、他のプレイヤーの覗きだとか、“呪文カード”で飛んでくるような事態には気をつけろ」

「“呪文カード”をどう気をつければいいかはわからないけど、わかったわさ」

「ちなみに、俺にはこっそりポンズの入浴時間に“交信(コンタクト)”してくれていいぞ。そうしたら、偶然を装って駆けつけるから」

 

「……あんた、さすがに殊勝な態度になっているかと思えば」

 

「冗談だ。俺だってバカじゃない。それでポンズが怒るであろうことは知ってる」

「あんたは十分バカだけどね」

「ポンズにはくれぐれもくれぐれもよろしく。タイミングを見計らってこれを渡してくれ」

「今度は何さ? “No.20”、“心度計”? 12時に合わせると平静な精神状態に戻る……あんたが使いなさいな」

「俺はいつでも平静だ」

「……手の施しようがないってことだわね」

「頼んだぞ、ビスケ。俺とポンズのバラ色の生活はキューピッド役のお前にかかってる!」

「そんな大げさなことじゃないでしょーに……あんたがこれ以上バカなことしなければいいだけの話さね」

 

 

~~中略~~

 

 

「お」

 

「……ホントにすぐ会うしさ」

「ん、何のことだ?」

「何でもないわよ」

「そうか。それより、マチ! マチも来たんだな。来てないって聞いてたんだけど」

「……まあね。シャルの話で旅団の大部分が参加することになったからね」

「シャル……シャルナークとかいう奴か。そいつの話?」

「そ。“G・I(グリードアイランド)”は現実で行われてるってね」

 

「そうなのか?」

 

「らしいよ。ここから持ち帰れた石の成分とか調べてたわね。それが終わったら実際にゲームを使わずに来るんだって」

「へー」

「それで、団長以外みんな帰ってきて、団長が1人だから、ノブナガとアタシが来たのよ。ま、ここにまでヒソカが追いかけてきたりはしないだろうけどね」

「クロロもこのドリアスにいるのか?」

「さあね。別に待ち合わせ場所とか決めてたわけじゃないから、ノブナガは北にアタシは南に来ただけよ」

「じゃ、俺と行動しようぜ」

「何でよ」

「一応、俺の方がここには長くいるんだから邪険にすることないだろー。“呪文カード”とかもマチより持ってると思うしさ」

「……まあ、そういうことなら」

 

「よし! じゃ、さっそくギャンブルをしに行こう! ここはギャンブルの街なんだから!」

「――おい! アタシは団長との合流を」

「クロロだってギャンブルしてるかもしれないだろ」

「む……ヘリクツを」

 

「よっしゃ! “No.79”、“レインボーダイヤ”、ゲット!」

「へぇー、ギャンブルって簡単なのね。旅団にいるとカジノに盗みに入ることはあっても、普通に参加したりは基本的にしないからね」

「ギャンブルで本当に運がいるのなんてあんまりないぜ。目の良さとか手の速さとかあれば大抵は勝てる」

「ふーん」

 

No.079:レインボーダイヤ:A-20:7色に光り輝くダイヤ。このダイヤを渡して、プロポーズすれば、100%成功する。

 

「「…………」」

 

「――ゲイ」

「没収」

「やはりか! やはりダメなのか!」

「あんたわかりやすいのよ……。わざとやってる部分もあるのかも知れないけど」

「この想いは本物だ!」

「あーそう……」

 

 

~~中略~~

 

 

「団長!」

「ん、マチか」

「ちっ……空気読めよ。何でいるんだよ」

「スターも一緒か。相変わらず仲が良いな」

「だろ!」

「……団長、そういうの止めて欲しいんだけど」

「くっく……ノブナガは一緒じゃないのか?」

「スタートでは一緒だったから、すぐに飛べるよ」

「そうか」

「なあ、クロロ。お前どれくらいカード集まった? ダブりとかあったら交換しないか?」

 

「そうだな……“ブック”! オレはこんな感じだ」

 

「げっ。お前もうこんなに集めたのか? 7割以上集まってるぞ」

「他の連中が戻ったときに全部カードを預かったからな」

「にしてもだろ。これに何年もかけてる奴等も沢山いるって話だぜ」

「そうか。だがカードを独占してる連中がいるらしくてな。ここから先が難しい。“衝突(コリジュン)”も、もうないしな」

「あー、あいつらかな? あるいはツェズゲラか……」

「知ってるのか?」

「ゲーム始めてすぐの頃、何かセコイこと考えてる奴等には会ったぜ。さっきの何年もかけてる奴等。“呪文カード”独占して、ゲームクリアするとか言ってた」

 

「……なるほど」

 

「ツェズゲラってのは確かオークションのときの奴だね」

「そういや、マチ達も立ち聞きしてたっけ。このゲーム内ではまだ会ってないけど、8割攻略出来てるとか言ってたからな」

「ふむ……やはり、マサドラで張った方が効率がいいか……。だが、あそこには“離脱(リープ)”狙いの雑魚プレイヤーも多いからな……」

「何だよ、お前プレイヤー狩りとかしてるのか? 普通にゲーム楽しめよ」

「普通にか……今更だな。オレが求めてるのは入手難度の高いSやSSのカードか、“カード化限度枚数”の上限が低く、独占されたのであろう難度Aのカードだけだ」

 

「難度B以下で必要なのはないのか?」

「B以下のカードなら金さえ用意すれば、交換(トレード)ショップで買える」

「え、マジで? 売ってなかったぞ。どっか特定の街か?」

「いや。同じ交換(トレード)ショップで50回以上買い物するだけでいい。得意客となってあっちから話を持ちかけてくる」

「へぇー! いいことを聞いた! これで男のロマンである“スケルトンメガネ”を再び入手することが出来る!」

 

「「……………」」

 

「いてっ。ちくっとした。何故俺を針で刺す!」

「そのカードは知らないけど、それがどんなものなのかは名前とあんたの反応から想像がついたんでね。メガネをかけてアタシの前に現れたら殺す」

「ヒドイ!!?」

「どっちがだ」

 

「くくく……話を戻そう。オレは“神眼(ゴッドアイ)”のカードでクリア条件になっている指定ポケットカードの内容は全部見た。そこに並ぶカードの入手難度はB以上。1枚だけDだが……つまり、それ未満のカードは必要すらない」

「じゃ、俺の金稼ぎ手伝えよ。俺も難度Bのカード全部手に入れるから」

「……」

「おい! 何で、団長がアンタの手助けをしてやる必要があるんだ」

「入手難度の高いカードを狙えばいいだろ? それならクロロにもメリットはある。ただ途中で手に入った金になるカードは全部俺がもらうだけだ。入手難度の高い方も“複製(クローン)”でもらうけど」

「……相変わらずだな。いいだろう。お前の実力は知ってるからな。どうせ、シャル達の結果待ちでヒマだったんだ。ノブナガと合流したら、入手難度SS、“No81”、“ブループラネット”を狙う! これは持っている奴はいるがまだ独占されていない」

「持ってる奴がいるってことは、“複製(クローン)”持ってるチームにでも回ったらアウトか」

「ああ。ある意味では時間との勝負だ。“カード化限度枚数”はわずか5枚で、すでに持ってる奴が2人いるからな」

 

 

~~中略~~

 

 

『もしもーし。スター、オレ、ゴンだけど』

「おう。修行終わったのか?」

『あ、それはまだあるみたいだけど、ここの怪物は全部捕まえることに成功したよ!』

「そうか」

『スターの方はどう? また変なことになってない?』

「またってお前な……ま、いいや。ふっふっふっ! 聞いて驚け! 俺はビスケが狙ってた入手難度SS、“No81”、“ブループラネット”を手に入れたぜ!」

『!』

『ほ、本当!!? あたしに寄越しなさいよ、スター!!!』

「ハハハ! いいぜ。そう思って2枚手に入れた」

『おお! スター! あんた気が利くじゃないのさ! 見直したわよ!』

「はーっはっはっはっはっはっ! 任せろ!」

『なら、ちょうどいいわさ。あんた一度戻って来なさいよ。これからゴン達に新しいこと教えるから、あんたも一緒に聞いておきなさい』

「ん、そうか……ああ、わかった」

 

「――あの子供達のトコに戻るのか?」

「ああ」

「そういや、ゴン達も来てやがるんだよな。修行してるって……ちったー強くなったのか?」

「そりゃ、なってるだろ。ならなきゃ修行する意味ないぞ」

「おお! それもそうだな。旅団(クモ)のためにもどんどん強くなれって言っとけよ」

「お前もしつこいな」

「オレはあいつが気に入ったって言っただろ。ヒソカの代わりは入ったが、ウボォーの代わりはまだいねーんだ」

「ん、新しい奴が入ったのか?」

「ああ、そのうちオメーも会うことになるかもな」

 

