恋姫†無双 ~前田慶次~   作:ナナシのヨッシン

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愛紗、鈴々は鬼と交戦し、苦戦を強いられる。



4話

「愛紗ちゃん!!」

 

 桃香が、叫んだ。

 愛紗の青龍偃月刀と鬼の朱槍が打ち合わせる。

 始めの内は拮抗していたが、上から打ち下ろす鬼に軍配があがり、愛紗は押されていた。

 

「愛紗ー!!」

 

 横から鈴々が、蛇矛を手に鬼に飛び掛かった。

 鬼は愛紗に蹴りを入れ、吹き飛ばし蛇矛を受け流して鈴々の頭に拳を繰り出した。

 鈴々はその勢いのまま吹き飛ばされ、民家に突っ込んだ。

 

 吹き飛ばされた愛紗は体制を瞬時に立て直して、鬼に切りかかる。

 それからしばらく、愛紗と鬼の切りあいが続いた。

 愛紗の表情に苦悶の色が浮かぶが、鬼の表情はいまだ余裕があるようだった。

 その隙に朱里は桃香の元を離れた。

 

「いいねぇ。今までの奴らより、ぜんぜん骨があるな。この分じゃ負けてしまいそうだ」

「ふっ、余裕そうな表情をして良く言う」

「それもそうだな!!」

 

 鬼はその切りあいから少し間合いを取り、地面をつま先で思い切り蹴った。

 そこにあった土は吹き飛び愛紗の視界を一瞬奪った。

 その一瞬を狙い鬼は愛紗の鳩尾に鋭い拳を放つ。

 愛紗は鳩尾を押さえ地面へと崩れ落ちた。

 

「愛紗ちゃん!!」

 

 そう叫び、桃香は愛紗のもとへと駆け寄る。

 鬼はその二人を見下ろしていた。

 桃香はキッと鬼をにらみつけた。

 

「何でこんなことをするんですか!? 向こうの街の人から聞きました!! ここには鬼が住んでいて、その調査のために派遣した人達を殺しているって!!」

「俺は、この町を守っているだけだ。この町を消そうとする輩からな!!」

「え? それはどういう」

「二人から離れるのだー!!」

 

 吹き飛ばされた鈴々が朱里と共に戻ってきた。

 鈴々は駆け出し、叫びながら桃香・愛紗と鬼の間に入る。

 

「待って鈴々。彼に聞きたいことがあるの!!」

 

 そう言って桃香は鈴々の前に進み出た。

 鬼は鈴々を警戒して武器を構えたままだったが、桃香のその行動に動じることは無かった。

 

「私の名前は、劉備元徳と申します。私は貴方に聞きたいことがあります。」

「劉備……、元徳だと……?」

「はい? 私の名前は劉備元徳ですけど……」

「いや、劉備は男のはずだし、それにどうしてこんな盗賊まがいのことを!?」

「どうやら、私たちの間で認識に齟齬があるようですね。」

 

 続いて朱里も鈴々の後ろからでてくる。

 鬼は武器を下ろした。

 

「お前は?」

「私は諸葛亮公明といいましゅ。」

 

 5人はお互いに自分の置かれている状況を話した。

 

「なるほど。その街の奴らが指示して、この町を襲っていたのか」

「貴方の話を聞くとそういうことになりましゅ。徴税の指示、その後の盗賊の襲来も街がやっていたと推測できましゅ」

 

 お互いの誤解が解消された。

 

「劉備!!」

「は、はい! なんでしょう」

「こたびは迷惑をかけた!! 侘びとして俺を旅の仲間に加えてくれねぇか?」

「はい、いいですよ。 私たちも仲間が増えてくれるのは心強いですし……」

「ありがてぇ、俺の名前は前田慶次ってんだ。よろしくな!!」

「はい!!」

 

 旅の仲間が一人増えた。

 

 

 

 旅立ちの日。

 町の出口で慶次は町を神妙に見ていた。

 隣に、桃香が並び、何も言わずに合掌をした。

 それを見た慶次も静かに手をあわせた。

 

(みんな、今までありがとう。みんなみたいな思いをする奴らを少なくするために、世直しの旅に行って来るわ!!)


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