if〜刹那君は引きこもり〜   作:猫舌

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第12話

刹那サイド

 

 

キマイラを愛でていると、セシアに着信が掛かる。相手はディアーチェだった。僕は通話に応じる。

 

 

「もしもし?」

 

『そっちの用事は終わったか?いい加減レヴィが暴れだしそうなのだが』

 

「ああ、ゴメンゴメン。今帰るから待ってて」

 

『了解した。ではな』

 

「うん。それじゃあ」

 

 

僕は電話を切って《レドルク》をもう一度唱える。

 

 

「じゃあね蒼乃さん。後処理任せるよ」

 

「え、ええ。分かったわ」

 

「行くよセシア!」

 

『はい、マスター!』

 

 

僕はダッシュで家へと駆け出した。街の中を駆け抜けていると、先程見かけた車があった。そこには見たくない顔ぶれもいた。《月村 すずか》、そして《アリサ・バニングス》の二人だ。僕は顔を見られない様に全力で通り過ぎる。今の速度なら二人には強い風が吹いたとしか認識される事は無いだろう。家に帰宅し、急いで食事の続きを作る。

 

 

「ごめんね!今作るから!」

 

「せつな~僕お腹すいた~」

 

「もうちょっと待っててね。すぐだから」

 

 

僕は大急ぎで料理を作る。十分程で料理は完成し、レヴィが何時もよりも多く食べたのでジャーの中身が空っぽだ。食器を片付けながら冷蔵庫の前で水を飲むシュテルと話をする。

 

 

「それで刹那は相手を蹂躙してから帰って来たんですね」

 

「蹂躙って・・・」

 

「私達全員を相手に魔法無しの片手で勝った貴方の戦闘を蹂躙と言わずして何と言えば良いのですか?」

 

「反論出来ないのが悔しいよ。・・・もしかしたら明日管理局が来るかも」

 

「・・・可能性は高いですね。どうなのか真希にメールだけしてみます」

 

「いや、僕からするよ。シュテル達の事がバレるとかなりマズい」

 

「分かりました。・・・刹那」

 

「うん?」

 

 

食器を片し終え、シュテルの声に振り向くと不安そうな表情を浮かべていた。

 

 

「もし・・・もし私達の事が管理局に見つかって引渡せと言われたら刹那はどうしますか?」

 

「・・・守るよ。絶対に」

 

 

僕の言葉にシュテルは少し焦った表情を浮かべ、質問を続ける。

 

 

「で、ですが引き渡さなかったら刹那の生活を脅かされる可能性も・・・」

 

「それでも守るよ。確かに僕の日常は無くなるだろうね。でもさ・・・」

 

 

僕はシュテルを抱きしめて言葉を続けた。まあ、身長的な問題で抱き着く形だけど。

 

 

「シュテル達の居ない日常なら、僕には必要無いよ」

 

「あ・・・」

 

「僕の平穏は引きこもる事だったよ。でも今はシュテル達と毎日一緒に笑い合う日々も僕の平穏だからさ。だから守るよ。絶対に誰にも渡すもんか」

 

「はい・・・刹那、愛してます」

 

「僕も、愛してるよ」

 

 

僕とシュテルはそのまま唇を合わせた。ほんの一瞬、一秒にも満たない口づけ。それは何時間にも、永遠にも感じられる程だった。唇を離し、シュテルを見ると満足そうな表情を浮かべていた。

 

 

「刹那ならそう言ってくれると思っていました」

 

「もしかして僕・・・引っかかった?」

 

「はい。ですが貴方を愛してる事に関しては偽りはありませんから。明日は私も戦います」

 

 

僕の言葉に小悪魔な笑みを浮かべたシュテルは珍しく鼻歌を歌いながら部屋へと戻って行った。僕は溜息を吐きながら端末から蒼乃さんにメールを送信する。内容は簡単で僕の事はどうなった?と言う内容だ。メールを送ってから十秒もしない内に返信が届く。早いなオイ・・・。

 

 

本文:ごめんなさい。貴方の戦闘が私達のデバイスに保存されてて見つかっちゃった。明日貴方の家に行く事になるわ。私も出来る事はするから本当にごめんなさい。

 

 

メールの内容を見て僕は溜息を吐いた。まあ、覚悟はしてたし仕方が無いか。僕はリビングでテレビを見ているディアーチェ、レヴィ、ユーリに言う。

 

 