「ふーん……マチ! マチは俺と一緒に来るか?」

「はぁ? 何でよ……。行かないわよ」

「バカな」

「アンタの頭がね。何で行くと思ってるのよ」

「うぅ……わかったよ。1人で戻るよ」

 

「――スター。未だにシャル達から連絡が来ないということは、あいつらは失敗したんだろう。これでオレ達もゲームをクリアする必要が出てきた。あいつらが戻り次第、カードを独占してる奴等を攻める。そのときに連絡する」

 

「あ? そういうのはそっちで勝手にやれよ」

「オレはそいつらと接触してない。少なくともお前がその話を聞いたという奴の名前はリストになかった。どいつがそいつらの仲間かわからない以上、中心人物でもあるだろうそいつのトコに飛ぶのが一番早い」

「メンドくさいなー」

「マチ、お前もスターに頼め」

「……グダグダ言わずに手伝いな」

「任せろ!」

 

「「「…………」」」

 

「……とにかくそういうことだ。また連絡する」

「おお。じゃあまたな、マチ! ――“磁力(マグネティックフォース)”、使用(オン)! ポンズ!」

 

「ポンズ……?」

「ん、気になるのか?」

「別に……」

 

 

~~中略~~

 

 

「よ。約1ヵ月ぶりだな」

「スター!」

「おお。ポンズ! 俺に会えなくて寂しかったか?」

「ううん」

「またまた」

「ううん」

「またまた……」

「ううん」

「ま、またまた……」

「……ちょっとだけね」

「だよな! 俺も寂しかったぞ!」

 

「……何か、思ったんだけどさ。あれってポンズのぜいもあるよな」

「え、そうかな?」

「そうさね」

「そうだって、絶対! いつも完全には拒絶しないじゃん」

「それは、ポンズもスターのことが好きだからでしょ?」

「……うーん?」

「難しい問題ね。スターも本当にポンズ一筋ならよかったんでしょうけど」

「ああ、やっぱそれが一番のネックだよな」

 

「…………そこ、聞こえてるからね」

 

「「「!!?」」」

 

「そ、それよりもスター! “ブループラネット”! 早く寄越しなさい!」

「ああ。“ブック”!」

 

「「「おおー」」」

 

「これが、“ブループラネット”! ……って、カードの状態じゃ実感ないわさ。戻してもいい?」

「“複製(クローン)”あるのか? 俺はもうないぞ」

「同じく」

「オレもだよ。修行ばっかで“呪文カード”買い足してないもん」

「当然、私もよ」

「そんな……手にしても、愛でることが出来ないなんて……」

「クリアしてからのお楽しみにしなよ」

「……そうね。でも、普通に本に入れておいて大丈夫なものなの? “堅牢(プリズン)”なんてないわよ」

「SSを奪われるのはイタイよな」

 

「これ」

 

「これは?」

「“No.84”の“聖騎士の首飾り”だ。これを身につけてる間中は“反射(リフレクション)”の効果を得られる」

「へェー! そんなのも手に入れたんだ?」

「人数分あるぜ」

「ホントに!!?」

「そんなに“複製(クローン)”持ってたのか? それともイベント繰り返した?」

「いや。ランクB以下のカードは、同じ交換(トレード)ショップを50回以上利用することで買えるようになるんだ」

「そうなの!!?」

「ああ。ま、これはランクDだから、“堕落(コラブション)”と“妥協(コンプロマイズ)”で増やしたんだけどな」

「“妥協(コンプロマイズ)”? それって、他プレイヤーがいないとダメじゃなかった?」

「ああ。他のプレイヤーに協力してもらった」

「ふーん……」

「つーわけで、一応ランクBの指定ポケットカード32種はコンプしたぜ」

 

「「「おおー!」」」

 

「何か面白そうなアイテムがいっぱいあんなー」

「うー……! オレも集めたい!」

「ま、これは一応手に入れといたってだけだからな。修行が終わったら、店とか利用しないで出来るだけ自分達で集めようぜ」

「うん!」

「……メガネかけてたり不審な動きをみせたら、ヒドイからね」

「わ、わかってるって! どいつもこいつも……俺ってそんなに信用ないのか」

「どいつもこいつも……?」

 

「――さ。カードもいいけど、そろそろ修行を再開するわよ」

「何するんだ?」

「今日からは防御の修行に入る」

「防御?」

「!」

「それは……」

「そうよゴン。あなたが使ってる技だわさ。“纏”、“絶”、“練”、“発”、“凝”を全て複合した応用技。“硬”」

「ゴンってこんなこと出来るようになってたのか?」

「あ、うん。ここに来る前にウイングさんに電話してそこからヒントを得て……」

「体中のオーラを全て体の一部に集め、攻撃する! それゆえ通常の攻撃をはるかに上回る威力がある。あたしが“硬”を込めた拳で攻撃する。あんた達はこれを全て受けて防ぐこと! よけてはいけない!!!」

 

「「「…………」」」

 

「顔色を見ると察したようだわね。その通り。オーラで覆われた体はとても防御力が高い……しかし、それより“硬”での攻撃力ははるかに高い。つまり、普通にガードしても深いダメージを受ける!!! どうする?」

「こっちも“硬”を使う!」

「うん。半分正解。“硬”に対して“硬”! これならば、よほど“念”能力のレベルが違わない限り、防御が成功すれば無傷で済むだろう。しかし、もしも“硬”でガードした個所以外に攻撃がヒットすれば、即、破壊だわよ」

「全身を“硬”にする。矛盾してるけど、そんな意味だろ? 実際スターはそんな感じのことをしてるみたいだしさ」

「その通り。“纏”と“練”の応用技“堅”。全身を通常よりもはるかに多いオーラで覆い防御する。“硬”よりは防御力が落ちるが、これが最も実践的な防御! 訓練を積めばオーラの総量も上がり、防御力も増す。ゴン“練”をやってみて」

「うん!」

「この状態をずっと維持するのが“堅”! その状態であたしのパンチをガードして」

「? (遅い……?)」

 

「「「!!!」」」

 

「おー、スゲー飛んだ」

「ゆっくりだったからって体の力を抜いたわね? “堅”まで解けてたら、顔潰れてたわよ。これが“硬”のみの力……! この威力に肉体の力である拳本来のスピードと破壊力をのせれば、さらに攻撃力は数倍、数十倍にもなる!」

「!」

「最初は今みたくゆっくり打つけど、いつ打つかは言わない。“堅”の状態で出来る限り耐えてみなさいな」

 

「く……」

「ゴン!!?」

「……うん。約2分ってトコだわね」

「(知らなかった……! “練”を持続するのが、こんなに大変だなんて。スターはいつだって自由自在なのに!)」

「それなりの実力者と戦おうと思ったら、最低30分は“堅”を維持しないとお話にならないわよ! ――試しにスター! あたしの“硬”を防いでみなさい!」

「ん、ああ」

 

「――破っ!」

「(速っ、殴った!)」

「(でも効いてない……! ビスケが殴る直前にスターのオーラが一気に増加した……!)」

「なるほど……動きもしないとはね。連続でいくわよ」

「お、おお、おおっ?」

 

「「動いた!」」

 

「む」

「(スターも手を使い出した……この状況だと制約的にこれ以上のオーラの増加は出来ねーのか? どっちにしてもスゲーオーラだけど)」

 

「……こんなトコね。今のでまだ10分。あたしも完全に本気ってわけではないとはいえ、あたしは“硬”で一部位だけを強化してたことに対して、スターは手こそ使ったものの、全て“堅”だけで対応してた。これにはさすがにあきれるしかないわね」

「“堅”だけで? “硬”を防ぐには“堅”でいいんだろ?」

「そうね。ベターではあるけどベストではないってところかしら」

「あ、そうか! “流”!」

 

「「ああ!」」

 

「あらま。知ってるの?」

「ウイングさんにスターの“念”のことを聞いたときに、ちょっと説明されたんだ。普通は“流”でオーラをやりくりするのに、スターは全部オーラを増加することで押し通してるって」

「なるほど。確かにその通りだわね。スターの“発”は“超上質な堅”! それを基本としている。それを可能にするのは、状況によって何回も“練”を重ねられるという“反則的な強化”! 修行でどうにかなることじゃない。完全に個人の資質による特性ね」

「やっぱ、そうなのか……」

「ええ。ウイングにどこまで聞いたのかわからないから説明するけど、“念”での実戦では基本、“堅”=全体攻防力を維持しながら、“凝”と“流”によって、一部位のオーラだけを増加することで自分に有利な状況を作っていく」

