Fate/BigDaddy Prototype   作:凡人9号

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※小説情報にも載せましたが、主人公の名前を「シグマ」から「ガンマ」へと変更しました。


第一話 始まりは突然に

何もない真っ白な空間に一人、体を脱力させ浮かんでいる右手にドリルの付いた潜水服が浮いていた。

 

 

 

そう、俺だ。ガンマだ。

色んな人にお使い頼まれたり、娘からテレパシー?受信して会話したり、何かよくわからな注射打ったらビリビリになったり、娘と同じくらいの少女が攫われたり、その攫った奴を撃退したり――――

娘の育ての親をもどかしい気持ちになりながら何も話さず立ち去ったり。娘の人生をどん底へと突き落とした男を激昂して娘が見ていることも忘れてドリルで撲殺したり。如何な感情があったのかは俺には分からないが、これまで協力してくれた守銭奴を、殺すことでしか救ってやれなかったり。その他諸々あって、俺は無事、再び日の光を浴びることができた。時間にして五分もなかったけどな。

 

まぁ、いい最期だったよ。

娘は俺を見て育ったらしく、俺の娘らしからぬ良い子に育ったくれた。敵に罠で捕まってしまった俺を助けてくれたり、自身と同じ境遇の少女達を救おうと尽力し、少女達と協力し脱出艇を起動させたことには感動すら覚えた。脱出艇の中で溺死しかけていた、彼女のこれまでの人生の後半を翻弄した実母を助けた瞬間には胸が潰される思いだった。

そして俺の最後――――

 

文字通り死力を尽くし切り、体力も限界、視界ももうぼんやりとから暗くなっていく。しかしそれでも、だからこそ、美しく成長した娘だけが今の俺の視界には写っていた。

泣きそうな顔をして寝ている俺を見つめる娘のその顔に、最後の力を振り絞って左手を伸ばし、頬を撫でる。

血は繋がっていないし、あまり育てたという実感も湧かないが、彼女は俺を父と慕い、俺も娘と愛した。それだけで十分だった。

だが、それでも絆でつながった娘のやろうとしたことは理解できていた。

 

――――エレノア、止めるんだ。それは、いけない。

 

ドリルを切り離して、右手を上げて娘の左手を掴む。いや、添える程度の力しか出せない。

 

――――子は、親離れをしなくてはならない。さぁ、巣立ちの時だ。

 

もう渡米してから二年で慣れた日本語ではなく、俺が慣れ親しんだ、娘には伝わらないであろう日本語だったが、それでも俺の意思をくみ取ってくれたのか娘はその左手をゆっくりと俺から離していった。

 

――――エレノア、とても優しい、愛おしい我が娘。俺はこれから死ぬが、なにも悲しむことじゃあない。

 

ゆっくりと、優しく俺の手を掴み、胸の前で合わせるように置いてくれる娘に、分からないであろうがヘルメットの中で微笑んだ。

 

――――今生の別れだとしても、()()の傍にいる。君が思い出せば、俺はそこにいる。

 

あぁ、もう駄目だな。

 

――――最後に、言わなくても聡明な君ならば大丈夫だろうが、テネンバウムさんを頼りなさい。きっと、なんとかしてくれるだろう。

 

そして俺は眠りについた。

 

 

 

 

 

本当に、先ほどまで寝ていたと思っていたのだ。

誰かの悲痛な叫び声に起こされて気が付いたが、俺は、なんだ?生きているのか?ここはなんだ?と疑問に包まれているが、一つ、気が付いた。

 

『―――我は常世総ての善と成る者。我は常世総ての悪を敷く者ッ!』

 

そんな声に交じり、強い意志がその声に被せる様に聞こえてくる。

 

聞こえてくるのは「俺は、()()()を助けたい。救いたい!」そんな、確固たる意志だった。

 

『されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者』

 

そして次に聞こえてきた意志が、俺を奮い立たせた。

 

「あの子をあんな目に合わせたあいつを許せない!こんな環境に置いたあいつを許さない!あいつ等を許せない!」

 

