Fate/BigDaddy Prototype 作:凡人9号
精々残り少ない高校生活を楽しむんだな(暗黒微笑)
深夜、館の長い廊下を黒い体の後方に細く短い尾、そして前方に縦に裂け、鋭い牙の生えたナニカが這うように蠢いて進む一匹の虫がいた。
そう、この虫こそが間桐臓硯の
間桐臓硯の年齢は、詳細は不明であるが齢六百を超えるまさに化け物。一人の人間が六百の年月を過ごすのが如何なことか、それはただ一重に間桐臓硯が独自の
そして先ほどまでの老人としての体を失った間桐臓硯が目的として動いているのはただ一つ。
この家に居る人間は雁夜。そして彼の兄であり
その中で魔術を収めているのは全員であるが、雁夜には現状バーサーカーが護衛としてついており本体で狙うのはリスクが高い上に、十一年間の間魔術師としての実力は言うまでもない。そしてその雁夜よりも実力の劣る鶴野。
その二者の場合、優秀な遠坂家から
「まったく雁夜も馬鹿だわい。上質な器を放置して群がる雑魚の相手をすることに集中しおって・・・」
そこで臓硯は一つの自分の失敗に気が付いた。
この
しかし、後少しで桜のいる部屋に辿り付く、そう判断し心の中でほくそ笑む。が、その直後聞こえる音に違和感を感じた。
これまで聞いたどの虫の羽音でもなく、どこか機械的な風を切る音。
臓硯が不意に後ろを振り返る。
そこにあったのは赤いラインの入った四角形の箱。上部には回転するプロペラを、下部には機関銃の様な物がぶら下がっている謎の飛行物体。
そして、機関銃が光るのが見えた。
間近へと迫る鉛玉を眺めつつ、臓硯はふと過去の事を思い出し、最後の言葉を呟いた。
『お主が、儂を
かつて理想を求め、その過程で手段が目的と入れ替わった亡者は最期に救いを見た。
ひたすら湧いてくる虫を撃ったり燃やしたり踏んづけたり蜂に襲わせたりブンブン煩いブンブン君に襲わせたりと、米俵の様に抱えている男を守りながらひたすら潰している内に気が付いたら湧かなくなっていて最後の一匹を踏みつぶす。
蜂達が俺の左手に戻ってきたのでプラスミドをホーネットに変え手に出来た蜂の巣に蜂が入っていくのを見送る。
ブンブン君は地面にゆっくりと降りていき、そのまま半透明になって地面に吸い込まれるように消えていった・・・機械がそんな幽霊的な現象するなよ、怖いだろ。
「ど、どうしたんだバーサーカー?お、終わったのか?ならすぐに向かって欲しいところがあるんだ!」
辺りの虫の気配がなくなったのに気が付いたのか、雁夜が声を上げる。
パスから送られてくる館の地図のまま進んでいき、途中の床にあった所々穴が開いている床とそこにある血の沁みを無視して進み、部屋の扉を開いてベットで眠る少女の所まで自分を召喚したマスターを運ぶ。
寝ている少女を愛でる半分死んだような男。これはダメだ、警邏を呼ばねば。
「バーサーカー!作戦会議するぞ!」
こっちを向いて突然叫んできたが、テレ隠しというか、そんな行為にしか見えないのだが・・・
とりあえず、雁夜には彼が少女に近づくときに投げ捨てたウミウシを持ち上げてアピールしてみる。
「な、なあバーサーカー。それって、なんなんだ?」
『お前の状況。悪くなる、よくなる、9:1、もない。でも、可能性ある』
「・・・な、生で?」
『グイッと』
「なんでビールみたいな例えなんだ。いや、なんというか、これは・・・」
『任せる。水槽、入れとけ』
「そんな手軽に飼えるのか、これ」
『作戦、会議。だろ』
「その前にこの部屋から出よう」
『担ぐ、か』
「歩けないほどじゃないからな、まだ大丈夫だ」
今にも死にそうなんだけど大丈夫か、マスター・・・あ、血吐いた。これ駄目な奴だ。
間桐雁夜は悩んでいた。
リビングにある椅子に座り、水を入れた水槽で過ごすウミウシをぼんやりと眺めながら。
バーサーカーに『事情は知らないが少し頭を冷やしておけ、彼女のためにな』と纏めればこうなる様な事を言われ、思い返してみたのだ。
「そういえば、
彼が聖杯戦争に参加した理由は「遠坂時臣が自分の娘である桜を間桐臓硯に譲った事」である。
冷静になって考えてみれば、遠坂は間桐が家の中でどんな事をしているかなんて知らないはずなのである。
そう結論付けて、そのことに関してはまだいい。と言い切り、次の事を考える。
やはり彼女を養子に出した事に戻ってくる。遠坂時臣が娘である桜を養子に出した理由は「娘二人は魔術師としては珍しい属性を持っている。魔術師の家が庇護出来るもは二人の娘の内の一人、そして桜の属性が完全にお手上げな遠坂よりも養子の話を切り出した間桐の方が彼女が大成する可能性があるから」というもので、娘を思うあまり。
「おのれ、おのれトキオミィッ!ゾオケェン!!」
時臣の運の悪さ、そしてなにより色々と引っ掻き回してくれた間桐臓硯に対して、しかし自分の浅はかさと一時の感情のみで危うく時臣を殺す方針で行動していたこと、そして何より十一年も逃げ続け何もせずにいた自分自身に怒った。
だがしかし、間桐臓硯は死んだ。自身と兄の鶴野でなんとか桜を庇うだけだ。そのためにはこの聖杯戦争を何とか生き残らなければならない。
「ハッ!バーサーカーを自害!・・・いや駄目だ、バーサーカーだって聖杯を求める理由があるんだから」
そこで雁夜の肩をたたく存在がいた。そう、バーサーカーだ。
パスを通して伝わってくるのは『特に望みないぞ』の一言。
「え?そ、そうなのか?いいのか、バーサーカー?」
そう聞く雁夜に親指の立てたバーサーカーが応え、そのまま部屋から出ていく。
「・・・そうだ、せめて時臣に説教してやる。バーサーカー!時臣のサーヴァントと何とか因縁でも作ってくれるか!バーサーカー?どこにいるんだ?」
その後、十数分探した末。雁夜がバーサーカーを見つけたのは風呂場で、シャワーを潜水服の上から浴びていた。
かりやんの脳みそは残念です。
目的が復讐から説教に変わったくらい。
ペットと化したADAM先輩。