「“硬”まではいかない“硬モドキ”の部位を作るってことだろ?」

「そーゆーこと。ちなみにあたしはさっきのスターとの戦いではわかりやすく“硬”の状態で“流”をやってたけど、それは見えてたわよね?」

「……ま、何とか」

「ビスケの動きが速すぎて」

「拳に足にと色々やってたのはわかったけど」

「おほほ。あたしも久しぶりに結構マジでやったからね。スターがあんまりにも堅いものだから、ちょっと滾っちゃってね。いやー、あたしもまだ若い」

 

「(充分、ババアだろ)――ぐはっ!!?」

 

「とにかく、この境地に至るにはまだまだ時間がかかるけど、一応見せておきたかった。あんた達はこれを見たからって、諦めるタイプの性格してないでしょ?」

「とーぜんだぜ!」

「うん!」

「……ま、実力が違いすぎるのはとっくにわかってたことだしね」

「なら、まずは“堅”を30分維持することから! もちろん、今までやってきた他の修行も並行しながらやるからそのつもりで!」

 

「「押忍!」」

 

「はい」

「えーっと、俺は?」

「基本的には好きにしていいわさ。でも、あんたもこれ以上カードを集めると、ゴン達との差が出来すぎるし、ここにいてもいーかもしれないわね。そもそも、邪魔だったのはビノールトに過剰反応してたからだもの」

「悪は滅びた」

「そのあとはあんたが恋愛都市で遊んでたせいで、ポンズとの関係が悪化してたからだけどね」

「反省はしてる。後悔はしてない」

「……じゃ、何に対して反省してるか言ってみな」

「1日の終わりには必ずポンズの下に帰るべきだった……スケジュールは厳しく、“呪文カード”がなくなろうとも、俺には出来たハズだ!」

「はぁ……」

「確かにあんたは筋金入りだわね。ま、それでいいと思ってるなら、あたしから言うことは何もないわさ。好きにしなさい」

 

 

~~中略~~

 

 

「よーし、休憩!」

 

「「「ありがとうございましたー!」」」

 

「“堅”の修業を始めてから、“流”をマスターするまで、2ヵ月かからず……たいした進歩だわね。“流”だけでも2ヵ月はかかると思ってたのに、あきれるばかりだわさ」

「ふふふ、任せろ」

「……あんたは変わってるのか、変わかってないのか、よくわからないけども」

「ふっ、わかりやすいところで言えば、“美肌温泉”の効果でお肌がスベスベになったぜ!」

 

「「「「…………」」」」

 

「さて――これなら最終段階に入っても問題ないわね」

 

「「「!」」」

 

「無視された!!?」

「最後は系統別の修行!」

 

「「「3!」」」

 

「ピンポーン、引き分け! スターは腕立て10万回」

「何故に!!? 俺がちゃんと見えてるってのはわかってるだろ!」

「いいからやりなさいよ。10分以内ね」

「ぐぬー……!」

「10分って……」

「1秒間に166回以上ね。166回じゃ足りないけど」

「ゴンは強化系、キルアは変化形、ポンズは具現化系だったわね。自分の系統だけを修業してもいいんだけど、それだとどうしても応用のきかない使い手になってしまうし、効率もよくない。理想は山型!」

「?」

「自分の系統を中心に、そのとなりの系統も鍛える。その時間のことよ。ゴンだったら強化系に3、変化系、放出系に2、具現化系、操作系に1ってことね。特質系は元々別だし、具現化系と操作系はやらなくていいから実際には、そっちが0って感じだけど」

「六性図の関係のことね」

「そ。実はバランスよく他の系統の修行もやると、自系統の覚えも早くなるの」

 

「「「9!」」」

 

「ピンポーン、引き分け! スターは腕立て10万回追加。時間は変わらずで」

「何ィ!!?」

「――それじゃ、始めましょうか」

 

「「押忍!」」

 

「はい」

「ぐぬーっ……!」

 

「系統別修行、強化系の場合レベル1、石割り。――こんな感じで石で石を割っていくの。1日に1個の石で1000個の石を割れたらクリア。ポンズは具現化系だからこれはやらなくていいわ」

「え、でも、強化系は戦闘の基本なんじゃ……」

「そうなんだけどね。系統別の修業は1日1系統が原則! 基礎修行が疎かになっては意味ないからね。具現化系の場合は初めのうちは具現化系3、変化形2で十分。ただ、特質系を挟んでるとはいえ、ポンズは操作系よりだから、操作系も1って感じかね」

「そうなんですか……」

「それらが終わってようやく強化系0.5くらいのもんよ。具現化系は元々生粋の強化系とかとは戦い方が違う。特にあんたの場合、“自在に蜂を喚び出す”具現化系、その“蜂に命令を聞かせる”操作系、“蜂毒の性質を変える”変化形とすでに纏まっている」

「はい」

「これ以上は望みすぎというものさね。扱い切れなくなるのがオチだ。“堅”と“流”の修行でも十分。“待ち”の戦い方を基本とするあんたは、むしろそれを使わないように頭を使ってこそだわさ」

「わかりました。ただ、一つ聞きたいのだけど……」

 

「何?」

 

「その……彼には蜂の針が刺さらないか……あるいは治癒力とか免疫力の強化で対処されてしまったのだけど……強化系のそういう人物を相手にする場合はどう戦えばいいのか……」

「それはキッパリあいつが異常なだけだけども……ま、そういう場合は蜂に使用するオーラを上昇させて対応するしかないね。ま、それは強化系や、下手すれば放出系に関することだから、あんたには向かないと思うけど」

「……」

「ただ、そこまで考え込まなくても、普通は針が刺さるし、毒も効くから。今は速さや精度を上げることだけを考えてなさいな」

「そうよね……わかった」

「(……近くにバケモノがいると大変だわね。蜂だってオーラで操作してるなら、まったく刺さらないことはないし、一匹の奇襲で決めるとか、逆に数がいるのだからオーラの薄い部分を狙うなどで対処出来るのが普通なんだけど……相手がアレだからねェ)」

「じゃ、ビスケ。私には具現化系の修行方法を教えてくれるのよね?」

「そうさね……(初めてそうだと知った“念”能力者がアレなのは運がよかったのか悪かったのか……どうあってもアレを基準として見てしまうのだから)それじゃ、系統別修行、具現化系の場合レベル1――」

 

 

~~中略~~

 

 

「最初はグー……! ジャン! ケン!! グーーーッ!!!」

「おーっ」

「なるほど」

「次ね! 最初はグー! ジャン! ケン!! パーーーッ!!! ……ビスケ。どうやったら“念”を飛ばせるの?」

「……修業!」

 

「グーが強化系、パーが放出系――ってことは、チョキは変化形?」

「うん」

「ジャン! ケン!! チーーーッ!!! ……で、ズバッと岩とか切りたいんだけど」

「なるほど。刃状に変化するわけね。なかなか理にかなってるわね(発想はガキだけど)」

「拳に“念”を込めるとき、どうしても時間がかかるでしょ? どうせならその間何かしっくりくる方法がないかってずっと考えてたんだけど。ジャンケンの話を聞いたとき、ピーンときたんだ。オレ結構ジャンケン好きだし」

「ん。その直感はとても重要よ。“念”能力のとりわけ特殊技ってのはフィーリングが大事なの。“自分に合っている”っていう認識がね。系統別の修業をしながら何か見つけてくれればいいと思ってたんだけど、あんたは大丈夫だわね」

「あー、ゴホン!」

 

「「「!」」」

 

「ま……今はこの程度だけど、充電すれば結構、電力上がるぜ。オレも準備はOK! あとはどんな応用技にするかじっくり決めるだけ……!」

「すごいや、キルア! 電気ウナギみたい」

「たとえワリーぞ」

「(……この年でオーラを電気に変化させるなんて……おそろしい……でも、それ以上に哀しいコ……日常が地獄だったハズ……今こうして笑顔でいられるのが奇跡的なほどの……ホントにいいコンビ……いい仲間なのね)」

 

「――じゃ、今日は休みにしようかしらね。ちょっと早いけどパーティーでもやる?」

「え?」

「みんなの国ではどんな祝い方をするの?」

「祝いって……?」

「んふふ、修行に夢中で気づかなかったでしょ? もうすぐ、外の世界は新年よ」

 

「「「――」」」

 

「知らなかった? ゲームの中も外と同じ時間の流れ……つまり、リアルタイムなの」

 

「「しまった……!」」

 

「ん?」

 

「クリスマス!!!」

「ハンター試験!!!」

 

「ん?」

「え?」

 

「クリスマスって何?」

「恋人同士がデートをしたり甘い1日を過ごす為の祭日だ」

「……違うでしょ。確か宗教的なシロモノだったハズ」

「いや。それでいいんだ! 世界を回った俺にはわかる! そっちの方が正しい!」

 

「ふーん……って、それはいいや。ハンター試験だよ! ハンター試験!」

 

