一般人(嘘)による艦これ世界の過ごし方   作:黒ウサギ

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貴様はそれでも艦娘か!

記憶を失った彼女が目を覚ますまで静かに待つ。

規則正しい寝息が聞こえており、顔色も幾分か良くなったと素人目だか判断出来る。

念のため緊急時の狼煙を上げておいたので、翌日には提督が訪れてくれるだろう。

 

「しかし、何故艦娘が流れ着く?」

 

「可能性の話になりますが、恐らく前日の嵐の中で深海棲艦の襲撃に有ったのではないかと思います」

 

なるほど、確かにあの嵐の中で奴らの奇襲にあったらたまったもんじゃないだろう。

 

「まぁ、詳しくは彼女が目を覚まさないとわからないか」

 

何時目を覚ましても可笑しくは無い。大和さんに見ている様に頼み、夕食の準備に取り掛かる。念の為三人でも余る程作っておく。

 

「っ!潮見、彼女が目を覚ましました!」

 

目を覚ましたと報告を受け、火を止めて彼女の元に向かう。意識を失っていた彼女は今は体を起こしており、何やら大和さんと話をしている。

話が終わるまで待ち、様子を見て近づく。

 

「目を覚ましたか、私の名前は遊佐潮見。名義上この島の持ち主だ」

 

「助けて頂きありがとうございます。申し訳ないのですが、私は今……」

 

「名前を思い出せないのだろう?ならば、無理に思い出そうとしなくても良い。」

 

「っ…ありがとうございます…」

 

何処か悲しそうに顔を俯かせてしまった。ふむ、何か思う所でも有るのだろう。深くは聞かないことにする

 

「まぁ目を覚ました事は良きことだ。先に風呂に入るが良い、長い間海にいたのだろう?体を温めてこい」

 

「重ね重ねありがとうございます…」

 

「大和さん、済まないが彼女を風呂に連れていってくれ、ついでに君も入って来ると良い」

 

「………覗きませんか?」

 

「覗く?何故そんな真似をしなければならないのだ?」

 

家族との関係を悪化させる様な真似を誰が好き好んで行おうとするのか。

 

「確かに。私の事を信用するにはまだ早いだろうが、今だけは彼女のために信じて欲しい」

 

頼む。と頭を下げれば何故か嘆息された。

 

「いえ、信用してないわけでは無いのですが…。考えるだけ無駄な気がして来ました。すいません、お先に失礼します」

 

「ん、あぁ。ゆっくりと温まるがいい」

 

そう告げるとまた嘆息をして彼女は風呂に向かっていった

 

 

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「本当は、覚えているのでしょう?」

 

そう告げると、向かい合う様に入浴していた翔鶴さんは体を震わせる。

目を覚ました時に、彼女は私の顔を見て驚いていた。

恐らく砂浜で一度目を覚ました時は、私の姿が見えていなかったのだろう

 

「記憶を無くしたフリをして、何をしたかったんですか」

 

「私は…」

 

何かを告げようとして、言い淀む。

 

「まぁ深くは聞きません。ですが、潮見に危害を与えるような真似をするならば私は貴女に砲を向けることを躊躇いません」

 

「随分と、提督の事を信頼しているのですね…」

 

「信頼するのは当たり前です、潮見は家族ですからっ」

 

「家族、ですか」

 

そう言った彼女の顔は羨ましそうに、妬ましい様に、そんな感情が浮かんでいた。

潮見が家族として受け入れてくれた時、私は一生彼のために今生を使い切ると決めた。

 

「私のいた鎮守府は、私達の事をその様に扱ってくれる事は有りませんでした」

 

ポツリポツリと、彼女は零す

資材さえあれば、何度でも建造されてしまう私達は兵器として死ぬまで深海棲艦と戦うことを義務付けられていたこと。

最低限の補給のみで、遠征に向かう艦隊は何度も入れ替わりそして、帰ってくることの無い艦隊も多くいた。

深海棲艦との戦いで沈んでいった仲間が、鎮守府で再開することがあった。勿論記憶なんで物は存在しない。

 

