青春をつかむまで   作:slave

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今回書き方を大幅に変えて書きました。
私にとっては意欲作ですが、よろしければお楽しみください

そして海未ちゃん誕生日おめでとう!


園田海未誕生日記念 番外編

 最近、私は自分の気持ちを上手く整理することができなくなってしまっています。

その原因があなただということも本当は分かっています。でも、それを認めてしまうと余計苦しくなるような気がして認めたくありませんでした。

 

いつからだったでしょうか。日に何度もあなたのことを考えてしまうようになってしまったのは。

あなたのそばをいつも歩いている私を想像して少しだけ満たされますが、その何倍も胸が締め付けられるような苦しさを覚えてしまいます。

私にあと少しだけ勇気があればこんな思いをしなくても良くなるのでしょう。それでもあなたの戸惑った様子と謝りながら断る様子は考えたくもありません。

 

自分から勇気を持って行動せずに私の求める結果を得られたら……なんて都合の良いことを願ってみますが、そんなことは誠実に生きなさいと教えられてきた私自身の心が許しませんでした。

 

 学校に行く際には穂乃果とことりと一緒に話しながら行くので気持ちが楽になります。それでも時々あなたの話題が上がると穂乃果とことりが普段より楽しく話しているように見えてしまいます。私の気のせいかもしれませんが……私はその姿を見て自然に笑って話に加わることができず、愛想笑いを浮かべながら話してしまいます。

幼馴染に対してそのような態度をとってしまうことに自己嫌悪を覚えてしまいます。

 

 学校に到着して授業を受ける際も私よりも前の席に座るあなたを何度も眺めてしまい授業に身が入りません。

学生の本分は勉強なのですから、これではいけないと黒板とノートだけを見るように意識しても真面目に授業を受けるあなたの姿が脳裏にちらついて時々板書を取る手が止まります。

どうしてあなたが私よりも前の席にいるのだろうと見当違いの怒りを感じてしまいますが、私の後ろにあなたがいてもきっと私は集中できないのでしょうね。

 

 昼休みには穂乃果とことりと一緒に中庭で昼食をとります。いつもならあなたも一緒に昼食をとるはずなのですが今日はいないようです。

理由を穂乃果に尋ねてみるとどうやら絵里に頼まれて生徒会の仕事を手伝っているようです。

あなたは優しいですから快く引き受けたのでしょう。でも今はその優しさがうらめしいです。出来ることならあなたの優しさを私にだけ向けてほしい。

それがあまりにも自分勝手な願いだということは分かっていますが、今の私にはそう思わずにはいられませんでした。

 

 昼休みと午後の授業も終わり、ついにアイドル部……μ'sとしての活動の時間である放課後がやってきました。

屋上でライブに向けて踊りの練習をしますが、真剣な目で私たちの踊りを見ているあなたを視界に入れてしまうと集中が途切れて踊りが乱れてしまいそうなのでなるべくあなたを見ないようにして踊ります。

日本舞踊をやっている身としては見られている程度で集中を乱すなど絶対にあってはならないことですが……

踊り終わるとあなたが精一杯みんなに助言をします。時々ちょっとおかしな助言をしてしまい絵里や真姫に訂正されたりもしていますが、そこはダンス経験が無いのですから仕方ないでしょう。

でも私は知っていますよ。あなたがこっそりダンスの勉強をしていること。以前私が一人で部室に入った時、慌ててダンスの本を隠すあなたを見てしまいましたから。

 

密かに努力するあなたの姿を見るたびに私の心の中であなたがどんどん大きくなっていくような感じを覚えてしまいます。

でも、あなたが自分を捨ててμ'sのために頑張る姿を見ると心配にもなるのです。

高校生というのは世間では遊び盛りの年代にあたるらしいですから。半ば自分を捨てる形で部活動を手伝ってくれるあなたは苦しくはないのか、無理をしてはいないのか不安になってしまいます。

きっとあなたは苦しくても助けてほしいだなんて言わないでしょうから。だから私はあなたを陰から支えようと思います。あなたの重荷を一緒に背負ってあげようと思います。

 

 

たとえ私があなたの恋人になれなくても。

 

 

 

 部活終わり、あなたは用事があるからと言ってそそくさと帰ってしまいます。

あなたがいなくなってすぐににこに部室に呼ばれます。私以外の人は呼ばれず、にこは他のメンバーに先に帰るように促していました。

 

何のために呼ばれたのか分からず疑問に思いながらもにこと一緒に部室に入ると、にこは真剣な顔で私に質問を投げかけてきます。

質問の内容は私があなたのことをどう思っているのかということでした。

 

その質問を聞いた瞬間、夜が近づいてきているせいで少しずつ暗くなりつつあった部室が一瞬闇に包まれたような錯覚を覚えます。

 

私は少しうろたえながらもなぜそんな質問をするのか聞きました。質問を質問で返すことはあまり好きではありませんが、この時ばかりはそんなことを考えている余裕などありませんでした。

私の質問ににこは最近私の様子があなたがいるときだけおかしいからだと返してきます。私は驚きました。自分では上手く隠せているつもりでしたが、周りから見て分かる程だったのかと。

 

そしてにこは続けて言います。アイドルに恋愛は厳禁だと。アイドルは自分の気持ちを押し殺してでも応援してくれる人に元気を与えなくてはならないのだとも。

私だってそのくらいの事は分かっています。だからこそ私の気持ちを隠そうと頑張っているのです。

 