「よくないぞ!」

「あ、そか。もうそんな時期だ」

「そろそろ申し込まないと間に合わないよ!」

「むむむ……」

「んー、せっかく修行が面白くなってきたトコなのになー。でも、ハンター試験は年一回だし」

「ねェ今日は何日?」

「12月29日。試験申し込みの〆切は12月31日いっぱいだから、確かにヤバいわね」

 

「それまでにはゲームの外に戻らなくちゃ」

 

「どうやったら外に戻れるんだっけ?」

「えーと、たしか“ハメ組”の奴が“ある場所へ行って、ある条件をクリアする”とか言ってたな。まあ、呪文でも戻れるみたいなこと言ってた気も……スター持ってないのか?」

「……“離脱(リープ)”ならないぞ。ほぼ独占されてるんじゃないか。そうじゃなきゃそんなに帰れない奴が出るハズないだろ」

「まあ、あんたから見たら実力が足りなくて帰れないって発想にはあんまりならないかも知れないけど……」

「?」

「とりあえず、マサドラまで行ってみようか」

「賛成!」

 

「国外へ出る方法なら3000ジェニーになります」

「聞いとくか」

「西へ50kmくらい行くと、この国唯一の港があるんだが、そこの所長がとにかく嫌な奴で、旅行者が島を出るときには、無理難題をふっかけるそうだ。まぁ、裏金をたっぷり渡せば見逃してくれるそうだから、大金を用意して港に行くことだな」

「大金って……?」

「所長のそのときの気分次第って話だ」

 

「――ムカつくんだよ、てめェ!」

「あ、バカ……」

 

266:通行チケット:B-150:“G・I(グリードアイランド)”から出るときに必要な券。所長から金で買うか所長を倒すと入手出来る。ちなみに無理難題をいくら聞いてもチケットはくれない。

 

「「「「…………」」」」

 

「ふっ……“ヒーロー”は誤魔化せない!」

「ゼッテー、偶然だろお前」

「“ヒーロー”は誤魔化せない!」

「ハイハイ。それじゃ、ソッコーで合格して戻ってくるぜ」

「うん! ドーレ港のそばの一本杉のある山に“キリコ”って魔獣が棲んでるから、オレの友達だって言えば、今回の会場まで連れて行ってくれるよ」

「え、第三次試験終了時点で、試験会場無条件招待券が贈られるハズよ」

「あっ、そうだっけ……」

 

「いいよ。せっかくだし、そのキリコってのに会ってみるよ」

「うん!」

 

「いいこと? 系統別修行は、変・強・変・具・変のローテーションでやるのよ」

「ああ。……そういや、スターはよかったのか?」

「よくない。クリスマスにポンズとデートしたかった」

「そうじゃなくてさ。天空闘技場の登録すぎちまったんじゃね?」

「ん? あ、あー……別にいいよ。殿堂入りが決定しただけだ。バトルオリンピアの参加状だって送られてくるし、何ならまた登録し直すことだって出来なくはないからな」

「そか。じゃ、行ってくるわ」

 

「んじゃ、あたし達はマサドラに戻って修行を続けようかしらね」

「押忍!」

「はい」

「クリスマス……」

「あなた、まだ言ってたの?」

 

『他プレイヤーがあなたに対し“交信(コンタクト)”を使用しました』

 

「ん?」

『スター、オレだ。準備が整った。来てくれ』

「誰?」

「“ブループラネット”とかのときの協力者だ」

「へぇー。あんたが男とツルむなんて珍しいわね。まあ、女性のプレイヤーの数が少ないだけかもしれないけど」

「どうするの?」

「……一応行くか。行かなくても、勝手に来るだろうしな」

「そう」

「じゃあ、あたし達はさっき言った通りマサドラに行ってるわさ」

「わかった」

 

 

「――来たか。スター」

「ずっと呼び出しがなかったから、俺の手はいらないのかと思ってたんだけど」

「こいつらに言え。“ゲームマスター”の1人にアイジエン大陸に飛ばされたらしいんだが、寄り道する奴が多かったようでな」

「パクノダと……ボノレノフってのがいないけど。あ、あとノブナガもか」

「留守番」

「ちっ……そういうのは男を残せよ」

「ノブナガは普通に帰ったよ。“鎖野郎”の協力者を探すって」

「ふーん」

「正直、ノブナガには向いてないと思うんだけどね。オレでもさっぱりわかってないんだから」

「それは今はいい。スター、“同行(アカンパニー)は持っているか?」

「くれ」

 

「――じゃ、あんまり気は乗らないけど、行くか。“同行(アカンパニー)”、使用(オン)”! “ニッケス”!」

 

 

~~中略~~

 

 

「「「!!?」」」

 

「ん、何だこの状況……?」

「……どうやら、裏切りが発生したようだな」

「こんな洞窟で引きこもってる奴等なんてそんなものね」

 

「あ、あれは! “G・I(グリードアイランド)内でも特に好戦的なフィンクス、フェイタン組……! こんなに仲間がいたのか……!」

「何で、こんな時に……!」

 

「何かいつの間にか有名人になってるな」

「どうでもいいね。全部殺すだけよ」

「殺したらカードが手に入らねェんじゃないのか? 殺っていいならオレがやるが」

「お前ら。誰でも彼でも殺す殺すって、こういうときはまず交渉をしてだな」

「……それ以前に、こいつら勝手に死にそうじゃない? あれ形状的にみて爆弾でしょ?」

「“爆弾魔(ボマー)”とかいう奴か……限定的だが使えそうだな。そいつは捕まえろ」

「了解」

 

「くっ……! “離脱(リープ)”、使用(オン)!」

 

「お。1人逃げたぞ」

「奴が“爆弾魔(ボマー)”か」

「今のゲーム外に逃げる呪文だね。追いかけるのは難しいかな」

「それならスタート地点で張ってればいいんじゃない?」

「……とりあえず、放っておけ。まずはこっちを片付ける。“呪文カード”を使おうとした奴は殺していい」

 

「「「!!!」」」

 

「待ってくれ! 奴を追いかけさせてくれ! このままじゃ爆弾が爆発しちまう!」

「いや待て! 今そのまま出たら本内の“呪文カード”が消える!」

「じゃ、どうするんだ!!?」

 

「うるさい奴等ね……。団長、何人か殺してもいいか」

「待て。そいつがレアカードを持っている可能性もある。――そこのお前、状況を説明しろ」

 

「そんなことしてる場合じゃ――」

「――話せ」

 

「「「!!?」」」

 

「オレが話そう……」

「……いいだろう。他の奴は騒ぐな。騒げば殺す。最悪カードの独占さえなくなればそれでいい」

 

「「「!」」」

 

「こうして仕掛けてきた以上、オレ達のことは知っているな」

「ああ」

「オレ達は指定カードを90種集め、“呪文カード”も必要なものはほぼ独占していた。そして次が他の有力プレイヤーとの最後の直接対決になるだろうと思っていた。しかし、奴が裏切った」

「“爆弾魔(ボマー)”だな」

「ああ。奴は“爆弾魔(ボマー)”の単語をキーワードに、オレ達の身体に触れることで知られず爆弾を仕掛けていた。そしてその事実を説明することで奴の能力“命の音(カウントダウン)”が発動した」

「それがその爆弾か」

「そうだ。解除方法は奴の身体に触れながら“爆弾魔(ボマー)捕まえた”と言うこと。但し、奴にはそれとは別に“一握りの火薬(リトルフラワー)”という手で掴んだものを爆発させる能力もある」

「なるほど」

「奴の要求は当然ながら、全ての“指定ポケットカード”を得ること。奴の手元には9種あり、オレ達は全員で81種持っている」

「なら、それをオレ達に寄越せ」

 

「なっ――! 待てよ! だからそんなこ――!!?」

 

「バカな奴ね。騒げば殺すと団長が言ったハズよ」

「てめェら、どっちみち死ぬんだ。なら、オレ達にカードを渡しても同じだろ」

 

「「「!!!」」」

 

「……カウントが人によって違うな。……心拍数か」

「心拍数?」

「ああ。本来のカウントは6000といったところだろう。平常時なら人によるが、約1時間で尽きる計算だろう」

 

「「「!!?」」」

 

「た、助けてくれ……死にたくない……」

「カードは渡す! だから、命だけは……!」

 

「そうかい。なら、カードを渡す奴はこっちに来な。ま、カードを渡したトコでオレ達に関係ない爆弾はそのままだがな」

 

「「「!」」」

 

「“ジスパー”のカウントがすでに3500を切っている……。こいつにはリミット以上に時間がない。取引だ。カードは渡す……! だから、“爆弾魔(ボマー)”を倒して……ジスパーを助けてくれ……! あいつなら“大天使の息吹”を持ってるんだ……!」

