『実はさ、アンタ達をここに連れて来たのはこの後に付き合って欲しいからなの。』
そう言うと、リズはヒカル達を連れて教会まで歩いて来ました。
『これから、会ってもらいたい人が居るの。 サーシャ、居るー?』
教会の手前で立ち止まると、中に入りながら名前を呼びます。
『こんにちは、リズ。 彼女達は?』
約1名、またか…。 と項垂れていますが、リズはサーシャと呼ばれたシスター風の女性に紹介します。
『そう、それでここへ…。 どうでしたか、舞台は?』
『今でこそ、ああして舞台をやっては生計を立てていますが…。 一時はホント困っていたんですよ、そんな時に。』
すると後ろから聞き覚えのある声がサーシャの名前を呼びます
『先生さん、待たせたな。 今日の稼ぎや、受け取ってくれ。』
サボテン頭の男、キバオウが食材や
『相変わらず、律儀ね? もう…アンタの役目は、終わったでしょうに…。』
リズがそんなことを言うと、キバオウはじゃあなと後ろ手に挨拶して去ります。
しばらくして陽気な声が響きます。
『サーシャさ~ん!おー待たせしましったーーーッ!』
『あの声、まさか…。』
野武士面の青年が、数人の仲間と共に駆けてきました。
『クライン…何してんだよ、お前。』
その後、風林火山の面々と共に軽く食事を取りながら、今に至ります。
『つまり、攻略の無い時は
等々、賑やかに騒いでいます。 ここが現実なら苦情もあったかもしれませんが、NPCの接客は実に簡素で会話の範囲内なら店を追い出されたりしません。 勿論店で暴れたりすれば、どうなるかは分かりませんが。
『まあ、その…なんだ、その分…舞台道具とか、金は要りようだけどよ。』
頬をポリポリと掻く仕草で照れながら、
『それにしても、お前とこんなに早く再会出来るとはな。』
『アタシが連れてったのよ、サーシャには子供達の装備やなんか頼まれてたし。 それに、今のこの街を見てもらいたかったの。』
サーシャと会った時、教会の中には複数の子供達が居ました。 その誰もが、他人です。 まるで、震災や戦災で居場所の無くなった孤児を、プレイヤーみんなで助けようとする養護施設のように。
『キバオウが言っていたのは、そういうことか。』
『ま、コイツは半分、サーシャ先生に鼻の下伸ばして近づいたってのもあると思うけどね。』
『ははっ、違ぇねえや!』
リズに風林火山の面々が同意すると、クラインがお前ら! と
怒りますが、すぐに笑って流します。
(コイツはそういうヤツだ…あの日、俺が誰より先に見捨てたのに…。 今でも普通に話し掛けてくれる、あの時も最後まで俺のことを心配してくれた。 正式サービス開始直後、最初に出来た、俺のフレンドだ。 やっぱり、お前は凄いヤツだ…。)
『それで、お前らも見たと思うけど…。』
『ああ、最初は驚いた。 何らかのシステム的な不具合による、バグなのか…NPCだったらクエストの可能性もあるが…。』
『わっかんないのよねぇ、中には普通に会話出来る子もいるけど、カーソル出ない子も居るし。』
『サーシャの話だと、発見当初はみんな意識が無かったらしい、世話をしてくれていた彼女達はプレイヤーで間違いないのか?』
リズの疑問に元少年が付け加えます
『たぶん、だがな…彼女達、ストレアとシリカはサーシャが子供の世話をしようと決めて。 それから、しばらくして…倒れているところを保護されたんだ…。 以来、ああして子供達の世話をしてくれている。』
『…しかし、あるのか? そんなことが? 全員が全員意識不明で発見、中にはストレージはおろか装備も身に着けていない…全裸で発見された子も居たんだろ?』
『可能性としてあるのは、彷徨っている間に耐久値が全損してしまったか…。 故意に全損、或いは奪われた…と考えるべきでしょうね。』
『考えたくはないが、そうなるだろうな、年端もいかない子供の心ではこのデスゲームは酷すぎる。 大人でも自殺するプレイヤーが居る位だ、子供が為す術無く途方に暮れた挙げ句…行倒れたり、PKされる可能性は十分にある。』
『記憶の無い子も居るし、余程辛いことがあったのね…。』
ヒカルは黒猫団のみんなを思い出していました、同じことを元少年も考えていました。 圏内なら、普通ダメージは受けません。 そのため、プレイヤーを攻撃してもオレンジになることはありません。 ですが、今回のことは…恐らくそれを逆手に取った、ボックスPKの類いでしょう。