「三人共、シュテルにも後で言うけど明日この家に管理局が来る事になった。全員悪いけど明日は学校を休んで僕の能力で創った空間に隠れてもらっても良いかな?」

 

「却下だ」

 

「却下だね」

 

「却下ですね」

 

「ええ・・・」

 

 

速攻で却下された。ディアーチェは僕を見て呆れた表情をする。

 

 

「我ら以外の他人に拒否反応を示すお前を放っておける訳なかろうが」

 

「そうだよ。それに好きな人置いて僕達だけ隠れるなんてできないしね」

 

「大丈夫です。もしもの時は刹那を連れて逃げますから」

 

 

彼女達の頼もしい言葉に僕は目頭が熱くなる。ああ、愛されるって幸せだな・・・。この幸せを守ろう。そう心に誓い、僕は部屋に戻った。そして遂に決戦の日を迎える・・・。

 

 

 

 

 

~翌日[夕方]~

 

 

時刻は午後5時。指定された時間帯になり、如月家のリビングは沈黙に包まれていた。シュテル、ディアーチェは眼鏡を掛けて何やら書類を見ていてレヴィは無言でシャドーボクシングに勤しみ、ユーリは金属バッドを磨いている。端末の中ではアインスが管理局のデータベースにハッキングし、汚職事件等を洗い浚い調べ上げていた。セシアはアウトロール形態になり、僕を膝に乗せて抱きしめたまま何も言わない。ねえ、そこまで身構えなくても良いんじゃないの?そう思っているとインターホンが鳴り、僕が立ち上がろうとした所をディアーチェが制し、対応する。カメラの映像を見た瞬間、不快そうな顔をした。

 

 

「馬鹿か貴様らは。そんな大人数で押しかけて大規模戦闘でもするつもりなのか?」

 

『ごめんなさい。それじゃあ何人か外で待機させます』

 

「たわけ。悪目立ちな行動を取るな。貴様を含めた局員二人と蒼乃真希のみ入る事を許可する。その他の塵芥共は帰れ」

 

『待て!そんな事させる訳には行かない。最低でもあと二人だ』

 

「管理局とは多人数で少数の人間を脅す組織なのか?寝言は寝て言え」

 

『分かりました。クロノ、真希さん以外はアースラで待機です』

 

「言わなくても分かると思うがサーチャーや盗聴の類は禁止するぞ」

 

『それは私も確認したから大丈夫よ。もしあったら刹那に容赦無く殺って良いって言っておいて』

 

「良いだろう。では入れ」

 

 

何か最後の方で凄い会話が聞こえたんですけど。知らない声の女性と男性、蒼乃さんと話を終えたディアーチェは玄関へと向かう。玄関の方で驚いた様な声が聞こえたが直ぐにディアーチェが局員を連れて来た。入って来た局員は緑色の髪の女性と黒髪の男子だった。ああ、他人やだなぁ。自然とセシアの袖を掴み、力が入る。セシアは頭を撫でてくれて少しだけ緊張が和らいだ。局員と蒼乃さんが椅子に座る。

 

 

「お茶を淹れて来ます。話をどうぞ」

 

 

シュテルが席を立ち、キッチンへと向かった所で緑色の髪の女性が話を始めた。

 

 

「初めまして。私は時空管理局の《リンディ・ハラオウン》と言います」

 

「同じく局員の《クロノ・ハラオウン》だ」

 

「(親子かい・・・)どうも・・・」

 

「それで早速昨夜の事なのだけれど、何があったのかしら?」

 

「デバイス見たなら・・・分かってますよね」

 

「ええ、でも私は貴方の口から聞きたいのよ」

 

「ハア・・・蒼乃さんの魔力が乱れていたのでつい助けに入りました」

 

 

僕の回答にリンディさんは話を続ける。

 

 

「質問を変えるけど貴方はこの街で生まれ育ったのよね?」

 

「そうですけど。それが何か?」

 

「なら何故君は魔法を知っていてそれを使える?」

 

「僕の先祖が魔道士の家系だったんです。それで?管理局に入れとでも言うんですか?」

 

 

さっさと本題を言って欲しい。回りくどい質問にイライラして来た。僕の言葉にクロノさんが話を切り出した。

 

 

「君の魔力量はハッキリ言って異常だ。僕達管理局は君の様な人を保護する義務と責任がある」

 

「・・・保護じゃ無くて拉致監禁実験の間違いだろうに」

 