「そんなの、知ったことないね。ここで死ぬか、あとで死ぬかの違いよ」

「待てよ。助けてやろーぜ。カードくれるって言ってるんだからいいじゃん。クロロだって“爆弾魔(ボマー)”捕まえたいとか言ってたしよ。互いの条件はあってるだろ」

「……」

「どうするの団長。占いはとっくに終わってるし、コイツの意見には別にもう逆らっても問題ないけど」

 

「……スター。どうあってもこいつらは助からない」

 

「何でだよ」

「“爆弾魔(ボマー)”はゲーム外に飛んだ。ここから出る場合50以上の港から場所を選択出来るらしいが、スタート地点……ゲーム機のある場所に戻る場合は、それぞれが作動させた場所に戻ることになる。オレ達は奴と違う場所から始めた」

「――つまり、“爆弾魔(ボマー)”を追えない?」

「そうなる。奴もオレ達の姿を見てから逃げた以上、すぐに戻ってくるということもないだろう。おそらく奴も単独犯ではないだろうが、プレイヤーが大幅に減るだけで良しとするハズだ。1時間以内ではどうにもならない」

「“爆弾魔(ボマー)”――“ゲンスルー”の居場所ならわかっている……! バッテラの古城だ……!」

「……それがわかっていたところで、間に合わないことに変わりはない」

「くっ……!」

 

「ジスパー以前の問題だ……! このままじゃ、オレ達も……!」

「無駄に騒ぐな……! 殺されるぞ……!」

「でも、例えカードを渡してもオレ達も死ぬんじゃ……!」

 

「……爆弾を解除するだけなら他にも方法がある」

 

「「「!!?」」」

 

「ほう……」

「オレは“除念”が出来る。オレの能力は秘密にしておきたかったが、このままじゃ、それ以前の問題になりそうだからな」

「“除念”って何だ?」

「ああいう風に残るタイプの“念”を消し去る能力のことさ」

「へえ、でもそれなら多分俺も出来るぞ」

「は?」

「要はアレを握り潰せばいいんだろ? 爆発が外に影響を与えないようにして」

「……」

「くっく……どうにも簡単に言ってくれるな。オーラで包んで握り潰すにしても相当な高等技術のハズなんだがな」

「お前もう何でもアリね」

「俺は“ヒーロー”だからな!」

「スターだからって言葉で何でも納得出来そうで困るよ」

 

「――いいだろう。2人の“除念”を望む者は、その前にまず“呪文カード”を全て差し出せ。“除念”が終わったとたんに逃げ出そうとされては面倒だ」

 

「くっ……!」

「オレは差し出すぜ! 金よりも命の方が大事だ!」

「お、オレもだ!」

 

「待ってくれ! ならばジスパーを治せる能力者はいないか!!? このままじゃ、本当にジスパーが!」

 

「「「…………」」」

 

「……マチ、お前の“念糸縫合”は?」

「ムリに決まってるだろ。腕が千切れ飛んだとかならともかく、顔が潰れた奴の何を縫えって言うのさ」

「だよなぁ。おい、そいつはムリだ。諦めろ。代わりに“爆弾魔(ボマー)”は団長も狙ってるし、オレ達が倒して、仇は討ってやる。安心してカードを渡しな」

「くっ……! ジスパー……!」

「……」

「そいつ次第だけど、まだ手段はあるぜ」

「! 本当か!!?」

「まさか、お前他人の回復まで出来るのか?」

 

「いや。自分ならともかく、他人の回復は出来ない」

 

「そうか。本当に何でもアリなのかと思ったぜ。――じゃ、どうすんだ?」

「“No.62”、“クラブ王様”のカードを使う。あとは“心度計”でも使って、平静を保たせ、そいつが死ぬ本当にギリギリまでその店内に入れておくんだ。その店内での1時間は外での1日。その間に俺達がゲーム外で“爆弾魔(ボマー)”を捕らえてくる」

「なるほど……バッテラの古城の近くの港に出れば、確かに1日以内に“爆弾魔(ボマー)”を確保することは可能かもしれない。どうする、団長? 正直、オレ達がそこまでしてやる意味があるのかは疑問だけど」

「頼む! カードは全部渡す! だからジスパーを! ゲンスルーを倒してくれ!」

 

「……よし。いいだろう。フィンクス! フェイタン! シャルナーク! お前達がゲーム外で“爆弾魔(ボマー)”を追いつめろ」

「追いつめる?」

「おそらく、フィンクスとフェイタンの姿を見れば、奴ないし奴等はここに逃げてくる可能性が高い。そこをオレとマチとスターの3人でスタート地点であるシソの木を張り、捕らえる」

「逃げなかったらオレ達がやっちまっていいんだよな、団長」

「ああ。その場合はお前達に任せる」

「私達はどうするんです?」

「シズク、コルトピ、フランクリンの3人はこいつらを見張っておけ。不審な動きをする奴がいたら殺していい」

「了解だ団長」

 

 

~~中略~~

 

 

「“爆弾魔(ボマー)”捕まえた。――ふぅ、これで“念獣”も消えた」

「結構簡単に終わったな」

「まあ、こんなものだろう」

「は、早くジスパーに“大天使の息吹”を!」

「へえ……まだ生きてやがったか。しぶとい野郎だ」

 

「“ゲイン”!」

 

『わらわに何を望む?』

 

「俺の女になれよ!」

 

「「「「「アホか!!!」」」」」

 

『む?』

 

「……今のは気にしなくていい。このジスパーの怪我を、悪いトコ全部治してやってくれ」

 

『お安い御用。では、その者の体、治してしんぜよう』

 

「う……」

「ジスパー! 大丈夫か!!?」

「あ、ああ……迷惑をかけたな。本当に……これでゲームクリアは」

「いい! いいんだ! 生きているならそれでいい!」

 

「ゲームクリアへの道を失ったかわりに、“G・I(グリードアイランド)”において、それ以上に大切なことに気づいたという話だな」

「ベタな話ねえ……」

「私、意外とそういうの嫌いじゃないですよ」

「原因の半分はオレ達だけどな」

 

『では、さらばだ』

 

「ああっ、せめて連絡先を!」

「カードだろ」

「なら、もう1回使おう!」

「コイツの頭は治せるのかしら?」

「“複製(クローン)”! ……ダメですね。やはり、他プレイヤーが“引き換え券”を持っていたみたいだ。奪られたよ」

「何ィ!!?」

「そうか。まあいい。さて、オレ達は約束を果たした。残りの指定ポケットカードも全て渡してもらおうか」

「……ああ。わかった」

 

「これで90種か……。あと少しだな」

「これからどうするの?」

「そりゃ、“呪文カード”もくさるほど手に入れたし、他プレイヤーから残りのカードを奪えばいいだろ」

「それは逆に非効率かも知れないよ。有力プレイヤーを狙い撃つならともかく。ここまでカードが揃ってると大抵のプレイヤーは欲しいのを持っていない可能性が高い」

「じゃ、どうすんだ」

「普通にイベントをクリアしてカード集めろよ。あ、“大天使の息吹”を奪った奴は男だったら攻撃していいぞ」

「コイツは……」

 

「……なあ、そいつらはどうするんだ?」

「“爆弾魔(ボマー)”か……。3人組の能力では使えないな。一応“一握りの火薬(リトルフラワー)”の方は奪ったが、これもそこまで使える能力でもない」

「別にこのまま解放していいんじゃないの。本当の“レアもの”以外は本拠地(ホーム)においといても邪魔だしさ」

「“発”が使えなくなってるとはいえ、さっきの奴等じゃ報復はムリだな。今なら弱ってるからイケるかも知れないけどよ」

「それもこいつら次第ってことで」

 

「――スター、お前は本当に“大天使の息吹”以外の指定ポケットのカードはいらないのか?」

「ああ。それはゴン達の修業が終わったら一緒に集める約束をしてるんでね。……まあ、本当はいくつか欲しいのがあるんだが、使うとマチとかに怒られるしさ」

「当然だ」

「まあ、どうしても必要になったらもらいにくる」

「そうか。戻るのか」

「このあと、新年の軽いパーティーをやる予定なんでな」

「パーティーねえ……」

 

「マチとシズクは参加してくれていいぞ!」

 

「えっ、あ、えーっと……」

「……考えなくていいわよシズク。しないから」

「バカな」

「だからアンタの頭がね。何で行くと思ってるのよ」

「くそぅ……わかった、わかったよ。1人で戻ればいいんだろ!」

「逆ギレか」

「別に、逆でもない気も……いや、何でもない」

 

 

~~中略~~

 

 

