中途半端な時間ですが、どうぞ!
「…………ありがとう……ございました」
「いいよ」
涙が止まった海未が恥ずかしそうに顔を赤くして礼をしてくる。
別に何度もやってることだから慣れると思うんだけどな
昔はよく泣いていた海未を何度慰めたことか
「それで希ちゃんに会いに行くんでしょう?」
「はい。この時間だと……にこ先輩に勉強を教えていると思います」
海未のことだから絵里ちゃんの実力を知りたいんだろうな
あれだけのことを言われても、やはりA-RISEが素人にしか見えない。と言うのは言い過ぎに聞こえたんだろう。
実際俺もちょっと言い過ぎだと思ってる。
A-RISEは結構レベル高いと思うんだけどな
「希ちゃん、絵里ちゃんのダンスについて何か知ってるかな?」
「分かりませんが、私達の知り合いで一番生徒会長のことを知っているのは、希先輩ですから」
それもそうか。
知らなかった時はその時考えよう
「…………なぁ、海未。希ちゃんはにこちゃんに、勉強を教えているはずだよな?」
「…………そのはずですが」
海未の案内で希ちゃんとにこちゃんを見つけたは良いんだけど…………なんでか、にこちゃんが希ちゃんに胸を揉まれてるんだよね
「あ、海未ちゃんに優希さんやん。どうしたの、何かウチに用事?」
「うん、まあ用があるんだけど……とりあえず何をしてるの君達は?」
「ふざけたにこっちのお仕置き」
希ちゃんはお仕置きは胸を揉むことなのか…………申し訳ないがにこちゃんじゃなくてもう少し大きい子なら感服なのに
「海未ちゃんにもやってあげようか?」
にこちゃんの拘束を解いて海未の方を向いてニヤッと笑う。
…………それならちょっと見たいかも
「…………何を想像しているんですか?」
海未が冷たい視線を俺に向ける。
……こういう時、長い付き合いって嫌だよね。顔を見れば大半のことが分かるから
隠すの下手だから素直に答えるか
「海未がやられてる姿は見たいな~って」
「…………変態」
頬を赤くして小声で返してくれる海未。
…………頬を赤くしてるってことは海未も俺に言われて変な想像してるじゃん
「…………バカ」
本当に伝えたいことがよく伝わるな
「二人とも仲がええな。恋人みたいやで」
微笑ましい笑みを浮かべながらこちらを見ている希ちゃん。
「羨ましい?」
「……ちょっとね。……ウチにはそういう幼馴染みはいないから」
あんまり触れちゃいけないところを触っちゃったかも……。
「それでもとても大事な友達はいるでしょ?」
「……そうやね、ウチにはエリチがいる」
そう、俺には持ってないものを持ってる。
俺と希ちゃんは何かが足りないけど、それを補ってくれるものを持ってる。
似てるね、俺たち
「それで話を戻すけど、希ちゃんに聞きたいことがあるんだけど」
「じゃあバイト先に行きながらでもええ?もうにこっちも限界のようだし」
「わかった。海未もいいよね?」
「はい」
ぐったりしているにこちゃんを放置して店を出る。
……仕方ない、当分動かなそうだから
「そう……、そんなことエリチに言われたん」
希ちゃんのバイト先の神社に着く間に海未が絵里ちゃんと話ことを希ちゃんに伝える。
「はい……A-RISEや優希さんのダンスを見て、素人みたいだって言うのは、いくらなんでも」
「エリチならそういうやろうね。そう言えるだけのものがエリチにはある」
「……どういうことですか?」
「…………知りたい?」
真剣な表情の海未が頷くと、希ちゃんの頬がちょっと上がる。
そして袴から端末を取り出して、ある動画を見せる。
「ちょっと海未ちゃんにはきつかったかな……」
「かもね。…………でも、すぐに立ち直るさ、海未のことだから」
希ちゃんが先程見せてくれた動画は、バレーをやってる幼い頃の絵里ちゃんの映像だった。
衝撃的過ぎて海未はちょっと離れた場所で考え事をしている。
バレーを全く知らない俺でも絵里ちゃんがどれだけ凄いレベルなのかがわかった。
確かにあれなら『ダンスだけは』アイドル全部が素人に見えるな
