『
ヒカルはうなされていました、そこは現実世界のヒカルの自室、ヒカルはSAOをいえVRMMOをプレイしたことはありません。
興味をもっていた時期はありましたが、ナーヴギアもアミュスフィアも、持ってはいませんでした。
夢の中でヒカルは、真紅の騎士甲冑を身に纏い、執務室の机に祈りを捧げるように顔の前で手を組んだ、独特の雰囲気を漂わせる男性に事情を説明していました。
男性がひと言だけ頷きます
成る程、それで我ら『
侵入者の狙いが蘇生アイテムであれば、それを渡せば済むのではないかね?
しかし、蘇生アイテムは渡すわけにはいきませんでした。
仲間を殺されてしまった、自分達だけが助かった、そう言えるでしょう、しかし2人は話し合って仇討ちすると決めたのです。
勿論実際に殺す訳ではありません、罠を用意して捕まえようとしていました。
少年が作戦を伝えます、血盟騎士団には戦闘用と捕縛用の人員を、そして自分達は蘇生アイテムを持ってもう一度ギルドホームへ戻り仕込みをして待機する。
重要なのはタイミングでした、血盟騎士団に助けを求め時間がたてば諦めてしまうかもしれない、かといって何の策も無く戻れば結末は総じて悲惨なものでしょう。
少年達は、他から見れば気持ちが落ち着いたので帰ります、蘇生アイテムは血盟騎士団に預けたいので日を改めて伺います。
と小さな芝居を打ちました、勿論索敵スキルにより監視されているとわかっている少年の作戦です。
案の定、ヒカル達は尾行されました、なるべく少年が警戒するふりをしてホームへ戻ります。
各部屋をまわり、オブジェクト化されたアイテムなどをストレージにしまい、ホームの中はほとんど何も無くなりました。
離れた場所で景色が歪んでいます、少年からはバレバレですが陽炎達は話し合っています。
あいつらギルドホームを引き払うのか、居場所が特定出来なくなるのは面倒だ、蘇生アイテムは血盟騎士団に預けるようなことを言っていた、遅くとも明日には持って行くはずだ、その前に奪うしかない。
どうやら黒猫達の餌に食い付いたようです、この場合は餌は自分達なのですが。
夜まで待ち、闇に紛れて陽炎の集団は侵入してきました、少年が視認出来る限りでもカーソルは全員オレンジ、恐らく最近巷を騒がせている殺人ギルドでしょう。
少年と少女は奥の部屋へ隠れました、複数の足音が近くまで来ています、手前の部屋から次々調べているようです。
ついに目の前まで来て、開けるタイミングを見計らっているのでしょう、次の瞬間侵入者達は全員信じられないものを見ました。
ありえない、馬鹿な、そんな、どうして、口々に驚く声が聞こえて来ます。
それもそのはず、そう普通ならありえないのです。
侵入者を迎えたその部屋は、血盟騎士団のギルドホームへ繋がっていました、周囲はkobのギルドメンバーに囲まれ、出口は無く入口も無い、正面には真紅の騎士甲冑を身に纏った男性が、背後には童話のお姫様のような女性が。
本来、転移結晶は使用した本人しか効果がありません、使用者以外のしかも複数のプレイヤーを同時に別の場所へ運ぶには使えません。
そこで少年は、とても希少なあるアイテムを使いました。
アイテムの名前は『
それは例えるなら、転移結晶が街へと瞬間的に移動する、有名なRPGでいう呪文のようなものだとすれば、回廊結晶は近未来の猫のロボットが使う何処でも行けてしまう扉でした。
オレンジプレイヤー達は、初めこそ抵抗しましたが、圏内では幾ら攻撃しても意味がありません、加えてここはkobのギルドホーム、増援は幾らでも来ます。
逆に自分達は退路を絶たれ、増援は望めない、万事休すでした。
呆気なく捕縛されたオレンジプレイヤー達は、その活動が繰り返されることはありませんでした。
しかし、蘇生アイテムのために殺されてしまった少年達は帰ってきません、これ以上被害者の増えないようにkobに預けることになりました。
真紅の騎士甲冑を身に纏った男性に挨拶をして去ろうとすると、呼び止められます。
しばらくここに居てはどうかね?
幸いオレンジプレイヤー達は捕縛したが、脅威が全く無くなったとは言えない、脅す訳では無いがSAOに今回の事が伝わるまではこちらで保護しよう。
2人はその申し出を受けました、実際オレンジの集団は依頼者のことを言わなかった、もしかしたらその人が今度は自分の手で襲って来るかもしれない。
kobのホームには厨房も工房もありましたが、ヒカルは何も作る気になりません。
あの時、宝箱を、あの時、扉を、あの時、ダンジョンに、あの時、ホームから…。
後悔と思い出だけが残りました
その晩、夢を観ました、夢の中で夢を観ています。
見ているのはあの時の陽炎、目の前に居る筈なのに、こちらからは揺らぎのようにしか見えない、殺される、殺される殺される殺される!
仲間が死んだ、自分だけ助かった、少年が来るのが少し遅ければ死んでいた、少年と少女だけが助かった。
影の中に闇が浮かんでいました、自分の背後には、闇しか見えない筈なのに、確かに何かがそこに居る。
孤独ではなくても、孤独を感じることはあると思います、仲間の死に何も出来なければ尚更。