青春をつかむまで   作:slave

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にわかラブライバーですが他の方の作品を読むうちに書きたくなりました。


廃校の知らせ

 廃校。その二文字を見た瞬間、何も考えられなくなった。数瞬の後に大切に育ててきた花が枯れてしまったような悲しさを感じる。そして花が息を吹き返さないように、もう学校を存続させることは出来ないのだという諦めも。

僕たちの世代から始まった共学は、功を奏さなかったのだろうか?

 

「穂乃果ちゃん!?」

 

僕が立ちすくんでいると、近くから悲鳴に近い声が聞こえる。驚いて声の聞こえる方向を見ると橙色の髪をした女の子が倒れていた。

 

「どうかしたのか!?」

「そ、それが廃校の知らせを見た直後に倒れてしまいまして……私とことりで穂乃果を保健室に連れていきますので、先生に報告していただけませんか?」

 

黒髪の女の子が応えてくれる。確か名前は……園田さんだったかな?今年は同じクラスだけど去年は違うクラスだったし正直うろ覚えだ。ほとんど話したこともないし。

 

「分かった。担任に報告しておくよ。」

「よろしくお願いします」

 

そう言って南さんと園田さんが高坂さんと肩を組む形で保健室へ連れて行った。

 

 その後報告を済ませ、教室に戻るとすぐにホームルームの時間になったが担任はいつもより遅くやってきた。恐らく高坂さんの様子を見に行ってたんだろう。高坂さんが体調不良で保健室にいることだけを述べ、いつも通りにホームルームが進んでいった。

 

ホームルーム終了後の休み時間、園田さんが僕の席に近づいてきて

 

「あの、先ほどはありがとうございました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

 

とても礼儀正しい人だな、と僕は思いながら

 

「いや、全然いいんだよ……って高坂さん、戻ってきたみたいだよ」

「えっ!?」

 

僕と園田さんが高坂さんに注目するが、高坂さんはひどく落ち込んだ様子で席に戻った。

両手を顔に当て何かを呟いている様子だがここからでは聞き取れない。

 

「すみません、穂乃果の様子を見てきますね」

「僕も心配だから行くよ、まだ具合悪いかもしれないし」

 

二人で一緒に高坂さんに近づくと、

 

「学校が無くなる……学校が無くなる……ううぅ……」

「穂乃果ちゃん、凄い落ち込んでる……そんなに学校好きだったなんて……」

 

近くにいた南さんも心配しているようだが、園田さんは呆れた口調で言葉を発する。

 

「いえ、あれは多分勘違いしてるんです」

 

『勘違い?』

 

僕と南さんの声が重なる。すると急に高坂さんが立ち上がる。

 

「どーしよー! 全然勉強してないよー! 学校無くなっちゃったら他の学校に移らなきゃならないんでしょ!? 受験勉強とか、編入試験とか!」

 

どうやら、すぐに廃校になると思っているようだ。涙目で訴えている。

 

「やはり……」

 

園田さんは予想していたようだが、僕は堪えきれず笑顔を浮かべながら

 

「高坂さん、学校が廃校になるのは今の一年生が高校を卒業してからだよ」

「えっ……? 本当? ていうかあの、君は確か……えっと」

 

どうやら高坂さんはまだ僕の名前を覚えていないらしい。少し落ち込むが、僕は目立つ行動をしないし当然といえば当然だろう。

 

「ああ、僕は渡辺恭介(わたなべ きょうすけ)だよ。ごめんね、突然話しかけてしまって」

「ううん! 全然いいんだよ! 私の方こそごめんね、名前覚えてなくて」

「穂乃果! 同じ教室で学ぶ人間として名前を憶えていないのは失礼ですよ! しかもこの方は穂乃果が倒れた時先生に報告しに行ってくれたのですよ?」

「穂乃果ちゃんが倒れた時、すぐに駆けつけてくれたもんね、渡辺君」

「そうなの!? ありがとう渡辺君!」

 

感謝の言葉を述べながら高坂さんが両手を握ってくる。女の子と付き合ったこともなければ関わりを持ったことのない僕は固まってしまう。

 

「あ、うん……」

 

ここで授業開始を告げるチャイムが鳴る。

 

「あっ、もう授業かあ! 改めてありがとう渡辺君!」

「私もまだお礼言ってなかったよね? 遅れちゃったけど、ありがとう渡辺君!」

 

