ARIA The STRANGER   作:空日

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灯里ちゃん登場。
おっとりしているけど、彼女って実はハイスペックなんだと思います。


そして人外にも好かれやすい。


騒がしくも穏やかな昼

ネオ・ヴェネチアの昼は少し騒がしい。

 

それにつられて俺も楽しい気分になりがちなのは、彼らが心から楽しそうだからだろう。

 

波打ち際の広場に展開するレストランで、ブリオッシュとカフェラテ、サラダを堪能していると、清々しい気持ちで一杯になる。

 

今日もまだ心地好い時間が続くんだな、と実感できるこの時間を楽しみながら、今日の残りの予定を決める。

 

「ふーむ……」

 

幸いなことに、俺にはこの世界での戸籍と多額の金銭。

ビザンチン、ルネッサンス、ゴシック様式を詰め込んだ高級ヴィラの自宅。

そして手の中にある観光パンフレットと、衣食住の心配がない。

時間はたっぷりあるので急いでいないが、無為に過ごすのもなんだかなぁ、とやることを探してみたり。

 

そんな時、

 

 

「にゃんこさーーーん! あ、お、おじさーーーん! まってくださーい!」

 

 

どたどたと走りながらゴンドラに乗り込む少女を見て、周りのお客さんがびっくりしている。

危ないな、まったく………と考えて、そういえばと昨日の記憶を引っ張り出した。

昨晩の夕食を取ったレストランで聞いたのだが、俺を気にしてくれた女性はウンディーネと呼ばれる水先案内人らしい。

彼女たちはゴンドラを乗りこなして観光案内などをしてくれる職種らしく、ネオ・ヴェネツィアでも有名な花形だ。

そんな中でもあの女性―――アリシア・フローレンスは、水の三大妖精と称えられる者の一人で、白き妖精(スノーホワイト)という通り名を持つ。

特徴言えばすぐ名前が出てくる有名人ということで、あとになってから随分と恐縮してしまった。

レストランの人には羨ましがられたけども。

 

「よし、ここはひとつ」

 

お詫びの品でももって、御挨拶にいきましょうか。

 

でも、ARIAカンパニーってどこにあるんだろう?

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

中央広場の近くにあるお店でプリンを購入して、早速お暇そうな人に訊ねてみると、すぐに場所は判明した。

歩くとなるとちょっと遠いが、それもまた一興だろう。

 

トッレと呼ばれる小道を散歩していると、一つ気付くことがある。

やけに猫が多い。

品種もばらばらな猫たちが、俺の視界に七匹以上はいる。

港町には猫が多いと聞くが、ここもそうなのだろうか。

 

 

「おいで」

 

 

何を隠そう、俺は猫が好きである。

もちろん犬も好きだが、飼うんなら猫かな、と思うくらいには。

野良に餌付けをする気はないが、触るくらいなら大丈夫だろう。

そう思って一匹、黒い猫を撫でる。

 

「おぉ、ヒトになれてるな」

 

俺の手を嫌がるどころか、身体を横にしてもっと撫でろと俺を見ている。

思わず撫でまくっていると、黒猫の胸に白い模様が入っているのが目に入った。

そして過敏に反応する、俺に搭載された人外センサー。

俺の感覚は言っている、こいつはただの猫ではないと……。

 

「なんだ、ケット・シーか……」

 

「!?」

 

「小さくなれるんだな、きみ……」

 

にゃ~ん、と鳴いて誤魔化そうとしているケット・シーを一撫でして、俺はそろそろ進むことにした。

でもそうか、ここって妖精もいるんだな。

火星なのに。

いや、ここの建物ってほとんど移築だし、一緒に着いてきたのかな。

凄いな、妖精って。

 

「またな、ケット・シー」

 

にゃ!

その呼び方やめろ! と言わんばかりに鳴いて、ケット・シーはその姿を消した。

何してたのかは知らないが、やっぱり猫も暇なのかな。

俺と同じだ。

そのうち一緒に遊ぶのも良いかもしれない。

 

 

 

そんなことを考えながらふらふらしていると、ようやく海の上に立つARIAカンパニーに辿り着いた。

なんだかんだと二時間近く消費してしまったが、また一つネオ・ヴェネツィアを知った。

ここって思ってた以上に不思議系都なんだな。

まぁそれはともかく。

 

「すみませーん」

 

「はい? ……あらあら、昨日の人ね?」

 

解放感溢れるカウンターに座り、肩肘ついて雑誌を読んでいるのは、間違いなく昨日の女性だ。

彼女は俺の姿を見ると、にこにこと立ち上がってくれた。

あいかわらず凄い美人だな。

 

「はい、昨日の人です。昨日は助かったので、お礼を持ってきました」

 

「あらあらそんな、気にしなくてもよろしいですのに」

 

「そうもいきませんよ。まぁそれとは別に、ウンディーネというものにも興味がありまして」

 

「旅行者さんですか?」

 

「いえ、昨日から此処の住人です」

 

「あらあらまあまあ」

 

フローレンスさんは驚いたように両手で口を押えた。

まぁ珍しいよな、移住者。

土地代も建物も余所者には安くないし、最近の若者はマンホームから出ないらしいし。

 

「じゃあ貴方は、引っ越し当日にあそこでお昼寝を?」

 

「……まぁ、つい」

 

「ずいぶんとゆっくりさんなのねぇ。アリア社長と気があいそうだわ」

 

あれ、なんか一気に言葉が柔らかくなった気がする。

どういうことなんですかね。

物腰は変わったようにみえないのに……。

 

「あ、お礼のプリンをどうぞ。有名なお店のらしいです」

 

「あらあら、美味しそうなものをありがとう」

 

「じゃあ御暇しますね。仕事中……ですよね?」

 

「見ての通り………と言いたいところなんですけど、今日は午前中でおしまいだったんです。あとはずーっとのんびりです」

 

ほら、とフローレンスさんが指さすさきには、「chiudere」という文字のプレートが。

じゃあなんで制服着て、カウンターも開けているんだろう。

そう問いかけると、フローレンスさんは嬉しそうに微笑んだ。

 

「実は今日、私の後輩が出来るんですよ」

 

そして俺は、微笑むフローレンスさんの美しさに言葉を失うこととなった。

 

 




アリシアさんは母性が強いイメージ。


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