複数のプレイヤーで年端もいかない子供を取り囲み、身動きを封じてからストレージのアイテムや
唯一の救いが、その後記憶を失っている事です、もし仮にこの推測が事実なら…そして、ここが現実なら。 病院で体内の洗浄をしなければなりません、VR空間なので後者は不要ですが。 恐怖は計り知れませんでした、記憶が無いのはそのためかもしれません。
『それで、俺達は犯人を探せば良いのか?』
『ううん、それはもう各ギルドが定期的に見回ったり、取り締まり強化してくれてるから。 問題はね、他にあるのよ…。』
元少年が聞くと、リズが口にします。
『実は、今度22層で子供達のキャンプをすることになったんだけど、その護衛をお願いしたいのよ。 ご覧の通り、各ギルドはこの第1層の調査と警戒で離れられない。 加えて、最近黒鉄宮の奥にダンジョンが発見されてね。 強引に調査しようとして、 犠牲者も出たらしいわ…。』
中層以上に行けるくらいのレベルなら、途中の雑魚は問題にならないらしいのですが、最深部にたどり着く前にトラップなのかモンスターなのか、次々とプレイヤーが消失するというのです。
そのため、現在の黒鉄宮の奥には立ち入りが制限され、入ることは出来ません。
『分かった、22層なら俺達も行こうとしてたところだから、キャンプの引率くらいお安いご用だよ。』
『よろしくお願いします』
元少年とヒカルが承諾を伝えます、リズとクラインそしてサーシャの5人は子供達とキャンプに向かうことになりました。
22層には、森と湖が広がっており、さながら修学旅行などで学校行事が行われそうな雰囲気です。
サーシャ達は、少しでも現実の子供と同じように過ごして欲しかったのでしょう。 湖では釣りをしたり、森の中では虫取りや肝試しをしたり。
食事はキャンプということで、簡易調理キットで行います。
普段と違う生活に、リズもクラインもヒカル達も、サーシャや子供達と一緒に楽しみます。
『今日は、ありがとうございました。 あたし、シリカって言います。』
『あたしはストレア、今日はありがとー! すっごい楽しかった、料理も普段と違うってだけでなんだか美味しいし!』
『子供達も、街の中で閉じ籠ってるより、外で遊んでる時の方が生き生きしているように感じました。』
『まあ、1日だけだったけどさ、何時でも呼んでよ。 コイツとアタシなら、何時でも付き合うから。』
『ああ、攻略の無い日なら何時でも付き合うぜ!』
『俺達も、サーシャさんが迷惑じゃなければだけど。』
リズとクライン、そして元少年とヒカルも、また来よう。 そう伝えました、彼らもまた今日この日キャンプに来れた事を楽しんでいました。
シリカちゃん、楽しかったね 。 ストレアさんも、子供みたいでしたよ。 だってあたし、子供だし。 ええ!?子供の胸じゃないですよ、それ。 ふふん、シリカちゃんは…もう少し大きくならないと、ね。 ふにゃあっ!
隣の部屋では子供達と戯れるシリカとストレア、そんなみんなをもう寝なさい、と叱るサーシャの声が。
ヒカルと元少年の心にはとても眩しく、とても懐かしいものでした…。
月夜の黒猫団、彼等の元居たギルドは……ある夜、レアアイテム目当ての
寝ている相手に
圏内でも殺人は可能なのですが、普通その前に目が覚めて
しかし、身体の自由が奪われていれば、その限りではありません。
本来状態異常は圏内に居る限り絶対になりません、が…
恐らく、月夜の黒猫団のみんなは…そうして殺されたのでしょう。
『現実世界で、私…猫を飼っていたんです。 名前は、ピナっていって…。 いつも、私のお腹にのっかったり、して…。 元気かなぁ…ご飯ちゃんと…食べてるかなぁ。』
『大好きだったんだね、その猫のこと…。』
『…はい、大好きでした。 暖かくて、モフモフしてて…。 また、会いたいな…。』
『大丈夫です、きっと…帰れますよ。 どんなゲームにも、エンディングはあるんですから。 きっとハッピーエンドで終われますよ…』
『はい、ありがとうございます…。 ストレアさん、サーシャさん…。』
お休み、お休みなさい。 と互いに挨拶して、システムにより速やかに眠りに落ちる。
しかし、彼等の帰るべき
HFのストレアとシリカ(オリ設定)を次回から出します、ということで今回は強引に名前紹介だけ。
そしてストレアが出るということは、教会の子供にはある秘密が…あるのかも知れません。