あぁ、こいつはあの時の俺とよく似ている。感情に任せてドリルで撲殺した時の俺と・・・・・・

 

『汝三大の言霊を纏う七天』

 

そしてあの時の俺の様に悔やむことになるだろう。その直後に『娘の見てる前でなんてことをしてしまったのだ俺は!』という俺と似たような思いを。

 

『抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!』

 

少し説教臭くなるが、その説教ついでに少女と、彼女を守ろうとするお前も守ってみるとしよう。

 

そして決意を形にするかのように、俺はドリルを回転させた。

 

 

 

 

 

薄暗い一室、地下に設けられた広い部屋で、フードを目深にかぶった人物と、彼の後ろで杖を突いた和服の老人。

 

その二人が一応に見ているのは、その前方の床に書かれた、()()()()()()()()

 

そしてその光が徐々に弱まっていき、地下室を覆っていた光が消える。

 

「―――やはり、無駄だったようじゃの。雁夜」

 

その光景を見て、杖を突いた老人、間桐臓硯(まきりぞうけん)はそう、顔を歪めながら呟いた。

 

「ッ―――もう一度、もう一度だ臓硯!」

 

フードを目深に被った人物がそのフードを手で払うようにして脱ぎ、老人に抗議の声を上げる。

一見青年の様にも見えるが、彼の持つ真っ白な頭髪とまるで老人の様な顔の左側がその雰囲気を青年から()()()()、へと変化させる。

 

「だがのぉ、雁夜。呼び出しても来ぬ、とはそういうことじゃろう」

 

老人はさらに顔を歪めながら言う。まるで内気な子供が必至に作った積木の城を意地悪な子供が壊す時の様な、まるで初めから分かり切っていた様な声色で。

 

そんな反応に青年は唇を噛み切るのではというほどに、苦虫を纏めて数十匹噛み砕いた様な顔をし老人を睨む。

 

「まぁ、お主が使えぬというのならば仕方がない。儂も心が痛むが、桜の()()を進めねばならないのぉ」

 

老人が楽しそうに笑いながら踵を返し、壁面にある階段へと足を運ぼうとした時だ。

 

 

不意に地下室が揺れる。

ただの地震などではなく、まるで()()から叩き上げるような衝撃。

 

 

「―――雁夜。貴様、何かしたか」

「い、いや、何も。というか、何だこれは、どういう状況だ!」

 

老人が訝し気に青年を見、青年は狼狽する。

 

そんな状況にも関わらず、揺れは続き――――

 

ドゴンッ

そんな鈍い音を立て、床に描かれた魔法陣の中央がヒビ割れ、盛り上がる。

 

「一体なにが起こっている!臓硯!」

「生憎だが、儂にも分からぬ・・・しかし、いやまさか」

 

そして床が盛り上がってから数回の衝撃の後、床を吹き飛ばしながら出てきたのは――――

 

「ドッ―――()()()だって!」

 

円錐の側面にある螺旋状の凸が、誰もがイメージするドリルそのものなのだ。

 

青年、間桐雁夜はかつてフリーライターとして世界を巡っていた。

その際に採掘場に立ち寄った事もあるが、彼の知りうる限り、通常のドリルというのは重機に付けて真価を発揮するものだ。

少し小さいものになるが、人が生身で使うことができるようにしてあるものもあるが、地面から突き出しているのは遠目から見ても、大きさは軽く人間の胴に風穴どころか真っ二つに出来るほどだ。つまり、人が携行できるものとはとてもではないが思えない。

 

 

そして、ドリルが一度地面へと戻り、再び出てくるかと警戒していたところ、出てきたのは大きな人の腕だった。

その腕を床に、力を込める様に降ろし、ゆっくりと地面から出てきたのは、頂点に輝く灯りを燈したヘルメットだった。




シグマは語感で決めたのですが、調べてみるとDLC(作者やってない)の主人公がシグマさんらしく。急遽ギリシャ文字を調べて原作主人公デルタに比較的近い番号を名前にしました。

今作はこんな感じの文字数で行きたいかなー、って思ってます。自分が気軽に書ける文字数なので。
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