「その過程で貴女は折れてしまったのね」

 

「ここの近くに、妹の瑞鶴がいる鎮守府があると聞いて。昨日の嵐に紛れて私は一人逃げ出しました…」

 

「その途中で深海棲艦に襲われてしまったと」

 

であるならば、こんな辺境にイ級とはいえ奴らが現れたのも頷ける。彼女を追って来たのだろう

 

「艦載機は当然打ち出せるわけも無く、私はただただ逃げ回り、沈められる直前に浜辺に辿り着き意識を失いました……」

 

「そう言うことですか……」

 

「もう、戦うのは、嫌っ。皆が、仲間が沈んでくのを見るのは耐えられないっ」

 

果たして私はこの事を彼に伝えるべきか……

伝えても彼は提督の所に預けてくれるだろう。

彼女は妹と一緒にいられるだろう。

だが、彼女は戦えなくなった……

潮見の話を聞いた限り、その提督は人格者だ。事情を話せば出撃に出ることは無いと思う。後は周りがそれを認めるかが問題だ……

 

「翔鶴さん」

 

「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」

 

一人で逃げ出してごめんなさい。見捨てる様な真似をしてごめんなさい。彼女は涙を流し続ける

 

「全てを、潮見に話してください」

 

「え……」

 

「彼なら、それでも受け入れてくれると思います。なんだかんだで、彼は甘い所がありますから」

 

「でも、それでも私は彼を騙して…」

 

「謝れば良いんです。」

 

謝って、全部話して、それから始めましょう。

彼女は泣きながら頷いた。

 

 

-----

 

 

「そう言うことか……」

 

彼女の話を聞き、私は黙って頷いた。

彼女の立場も、これまでも。全てを話してくれた

 

「騙す様な真似をしてしまい、申し訳ありませんっ」

 

ならば私がかける言葉は一つだけ

 

「お疲れ様……」

 

それだけを告げると、彼女は泣き出してしまった。

どうした物かと大和さんを見るが

 

「泣かせたのは貴方ですから。」

 

ぐうの音も出ない。

泣くのをやめさせる方法は一つしか知らないのだが…

 

「済まない」

 

「え、きゃっ」

 

優しく彼女を抱きしめる。

 

「男の胸で申し訳ないが、気が済むまで泣いてくれ」

 

「泣き止みました!泣き止みましたので大丈夫です!」

 

「そ、そうか。なら良いのだが」

 

先程から大和さんの視線が痛いのだ。

 

「なら、君さえよければここに居ないか?」

 

「それはっ」

 

「無理強いはしない、明日辺り提督が瑞鶴も連れて来るだろう。その時に返事をくれ」

 

それだけを告げると、私は自室に戻っていった。

大和さんが、怖かったからとかでは無い。決して……

 

 

-----

 

 

「大和型一番艦に正規空母と来たか。君は何時の間に提督になったのだ?」

 

「気が付いたら大和さんはいましたからね、もう一人に付いては先程話した通りです」

 

提督達は昼過ぎに訪れた。彼女の妹である瑞鶴も喜びをあらわにして、抱きついているのが見えた。

 

「彼女達を君はどうするつもりだい?」

 

「ただの、人として、家族として迎えるつもりです」

 

「ふふ、中々面白いことを言うね」

 

「大和さんに口説かれましたからね」

 

「口説いて無いと思うのですが…」

 

あれは結構近い物だと思うのだが…

すると、話を聞いていた瑞鶴が声を上げた

 

「翔鶴姉ぇ、うちの鎮守府に来ないの!?」

 

「瑞鶴…、ごめんなさい…。私はもう、戦うことが嫌なの……」

 

「翔鶴姉ぇ…、でも!それでも私はそばに居たいよ!」

 

「ありがとう瑞鶴…、でも迷惑は掛けられないわ…」

 

