ソードアート・オンライン《暁の死者》/   作:裕奇(復帰)

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第7話

 

 

 

 

 

「やっ…やりやがったぞアイツ!!」

 

 

誰かが叫ぶ。そして周りも同じように、歓喜の声を上げていた。

 

 

 

「お疲れ様」

 

 

そう声をかけてきたのは細剣使いのアスナだった。

 

 

「おう。あんたもな」

 

 

こちらも無難に応答しておく。無視して背後からサクッと貫かれちゃ笑い話にもならないからな。

 

 

 

「素晴らしい戦いぶりだったぞ。この勝利はあんたのものだ」

 

 

「そりゃどうも。まぁ、一人死んじまった訳だが…」

 

駆け寄ってきた、黒くて渋い顔のオッサンがまたさらに渋い表情をする。こちらとしてはあたりさわりない感じで返したつもりなんだが…。

 

 

「それでも、だ。あんたがいなけりゃ全滅してた、とオレは思う。改めて礼をさせてくれ」

 

 

「やめてくれ…オレはそんな立派な人間じゃない。礼ならそこの細剣使いに言ってやってくれ」

 

 

「ちょっと…やめてよね。わたしだって大したことしてないんだから…」

 

 

ゴツッと細剣のつかでツッコミを入れられる。いや、痛いぞマジで。

 

 

「ハハハッ、熟年夫婦みたいだ―――――」

 

 

 

「おいおいおいおい、なに笑っとるんじゃ!!おまえら、そいつはディアベルはんを見殺しにしたんやぞ!!」

 

 

シンと辺りが静かになった。周りはフィーバー状態、その中で一人だけぷんぷん状態、一体どうしたと言うのだろうか。カルシウム足りてる?(←他人事)

 

 

「キバオウさん、あんたの気持ちもわからないことはないが…」

 

 

連中の代表としてあの黒いオッサン(たしかエギルだっけ…)がキバオウと言う男に声をかけているようだ。

 

 

「やかましいわ!!あんな見たことない強力なスキル持っとるくせに、なんでディアベルはんの援護に入っていかんのや!!本来なら死なずに済んだはずやのに…説明してもらおか、ビーターはん!!」

 

キバオウ氏は怒り心頭の様だ。今にもカラダ全体の血管がプッチン逝きそうである。

 

 

 

「…………ん…?ビーターはんってオレ…か?」

 

 

 

「そや!!お前以外に誰がおるっちゅうねん!!人殺しがッ!!」

 

 

 

「ちょっと、あなたねぇ…!!」

 

 

割って入って来ようとしてきたアスナを制する。エギルには目で制した。

 

 

 

「くくっ…人殺しね…ヒトゴロシ……なるほどなるほど。」

 

 

「な、なんや…?」

 

 

キバオウ氏が、この世の物とは思えないような目でオレを見る。こんな視線、随分と浴びてなかったっけか。つか、そんなひどい顔してんのかオレ。

 

 

「まぁ確かにオレは人殺しかもなぁ…ディアベルを助けることは可能だった訳だしな…」

 

 

 

「なんやそれ…なんやそれ!!ふざけ―――――」

 

 

 

「ピーピーうるせぇよ。テメェも殺されたいのか?今のここでテメェを殺すのなんてワケないぜ?」

 

必要最低限の殺気を込めて言い放つ。気絶しない程度に。

 

 

「見殺しって言ってくれたけどな…ディアベルは自ら飛び込んで来たんだ、ボスのLA取りに。あんたが忌み嫌うベータテスターがよくやる行動だよ。」

 

 

「なんやと…?」

 

 

信じられない、といった表情である。キバオウ氏のみならず、ほかの、特にディアベルが隊長を勤めたパーティーメンバーは心ここにあらずといった状態だ。

 

 

「ディアベルは元テスターだ。オレもだがな……。だが、ヤツは消えオレは存在する。要は弱肉強食なんだよ。ディアベルは弱者ゆえにボスに食われ、ボスはオレが強者だったため、返り討ちにあい狩られた。ほら、アフリカのサバンナで繰り広げられていることと同じじゃねぇか」

 

 

 

「そ、そんなん滅茶苦茶やないか!!弱い奴ら、ワイら初心者を助けるのが強者の務めやないか!!」

 

 

「は?何言ってんだオマエ?調子に乗るなよ、偽善者ウニ頭が。弱いヤツは弱いヤツなりにハイエナでもしてろよ。この世界に救いの手なんて求めるな、むしろ全員敵だ。死体を踏み台に出来ないようなヤツは強者にはなれねぇ。無理なら一生はじまりの街で、自分の数奇な運命を嘆きながらヒッキーしてるんだな」

 

 

オレにしては話しすぎた、このおしゃべりさんな口め。

 

 

 

「ありえへん……コイツ、人間やない…人の皮被った悪魔や…狂っとる、悪魔のビーターや…。」

 

 

 

「おい、ダセェ二つ名つけるなよ…広まったらどうしてくれる。付けるならもうちょい、このオレのイケメン度に合った名にしておけよ、サボテン君」

 

