刹那サイド
朝、食事を終えた僕達は修学旅行の視察を本格的に始めた。この日は午前中で全ての日程が終わってしまい、残りは自由時間となった。僕は一人、海沿いの道を歩きながら端末の広告を見返す。セシア達の行きたがっていたライブは夕方からで、かなりの時間が空いている。さて、蒼乃さん達はショッピングに行ったし先生達はエステだし、何をしてるかな・・・。考えていると、目の前を小学生位の子供達が遊んでいるのか駆けて来る。思わず僕は距離を取る。だがそれがいけなかった。
「あ・・・」
僕の体は宙に浮き、その身は海へと投げ出された。この時僕は死を予感した。何故なら、聖王と魔王の血を継ぎ、転生者であるにも関わらず僕は・・・,泳げない,からだ。
「がぼっ!?ごぼごぼ・・・」
水を飲んでしまい、無駄に澄んだ水の中へと沈んで行く。セシア達はライブ直前までアイドルのサイトへ行ってしまっているので助けてくれる人がいない。本格的に焦るが何も出来ずに僕の意識は沈んで行った・・・。
刹那サイド終了
三人称サイド
刹那が沈んでから数十分後、とある港で撮影が行われていた。港でカメラに囲まれながら二人の少女が釣りを行っていた。暑い日差しにも関わらず厚めのゴスロリ服に身を包んだ少女《神崎 蘭子》と短い髪に涼しげな服装の少女《輿水 幸子》、この二人は現在人気爆発中のアイドルだ。この日は沖縄のライブとテレビの撮影が同時に行われていて、現在はテレビの撮影中だ。
「くっくっく、哀れな子羊共に手を差し伸べよう!(頑張って釣るぞ~♪)」
「中々釣れませんね・・・。きっと僕の可愛さに恥ずかしがってるんですね!」
個性的な喋り方とドヤ顔を決める二人にスタッフ達には笑いが絶えなかった。だが、この空気が一瞬で変わる事をまだ誰も知らなかった・・・。暫く経つと、蘭子の釣竿に誰からも見えない死角から物陰が近づいていた。泳いでいるのではなく、まるで波に流されているかの様な動きで、釣り針へと近づいていき、針に掛かる。突然の重い引きに蘭子は焦りながらも釣り糸を巻き上げる。
「こ、これは正にリヴァイアサンの現界!?(お、大物かな!?)」
「か、神崎さん!絶対に逃しちゃダメですよ!」
幸子に支えられながら蘭子は精一杯リールを巻いていった。そして眼前に釣れた大物が現わになる。それは・・・
「・・・へ?」
「はわわわ・・・」
白い髪の少女だったのだから・・・。
「「いやあああああああああ!?」」
その瞬間、最高潮だったボルテージが一気に下降し、少女は急いで陸へと上げられた・・・。
三人称サイド終了
刹那サイド
「ん・・・生きてる?」
目が開き、意識がハッキリとした僕は簡易テントのベッドで寝かされていた事を自覚した。体もそこまで重くは無く、直ぐに動き出す事が出来た。テントから出ると、そこは港町の様で、随分流されたと思った。すると向こうの角から一人の少女が姿を現した。確か広告に載っていた・・・神崎何とかだったっけ・・・。目の前のゴスロリ少女は僕を見ると慌てて駆け寄って来て僕に話し掛けて来た。
「き、君もう動いても大丈夫なの!?」
「は、はい。大丈夫です」
「わ、私スタッフさん呼んで来るね!ちょっと待ってて!」
そう言ってタタっと走り去ってしまった。あれ?朝に動画見た時は何て言うかこう・・・ディアーチェみたいな話し方だった気が・・・。暫くするとスタッフさんとやららしき人と白衣を来た人が歩いて来た。僕は軽い検査を受けて以上無しとされた。医者の話に寄れば、僕は呼吸停止の状態で発見されたが、陸に上げて少しして勝手に水を吐き出して回復したそうだ。相変わらず自分の人外レベルな体に嫌気が差す。改めて気が付いたのだが、僕は私服では無くて誰かのワンピースを着させられていた。しかもサイズはブカブカで今にも脱げそうだ。
「あの・・・コレは?」
「ああ、手頃な患者衣が無かったのでね。君の発見者の子に借りたんだよ。それじゃ、私はこれで失礼するよ」
「はい、ありがとうございました」
医者を見送った後、僕を釣り上げると言う名の発見をした二人が来た。それは世に言うアイドルの二人で、第一声は僕の身を案じる言葉だった。そしてワンピースを貸してくれた輿水さんにお礼を言う。
「輿水さん、ありがとうございました」
「いえ、気にしないでください。それにしても、ジャージなんて随分と男らしい服ですね。そっちの方が似合いますよ」
「いや、僕男なんでジャージで良いです」
その瞬間、輿水さんと神崎さんの体がピシッと固まった。
