if〜刹那君は引きこもり〜   作:猫舌

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第19話

刹那サイド

 

 

トリエラが来てから翌日、僕は布団の中で一人悶絶していた。その原因は慣れない長期の外出による発熱である。能力で治せない事は無いのだが、集中力がかなり必要になる。ある程度は大丈夫なのだが熱が高くて集中できない。正直起きてるだけでも辛いのだ。ああ、明日にはあの馬鹿共と模擬戦なのに・・・。

 

 

「マスター・・・」

 

「・・・のど・・・いたい・・・」

 

「今、水を持ってきますね」

 

 

そう言ってセシアは立ち上がって台所へと向かって行った。アインスは最近手に入れた体を存分に使い、データの中に再び潜っている。アインスの体は特別製で、僕とセシアの持てる全てを詰め込んだチートボディだ。データの中を移動する事もできれば現実世界に出る事も出来る。他にも色々と機能がある。そしてアインスは金剛と共に僕の熱を早く下げる為の知識を手に入れに行ってしまった。ディアーチェ達は学校で、トリエラは僕の汗を舐め取ろうとしたのをアインスに筋肉バスターされてベランダに布団と一緒に干されている。何時も慣れている筈の静かな部屋に体が震える。体調を崩すと不安になると言うが、確かにその通りだ。寂しい、誰かに居てほしい、一人は嫌だ。そんな考えばかりが浮かぶ。

 

 

「マスター、水を持って来まsどうしたんですか!?」

 

「あ・・・せし・・・あ・・・」

 

 

僕は体に鞭打ってセシアへと手を伸ばす。セシアは直ぐに手を握って僕を抱きしめてくれた。布団とは違う暖かく懐かしい感覚が僕を包む。

 

 

「大丈夫です、大丈夫ですから・・・」

 

「うん・・・ありがと」

 

 

呼吸も落ち着き、セシアに水を貰ってゆっくりと嚥下して行く。薬も飲んでセシアに手を握ってもらいながら目を閉じる。熱があるにも関わらず、スムーズに眠る事が出来た・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・夢を見ていた。まだお母さんが生きていた頃の夢だ。あの頃の僕は泣き虫で・・・お母さんに引っ付いてばかりで・・・そんなある日風を引いて・・・。泣いていた僕をお母さんと世話係兼師匠だったトリエラが抱きしめてくれたんだ・・・。

 

 

----ほら、男の娘なんだから何時までも泣かないの!

 

----大丈夫です刹那様・・・ジュルリ。

 

 

そっか・・・セシアのあの感覚・・・お母さん達と一緒だったんだ・・・。そんな考えと共に僕の意識は浮上して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ん」

 

 

目を覚ますと時刻は午後四時を経過した頃だった。セシアが布団の横で手を繋いだまま眠っている。

 

 

「セシア・・・ありがと」

 

 

僕はセシアの頬に唇を軽く押し付けた。楽になった熱がまた上がった気がして再び眠りに着いた。

 

 

「マスター・・・大好きです」

 

 

セシアの言葉が聞こえる事は無かった・・・。

 

 

~夜~

 

 

「刹那、起きろ」

 

「ん・・・あいんす?」

 

「ああ、熱は下がったようだな。そろそろセシアの手を離してやれ。青くなってる」

 

「え・・・あっ!?」

 

 

アインスに起こされて色が変わり始めたセシアの手を離す。既に目を覚ましていたセシアは手を揉んで血流を良くしていた。

 

 

「ごめんね、セシア」

 

「いえ、大丈夫ですよ。それよりも、よく眠れたみたいですね」

 

「うん。ありがと」

 

 

僕は布団から出てリビングへ向かう。其処には皆が居て、何時もの僕の守りたい日常が広がっていた。明日の模擬戦・・・絶対に勝つ!

