【彼】は願った。
「好きな能力をくれる!? それで東方の世界に転生!?」
主人公になれると信じ、最強を疑わず。
この先には輝かしい未来が続くのだと思い込み。
「じゃあな、じゃあな! “
そんな
『あれ?』
――生まれ落ちると共に、球磨川禊に
■ ■ ■
初めの名前は××禊だった。
もはや、どんな苗字だったかは覚えていなかったが、球磨川ではないことは確かだった。
2歳を迎えるころ、今世における両親が事故で他界し、遠縁の親戚にあたる『球磨川』に引き取られることになる。そうして、当たり前のように、球磨川禊に名前が変わったが、特に疑問は抱かなかった。
【彼】は既に、本質的な部分が球磨川禊に
超常の存在から、二つの
【彼】は理解していなかった。
【彼】が手に入れた能力は、“大嘘憑き”に“却本作り”――過負荷の中の過負荷、不完全である球磨川禊が
その二つを受け取った――否、受け入れることができなかった【彼】は、その自我を、あり方を、球磨川禊の過負荷性に呑まれた。
しかし――。
運良く、いや、運悪く、というべきか。
【彼】の根幹部分は、呑まれてもなお、球磨川禊の過負荷性を受け入れることはなかった。
【彼】は既に球磨川禊であるが――根幹部分では、球磨川禊を、球磨川禊の過負荷を、拒絶している。
過負荷にとって、拒絶されるなど日常茶飯事だ。蔑まれるのも、搾取されるのも、蹂躙されるのも、過負荷なら受け入れるべき、愛すべき日常だ。
過負荷とは、自らの気持ち悪さを受け入れ、自らの短所をへらへらと笑い、自ら怠惰に堕ちていく存在――なのだが。
【彼】はそんな過負荷としての当たり前を、当たり前のように受け入れることはできなかった。当然の様に、愛することができなかった。
気持ち悪い自分が、気持ち悪い。
そんな感情を抱くのは、既に過負荷ですらない。
【彼】は過負荷の底辺、負完全の球磨川禊でありながら――不完全な球磨川禊でもあるのだ。
■ ■ ■
ここで、一人の少女の話をしよう。
彼女は東風谷早苗、守矢神社に仕える風祝である。
しかし、形骸化した守矢神社に、正式にそのような役職は存在しない。
神秘が失われた現代――それは、妖怪や怪異などの悪性なものに限らず、善性たる神仏までも失わせる要因となった。
そんな現代で、風祝を自認する彼女は、まさしく異端であると言えるだろう。
異端は、亀裂を生む。
失われし神々を、その目に捉えることができるほどの霊力を持って生まれた東風谷早苗――その霊力が、現代において何の役に立つこともなく。
悪目立ちする彼女は、その結果、ただただいじめられていた。
■ ■ ■
――しかし。
東風谷早苗なら、この程度の逆境、いつかは乗り越えるだろう。
天真爛漫に我が道を行き、破天荒な踏破をしていく。
現在は小学生だが、成長し、高校生になるころに幻想入りを果たし、とうとうその霊力の使い道を――奇跡を起こす
だが――。
史実なら、そうなった。
現在のいじめだって、一過性のものでしかなく、彼女は立ち向かえるはずだった。
『どーも、はじめまして』
異端な能力を持つ東風谷早苗は、いじめられた。
『連載も終わっちゃったし、商業側から同人側に越してきました』
ならば、能力だけではなく――全てが異端で、忌むべき彼は、どうクラスメートたちに受け入れられていくのか。
『球磨川禊でーす。よろしくー』
へらへらと笑う、過負荷の底辺。
混沌よりも這い寄る
彼の存在により、東風谷早苗の運命は大きな変化を見せる。
というわけで、ふと思い立って球磨川くんを東方世界にぶっ込んでみました。よろしくお願いします。
原作知識ありの球磨川くんを作ろうと思った結果、こうなりました。あとは【彼】が球磨川の枷になってくれれば、と思っていますが、どうでしょうか。