「え・・・男の娘何ですか・・・?」
「ニュアンスに悪意を感じるけど男だよ僕は」
この後、二人のアイドルとしての話等をして、僕はライブの予約席のチケット何て物と会場までのバス代を貰った。ホテルが会場に近くて良かった・・・。僕は神崎さん達と別れ、ライブ会場に着いた。ライブ開始まで残り二時間弱ある。暫く待っているとセシア達が戻って来た。
『すまない刹那、遅くなった』
「ん、事前学習はバッチリかな?」
『はい、動画サイトで見てきたので完璧です』
『日本のidolはberrycuteだネー!』
「まあ、もうすぐ始まるから待ってようか」
そして時間は過ぎ、ライブ開始一時間前になった。ステージの方を見ると様子が少し可笑しい。皆異様なまでに焦っている。少し嫌な予感がした僕は他人に話し掛ける勇気を持って列を抜け出し、スタッフ以外立ち入り禁止のステージ裏へと忍び込んだ。なるべく見つからない様に進むと、控え室へ着く。入口が空いていて、こっそりと覗くと彼女達のプロデューサーが頭を抱えていた。
「くそっ、このままじゃ蘭子達がライブに間に合わない・・・」
「あの・・・どう言う事ですか・・・それ?」
「き、君はあの時の・・・!」
「ご、ごめんなさい。神崎さん達に何かあったのかと思ってつい・・・」
僕が俯きがちに言うと、プロデューサーさんは落ち込んだ様に言う。
「実は蘭子達の乗った車が渋滞に巻き込まれて遅れてるんだ。来るのは恐らく30分後だろう」
「だから焦ってたんですね・・・」
「ああ、今回はかなり無理を言ってこの企画を通してもらったから下手に遅らせるとマズイ事になる。誰か代わりのアイドルを入れたいけど今からじゃ到底間に合わないんだ・・・」
「・・・あの、一つだけ提案が」
「うん?」
流石に彼処まで迷惑を掛けておいて見過ごす事はしたくない。僕は一度深呼吸をして、ある事を提案した。その提案は受け入れられ、僕は別の部屋に通される。そして僕は用意された裁縫道具と布を出して衣装を急ピッチで作る。
「・・・よし、コレで衣装は大丈夫だ。まさか自分から女装する事になろうとは・・・」
僕はプロデューサー達に衣装を見せて次にメイク室へと通される。そう、僕の提案は神崎さん達が来るまでの時間の前座をする事だった。コミュ障の僕だけど恩を無下にする位ならそんな物克服してやる。メイクは髪の毛を一時的にピンクに染めるだけだった。下地が完璧らしい。衣装に身を包んで、コッソリセシアの待機状態を別な物に変える。それはガンダムシリーズでお馴染みの《ハロ》だった。
「セシア、それじゃあ手筈通りに宜しくね」
『任せてください!マスターの大事な一歩をしっかりサポートします』
『刹那、頑張れ。お前ならできるさ』
『提督なら会場の視線を独り占めデス!』
「それじゃあ、行ってくるよ」
僕は衣装と髪飾りを確認してステージの横へとスタンバイする。髪型と服はラクスをイメージして作った物だ。スキルメイカーを使ってどんなに動いてもスカートの中身が見えなくなる能力をこの為だけに創った。プロデューサーさん達に合図され、僕は遂にステージへと登って行った。目の前に沢山の人達がいて、視線を向けて来る。そしてブーイングの嵐が始まった。
----誰だよお前!蘭子ちゃん達を出せよ!
----チビは引っ込んでろ!
----でも、あの子凄く可愛いわね
----あのちょっと背伸びした感じの服がまた良いわね
ブーイングの中に褒め言葉が混じり始めた。僕はその言葉に勇気を貰って、声を出す。
「初めまして、私は《ラクス・クライン》と申します」
ガンダムシリーズの歌姫の名前を借りて、話を進める。
「神崎蘭子さん達が来るまでの前座を務めさせて頂きます」
----帰れよ!
----そうだそうだ!
「聞いてください!彼女達は今、戦っています!貴方方の笑顔を作るために・・・その為に戦っているのです!自分達の戦場で!」
そこまで大袈裟なものでも無いが、何気に効果があった様で、会場がシンとなる。プロデューサーに聞いたが、神崎さん達は今、走って此方に向かっているそうだ。彼女達の思いを無駄にしたくは無い。僕は呼吸を整えて言った。
「私は彼女達に返さなければいけない恩があります。どうか、私に彼女達の、貴方方の笑顔を作る手伝いをさせてはいただけませんか?」
僕の言葉に静寂は続く。すると、中から一つ、また一つと声が聞こえた。
----結局蘭子ちゃん達来てくれるんだろ?なら暇つぶしに良いんじゃね?