「え、“ハメ組”が?」

「ああ。“正体に気づいてなかった爆弾魔(ボマー)”に裏切られてな。“爆弾魔(ボマー)”はぶっとばしてきた」

「そうなんだ……」

「これで、“呪文カード”の独占は消えたし、少しはゲームが正常化したかもな」

「“ハメ組”の人達は生きてるんだよね?」

「生きてはいるな。目的失ってこれからどうするのかは知らないけど」

「そっか……」

 

「それより、パーティーしようぜ! パーティー!」

 

「えっ、でも、キルアがいないのに……」

「キルアが帰ってきたらまたやればいいだけの話だろ」

「あ、そうだね!」

「よし! “No.63”、“バーチャルレストラン”を使おう!」

「それって、本当に食べてるわけじゃないんでしょ? 空しくならない?」

「本物の料理も混ぜておけばいいんだよ。頼めばどんな料理でも出てくるんだぜ。パーティーにぴったりだろ」

「まあ……そうかな?」

 

 

~~中略~~

 

 

「あっ、おかえりキルア!!! 試験どうだった!!?」

「もちろんソッコー合格! むしろ帰ってくるのに時間かかってしんどかった」

 

「「イエー!!!」」

 

「誰か知ってる奴とかいなかったのか?」

「あ、ゼパイルのおっちゃんが来てたぜ。不合格だけど。あとは見たことあるよーな、ないよーな奴が何人かいたような気もするけど、今回の合格者オレだけだから」

「そうなんだ」

 

「――えっ、“ハメ組”が?」

「うん、そうみたい」

「へぇー、ちょっと離れてただけで状況が変わるもんだな」

 

「ジャン! ケン!! パーーーッ!!!」

「お。おお~」

「次ね。最初はグー! ジャン! ケン!! チーーーッ!!!」

「お。切れた」

 

「やったーーー!!! 出来たーーー!!!」

 

「えっ、まさか初めて成功!!?」

「違うよ! これで5度目の成功だもんね」

「ふーん……で、失敗の回数は?」

「うっ……。でも、成功率は上がってきたもんね。10回に1回は出来るようになってるよ! ……多分」

「それはいいとしても、お前、今の技、使う前さ。毎回、あの掛け声言うの?」

「え? うん、だってじゃなきゃ必殺技っぽくないでしょ」

「うーん、まぁ……な。けど、敵にモロバレになるわけだろ? スキもすげーでけェし。掛け声の間に敵に攻撃されたらどうすんだよ」

「よけながら言う」

「よけきれなかったら!!?」

「それでも言う」

 

「――おい、あいつあれでホントに大丈夫なのかよ!!?」

 

「そりゃ、ま、色々と不安はあるわさ。でも、何よりあのコが気に入ってるみたいだし、意外と理にかなっててやられる方はイヤだと思うよ。短距離攻撃(グー)、中距離攻撃(チョキ)、長距離攻撃(パー)の3択。鍛えれば相当手強い武器になるわさ」

「……俺の必殺技とちょっと被ってるのが問題だ」

「それは仕方ないでしょ。強化系は、武器を使ったりしないなら、パンチ力の強化、キック力の強化って感じで、何だかんだ同じようなことを考えることが多いから。――ところで、あんたの方はどうなのよ」

「オレ? まぁ色々考えたんだけど……結局これにした」

「なるほど……電気とコレか……よく考えてるわね。いい武器になりそうだわね」

「だろ? 色んな技開発中だぜ」

「ふむ……ポンズは元々“発”に関しては纏まってたし、あんた達、ここまでよくがんばってきたわね。んじゃ、そろそろ始めようか」

「押忍! まずは基礎からだね」

「修業じゃないわさ。始めるのは――本格的なゲーム攻略!」

 

「「「!」」」

 

 

~~中略~~

 

 

「どうだい、でかいだろう? この大木にだけ棲むという伝説の“キングホワイトオオクワガタ”。普段はコロニーの奥深くにいて姿さえ見せない。捕獲の方法はただ一つ! ヤツが姿を現す夕方に木をぶったたいて落とす!!!」

「(他にも方法あると思うけど……罠とか)」

「(まー、ゲームだからな)」

「たたくポイントはここ!!! ハデに揺らそうと思ったらハンパな力じゃダメだぜ。本命のクワガタを捕れたのは、今のところたった7人だ」

「結構いるんだね。成功した人」

「かっかっか、挑戦者はその何千倍といたんだぜ?」

「敵がいるわけじゃないし、全力でぶったたいてみなさいな」

「うん」

「オイオイ素手かよ? ハンマー貸すぜ?」

 

「最初はグー! ジャン! ケン!! グーーーッ!!!」

 

「!!!」

 

「――おおっ、虫の雨だー!!! すっげー大漁! カブトもカミキリもいっぱいいるよ」

「いた! “キングホワイトオオクワガタ”!!!」

「こっちにもいたぜ!」

「もう1匹発見ー!」

 

「~~~」

 

「入手難度A!!!“No.53”、“キングホワイトオオクワガタ”のカード!!! 3枚ゲット!!!」

「いやー、長年この森の番人やってるが、たった一撃で3匹も捕った奴は初めてだぜ」

「でも、手加減しちゃった」

「え?」

「全力で殴っちゃったら木の方が痛んじゃうかもしれないって思って」

 

「ここで、このカード集められるだけ集めようぜ」

「え?」

「トレードの材料になる。成功者が7人しかいないって言ってただろ。このカードに挑戦したけど、入手出来なかった奴、山ほどいるハズだからな」

 

「――ダメだ」

「“カード化限度枚数”、30枚なのに結局、最初の3枚しかカード化出来なかったね」

「先にこのカードをゲットした7人の中にも同じこと考えた奴がいたんだろーな」

「そう考えると、3枚手に入っただけでもラッキーよね」

「OK、じゃ、次行こうか」

 

「ここに監禁している少女を返せ!!? ボウヤ、何を証拠にそんなことを言ってるんだ? この屋敷には限られた数人以外誰も出入り出来ないんだ。その少女とやらもね。もしも忍び込もうものなら、幾重にも張り巡らされた罠が君達を襲う!!!」

「……」

「君達では少女の部屋を突き止めることさえ出来ず、息絶えることだろうな」

「語るに落ちてるよ、こいつ」

 

「見つけたぜー。地下4階の隠し部屋にいた」

「何ーーー!!? おのれァーーー!!!」

「少女シリーズ、“No.46”、“金粉少女”、ゲット!!!」

「門番はランクFだ」

 

「「…………」」

 

「――ゲイ」

「止めなさい」

「はい……」

 

「――あれ? 明日って15日じゃなかったっけ」

「あっ、アントキバの月例大会!」

「ついでだしやっていこうぜ!」

「今は防御カードもいっぱいあるしね!」

 

『優勝はァーーー、キルア・ゴンペアでーーーす!!!』

 

「“聖騎士の首飾り”、自力でゲットォー!!!」

 

「……ねェ、そういえばさ。この首飾り、触ったものの呪いを解いてくれるんだよね」

「ものってか、カードの呪いだな」

「あ……そうか。じゃ、ダメか……」

「何か思いついたのか?」

「もしかしてあの村の人達の病気って、呪いじゃないのかなーって思ったから」

「あの村って……?」

「あー、あー、あいつらね。あんた達を身ぐるみはいだ連中。――でも、カードじゃないからダメだわね」

「……いや。やってみる価値あるな」

 

「オレ達を信用して、命を預けてくれますか?」

「無償で我々に全てを捧げてくれたお方々……! 信じましょう!!!」

「!」

 

No.163:病気の村人:F-150 → No.263:元気な村人:C-50

 

「おおー、治ったぞ!」

「ありがとうございます! ぜひ、お礼にこれを……!」

「やった!」

 

「“No.75”、“奇運アレキサンドライト”ゲットーーー!!!」

 

「……人助けに見返りは求めてはいけないという教訓かと思えば、いいことをすれば最終的には報われる話だったわね」

「そうみたいだ」

 

「“No.90”、“記憶の兜”、ゲット!」

 

「“No.82”、“天罰のつえ”、ゲット!」

 

「よーし、これで半分!!!」

 

「「50種類目、ゲット!!!」」

 

「たった1ヵ月でもう半分集まったよ!」

「大分、地図もにぎやかになってきたわね」

「でもこっからキツくなるぜ、きっと。今まで獲った指定ポケットカードは、全部ランクA以下だろ。ランクS以上のカードは、情報入手の段階からかなり困難ってことだぜ」

「そういえば、交換(トレード)ショップで買える情報もランクAまでだったね」

「んじゃ、どうすんのよさ」

「確実なのは“道標(ガイドポスト)”なんかで場所を特定して、そこからは地道な聞き込みだろーなァ。……まあ、他にもう1コ、いいアイディアがあんだけど」

「え? 何?」

「“リスキーダイス”を振って、大吉出してから“宝籤(ロトリー)”を使う!」

 