 

 

このキバオウ氏との会話のせいか、オレに向けられる視線の大半が敵意に満ちたものになっていた。恐らく、今日ここで起きたことは殆どのプレイヤーに知らされることだろう。誰に何と思われようとオレには関係ないことだが。

 

 

「二層の転移門はオレが有効化しといてやるよ。まぁ、オレの後についてくるのは勝手だが、死ぬ覚悟はしてこいよ?」

 

 

 

…決まった。カッコよすぎるわオレ。女なら一発で落ちてご開門ですわ。

 

 

「………………。」

 

 

 

アカン…。ツッコミがいないと寒いだけだわ…いや、むしろ下ネタ入れてるぶんタチが悪い。

 

 

 

「それ以前に読心術使えないとツッコミできんってどうやねん…そんな奴一人ぐらいしか思い付かねぇぞ…。」

 

 

どこか釈然としないまま、ドロップ品の《コート・オブ・ミッドナイト》を羽織りボス部屋の奥にある小さな扉を推し開けた。

 

 

 

狭い螺旋階段を登り、扉を開けると絶景が眼に飛び込んできた。が、そんな物には目もくれず、岩肌から伸びるテラスの端に腰を下ろした。残念ながら景色を見て感動出来るような教養は持ち合わせていない。

 

 

 

…しっかし神経を使いすぎた。少しオーバーキル気味だったかもしれない。少し脳を休めよう。

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

 

5分か、いや10分経っただろうか、コツコツと何物かが階段を上がってくる音が聞こえはじめた。もしや、キバオウ氏が怒鳴りつけに来たのだろうか。

 

 

オレは眼を閉じガン無視体制に入るが…足音の主はオレの隣へストンと腰を下ろした。

 

 

 

「ってなんだ…あんたかよ…。」

 

 

「なんだって何よ。失礼ね…伝言、預かってきた」

 

 

「へぇ…なんだ?」

 

 

「エギルさんは『二層のボス攻略も一緒にやろう』って。キバオウは…」

 

 

「あっ、今日はもうそいついいや。お腹いっぱい」

 

 

「そう…じゃあ、これはわたしからの伝言」

 

 

「伝言て…いま話してますやん」

 

 

「あなた、戦闘中にわたしの名前呼んだでしょ」

 

 

「ガン無視かいな……まぁ呼んだが…読み方違うのか?」

 

 

「読み方……?って言うか、わたしあなたに名前教えてないし、あなたのも教わってないでしょ?どこで知ったのよ」

 

 

「…はい?…どこでもなにも、相手の左上ぐらいに小さく書いてあるんだが…」

 

「書いてないわよそんなの。」

 

 

「あー、フレンドじゃないもんな。……じゃ試しにオレにタッチしてみてくれ」

 

「こう…?」

 

 

スパン!!

 

 

「へぷっ!?」

 

 

「ふふっ、ボス攻略会議に来なかったお礼よ」

 

 

「ふぁい…まだ根に持ってたのね…」

 

 

まさかビンタが飛んで来るとは…恐ろしい娘っ!!

 

 

「まぁいい、これで出たはずだ。俺の左上辺りみてみ」

 

 

「んと…あ、ホントだ。か……い……と。カイト?これが、あなたの名前?」

 

 

「あぁ」

 

 

「なぁんだ……こんなとこに、ずっと書いてあったのね」

 

 

「ホントはね、カイト。あなたにお礼を言うために追いかけてきたの」

 

 

「…ビンタ?」

 

 

「違うわよ。…あー、うん。やっぱり、それも含むかも」

 

 

「いろいろ。いろんなことのお礼。わたし……この世界で、初めて目指したいもの、追いかけたいものを見つけたの」

 

 

「はぁん、そりゃいいことだ。」

 

 

「わたし、頑張る。頑張って生き残って、強くなる。キミみたいに。」

 

 

「そうか…、強くなれるさ。あんたには素質があると思うぜ?ギルドに入るのもアリだろう。オレは見てのとおりコミュ力0なんで無理だが。」

 

 

「いいの。言わなくてもわかってる。さっきのことであなたが、どんな道を歩んできたか少しは理解したつもり。そしてこれから独りで行こうとしていることも…。でも…でも、わたし、いつか強くなってあなたの隣に立てるようになりたい…。」

 

 

「…………。」

 

 

「じゃあ…またね、カイト」

 

沈黙に耐えきれなくなったのだろうか、アスナは扉を開け、螺旋階段を降りていった。

 

 

アイツの残して行った言葉の意味は薄々理解しているが、今はいい。オレから答えを求めなくとも、いずれ教えてくれるだろう。

 

 

 

「あ?…オレにメッセージが来るとは珍しいな」

 

 

ちょうど第二層に降り立った頃、メッセージが二件飛んで来ていた。

 

 

『大活躍だったそうダナ、カー君』

 

 

『Asunaさんからフレンド申請が来ています』

 

 

 

「なるほどね…」

 

 

 

もちろんアルゴは無視して、フレンド申請許可ボタンをタップした。

 

 

 

 

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