----そうだな、じゃあ頼むぜラクスさん!
----ラ・ク・ス!ラ・ク・ス!
「ありがとうございます。それでは、聞いてください、《インモラリスト》」
こうして僕は、歌い始めた。その間、セシアがハロの状態で飛び跳ねて目から光のホログラムを飛ばす。順調に曲も進み、会場のボルテージも上がる。ギリギリで楽譜を書いてスタッフさん達に渡したが、まさかもう記憶したとは音楽さん達恐るべしやで・・・。そして神崎さん達が来たと合図がステージの横から来る。後は神崎さん達の息を整えさせる時間を稼いで終わりだ。
「皆さん、私の役目はもう終わりです。ご清聴ありがとうございました」
----楽しかったぜラクスさん!いや・・・ラクス様!
----可愛かったよラクス様!
----また歌ってね!
「はい!では、コレが私の最後の曲です。曲名は、《Departures~あなたにおくるアイの歌~》」
最後に歌って僕はステージ裏へと戻って行った。そこでは、神崎さん達が衣装を身に付けて準備をしていた。
「ふふふ、感謝するぞ小さき勇者(如月君、ありがとう!)」
「ボク達の為にありがとうございます」
「いえ・・・助けになって良かったです。それじゃあ、後は席で見てますので」
僕は髪の毛の色を落として着替えてから席へと戻った。怪しまれる事は無く、目の前のライブを楽しんだ・・・。
~ライブ終了後[ホテル自室]~
「まさか同じホテルだとはね・・・」
「そうですね。ボクもそうとは思いませんでしたよ」
「それにしても久しぶりね幸子」
「はい、真希さんも元気そうで何よりです」
そう言って蒼乃さんと輿水さんが楽しそうに会話する。蒼乃さんの母親が居たアイドル事務所の後輩で、何度か見学しに行った時に会って仲良くなったそうだ。て言うか僕の部屋に集まるなよ。溜息を吐いていると、僕を膝に乗せて抱きしめていた神崎さんの力が強まる。ぬいぐるみ感覚で遊ばれている気がしてならない。と言うか背中に立派なおもちが当たっているのですが!?これもしかしてレヴィよりあるんじゃ・・・。落ち着け如月刹那!相手はアイドルで初対面に等しい相手だぞ。煩悩を捨てろ煩悩を・・・。暫く無心になり、神崎さんの膝から解放された僕はベッドにグデッとなる。すると蒼乃さんが提案をして来た。
「そうだ、良かったら皆でメアド交換しない?」
「良いですよ。神崎さんはどうですか?」
「構わぬ。我がアカシックレコードを見せてやろう!(はい、私のメアドです!)」
「はいよ」
端末を渡し、登録してもらった後、神崎さん達は部屋に戻って行った。僕は改めて溜息を吐いてベッドでダラける。
「まさかまだ泳げなかったなんて思いもしなかったわ」
「うるさい、そんなの魔法で動くから良いんだよ」
「パニクって魔力を出しすらしなかったのに?」
「う・・・」
「あれ?天下の聖王様にして魔王様な刹那君は泳げない事に何も思わないんですかぁ?」
蒼乃さんがニヤニヤしながら僕を見る。くそう・・・反論できないのが辛い。蒼乃さんは僕を煽った後、頭を撫でて言った。
「明日の海で遊ぶ時に泳ぎ方を教えてあげる。だからそんな顔しないの」
「・・・ありがと」
「良いわよこの位。もう寝ましょう。さあ、おいで」
「待てや。何ドサクサに紛れて僕のベッドに入ってるのかな?そして何故服と下着を脱ぐのかな?」
「あ、もしかして脱がしたかった?ごめんなさい、気づかないで」
「人の性癖決め付けるなこのド腐れ転生者!」
「ああ、もっと!MOTTO!」
僕に顔面を踏まれて恍惚の笑みを浮かべて蒼乃さんは気絶した。セシアに頼んで蒼乃さんに服を着せて風呂場に放り込む。ようやく寝る事ができる・・・。そう思ってベッドに入ろうとすると、セシアが下着姿でベッドに居た。
「マスター・・・今日のご褒美をください・・・」
この日、僕は眠る事ができずに黄色い朝日を再び浴びる事となった・・・。
刹那サイド終了
はい、第15話でした。
それにしても何時になったらパズドラでFFコラボが始まるのでしょうか。
FFをやった事が無いからキャラとかはよく分かりませんが、取り敢えずクラウドとスコールは欲しいですね!
では、さようなら!