 

 

刹那サイド終了

 

 

三人称サイド

 

 

刹那が決意を固めている時、管理世界ミッドチルダの管理局の建物の中で話をしている四人組が居た。《高町 なのは》、《フェイト・テスタロッサ》、《アリシア・テスタロッサ》、《八神 はやて》の四人である。四人の話題の内容は翌日に控えた模擬戦だった。

 

 

「絶対に明日は勝とうね」

 

「うん。それで刹那と一緒に世界を守るんだ」

 

「そうやな。それで行く行くは刹那君と・・・アリシアちゃん?どしたん?」

 

 

何も言わないアリシアにはやては聞いた。

 

 

「・・・最近思ったんだ。私達がやろうとしてる事って本当に正しいのかなって」

 

「何言ってるの!?刹那君の力は世界の為に使うべきなんだよ!?なのに何もしないなんて許せるわけ無いの!」

 

「そうだよ。それに刹那ならきっと分かってくれるよ姉さん」

 

「その為に明日の模擬戦で勝たなきゃダメなんやで」

 

 

なのは達の言葉にアリシアは唇を噛み締める。薄々は分かっていた。自分達が何をしでかそうとしているのか。でも、友達達にそれが原因で嫌われるのが怖かった。妹に嫌われるのが怖かった。

 

 

「(ああ、私・・・またやっちゃったんだな)」

 

 

アリシア・テスタロッサは心の中で独り言ちた。嘗て、小学生時代に知り合った白い髪の少年の事を思い出す。彼の噂が全て嘘だと分かった時、彼女は後悔した。そして親友の一人に真実を伝えられた時、信じられなかった。信じたく無かった。本当の犯人が自分の命の恩人など受け入れられる筈が無い。彼女は一度死んでいたが、《葉山 達也》のお陰で復活する事ができ、母親も助けてもらっている。最初はこの人に惚れるのだろうと思っていたりもしたが、そんな事は無かった。少しだけだが葉山の中に潜む,ナニカ,を感じ取っていた。だが、アリシアは葉山の刷り込みと軽い催眠魔法によってその疑問感は消えたまま過ごしていった。そして刹那と知り合ってから数日、アリサ・バニングスの家でSF物の映画を見た後の事だった。途中まで帰路が一緒だった事もあり、刹那と話しながら帰っていた中、アリシアは妹のフェイトと相談し合って刹那に問いかけた。

 

 

----ねえ、刹那

 

----ん?何?

 

----映画を見て思ったんだけどさ、クローンってどう思う?

 

 

クローン。それはテスタロッサ姉妹の中ではNGワードに近い物だ。妹のフェイトはアリシアの細胞から作り出されたクローンなのだから。この時、アリシアとフェイトは刹那の性格をよく知らなかったのだ。だからこの質問で彼の偏見等があるのかを確かめようとしたのだ。そして刹那は少し唸るような声を出した後、答えた。

 

 

----そうだね、良いんじゃないかな。

 

 

刹那の言葉にフェイトの体がビクッとなる。それに気付かない様で、刹那は目の前の夕日を見ながら話を続ける。

 

 

----だってクローンって事は同じ細胞から出来てるんでしょ?それって親子とか兄弟姉妹みたいな物じゃないか。

 

----でも、生まれ方が違うんだよ?

 

 

あまり話し掛けようとしなかった妹が進んで質問する。刹那は「それでも・・・」と笑顔で答えた。

 

 

----生まれ方がどうであれ、その人がこの世界でたった一人の存在である事に変わりは無いよ。

 

 

そう言って夕日を背に微笑む彼にアリシアとフェイトの心は今までに無い位高鳴っていた。この時から刹那への考えが変わり、積極的に話し掛ける様になった。だがそれから直ぐに刹那に例の噂が流れ始めたのだ。そして屋上で見たあの光景。彼処で気付くべきだった。彼の目を・・・怯える様なあの目を・・・。そして親友である蒼乃真希に真実を伝えられてから、アリシアの中では刹那に謝りたいと言う気持ちが溢れていた。でももう遅い。すべてが遅すぎたのだ。現に刹那は学校へ来なくなってから数年が経過している。溜息を吐きながら目の前の妹達を見てアリシアは思う。

 

 

「(明日はどうか私も含めて叩きのめされます様に)」

 

 

これが今の自分に出来る精一杯の償いだと思いながらアリシアは椅子に体重を預けた・・・。

 

 

三人称サイド終了




次回から模擬戦と言う名の蹂躙劇に入ります。
それではまた次回で!
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