高坂さんと南さんは感謝の言葉を僕に告げて席に戻っていった。園田さんはチャイムが鳴る前に席に戻っていたようだが、僕が園田さんの方を見ると軽く会釈をするように感謝の意を改めて告げてきた。

僕も席に着いたが、なんだかこの授業は集中できそうに無い。少し熱くなった頬が冷めてくれやしないかと、窓際一番前の席から見える鮮やかな桜並木と、桜の花びらを散らしていく春風にそう願った。

 

 昼休みになり、母親の作ってくれた弁当を広げる。一緒に昼食をとってくれるような数少ない男友達はみな進級時のクラス替えでクラスが分かれてしまった。まあ男自体この学院は少ないのだが。

 

弁当を広げ終え食べようとすると、後ろから僕を呼ぶ声が聞こえる。振り返ると高坂さん、園田さん、南さんがいた。

 

「渡辺くーん! 朝のお礼も兼ねて一緒にご飯食べようよー!」

「ほ、穂乃果! 簡単に男の人を食事に誘うなどと……」

「海未ちゃん、そんな大げさに考えなくてもいいんじゃないかな」

 

どうやら高坂さんが独断で決めたことらしい。園田さんは少し狼狽しているようだが、南さんが苦笑しながら収めている。

 

「それは全然いいんだけど、僕の方こそ一緒に食べていいのかい?」

「もちろんだよ!」

 

無邪気に高坂さんは答えてくれる。無意識の言動だろう。

 

「ありがとう、じゃあどこで食べようか?」

 

それでも、その言葉は僕を笑顔にして心を弾ませるには十分なものだった。

 

 その後中庭の木陰に存在するベンチで食べることに決定し、移動した。

そこでは再び廃校の話題になり、

 

「学校が無くなるのは、早ければ今の一年生が卒業する三年後かあ」

 

南さんが複雑な気持ちを抱えたような言い方をする。今更だが、理事長の娘なんだよな、確か。気持ちが沈むのも当然と言えるだろう。

 

「今の一年生には、ずっと後輩がいないことになるのですね……」

「そっか……」

 

三人の気持ちがどんどん沈んでいく。なんとかして雰囲気を戻さなくてはと思案していると急に話しかけてくる人物が現れた。

 

「ねえ、ちょっといい?」

 

『は、はい!』

 

唐突な声に僕たち四人の声が揃う。

 

「南さん、あなた確か理事長の娘よね? 理事長、何か言ってなかった?」

「い、いえ……私も今朝知ったので……」

「そう。ありがとう」

「ほなー」

 

そう言って話しかけてきた人物と、寄り添うように立っていた人物は去ろうとする。すると高坂さんが

 

「あ、あの! 本当に学校、無くなっちゃうんですか?」

「あなたたちが気にすることじゃないわ」

 

そう言って立ち去ってしまう。

ここで何も話していなかった僕だが、見る限り話しかけてきた金髪碧眼の人物は生徒会長だろう。とても美人だがどこか表情に余裕が無いように見える。寄り添っていた人物は確か副会長だっただろうか?同じく美人で、紫色の長い髪が特徴的だがこちらは飄々としていて逆に余裕があるように見えた。

 

生徒会長の余裕の無さは、廃校の知らせに焦りを感じているからなのではないだろうか。そんな確証の無い予想を持ちながらもひとまずは立ち尽くしている三人に、

 

「ご飯、食べちゃおうよ。それから廃校を止められないか、考えてみよう?」

 

すると三人は微笑を浮かべながら頷いてくれた。

 

 その後は四人で談笑しながら昼食を食べ、放課後に廃校を止める方法がないか考えることにし午後の授業に臨んだ。しかし僕は授業中も何度か景色を眺めながら廃校について考えてしまい、先生に注意される場面があった。注意された授業の後は園田さんにも小言を言われてしまったが。

 

 放課後、高坂さんたちとの会議が始まった。

 

「廃校を止めるには、受験者数を増やすしかない。つまりこの学校の良い所をアピールすることが必要ってことだね」

 

当たり前のことだが、会議をするときにはその当たり前の確認が大事なこともあると思い、僕がそう発言する。

 