今日、これを見れて良かったよ。一つ分かったから
「ねぇ、希ちゃん」
「なに?」
「希ちゃんにお願いがあるんだ」
俺は最後の一枚であるチケットを取り出す。
「これは?」
「今度ドームでやるライブのチケット。このライブに絵里ちゃんにもあげたんだ」
「もしかしてエリチを連れてきてほしいとか?」
「うん。妹の亜里沙ちゃんにも渡したからきっと来ると思うんだけど」
来てもらえないと俺が絵里ちゃんにしてやれることが極端に減るからな。
希ちゃんも行くと言えば、嫌々でも来てくれるだろうから。不機嫌そうな顔してるけど、元々は優しいお姉ちゃんだから絵里ちゃんは
「……ライブで何かやるの?」
「絵里ちゃんの表情を少しだけ柔らかくするお手伝いをしてあげようかなって」
「ふ~ん。…………エリチのことよろしくね」
真剣な眼差しで俺を見つめる希ちゃん。
ふふふ、希ちゃん、トップアイドルを舐めるなよ
絵里ちゃんだけじゃなくて、『九人の女神』にアイドルの底力と奇跡はあるって教えてあげるよ
「帰ろう海未」
考え事を未だにしている海未の手をとって歩き出す。
「海未はさ、あれを見てどう思った?」
「…………凄いと思いました。悔しいですがアイドルが素人にしか見えないのも分かる気がします。…………そして私達の今までやってきたことは一体何だったのだろうと……」
「それだけ?」
「…………ダンスを教わりたいと思いました。もし、生徒会長の半分でもダンスが踊れたら、本当の意味で人を惹き付けられると思うんです」
正しい判断だ。
初めて何かをやるときまず最初にぶち当たる壁は、己の実力を知ること。
そしてそこからどうやれば上に行けるかを考える。
内容は色々なことがあるが、ほとんどのものにおいて一番上達するのは
ーーー自分より上手い人に教えてもらう。
それが例え、嫌いな奴でも恥じらいもなく教えてもらう。
そういう人が本当に上手くなる
…………俺も頑張るか
「そうか」
海未の行動が嬉しくて思わず海未の頭を撫でる。
「急にどうしました?」
「いーや、何でもないよ」
「変な優希さんですね。あ、そうでした。明日の放課後からで良いので、穂乃果やにこ先輩に勉強を教えてもらえませんか?」
「直接行けないからテレビ電話になるけど、それで良いなら」
「はい、それで構いません。優希さんの教え方は分かりやすいので助かります」
「これでも良い大学に通ってるからな。明日の朝、テレビ電話に最適な大きいやつを渡すから」
なんと事務所からの頂き物だから俺たちには料金が発生しないと言うオマケ付き
「でも、急に何で勉強を?」
中間テストでもあるのかな?
今の状況ならダンスの練習をしたいと思うんだけど
「もうすぐ中間テストがあるのですが、誰か一人でも赤点を取るとラブライブにエントリーできないんです。生徒会長にダンスを教わる前にこれを何とかしないといけないので」
おお、結構大事なことだな。
それにしても……赤点を取る人っているんだね
「穂乃果ちゃんとにこちゃんが危ないのね」
「はい、穂乃果と凜とにこ先輩が危ないんです。凜は一年生ですし、頭の良い真姫がいるので教えられるので心配ないのですが、穂乃果やにこ先輩は私やことり、希先輩が教えているんですが少々心配で……。特に穂乃果は…………かけ算すら際どい状態で」
…………それは中間テストが危ないとか言うか、よく音ノ木坂に入学出来たね
まさか、ことりちゃんのお母さんの力か……?
…………俺はそんなことはないと信じてるよ、穂乃果ちゃん、ことりちゃん。
「ま、なんだ…………出来るだけ頑張ってみるよ」
そこまでアホな子に一度も教えたことはないけど……。
「はぁ…………仕方ありません。今日から穂乃果の家に泊まり込んで勉強です!」
「そんな~~~!」
放課後、私は穂乃果に勉強を教えてるのですが、イマイチ進みが悪いです。
やる気を出して真剣に取り組めば出来るのに……。
そしてなぜだか、希先輩がこちらをチラチラ見ています。
私が何かしたのでしょうか?
