5月以来ですよね?お待たせしてマジすいません。
何でもするんで許してください!
お帰りなさい。という合成音声が響いたと同時に周りのデータが形成され、ALOに無事戻ってこれた。
「……帰ってきたか」
そう言いながら周りを見渡すと鏡を見つけた。
「お、鏡あんじゃん。キリにぃも直葉も俺の容姿、何も言わなかったからな。見てみるか」
鏡を覗くとアホ毛の生えた少女が映った。
「……あん?誰かいんのか?」
後ろを見るがそこには誰もいなかった。気のせいかと思い、鏡に視線を戻すと、鏡の中にいる少女も合わせるように視線を俺側に向けてきた。
「……もしかして」
確かめるように右手を挙げた。すると、鏡の少女も右手を上に挙げた。今度は左足を曲げてみた。鏡の少女も同じように左足を曲げた。
……あ、そういう事ね。
「ふざけんなぁぁぁクソ運営ィィィィ!!」
部屋が防音で良かったと初めて思えた瞬間だった。
その後、キリにぃとリーファの三人で今後の予定を話し合い、まずは俺とキリにぃの武器を買うことにした。
「……重量が足らん、次。……これもダメか。次。……お、これはいいな。すいません、コレください。」
キリにぃは武器の重さをSAO時代に近付けるため、片手直剣というよりも、大剣を購入していた。
俺は刀が無かったので、槍を二本と片手直剣を一本、ダガーを二本購入した。
「お兄ちゃん、そんな大きさの武器振れるの?」
「問題ない。お兄ちゃんを舐めるなよ?」
「……そうだね!」
二人の話し声を聞きながら俺は購入した槍と片手直剣をしまい、ダガー二本を腰の左右に一本ずつ吊した。
「二人とも準備はいいみたいだね。それじゃあ、行こっか!」
すぐ……リーファはそう言って翡翠に輝く塔へ歩き出した。
「……どうして塔に?」
「飛行距離を稼ぐために高いところから飛ぶの。高度が稼げるから」
なるほどなぁ。という言葉が口から漏れた。
リーファの言葉に納得しながら塔の中にあるエレベータに駆け込もうとしたら、数人のプレイヤーが現れ、通せんぼの形を取った。激突する寸前に止まることができた。……助かった。
「いきなり前に出てくるなんて、危ないじゃないか」
キリにぃが反射的に文句を言った。
「こんにちは、シグルド」
リーファの挨拶にシグルドと呼ばれた男は挨拶を返すこともなく、
「パーティーから抜ける気なのか、リーファ」
と、言った。男はそのまま言葉を続けた。
「勝手だな。残りのメンバーが迷惑するとは思わないのか」
「ちょっと……勝手!?」
リーファの顔を見るに、約束とは違うことを言われているのか……?
こういう輩はムカつくんだよな……。
「おいそこの「仲間はアイテムじゃないぜ」……キリにぃ」
「……なんだと?」
キリにぃは俺の言葉に被せて男に言い放った。そして、
「他のプレイヤーをアンタの大切な装備のようにロックしておくことは出来ないって言ったのさ」
そのまま男に煽りの言葉をぶつけた。男の顔が赤く染まり、剣の束に手をかけた。
「屑漁りのスプリガンが!リーファ、お前もこんな「ないわー、ゲームでこんなになれるなんて、ないわー。まじ有り得ないわー」こんっの!そこのローブ!貴様も屑漁りのスプリガンか!」
俺もキリにぃを見習い、男の言葉に被せながら煽った。
「アンタ、大人だろ?大人がゲームなんかでそんなマジになってるなんて、アンタのせいでシルフって種族のたかが知れるよな」
「……他種族の領地に侵入しただけでなく、種族自体をバカにしたのだ。斬られても文句はいえんぞ……」
怒りが1周回ったのか、男は先程よりも落ち着いて話してきた。
それに対し、俺とキリにぃは返事をせず、肩をすくめた。
そんなことをしていると、男の後ろにいた取り巻きの一人が男に語りかけた。
「シグルドさん、今はヤバイっすよ。無抵抗の相手をこんな所でキルしたら……」
男は数秒の間考えこみ、
「せいぜい逃げ隠れることだな」
そう言って去って行った。
その後には問題はないまま進み、現れたMobはキリにぃが叩き斬ったり、俺がダガー二本てバラバラに分解したりして進んでいった。
「……そろそろ洞窟か」
「ホントだ。……お兄ちゃん、ホオズキくん、そろそろローテアウトしておかない?」
「「ろ、ろーてあうと?」」
キリにぃと言葉が重なった。
「えっと、交代でログアウト休憩することだよ。中立地点だからアバターが残っちゃうからね」
「なるほどなぁ」
「なるほど。なら、桐ヶ谷兄妹からどーぞ」
「分かった」
「了解。二十分程で帰ってくるね!」
そう言って二人はログアウトしてアバターが残った。
「……フゥー」
二人がログアウトしたのを確認したら、思わずため息が出た。
「ったく、この種族は何なんだよ……」
今一度、スキル欄をみるがそこには装備時にチラリと見えた新スキルがあった。
スキル名は、
『半身の鬼』
だ。……スキルの入手方法が分からん。試すにも、時間が無いしな。まぁ今度やればいいか。
「ただいま!」
「戻ったぞ」
そんなことを考えていたら、もう二十分も経っていたのか、キリにぃとリーファが戻ってきた。
「おう、おかえり」
二人が帰ってきたのを節目に、俺は開いていたスキルウィンドウを閉じてログアウトボタンに目をやった。