「ちょっ、刹那!」

 

「何だと!」

 

 

蒼乃さんが思わず叫び、クロノさんが立ち上がる。レヴィが戦闘体制に入るが僕がアイサインで止める。

 

 

「だってそうでしょう?貴方達の目的は飽く迄も管理世界の平和を守る。ですよね?」

 

「その通りだ」

 

「なら何故管理,外,世界の地球の事に介入して来るんですか?」

 

「そ、それは・・・管理外世界と云えども目の前の危険を見す見す放ってはおけない!」

 

「いい加減にしてよっ!」

 

「いい加減にしなさいっ!」

 

 

クロノさんの言葉にディアーチェが立ち上がろうとしたが先にレヴィと蒼乃さんが立ちあがる。

 

 

「さっきから聞いてれば刹那を危険視した言い方ばっかり!」

 

「そうよ!一度しか見てないけど刹那はあの時自分の力の使い方を把握してたわ。デバイスでも確認できるのに直ぐに刹那を悪者扱いしないで!殴り飛ばすわよ!」

 

 

レヴィ・・・危険視なんて言葉知ってたんだ。怒ってくれた事よりもレヴィが難しい言葉を使った事に対して驚いた。そんな中、お盆とお茶のを持ったシュテルが戻り、皆に出して行く。僕、ディアーチェ、レヴィ、ユーリ、蒼乃さんには緑茶。局員二人には先日レヴィが食べたカップラーメンの器に水道水が入った物が出された。二人は頬を引き吊らせながらシュテルに聞く。

 

 

「あの・・・コレは何かしら?」

 

「何って貴方達の飲み物に決まってるじゃないですか。それとも管理局は組織だけでなく認識機能も腐ってるんですか?」

 

「ふざけているのか!」

 

「巫山戯ているのはそっちでしょう」

 

 

今までに聞いた事の無いシュテルの低い声に部屋の温度が急激に下がった気がした。付き合いの長い筈のディアーチェ達も目を丸くしている。あれ?もしかして・・・怒ってる?

 

 

「さっきから聞いていれば勝手な事をゴチャゴチャと・・・貴方達は誰に向かって話しているのか分かっているのですか?」

 

「な、何だ急に!?」

 

 

まさかシュテルもうネタバレするの!?シュテルは言葉を続ける。

 

 

「ならこう言えば分かりますか?魔法の《ベル家》と・・・」

 

「何ですって!?」

 

「母s、艦長!?どうしたました!?」

 

「ベル家と言えば《聖王》、《覇王》、《冥王》に続く王家、《魔王》の事よ。でもベル家はもう・・・」

 

「隠居していたのですよ、この地球に。それに刹那は只のベル家ではありません」

 

 

そう言ってシュテルは目で合図して来る。僕は結界を張り、セシアに言う。

 

 

「セシア、ちょっとだけリミッター開放」

 

「分かりましたマスター」

 

 

セシアの返事に、僕の中で何かの拘束が解けた感覚と魔力が湧いてくるのを感じた。そして僕の足元に魔力陣が出現する。魔導士にはそれぞれ自分の魔力色と言う物が存在し、僕の普段の色は無色透明だ。その代わり変換資質等を使うとその属性の色に代わる。昨夜出した《ザケル》、《ザケルガ》は青白い色に変化する。リミッターを開放すると色は金色に代わるが・・・。レドルク等の身体強化は特に変化が無い。そんな僕の今の魔力色は透明では無く,虹色,だった。それだけでは無い。髪の色も本来の金色になり、目の色もオッドアイになっている。魔力を開放した僕は直ぐにリミッターを掛け直し、元に戻る。リンディさんとクロノさんは驚いた顔をしている。

 

 

「そ、その魔力色に髪、目・・・聖王・・・なのか?」

 

「詳しく言えば聖王と魔王のハーフですね」

 

 

シュテルが爆弾を投下した。僕は溜息を吐きながら自己紹介をする。

 

 

「自己紹介がまだでした。如月刹那、真名は《セツナ・ベル・ゼーゲブレヒト》です」

 

「「「えええええええ!?」」」

 

 

僕の言葉に局員二人と転生者一人が叫ぶ。それともう一人、端末の画面からアインスが驚愕の声を上げる。

 

 

『せ、刹那が聖王と魔王のハーフ!?』

 

「アインスには説明してなかったね。僕の父親が聖王の血筋の人で母親がベル家の人だったんだ。お互いに幼馴染だったらしいよ」

 