『もしもし、海未?』
「あ、はい、私です」
今日の朝に優希さんから借りた端末から、優希さんの声が聞こえます。
そういえば私からかけて繋ぎぱなしでした。
『ごめんね、放課後になったら電話してって言ったのに。今やっと打ち合わせが終わったところ』
「いえ、こちらこそすいません、お忙しいのにこんなお願いして」
『いいよ、それで誰に何を教えればいいの?』
「それなら、にこっちのことお願いできる?ウチは生徒会の用事があるから」
『ん、分かった』
「ほな、よろしくな」
そういって希先輩は部室を後にします。
…………さっきのが気になりますね
「すいません、私も少し外します。優希さん、ことり、穂乃果のことをお願いします」
『任された。ことりちゃんか花陽ちゃんのどっちか、これを持って二人が見えるようにしてもらえる?』
「あ、じゃあ私が」
花陽が自分の席から立ち上がり端末を持って、二人の勉強を見てます。
これなら問題ないですね
私は希先輩の後を追って部室を後にします。
「希先輩!」
「ん?どうしたの海未ちゃん。ウチに何か用?」
生徒会室の近くで希先輩を見つけて呼び止めます。
「先程、私のことをチラチラ見ていましたが何か用があったのでは、と思いまして」
「ああ、それのことなん。……昨日のエリチの動画見てどうだった?」
「ダンスを教わりたいと思いました。でも、今はそれより先に中間テストの勉強です。赤点を取ってしまったらラブライブにエントリーできませんし、そもそも赤点を取ったメンバーが居ては生徒会長はダンスを教えてくれないと思うんです」
きっと、赤点を取って教えてほしいと言ったら『学業も満足にこなせてない人がいるのに、ダンスを教わりたい?…………まずは学業をしっかりしてから来なさい。話はそれから』と言われるのが目に見えてます。
希先輩は一瞬驚いた表情を浮かべましたが、すぐにいつもの優しい笑みを浮かべます。
「…………ウチの予想以上やね。あの人のお陰かもな」
希先輩は何かをボソッと呟きます。
何でしょう?
「そこまでしっかりと分かってるなら大丈夫やな。勉強、頑張ってな」
そういって希先輩は生徒会室に入って行きました。
ま、希先輩が満足したようなので良いですか……。
『―――そこから、さっき教えた式を使ったら』
「……あ、できた!ことりちゃん!私この問題初めて解けた!」
「やったね、穂乃果ちゃん!この調子で頑張ろう!」
「あの、ここの問題はどうやれば?」
『えっとここは、公式の二に代入すれば解けるよ』
「はい、やってみます!」
部室に戻ると、穂乃果とにこ先輩が真面目に勉強してました。
かなり驚きです。流石の優希さんでも時間がかなりかかると思っていたのですが
「あ、海未ちゃん、お帰り」
穂乃果の勉強のサポートをしていたことりが私に気づいて近づいて来ます。
「穂乃果たちの勉強は順調そうですね」
「うん、優希さんの教え方が上手くてね、穂乃果ちゃんも答えがきちんと出せるから凄いやる気を出してるの。私もね、聞いているだけで勉強になるくらい分かりやすいの」
……優希さんが褒められると嬉しいです。
自分のことではないんですけどね
「ええ、私もたまに教えてもらってますから」
頭の良い人は自分の頭の中で出来るので式を書かない人が多いらしいのですが、優希さんは教える相手のレベルに合わせて書いてくれます。
穂乃果たちには公式の部分まで全部書いてくれますし、私の場合は分からない所だけ書いて教えてくれます。
どんな相手にも分かるように教えられる、そういう人を本当に頭の良い人って言うんでしょうね
『おし、じゃあ二人とも解けたみたいだから少しだけ休憩』
「「やったー!」」
二人は、机に頬をつけます。
やる気を出した分疲れたのでしょう。
『どう、勉強もわかると楽しいでしょ?』
「はい!海未ちゃんやことりちゃんの教え方も上手なんですけど、私の頭が悪すぎて分からないことが多かったんどすけど、今日は今のところは全部わかりました!」
「教えた方が上手くて慣れてそうでしたけど、家庭教師でもやっていたんですか?」
優希さんのことが一つでも知りたいからか、にこが自然にプライベートのことを聞きます。
『いや、特にそういうことはやったことないよ。たまに海未に教えたくらいかな』
「あ、だからいつも海未ちゃんのテストの点数高いんだ」
