黒子のバスケ~剥ぎ取る称号   作:以心伝心

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第3Q 実力の差

今年もこの季節がやってくる。

期待に胸をふくらませた新入生が自分の力を試さんとばかりに入部していき、そして消えていく。

 

「今年は何人残るだろうな、北?」

「さあ、どうだろ。去年は俺達含めて...7人だっけか?」

その会話を聞くだけでその部活の熾烈さが伺える。

ここは福田総合バスケットボール部。

全国から猛者が集まる、全国大会常連校である。

 

「今年は、帝光から2人来るらしいぞ、望月、北。」

 

「「ちわっす!!石田さん!!」」

この男こそ、全国常連の高校の主将である石田英輝。名実ともに全国区の力の持ち主として名を馳せている。

 

「2人?うちはたしかキセキの世代は獲得できなかったんですよね?」

「まあ、練習に行けばわかるさ。行くぞ。」

 

「それでは、順番に出身中学とポジションを教えてくれ。」

 

「はいっ、西中学出身の稲葉和です。ポジションは.....」

そして残すは2人となった。

 

「じゃあ、その2人で最後か。」

視線は自然とその2人に集まる、否。集められた。

放つオーラが常人のそれとはかけ離れてる。一人は獣のような威圧感。そしてもう一人は機械のような冷徹な表情。

「じゃ、わしからいきますわ。帝光中学出身、紅海斗じゃ。ポジションはガードじゃ。」

「同じく帝光中学出身、灰崎祥吾。ポジションはフォワード。」

 

「あれが帝光かよ、ずいぶんえらそうな態度だな。」

あちらこちらから聞こえる声。どれも好意的とはいかなかった。

「でもキセキの世代じゃないんだろ?たいしたことねえんじゃねえか?」

その瞬間の静けさは忘れられない。冷徹な表情といまにも襲いかかりそうな目。

周りは2人に気圧されたのだ。

 

「そのへんにしとけよ、1年。これから一緒に頑張る仲間になるんだからな。」

「仲間ねえ...」

仲間という言葉はこの2人には似合わない。仲間とは頼り頼られる存在。そんなものに自分はなりたくない。

「わしらは仲間なんぞはいらん。わしらが欲しいのは同志じゃ。キセキの世代を倒すためにな・・・!!」

 

まわりが二人に気圧されているところへ、あの男が入ってくる。

シャツをきちんと着ずに、タバコを咥えている。あの時のままの姿だ。

「よう、お前ら来たか!!石田、今日は1年だけのゲームだ、ゲーム。」

「分かりました、チームはどうしますか?」

にやりとタバコを灰皿に抑えながら言う姿はまるでどこぞの暴力団である。

 

「帝光2人は同じチームだ、あとは好きにしろ。」

「おい、紅。あいつらのデータあんのかよ?」

「だれにものゆーとんじゃ。全国に出てくるような選手のデータはぜんぶあるわ。じゃけえ、まあDFはまさせろや。お前の仕事はOFじゃけえの。」

紅は伊達や酔狂でキセキに勝とうとしているわけではない。そこまで言う努力がある。

だからこそ、帝光でも試合に出ていたのだ。

「のう、この試合簡単に勝たしちゃるけちょっと言うこと聞いてくれや。」

そう言い、自分のデータをチームメイトに話し出す。ここまで詳しく教えられては歯向かおうとも思わない。自分たちとはバスケに賭けるものが違う。

 

「さあ、いこうか!!」

試合は序盤までごくごく普通に行われた。1年ならばこんなものだろう。

 

「(しかし、あの2人おとなしいな。こんなものなのか。)」

石田は今年は全国制覇を狙うつもりだった。そのためには新戦力の獲得が不可欠。その2人がこの程度では残念ながら役不足だ。

 

「(そろそろか。)灰崎、そろそろ仕掛けるけえな。OFたのむで。」

「おう、しくじんなよ。」

 

紅は自分のマークしている男に前に構える。いままでと違い、簡単には抜けそうにない。

「そろそろ時間じゃけえ。わりいが、あんさんにはここで消えてもらうで。」

「急にやる気だしても、何も変わんねえよ!!」

全力のドライブ。しかし、実は紅には止まって見える。

「ほんまにデータ通りの動きするの。左に切れる確立80%。そしてその位置からじゃと、シュートを打つのが0.1秒遅れる。つまり、ブロックが余裕で追いつく時間じゃ。」

「なっ!?」

その後、その選手は完全に止められてしまった。

ボールをもらっても他の選手にパスを出すようになってしまった。

 

「あいつ落ちたな?」

「ああ、意外と早かったわ。次はあのシューター潰すわ。マークチェンジたのむ。」

 

紅の恐ろしいところは、データで相手の動きを封じ込めた先にある。

自分の動きを読まれた選手はそれが続くとイップスに陥る。イップスとは、スポーツ選手が精神的な原因により動きが思うようにできないことである。紅にどんな動きも封じ込められるとやがて自分が封じこめられるイメージができ、自分のバスケットができないようになる。

これが紅海斗の真のバスケット。

 

「掘り出しもんだろ、あいつ?」

この男はやはりまたタバコを咥えている。

「ええ。それにあの灰崎ってやつもいいですね。一人でチームの得点のほとんどを取っている。」

 

確信に変わるのはまだ少し先。

今はそんな予感がした。

こいつらならキセキの世代に勝てると。




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