「っづらぁ!!」
狂気剣士にタゲを取っている5体のコボルドはオレの接近に間に合わない。敵の中心部めがけダッシュし、剣を突き立てると同時に次のモーションへと素早く以降する。
―――『ホリゾンタル』。
片手剣スキルをアップさせ修得した広範囲斬撃技。新たに手に入れたロングソードの攻撃範囲を+すれば5体のコボルドすべてに命中するはずだ。
剣が青白く発光、同時に自分の中心線の中段にかまえ、右手、両足、わき腹から腰にシステムアシストをブーストさせた力を加え体を半回転させながら一気に振り抜く。
ザシュゥン―――。
小気味いい音と派手なライトエフェクトを撒き散らせながら四散した――――コボルド3体。
どうやら残っているコボルドにはノーマルヒット、消えていったコボルドにはクリティカルヒットしたようだ。我ながらラッキーヒットだ。奥義は一度使うとスタン状態に陥るため(技の威力や種類によってスタン持続時間は異なる)残りの2体は『パリング』と『スラント』で片付けた。
コングラチュレーション
オレの頭上で浮かび上がった文字、どうやら今の戦闘でレベルが上がったようだ。だが…いまはそれどころではない。さっさと退散しよう。
「……………って。」
何やら言っているようだか無視して歩く。
「待ちなさいよ……。」
けど…なんでかな――――オレは不思議と歩みを止めていた。
「なんだよ?」
「…何で助けたのよ。」
肩越しに聞こえてくるか細い声、今にも死にそうな感じがある。
「別に。間が差しただけだ」
「余計なことしないでよ………」
は?えっ?何で助けてやった側のオレが怒られてんの?おこなの?…あいや待たれよ。
「恩を売るわけじゃねぇけど、ありがとうぐらい言えんのか。」
誰だ、今《そりゃお前だろ》って後ろ指差した奴。
「…助けてなんて一言も言ってない…もうほっといて。」
「あら〜、最近の若い子ったら教養がなくて困るわぁ〜…………あんた、さっきみたいな戦闘繰り返してたらすぐ死ぬぜ?」
ケープの奥に隠れた顔がビクッと震えた。
「…………どうせ、みんな死ぬのよ」
「……。」
「たった1ヶ月で、2千人も死んだわ。でもまだ、最初のフロアすら突破されてない。このゲームはクリア不可能なのよ。どこでどんなふうに死のうと、早いか……遅いかだけの、違い…………。」
「はぁん。そうかよ、じゃ勝手に死ねよ」
これ以上は言っても無駄だろう。ぶっちゃけお礼が欲しいわけじゃない。社会の常識を教えてあげようと思ったのだ。…ホントダヨ?
剣士は喋り疲れたのかその場へ倒れた…。
「いや…待ってよ、倒れた…なんて言ったけどこれ…どうすんの?」
――――――――――。
迷宮区から比較的安全なルートをたどり最寄りの街《トールバーナ》に到着した。背中に女剣士《Asuna》を抱えながら…。
「いや、抱えながらじゃねぇよ……。」
まじでオレなにやってんだよ…、見ず知らずの、礼もろくにしねぇ女を安全圏内まで運ぶとか…。誰得だよ…オレ損だよ。
「ん。……ここ…は」
「やっと目が覚めたか眠り姫。」
「ッ!?……なんで…っ」
「おい、暴れんな。……せっかく助けてやった命をそう簡単にポイされちゃ骨折り損だからな、運んできた。」
「余計な……」
起きたかと思ったら、こと切れたかのようにまた眠りについた。安全だとわかって安心したのだろう。ただ……
「いい加減、自分で歩いてくれませんかねぇ?」
どうやらこの女が起きるまではこのままの状態らしい…。