『そ、そうだったのか・・・申し訳ありません聖王陛下!いや、魔王陛下?』

 

「良いよ別に。僕はこの世界で一般市民として過ごすんだから。それに恋人に向かって陛下はおかしいでしょ?何時も通りで良いよ」

 

『刹那・・・』

 

「アインス・・・」

 

「オッホン!」

 

「「にゃあっ!?」」

 

 

リンディさんの咳払いに僕とアインスは我に返る。また人前でイチャコラする所だった・・・。蒼乃さんの目が怖え・・・。リンディさん達にアインスの事を聞かれたが、黙秘権を主張させてもらった。するとリンディさんが口を開いた。

 

 

「分かりました。私達は今後貴方達に干渉しません」

 

「艦長!何故ですか!?」

 

「まさか貴様は特権を知らぬのか?」

 

「特権・・・だと?」

 

「ああ。刹那の家、即ち聖王と魔王の家系は刹那の両親、刹那を残して全滅した。元々伝説上滅びた一族だからな。そんな彼らを管理局と《聖王教会》が狙ったのだ」

 

「それってまさか・・・」

 

「うむ。十年以上前の星が一つ消し飛んだ事件だ」

 

 

ディアーチェの言葉に僕は昔お母さんに話してもらった事を思い出した。確かお父さんが亡くなって僕が生まれてすぐに管理局と喧嘩して無理矢理約束取り付けたと言っていた。それが如月家の特権、

 

 

1.管理局、聖王教会は如月家の人物、所有物に一切の干渉を禁ずる

 

2.聖王、魔王の力を悪用した者は死刑

 

3.その際に出た副産物等は如月家の判断で処理する

 

4.刹那は嫁にやらん!

 

5.以上を守れない者は末代まで《バルギルド・ザケルガ》

 

 

最後台無しやでオカン・・・。とまあこんな感じで特権を取り付けたそうで因みにバルギルド・ザケルガは死にそうなレベルの激痛の電撃を半永久的に浴びせ続けると言うトラウマ物の魔法でお母さんは自分のレアスキルと合わせて恐怖を叩き込んだと言っていた。因みに聖王教会とは文字通り聖王を崇め奉っている教会だ。ディアーチェが思い出している間に説明を終えた様で、クロノさんと蒼乃さんは顔面蒼白で震えていた。リンディさんも顔では冷静を装っているがカップ麺の器の水を息継ぎ無しに一気飲みしている。やがて落ち着いたのかリンディさんはクロノさんと立ち上がって頭を下げる。

 

 

「知らなかったとは言え今回は本当に申し訳ありませんでした」

 

「もう関わって来なければ良いんで。あ、あとコレどうぞ」

 

 

ディアーチェ達に渡されたデータと書類を渡す。そこには管理局の汚職事件についてが記録された資料だ。

 

 

「使い道は任せます。良かったですね、特権に違反してなくて」

 

 

最後にニッコリと微笑む。その後、フラフラとした足取りでリンディさん達は家を出て行った。蒼乃さんには夕飯を食べて行ってもらう。今回怒ってくれた礼の様なものだ。セシアの膝から降りると食事の用意を始めた。今日の食事はちょっと豪華にしよう。局員を追い返したお祝いだ!そう思いながら食事を作り終わり、皆で食べた後、蒼乃さんがある話題を取り出した。

 

 

「そう云えばもうすぐなのよね」

 

「何が?」

 

「私と刹那は修学旅行の実行委員なのよ。だから来週下見に行かないといけないの」

 

「へえ、そうなんだ。僕と蒼乃さんが・・・何だって?」

 

「だから私と貴方で下見よ。刹那が居ない間に決まったの」

 

「・・・嘘やろ?」

 

 

て言うかクラス一緒だったの?しかも変な役目押し付けられてるし・・・。

 

 

「大丈夫よ。お金は学校持ちだし、私と貴方だけだから他に人は居ないわ」

 

「おい、目を逸らすな。他に誰が相手なの?」

 

「・・・アリサとすずか・・・」

 

 

キリキリキリキリ・・・

 

 

シュテルが無言で差し出した胃薬は凄く染みた・・・。

 

 

刹那サイド終了




はい!刹那が実は王族だった話でした!
そしてシュテルの塩対応(笑)
次回、刹那の旅行下見!はたして刹那の胃は持つのか!?
お楽しみに!
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