『いや、穂乃果ちゃんと違って海未は普通に頭良いから』
全くです。穂乃果と違って毎日勉強してるので、あなたより頭は良いですよ
「そういえば優希さんは学生なんですか?」
ことりが可愛らしく首を傾げます。
そういえばそこについては全く教えていなかったですね
『そうだね、今年から大学一年生だ』
「どこの大学なんですか?」
『天上大学』
「「「えっ?」」」
花陽、ことり、真姫が驚きの声をあげる。
『いや、だから天上大学の一年生』
「す、凄い!」
「て、天上大学ってこの辺じゃ一番頭の良い大学だよね!?」
「…………私の志望校」
天上大学は名門校で、日本人なら誰でも知っているような頭の良い大学です。
普通に入るのも難しいのに、アイドルのお仕事をやりながら試験に受かった優希さんの頭がどれだけ良いか。
私などには到底無理でしょうね
「あの!」
『ん、なんだい真姫ちゃん?』
「私、天上大学の医学部を受けるつもりなんですけど…………暇な時で良いので、勉強を教えてもらえませんか?」
『そうだな…………廃校が無くなって落ち着いたらいいよ』
「約束ですよ!」
『了解。じゃあ今は赤点を取らせないように、凛ちゃんのことお願いね』
「はい!」
嬉しそうに答える真姫。
教えてくれる人を探していたのでしょうかね
『それじゃあ三人とも、自分と真姫ちゃんの為に頑張ろう』
「「「……は~い」」」
仕方なさそうに返事をして、問題集をやり始めます。
本当に頑張ってもらわないと困りますよ。
「凛とにこ先輩は回避しましたね」
「後は、穂乃果ちゃんだけだね」
あれから五日間、みっちり勉強して凛とにこ先輩は何とか赤点を回避しました。
後結果が分かっていないのは穂乃果だけです。
今は穂乃果以外が部室で、穂乃果を待っています。
「大丈夫かな……穂乃果先輩」
「あれだけ頑張ってたから大丈夫よ…………たぶん」
花陽と真姫が不安そうに話します。
穂乃果だから、こういう大事な場面で失敗しないとは思いますが……やっぱり不安です。
「あ、穂乃果ちゃん!」
ことりが部室に穂乃果が来たことを知らせてくれます。
いつにもなく元気がなさそうですが…………まさか
「テストはどうだったの?」
真姫が誰よりも先に、そしてストレートに穂乃果に聞きます。
「凛とにこ先輩はセーフだったよ」
「アンタ、私達の努力を無駄にするんじゃないでしょうね!?」
「穂乃果ちゃん……」
「「「「「「どうなの!?」」」」」」
穂乃果以外の全員が同時に同じことを聞きます。
「うん…………もうちょっと良い点だったら良かったんだけど……」
穂乃果は鞄からテストを取り出して
「じゃじゃーん!」
満面の笑みを浮かべてピースサインをしながらテストを私たちに見せてきます。
『60点』
…………赤点ではないですが、私と優希さんに教わったのなら70点は欲しかったです。
まあ、穂乃果にしては頑張ったのでよしとしましょう。
「さあ!今日から練習だー!」
部室を走って飛び出した穂乃果を追って私達も走り出します。
勿論、目的地は理事長室。
目的はラブライブエントリーの許可。
ここまでは、全てうまくいったはずでした…………。
私達が穂乃果に追い付いた時には既に穂乃果が理事長室をノックしていました。
もう、昔からせっかちなんですから
「あれ?」
ノックをしたのに返事が帰ってこないことを不信に思った穂乃果が、少し扉を開けて中を覗きます。
「そんな!きちんと説明してください!」
すると、中から大きな声が聞こえたので、私とことりもその隙間から覗くと、生徒会長が感情を露にして理事長を問い詰めていました。
「ごめんなさい。でも、これは決定事項なの。音ノ木坂学院は
ーーー来年から生徒募集を止め、廃校とします」
「廃校…………」
…………どういうことなんですか?
読んでいただきありがとうございました!
最近、甘い話をあまり書けてないので詰まった時にある人メインの話を気晴らし程度に書いているんですが、メイン決めするため色々なのを見ていたんですが…………希ちゃん単独の作品って少ないですよね?なんで何でしょうね?
私、海未ちゃんの次に絵里ちゃんと同じぐらい希ちゃんも好きですけどね。
さて、次の話はまだ作成すらしてないのでいつになるか本当に分かりません。
気を長くして待っていただけたら嬉しいです。
最後に感想や評価をいただけると嬉しいです。