恋姫†無双 ~前田慶次~ 作:ナナシのヨッシン
「愛紗ちゃん!!」
桃香が、叫んだ。
愛紗の青龍偃月刀と鬼の朱槍が打ち合わせる。
始めの内は拮抗していたが、上から打ち下ろす鬼に軍配があがり、愛紗は押されていた。
「愛紗ー!!」
横から鈴々が、蛇矛を手に鬼に飛び掛かった。
鬼は愛紗に蹴りを入れ、吹き飛ばし蛇矛を受け流して鈴々の頭に拳を繰り出した。
鈴々はその勢いのまま吹き飛ばされ、民家に突っ込んだ。
吹き飛ばされた愛紗は体制を瞬時に立て直して、鬼に切りかかる。
それからしばらく、愛紗と鬼の切りあいが続いた。
愛紗の表情に苦悶の色が浮かぶが、鬼の表情はいまだ余裕があるようだった。
その隙に朱里は桃香の元を離れた。
「いいねぇ。今までの奴らより、ぜんぜん骨があるな。この分じゃ負けてしまいそうだ」
「ふっ、余裕そうな表情をして良く言う」
「それもそうだな!!」
鬼はその切りあいから少し間合いを取り、地面をつま先で思い切り蹴った。
そこにあった土は吹き飛び愛紗の視界を一瞬奪った。
その一瞬を狙い鬼は愛紗の鳩尾に鋭い拳を放つ。
愛紗は鳩尾を押さえ地面へと崩れ落ちた。
「愛紗ちゃん!!」
そう叫び、桃香は愛紗のもとへと駆け寄る。
鬼はその二人を見下ろしていた。
桃香はキッと鬼をにらみつけた。
「何でこんなことをするんですか!? 向こうの街の人から聞きました!! ここには鬼が住んでいて、その調査のために派遣した人達を殺しているって!!」
「俺は、この町を守っているだけだ。この町を消そうとする輩からな!!」
「え? それはどういう」
「二人から離れるのだー!!」
吹き飛ばされた鈴々が朱里と共に戻ってきた。
鈴々は駆け出し、叫びながら桃香・愛紗と鬼の間に入る。
「待って鈴々。彼に聞きたいことがあるの!!」
そう言って桃香は鈴々の前に進み出た。
鬼は鈴々を警戒して武器を構えたままだったが、桃香のその行動に動じることは無かった。
「私の名前は、劉備元徳と申します。私は貴方に聞きたいことがあります。」
「劉備……、元徳だと……?」
「はい? 私の名前は劉備元徳ですけど……」
「いや、劉備は男のはずだし、それにどうしてこんな盗賊まがいのことを!?」
「どうやら、私たちの間で認識に齟齬があるようですね。」
続いて朱里も鈴々の後ろからでてくる。
鬼は武器を下ろした。
「お前は?」
「私は諸葛亮公明といいましゅ。」
5人はお互いに自分の置かれている状況を話した。
「なるほど。その街の奴らが指示して、この町を襲っていたのか」
「貴方の話を聞くとそういうことになりましゅ。徴税の指示、その後の盗賊の襲来も街がやっていたと推測できましゅ」
お互いの誤解が解消された。
「劉備!!」
「は、はい! なんでしょう」
「こたびは迷惑をかけた!! 侘びとして俺を旅の仲間に加えてくれねぇか?」
「はい、いいですよ。 私たちも仲間が増えてくれるのは心強いですし……」
「ありがてぇ、俺の名前は前田慶次ってんだ。よろしくな!!」
「はい!!」
旅の仲間が一人増えた。
旅立ちの日。
町の出口で慶次は町を神妙に見ていた。
隣に、桃香が並び、何も言わずに合掌をした。
それを見た慶次も静かに手をあわせた。
(みんな、今までありがとう。みんなみたいな思いをする奴らを少なくするために、世直しの旅に行って来るわ!!)