毒の華、そして悪意の花~Fleur de Poison et de fleurs malveillants,   作:おわる美砂

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マリアさんがU-NASAに来る前のお話…


毒の花達
その女、死を運ぶ侍女につき


ひどく寒い夜だった。

そんな寒空の下、彼女はメイド服だけを身にまとったままベランダに佇んでいた。

ベランダの手摺に背を軽く預け、そしてポケットから煙草の箱とジッポ・ライターを取り出し、長い指でそれを挟んで口に運び、そして片手で先端を隠しつつ器用にライターで火をつける。

暫くすれば白い煙が彼女の口許からゆるりと立ち上がる。

そうすると、ベランダに続く扉が開いた。

 

「マリア。」

「ハァイ、こんな寒いとこに呼び出すなんてレディの扱いがなってないんじゃない?」

 

声を掛けてきた相手の顔も見ずにマリアと呼ばれた彼女は軽口をたたく。

「そう言うなよ…」という言葉が聞こえたところでマリアはふっと笑いつつ顔を上げて相手を見つめる。

部屋から漏れる光が逆光になってよく顔は見えないが、まあ声は彼だから呼び出した相手なのは間違いないだろう。

そんなことを考えながら、マリアは顔にかかる前髪を掻き上げて相手に言葉をかける。

 

「で?呼び出したのはなんの用?まさかあなたが暗殺を依頼するとは思えないから違うことでしょ?」

「まあ、そうだけど。」

「もし依頼だったとして中国のタヌキは殺せないわよ私でも。」

「露骨なこと言うな。…U-NASAで、」

「『M.O手術を受けろ』って?」

「…まあ、そんなとこだな。」

 

ふー、と深々とため息を漏らす。

そんな彼女を、じっと彼は見つめていた。

 

「どーせ拒否権もないくせに。」

「あ、いや、そんなこたぁ…。」

「嘘つきのプロに嘘は通じませーん!」

 

いたずらっぽく笑うと、マリアはその場にたばこを落として靴で踏み潰して消火する。

そして再び髪を掻き上げる動作をしてじっと目の前の相手を見つめる。

暫くの沈黙。

 

「…まあ、借りもあることだし…従ってあげるわ。」

「恩に着る。」

「死んだらごめんね!」

「…殺しても死にそうじゃねえけど。」

「よく言うわよ。」

 

そう言うと、トン…とベランダの手摺に飛び乗る。

思わずみじろいだ彼を見て、マリアはフフッと笑って彼を見下ろす。

 

「じゃあ、U-NASAで。」

 

そう言うと彼の方を見たまま彼女は手すりの上から後方へ身をおどらせる。

ぶわっとスカートが広がる。

金の髪がまるで液体のように動いて闇夜に鮮やかに広がった。

彼は慌てて手すりから乗り出して下を覗き込む。

そこまで高く無いとはいえ後ろ向きに落ちる奴がいるかと思いながら、焦りつつ。

しかし、彼女は何事もなかったように下に着地していた。

そして自分を見上げて「またねえ」と言わんばかりに手を振って、そして庭の木々に紛れるように姿を消していった。

 

「…とんでもねえ女。」

 

そう漏らすも、自分の口許に笑みが浮かんでいるのに彼は気付いていなかった。




終わり(!)

とりあえず、次から月慈さんと対面したり色々
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