私は少し苛立ちを覚えてしまい語気を荒くして声を発しようとしますが、それよりも先ににこが再び話し始めます。その口調は先ほどより穏やかになっていました。

言葉を選んでいるのでしょうか。いつもよりゆっくりと話していましたが、私を元気づけるように私たちはスクールアイドルで、本当のアイドルじゃないのだからそこまで気負う必要は無いと言ってくれました。

 

私はその言葉を聞いてはっとしました。μ'sとしての活動に本気になりすぎるあまり、私はいつの間にか本物のアイドルとして振る舞おうとしていたのです。

自分を捨てているあなたを陰から支えようと決意した私もまた自分を捨てようとしていたのでしょうか。

 

考え込んでしまった私を見て業を煮やしたのでしょうか。にこが私に早く行きなさいと急かしてきます。

その言葉に私は覚悟を決めました。結果はどうあれ私の気持ちを正直に伝えようと。

 

にこに感謝の意を告げ、急いであなたの元へ向かいます。

最後に見たにこの顔には微笑みが浮かんでいました。

 

 慌てて学校を出ると、にこ以外のμ'sメンバーが揃って歩いていました。

急いでいる様子の私に疑問を抱いたのか穂乃果が呼び止めてきます。私は穂乃果に……いえ、あの時の私はきっと全員に向けて言ったのでしょう。

正直になってきます、とだけ言いました。後で考えると分かりにくいことこの上ない表現ですが、こういう時にだけは聡い穂乃果は理解したような表情になり一言頑張れとだけ言ってくれました。

他の人たちも笑顔で穂乃果に続いて頑張れと言ってくれました。

 

私はその光景を見た直後前を向いて走り、振り返ることはしませんでした。振り返ったら涙がこぼれて走れなくなってしまいそうだったからです。

 

 しばらく走ると、あなたの後ろ姿が見えてきました。

結構な距離を走っていた私は息が荒くなり、足も重くなっていましたが不思議と心だけは軽やかでした。

まだあなたから色よい返事を貰えるとは分からないのに心は軽やかだなんておかしいですよね。

 

ようやくあなたに追いつき、あなたを呼び止めます。

振り向いたあなたの顔は驚きに満ちていて、何か大変なことでも起こったのかと心配してくれます。

その言葉を私は否定し、しどろもどろになりながら気持ちを伝えます。

 

きっと私の顔は緊張と走ったことによる疲れで真っ赤になっていたことでしょう。

それに途切れ途切れ話していましたから聞き取りにくかったと思います。それでもあなたは真剣な顔をして私の話を聞いてくれます。

正直、あまりの緊張でどのような言葉で自分の気持ちを伝えたのかはほとんど覚えていません。それでも最後に一言発した言葉は覚えています。

 

 

---好きです、と。

 

 

 私が気持ちを伝えた直後、あなたは私の事を思いっきり抱きしめてくれました。

そしてただ一言僕も同じ気持ちだと伝えてくれました。

今度こそ涙が抑えきれませんでした。穂乃果達に応援されたことも思い出して私は嗚咽を漏らしながら涙をこぼしました

 

 その後私たちは手を繋ぎながら音ノ木坂学院に戻りました。

確証はありませんでしたが、みんなが待っていてくれる気がしたのです。

用事があるはずのあなたは、用事をそっちのけで私に付き合ってくれましたね。後で怒られちゃうななんて笑いながら言っていたのをはっきりと覚えています。

 

 音ノ木坂学院に着くと、私の予想通りみんなが待っていてくれました。

皆の姿を見るとなんだか気恥ずかしくなって手を離そうとしますが、あなたが強めに握りしめてきて離せませんでした。

結局手を繋いだまま皆の前に現れることになりました。

すると皆は口々に祝いの言葉を投げかけてくれます。そして大分前から私とあなたが両思いだという事に皆が気付いていたことも知らされました。

私たちの居ないところで密かにどうやってくっつけるか話し合いまでしていたことも。

 

その話を聞いて私はまた目頭が熱くなってしまいました。私はなんて愚かだったのだろうと。あなたの話を楽しそうにしているμ'sのメンバーを見て少し嫉妬していた自分を恥じます。

私は泣きながら皆に感謝します。穂乃果とことりは泣いている私を見てちょっとうろたえていましたがすぐに笑って私の空いている手を交互に握ってくれました。

凛、花陽に真姫は笑顔でおめでとうと言ってくれました。絵里と希も笑顔でしたがどこか安心したような表情でもあるように思えました。

 

そして私の背中を押してくれたにこを見ると、にこも泣いていました。

どうやらにこはμ'sで一番私の事を心配してくれていたようなのです。

私が思い悩む姿が一人でアイドル部部長をやっていた時期の自分と重なってしまったのだとか。

 

みんなの表情を見た後に歪む視界であなたの顔を見ると、笑顔で頷いてくれるあなたが見えました。

私はそれの意味を察し、μ'sのみんなに向き直り言葉を一言だけ……ありがとうと伝えました。

 

 

 私たちは廃校を免れた音ノ木坂学院を見ながら春の暖かい風を浴びます

左手にはあの日と同じようにあなたの体温が伝わってきます。

私は不意に感謝を伝えた後みんなでお祝いの食事に行き、ついはしゃいでしまい家の門限を過ぎて焦った事を思い出します。

怒られる覚悟は出来ていましたがあなたは一緒に謝りにわざわざ家まで来てくれたんでしたね。あなたが謝りに来たせいで恋人になって一日目で親に気付かれてしまいましたが……

 

今ではそんなことも良い思い出です。

繋がれた左手に光る指輪を見ながら私は思わず顔をほころばせました。

 

 

 

 

 

 

 

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