「今度は俺か。失礼」
そう言ってログアウトボタンを押した。
「……ふぅ」
現実世界に戻ってきて、俺はとりあえずシャワーを浴びてから夕食を食べ、冷蔵庫に入れて置いたプリンの様子を見てから再度ログインした。大体十分二十分だろうな。
「ただいま」
「おぅ、おかえり」
「お帰りなさい、ホオズキくん」
再度ログインすると、キリにぃが何かを咥えていた。
「……なにそれ」
「雑貨屋で買い込んだ。スイルベーン特産だってさ」
「あたし、そんなのしらないんだけど……」
「ふぅん、まぁいいや。さっさと行こうぜ?」
俺のその言葉に二人は立ち上がった。
「そうね、鉱山都市まで行かないとログアウトに苦労するし」
「そうだな」
先行するリーファの後ろでキリにぃは先程まで通ってきた道を見ていた。
「……どうした?」
「いや、気のせいだと思う。気にしないでくれ」
「分かった」
気にもとめず、リーファに付いて洞窟(後に聞いたがルグルー回廊と言うらしい)に入っていった。
「やっぱり洞窟は暗いね」
「あぁ、灯りが無いと何も出来ないだろうな」
「……そうか?入る前と変わらないように思えるぞ?」
「「「……ん?」」」
キリにぃとリーファが同意見で俺だけが違う意見を言い、全員頭を傾けた。
「ホオズキくん、何か暗視魔法でも使ったの?」
「おいおいリーファ、始めたばっかなのにそんなもん分かるわけ無いだろ?」
「あっ、それもそうだよね。……じゃあ何で?」
黙っていたキリにぃが閃いたように口を開いた。
「……吸血鬼の能力か?」
「能力?」
「……どういうことお兄ちゃん?」
「だってさ、吸血鬼って夜に活動するだろ?灯りも持たないで」
その言葉に俺とリーファはやっと気がつけた。
「そういう事か」
「そっか、暗い所が生活圏だもんね」
リーファの言葉が胸の中にストンと入ってくるのを感じた。一番わかりやすく、納得がいく。
「まぁ、ホオズキくんは置いといてお兄ちゃんとあたしは灯りが無いと何できないから使っておかなきゃ」
魔法の事で気になったのか、リーファはキリにぃにスプリガンの所持魔法について問いかけた。
その中に暗視効果を付与するものがあり、魔力温存の意味も込めてキリにぃが魔法を使うことになった。
そのまま二時間ほど洞窟を進むとリーファにメールが届き、暗号でもあったのかと思うほど悩んでいるところにユイちゃんがプレイヤーの接近を知らせてくれた。そのプレイヤーの数は十二ととても多かった。って、十二!?いくら何でも多すぎだろ……。
「イヤな予感がする。少し隠れようよ」
「いいけど、いったい何処に?」
周りには小さな窪みしかなく、詰めても二人ほどしか隠れる事は出来ないだろう。
「それこそ、あたしに任せて!」
リーファに引かれるがまま三人で窪みに隠れ、リーファが呪文を詠唱する。
「これで大丈夫。でも話す時は小さい声でね。魔法が解けちゃうから」
「了解」
「分かった」
「後二分程で視界に入ります」
ユイちゃんの声を合図に緊張が走った。
しばらくの間、息を潜めていると大量の足音が聞こえてきた。
ちょうどその時キリにぃが何かに気付いたのか、首を伸ばした。
「……スグ、赤いコウモリみたいなのが見えるんだがあれは何だ?」
リーファは魔法が解けない範囲ギリギリまで身を乗り出した。
それを確認するといきなり道の真ん中まで走り出した。
「おっ、おい!何してんだよリーファ!」
「あれは追跡魔法の使い魔よ!潰さないと!!」
その言葉を聞いた男組は直ぐ窪みからとびだした。そうしてる間にリーファは使い魔を消滅させた。
「急いで!街まで走って!」
「また隠れるのはだめなのかよ!」
走りながらリーファに問いかける。
「もうここまで来たら隠れきれないよ!……それに、さっきのは火属性の使い魔なの。だからあたし達を追ってるのは―――」
リーファの言葉を続けるようにキリにぃが口を開いた。
「―――サラマンダーか!」
「しつこ過ぎんだろあの赤妖精ども!」
近づく敵の正体に気が付いたキリにぃは走るスピードを上げ、急いで街へ行こうとする。俺とリーファもそれに続くように走るスピードを上げた。
しばらくの間走り続けていると湖に出た。
「洞窟内に湖ねぇ……。なかなか風情があるじゃん」
多少の感動を覚えて湖をのぞき込んでいるとリーファから注意の声が聞こえた。
「ここの湖にはすっごく強いモンスターがいるから気を付けてね」
出していた頭を素早く引っ込めた。
「まったく。……それにしてもリーファ」
俺に呆れたキリにぃがリーファに問いかけた。
「何?お兄ちゃん」
「あの壁は何だ?」
キリにぃが指差す方は洞窟の出口。その出口を塞ぐように土製の壁が佇んでいた。
「あれも魔法の一つ。壊すには大量の魔法を叩き込めばいいんだけど……」
「その頃には追いつかれてる、か」
「そう言うこと」
「見つけたぞ!もう逃げられないな」
追いかけてきたサラマンダーがとうとう追い付き、逃げられないように盾を構えている。
「……ったく。ホオズキ、リーファ―――」
キリにぃの声を聞くと同時にウィンドウを呼び出し、装備していたダガー二本をしまい、買っておいた槍を一本装備した。
「―――いけるか?」
「「もちろんっ!」」
俺とリーファの声が被った。