「この学校の良い所……歴史がある!」

「他にはありますか?」

「うーん……伝統がある!」

「それは同じです」

「えっと……ことりちゃんは何かある?」

「強いて言えば……古くからある、ってことかなあ?」

 

南さんの発言にさすがの高坂さんも呆れ顔だ。僕から言わせてもらえば同じことを二回言った高坂さんもどうかと思う。

 

「ことり、話聞いてましたか?」

 

園田さんも同じく呆れているようだが……正直僕もこれ以外思いつかない。

 

「でも、さっき調べて部活動では少し良い所見つけたよ?」

 

南さんはそう言って部活動の活動で最近の目立った成果を上げていくが珠算関東大会六位など受験生が魅力を感じてくれるようなものは一切なかった。

 

「正直あまり目立つものはないなあ。僕もあまり思いつかないし……」

「私、他にも何かないか家に帰ったらお母さんに聞いてみるね」

 

南さんは理事長である母に聞くつもりらしい。理事長もきっと悩んでいるはずだから何か案を考えているかもしれない。

 

「私、この学校好きなんだけどな……」

 

高坂さんが落ち込んだように言う。その点は僕もまったくもって同感だ。何が好きと言われれば出てこないから困っているのだが、なんとなく音ノ木坂の雰囲気が好きになったからこの学校を選んだのだ。

 

「そうだね。僕も同じだよ。だから今日は帰って家でそれぞれ考えてみよう?」

 

僕の言葉に三人は頷く。しかし頷いた三人の顔は昼休みの頷きとは違い影が差していた。

きっとその影は、夕焼け空から教室に入ってくる光のせいだけではないのだろう。

 

 家に帰り、夕食中も入浴中も考えたが思い浮かばず、結局ベッドで横たわりながら考えている間に眠ってしまった。

 

 翌日学校に行くと、朝から高坂さんが何やら熱く語っている様子だった。

一体どうしたのだろうかと近づいて聞いてみる。

 

「おはよう! 高坂さんは何について話してるの? だいぶん熱くなってたみたいだけど」

「あっ! おはよう渡辺君! 私……ううん、海未ちゃん、ことりちゃんも入れて私たちでスクールアイドルやってみたいって思ってるの!」

「スクールアイドル……?でも園田さん、いなくなってしまったみたいだけど?」

「えぇ!?」

 

驚いた高坂さんは急いで廊下に行ってしまった園田さんを追いかける。高坂さんに続いて南さんも廊下に出る。僕も少し遅れて廊下に出ると、どうやら園田さんは高坂さんの考えを安易なものとして反対しているようだ。

 

「その穂乃果が持っている雑誌に出ているスクールアイドルはプロと同じように努力して真剣にやってきた人達です! 穂乃果みたいに好奇心だけで初めて、上手くいくはずないでしょう! はっきり言って、アイドルは無しです!」

 

園田さんは畳みかけるように高坂さんを批判する。しかし僕にはその好奇心と、高坂さんの行動力が廃校を止めるために必要なものだと感じた。

 

「いや……僕はやってみてもいいんじゃないかなって思うよ。」

 

『えっ!?』

 

高坂さんと園田さんの声が重なる。二人ともこの場面で僕が発言するとは全く考えていなかったのだろう。

しかし南さんは微笑みを浮かべながら静かに頷いた後に

 

「私もいいと思うよ、海未ちゃん」

「渡辺君も、ことりもそんな安易な……! 失敗する可能性の方が高いんですよ!?」

「確かにね。でも失敗を恐れたままじゃ廃校になるだけだし、君たちは三人ともアイドルとして十分やっていけると思う……いや、間違いなくやっていけるよ!」

「も、もう! 今日一日考えさせてください!」

 

そう言って園田さんは少し顔を紅潮させてそっぽを向いてしまった。

高坂さんと南さんも顔こそ普通だが少し照れたように笑っている。

 

そんな三人を見て僕の心臓が少し高鳴る。なんだかもう君たち三人のファンになったみたいだ。そう思いおかしくなって僕も笑う。

 

まだ三人がアイドルをやることすら決まっていないけれど、なんだか上手くいく気がすると、僕は暖かい春風を体に受けた時のような安心感を感じずにはいられなかった。

 

 

 

 




物語に起伏が少ないですねえ
あとことりちゃんがあんまり喋ってないですが、ことりちゃんに限らずみんな大好きです。

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