「「「却下!」」」

 

「そのコンボだとランクAまでが限界だって聞いたぜ。“宝籤(ロトリー)”だけなら、ランクS以上が出ることもあるらしーけどな」

「え、マジ!!?」

「他にもキルアみたいなこと考える人がいたんだね」

「ちぇー、いい案だと思ったのにな」

「あんたは気をつけないと、ギャンブルで身を崩しそうね」

「ハハハ! そうなったら黒服を返り討ちにするから問題ないぜ」

「……止めなさい」

 

「一つ気になったんだけどさ」

「ん?」

「“G・I(グリードアイランド)”の中には何百人っていうプレイヤーが来てるんだよね。なのにオレ達が今まで獲ってきたアイテムを全部カード化出来たの変じゃない?」

「どういうこと?」

「だって、指定ポケットのアイテムをカード化する限度枚数って、ランクBでも、たった30枚くらいでしょ。オレ達より先に来た人達がとっくに集めててもおかしくないのに」

「確かにな……けど、逆も考えられるぜ。このゲーム内でまともにプレイ出来てるのは、30人(組)に満たない……!」

 

 

「――これで、95種か」

「あと5種のうち、2種はツェズゲラ組が独占してることがわかってるよ」

「あいつら、オレ達の姿を見るとすぐ逃げやがるからな」

「こそこそするしか脳のない連中ね」

「それ以外の3種のうち“No.000”は他の99種を集めると入手条件を満たすという話が濃厚。だから残りは“No.2”、“一坪の海岸線”と“No.75”、“奇運アレキサンドライト”」

「“一坪の海岸線”はランクSSだからまだしも、“奇運アレキサンドライト”はランクAなんだから見つかりそうなものですよね」

「持ってる奴もいるみてェだしな」

「何か見落としがあるということか」

「……そういや、スターの方はどうなってるかな?」

「スターか……オレ達よりカードを集めているとは思えないが、そういう状況でこそ関わってくるような男だからな。一度連絡を取ってみるか……」

 

 

~~中略~~

 

 

「あ? “奇運アレキサンドライト”? ああ、持ってる持ってる」

『……本当に持っているとはな。なら、トレードしないか。オレ達が持ってるカードなら、ほとんどの予備を持っている』

「トレードか……。そっちは何種まで集まったんだ?」

『95種だ』

 

「(95……! スゲー! もう、クリアしちまいそうじゃん!)」

「(そうだね。この場合ってどうするのがいいのかな?)」

「(そりゃ、独占するか、ふっかけるかの2択だろ。まあ、独占するにしても、他にも持ってる奴が何人かいるっぽいけど)」

「(じゃ、高ランクのカードとトレードするのが一番いいわけだわね)」

 

「SSランクのカードのダブりはあるのか?」

『お前が持ってないのだと“一坪の密林”を2枚持ってる。“一坪の海岸線”の方はオレ達を含めてまだ誰も手に入れていない。ソウフラビに存在していることだけは、“神眼(ゴットアイ)”でわかっている』

「なら、“一坪の密林”と交換だ」

『いいだろう。――ついでに提案がある。“一坪の海岸線”をオレ達と共同で探さないか』

「共同で?」

『お前……いや、お前達は、オレ達が入手出来ずにいた“奇運アレキサンドライト”を入手していた。お前達がオレ達とは違う観点から物事を見ることが出来ると同時に、運もある証拠だ。それに、どのみちお前達にも必要なカードだろう』

「ちょっと待ってろ。――どうする?」

 

「オレはいいよ!」

「オレも。これでSSが全部揃うなら楽だしな」

「なら、あたしも賛成だわさ」

「私もいいわよ」

 

「聞こえてたか? 全員OKみたいだ」

『わかった。これから、オレ達がそちらに飛ぶ』

「ああ」

 

「――って!!?」

 

「「「“幻影旅団”!!?」」」

 

「え、幻影旅団ってあの? どういうことだわさ!」

「……何だ。説明していなかったのか?」

「ん? そういえばそうだったか」

「何で旅団がここに……!」

「オレ達の今のターゲットがここのお宝だというだけの話だ。お前達も指定ポケットカード類を見れば、オレ達が狙ってもおかしくないものが並んでることくらいは理解出来るだろう?」

「それは……」

「スターの奴、まだ旅団とツルんでたのかよ……」

「だから、どういうことだってのさ! 説明しなさい!」

 

「かくかくしかじか」

 

「……バカだバカだとは思っていたけど、超一級の犯罪者まで口説いていたとはね」

「まあまあ。ここはゲームの中だから、現実の法律は適応されないだろ」

「はぁ……そういうヘリクツは得意なのね」

 

「とりあえずトレード。ほら、“奇運アレキサンドライト”」

「――確かに。“一坪の密林”だ。確認してくれ」

「ああ。問題ない」

 

「それじゃあ、“同行(アカンパニー)”でソウフラビまで飛ぼうぜ」

「ちょっと! そのまま協力するってことでいいの? あんた達はどうなのさ」

「え、うーん……まあ、カードを入手する間だけなら」

「つーか、オレ達がイヤがってもスターは行くだろ。だったらとっとと、“一坪の海岸線”を手に入れちまった方がいいぜ」

「……そう。あんた達がそういうなら、いいわさ」

 

「話は纏まったようだな。――“同行(アカンパニー)”、使用(オン)! ソウフラビ!」

 

 

~~中略~~

 

 

「ここがソウフラビか」

「へぇー、結構、デカイ街だな」

「とりあえずは聞き込みをする必要があるな」

「オレ達が調べたときは情報が得られなかったんだ。スター達が何か気づいてくれるといいんだけど」

「ふーん」

 

「結構、人が多いなー」

「どんどん話、聞いていこうよ」

「そうだな。端っこの家から順々に聞いていこう。中には何回か訪れないと重要なことを教えてくれないキャラとかいるしな。下手すると何週間も進展しないこともあるから覚悟しておけよ」

 

「「おー!!!」」

 

「あ、ねえ! 情報提供者が見つかったわよ」

「マジ!!?」

 

「“一坪の海岸線”を探すのはやめなされ。命がいくつあっても足りないぞ」

「何か知ってるなら教えろ」

「知らんな。知らないのが一番安全なんだ」

 

「言葉だけさ。わかるのはな……おそらくそれ以上知った奴は、この世にいれなくなるのさ」

 

「あっちにも提供者がいたぜ」

「スゲー数だな」

「だけど、有益な情報とまではいかないわね」

「おかしいな。オレ達が調べたときは全く手掛かりさえ話さなかったのに。どこでイベントスイッチが入ったんだ?」

「時間的な条件とかじゃないの? この時期しかイベントが発生しないとか……」

「んー、どうかな。とにかく聞き込みを続けよう」

 

「あんた達にもう少し仲間がいればね……。“レイザー”と14人の悪魔とも戦えるかもしれないのに……」

 

「レイザー……!」

「誰?」

「“ゲームマスター”の1人だよ。オレ達がゲームを使わずにここに侵入しようとしたら現れて、“ゲームマスター”だけが使える特別呪文で排除された」

「ゲームを使わずにってどういうこと?」

「気づいてない? ここは現実だよ。“G・I(グリードアイランド)”はあくまで現実にある島にオレ達をワープさせるためのものだ」

「え……え? じゃ……え!!?」

「この島にある物や人物、ゲーム的なものは、全てこの島限定という制約の下で“念”能力によって作られたものだろうね」

「! ここが、現実……」

「気づかなかった」

「疑いすらしなかったわさ」

「ええ……」

 

「――それより、今はレイザーと14人の悪魔だ。どうやら、“一坪の海岸線”のイベントスイッチは人数によっては入るようだな」

「うん」

「え、どういうこと?」

「オレ達が前にここを調べたときは8人だった。今回は13人。だからイベントスイッチが入った。おそらく10人以上くらいから入るようになっているのだろう。けどまだ足りない。だからイベントそのものは起こらない」

「ああ……! レイザーと14人の悪魔……15人必要ってことだね!」

「だろうな」

「あと2人か……俺達、他に協力関係にあるようなのいないよな。残りの旅団呼んでこいよ」

「いや。“除念師”を覚えているか? あいつは頭のいい男だ。オレに奪われる可能性があると見て、自ら旅団の協力者になった。まだここにいるハズだ。あいつに連絡してもう1人連れてきてもらう」

 

「オレは“アベンガネ”だ。こっちは“ゴレイヌ”」

「よろしくな。“一坪の海岸線”の“カード化限度枚数”は3枚。それぞれが1枚ずつって条件で間違いないな?」

「ああ」

「よろしく! オレはゴン! それで、こっちはキルアで――」

 