私の所にいるつもりなのだろうか。今更一人増えようが困ることは無いし、部屋も妖精に頼んで増やしてもらうことも可能だ。

 

「済まないが、発言良いだろうか」

 

その言葉の方を向くと、褐色肌の女性が手を上げて居た

 

「長門か、どうした?」

 

提督が訪ねると、彼女は声を荒げた

 

「貴様はそれでも艦娘か!私達は兵器だ、戦うための道具だ!それを捨てて生きようとするなど恥ずかしくは無いのか!」

 

提督に視線を向ける。これが君達の総意なのかと

すると彼は両手を上げて小声で述べる。

彼女は新しく配属されたばかりで彼の方針に納得していないのだと

 

「人類のために私達は生まれたのだ!なのに武器も持たずに何をするかと思えば、仲良しこよしの家族ごっこときた。片腹痛いわ!」

 

「長門……」

 

「大和、貴様の考えは理解出来ない。艦娘をやめると言うのならば私がこの手で引導を渡してやろうか!」

 

「そこまでにしてくれないか」

 

我慢出来なかった。

短い間だが、私の家族を馬鹿にされ。

私の思いも、大和さんの思いもバカにされ。

 

 

「貴様は、一般人なのだろう。ならば彼女達を保有する必要はない、直ちに明け渡せ」

 

「君は艦娘が物か何かと勘違いしていないか?」

 

「何?」

 

一歩踏み出すと、周りがビクリと震えた

 

「彼女達にも意思はある。生きたいと言う意思が。その意思を踏みにじってまで、君は戦場に送るのか?」

 

「そ、それが艦娘だ!家族ごっこなんてものを」

 

「黙れよ小娘」

 

一足で長門の元に近寄り首を締め上げる。

 

「なっ、がっ!」

 

「ご高説をありがとうビックセブン。だがそれは君の意思を押し付けているに過ぎない。艦娘が兵器だと?それこそ笑わせるな。大和さんは私の大事な家族だ。大事な家族を侮辱されたのだ、お前……」

 

 

ーーここで沈むか?

 

 

その言葉と共に、周りの艦娘が武装を展開する。

そうか、君達も私の平穏を乱そうとするのか……

 

「はい、みんな落ち着いてくれ。君もここは怒りを抑えてくれないか」

 

パンパンと手を叩きながら、提督が割り込んできた。

言われた通りに長門の首から手を離す。

 

「すまなかった提督。頭に血が上ったようだ。後の件は貴方に任せる。これで失礼する……」

 

「あぁ、こちらもすまなかったね。」

 

それだけを告げて私は家に戻った。

 

 

-----

 

 

浜辺で私は別れを告げる

 

「瑞鶴、私は彼のそばにいるわ」

 

「っ!翔鶴姉ぇ……」

 

「会おうと思えば、何時でも会えるわ。それに、彼はこんな私を受け入れてくれるみたいだし」

 

「翔鶴姉ぇが無事なら、私はそれでいい!」

 

ありがとう瑞鶴。私の可愛い妹……

 

「提督、申し訳ありませんが私は彼の元で家族として過ごします」

 

「うん、それでもいいと思うよ。心は人それぞれだからね」

 

そう言うと提督は、皆を連れて鎮守府に帰っていった。

 

「潮見さん、いるのでしょう?」

 

「む、ばれてしまったか。なんだ、あんなことをしてしまった手前出て行くのも憚られてな、こっそり見送るつもりだったのだが……」

 

「ふふ、潮見さん。私を、家族として受け入れてくれますか?」

 

「あぁ、昨日も言ったが一人増えた所で変わりない」

 

「でしたら、これからよろしくお願いします」

 

頭を下げる。

 

「うむ、こちらもよろしく頼むぞ。あーと……」

 

「翔鶴とお呼びください」

 

「そうか、よろしく翔鶴」

 

差し出された手に、私も応じる

 

「ずっと、何時までも貴方のそばに……」

 

そう心に決めて

 

 

 




基本この小説の艦娘はチョロインです
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