「――これで揃ったな。もう一度“同行(アカンパニー)”を使うことでシステムに人数を把握させる! おそらく、それこそが“一坪の海岸線”のイベントスイッチ……!」

 

「あんた達になら……話してもいいかもしれないわね」

「ぜひ聞かせてくれ」

「海賊が仕切ってるのよこの街は。この海域のどこかに“海神の棲み家”と呼ばれる海底洞窟があると言い伝えられているの……」

「……」

「“一坪の海岸線”はそこへの入り口……様々な財宝が眠っているといわれる。その海底洞窟の伝説を聞きつけて、数年前15人の海賊がこの街にやって来た。――レイザーと14人の悪魔……!」

「そういえば、確かにあの野郎は言ってやがったな。自分を倒せば手に入るアイテムもあるってよ……!」

「街の漁師は全員拷問を受けて殺されたわ。この街で“一坪の海岸線”の場所を知る者は全て。私の父と兄も。もしも海賊を追い払ってくれたら、あなた達に教えてもいいわよ。兄から聞いた“一坪の海岸線”の場所……!」

「わかった。教えろ。海賊の居場所」

 

「――何だ? テメェら、今日はオレ達の貸し切りだ。帰んな」

「今日もだろ? へへへへ」

「この街から出て行ってもらおう」

「つーか、てめェらじゃ話にならねェ、レイザーの野郎を出しな!」

 

「「「……ガハハハハハハ!!!」」」

 

「久しぶりに聞いたセリフだな! しかも船長(ボス)の名前まで出すとはな!」

「前にそのセリフを言った奴はそこの海辺で骨になってるぜ!」

「今すぐペシャンコにしてやりてェが、全ての決定権は船長(ボス)にある。相談なんて言わずによ。腕ずくでやってみろよ」

「!」

「オレをこの“土俵”から外に出せたら、船長(ボス)に会わせてやるぜ?」

 

「「「…………」」」

 

「ぷおっ――!!?」

「邪魔だバカ。こんなまだるっこしいことしてねェで、とっととあの野郎の場所に連れて行きな……!」

「……ついて来な。船長(ボス)に会わせてやる」

 

「(やっぱ、旅団の奴等スゲーな)」

「(うん、そうだね)」

「(確かに……初めてこうして実物を見るけど、全員、あたしと同等かそれ以上の使い手だわさね)」

「(ひぇーっ……)」

 

 

~~中略~~

 

 

「灯台を改造した要塞。ここで密航船をチェックしてるんだ」

 

「……ホウ。まさか本当に正面から乗り込んで来るとはな」

「会いたかったぜ。レイザー……! オレ達をコケにしてくれやがった借りは返す……!」

「そうか。じゃあ早速本題に入るが、勝負しよう。互いに15人ずつ代表を出して戦う。1人1勝。先に8勝した方の勝ちだ。勝負のやり方はオレ達が決める。それでお前達が勝てばこの島を出て行こう。どうだ?」

「いいだろう」

「よかろう。勝負の勝負形式(テーマ)はスポーツ!」

「あァ? スポーツだ? ガチバトルじゃねェのかよ!」

「そうだ。ここにいるメンバーが、それぞれ得意なスポーツでお前達に勝負を挑む」

「チッ……マジかよ」

「我慢しな。これはゲームのイベントなんだから」

「んなコトわかってる……!」

 

「オレが一番手だ。オレの勝負形式(テーマ)はボクシング。さぁ、誰がやるんだ?」

「フィンクス、バトりたいなら行ってくれば?」

「わかってると思うが、闘れるのは1人一試合だ。1人で何勝もすることは出来ないぜ」

「だとよ。オレはパスだ。オレは野郎と闘る」

「一つ確認するけど、“念”はありなの?」

「もちろんさ。オレ達はバリバリ使うぜ」

「ふーん」

 

「――で。誰が行く?」

「誰でもいいぜ。どうせあの野郎以外は雑魚だ。とっとと終わらせろ」

「行く人がいないならオレが――」

「待った! ゴンはラスボスと闘りたいだろ。ここは旅団の連中に任せようぜ」

「ラスボス? それってレイザーでしょ? フィンクスが闘るって……」

 

「(勝負の種類と数のトリックさ)」

「(どういうこと?)」

「(今回の勝負形式(テーマ)はスポーツ。スポーツってことは種目によっては人数がいるものだって多いだろ? あいつ、きっとこっちが7勝したら、8人必要な勝負を提案して引っくり返すつもりだぜ)」

「(ホントに?)」

「(ああ。おそらくだけどな。何せSSランクのイベントだ。いざとなれば自分1人でも勝てるルールにしてるハズ。言ってしまえば、他は数合わせさ。そこまでにほとんど決着がついてたら、それはそれで終了だしな)」

「(そっか。ってことは)」

「(ああ。7勝してからが勝負だ)」

 

「行く奴いないの? なら、アタシが行こうか?」

「ちょーっと待った! 何でマチが行くんだ。殴り合いなんててめェらの誰かが行けよ!」

「心配しなくてもマチの腕力はオレ以上だ」

「そうじゃねえだろ、クロロ! どうせマチがスポーツするトコを見られるなら殴り合いなんてものじゃなくて、もっと華麗な感じのが見たいって言ってるんだ! そういうわけで、当然ポンズとシズクもNG!」

「あたしは?」

「ビスケは別に……冗談! 冗談だって! とにかく男が行けよ!」

「つーか、お前、マチにどんな幻想抱いてんだよ」

「相変わらず意味不明ね」

 

「……黙れ。団長、アタシが行くから」

「ああ」

「待ってくれー!!! ――おふっ、何か糸に縛られた。しかも意外とギチギチだ!!?」

 

「女が相手だからって手加減はしないぜ」

「必要ない」

「ハッ、そうかい。ボクシングのルールは知ってるか?」

「拳で敵を殴り倒せばいいんだろ」

「その通りだが、あと他に特別ルールがある。“念”で創り出したものなら道具もあり!」

「別にそれでいいよ」

「安心しろよ。オレはこの拳で戦う。“念”なら武器もありってのは、むしろおたくらのためのルールさ」

「そう。どっちでもいいよ」

 

『1ラウンド、3分間、判定なし! どちらかがKO負けとなるまで、何ラウンドでも続ける。――ファイト!』

 

「女とはいえあんたが相当な実力者だってことはわかる! 最初から本気で行くぞ! ――シッ!」

「拳の瞬間移動。悪くないけど決定的に遅すぎるよ」

「ば、バカな……!」

「そして、これで終わりさ」

「ぐっ……はっ……!」

「――それで、場外の場合はどうなるんだい?」

 

『そちらの勝ちで問題ない。KOにより! 勝者、マチ!!!』

 

「……次はオレだ。勝負形式(テーマ)はサッカーのリフティング」

「簡単そうだからボクが行くよ」

「コルトピか。いいだろう」

「なめてると怪我するぜ。ルールを説明しよう。相手よりも長い時間リフティングしていた方の勝ち。“念”ありで、相手への攻撃もありだ。手で球を触る以外はな。それと、球が味方に当たっても負けだぞ」

「わかった」

 

『勝者、コルトピ!!!』

 

「次はオレだァ!!! 勝負形式(テーマ)は相撲!!!」

 

『勝者、フランクリン!!!』

 

勝負形式(テーマ)は卓球!!!」

 

『勝者、アベンガネ!!!』

 

勝負形式(テーマ)はボウリング!!!」

 

『勝者、シズク!!!』

 

勝負形式(テーマ)はレスリング!!!」

 

『勝者、ゴレイヌ!!!』

 

勝負形式(テーマ)はフリースロー!!!」

 

『勝者、シャルナーク!!!』

 

「これで、7勝! あと、1勝だな!」

「――よし、次はオレがやろう」

「ようやく出てきやがったか……!」

「さて……オレの勝負形式(テーマ)は、8人ずつで戦う……ドッジボールだ!!!」

「(やっぱり……!)」

 

「「「!!?」」」

 

「これがオレのメンバーだ」

「“念獣”……って、具現化系じゃないの? あいつ放出系だって言ってたよね」

「体から出てんだから放出系でもいーんじゃねェか。何でもいいぜ。こっちのメンバーは残ってるオレと団長、フェイタン、そんでお前ら5人か」

「何だかんだで俺達残ってたな」

「オレとゴンはそもそも狙ってたからね」

「正直、ちょっと圧倒されてた」

「あたしゃ、楽が出来るならそれでもいーかなって」




かつての作者はここで力尽きたようです。
なのでとりあえずここまで。
戻ってきた時に気分が乗ってたら続きを書くこともあるかもしれません。
ここまでお付き合いくださった方はありがとうございます。
それではまたその時に会いましょう。
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