刹那サイド
模擬戦から一ヶ月以上が過ぎた。あれから僕はひたすらに引きこもり、外出などは一切せず、カード等はボディを造った金剛に頼んでいた。七月に入ったそんなある日、ディアーチェ達を見送った僕はある準備をして外出の支度をする。何故なら今日、七月七日は、僕の母である《如月 澪(みお)》の命日なのだから・・・。
・・・バスに一時間ほど揺られ、其処から歩く事約一時間。僕達は街を一望できる墓地に着いた。墓地の中を進むとお母さんの墓の前に立つ。
「さ、始めようか」
「はい」
「分かりました」
「了解した」
「cleanにしマース!」
墓の掃除をした後に線香や花を備える。今日は仏壇から写真も持って来た。
「お母さん、こんなに綺麗になったよ。今まではセシアと二人だけだったけど今はこんなにも家族が増えたんだ」
僕は写真を置いた墓に話し掛ける。こうして写真に話し掛けるとお母さんと話せている気がするのだ。すると、皆も話し始めた。
「澪様、お久しぶりです。私は約束を果たす為に帰って参りました」
「母上殿、刹那の事は私達が必ず守り、愛します」
「提督は絶対にguardしマス。だからvalhallaから見守っていてくだサイ」
「お母様、マスターの周りはこんなにも光に溢れていますよ」
皆を後ろから見ながらセシアが涙を流す。僕は何も言わずにセシアの手を握る。
「セシアもその光の一つなんだよ?」
「マスター・・・!」
こうして墓参りも終わり、僕達は近くの蕎麦屋へと昼食に向かうことにした。皆と帰ろうとしたその時、向こうの墓に人影が見えた。
「皆、ちょっと先に行ってて」
「ま、マスター!?」
セシア達に言ってから僕は人影の方へと向かった。逃げて行く人影を追いかけて行くと、近くの寺にある大きな木の前に着いた。暫く立っていると、木の後ろから僕と同じ白髪に赤と金のオッドアイの高校の制服を来た少女が現れた。
「やっほ。一年ぶり」
「どうも、逃げないで来ればいいのに・・・」
「いやいや、それはちょっとね・・・」
「そすか。まあ、お久しぶりです《華音(かのん)》さん」
僕と似た様なコミュ障ぶりを発揮してる彼女は《村雨 華音》さんと言って、小学校4年生辺りから母の墓参りに来ると必ず会う人だ。この様に何故か僕としか話そうとせず、何時も気が付くと居なくなっている不思議な人である。華音さんは僕を見るとニコッと笑う。
「うん!去年よりも良い顔になったね」
「そうですかね?」
「そうだよ、お姉さんが言うんだから間違い無い!」
「お姉さん?僕が小学校の頃からその制服ですよね?もうお姉さんじゃ無いんじゃ」
「お姉さんは永遠の18歳だから良いの!そう言う貴方だって小学校の頃から変わってないじゃない」
「う・・・これは・・・ストレス性の成長不良だから・・・」
「あ・・・ごめん・・・」
「いえ・・・」
やっべ、気まずい・・・。そう思い俯いてると頭を突然撫でられた。見上げると涙目の華音さんが視界に入った。
「ごめんね。お姉さんデリカシー無かったね」
「いや、大丈夫ですから泣き止んでくださいよ」
「そうだよね、何時までも泣いてるお姉さんなんて死んだほうが良いよね・・・もう死んでるけど・・・」
「そんな事思ってないですから!ほら泣き止んで!」
後半が聞こえなかったが気にせず僕はポケットからハンカチを取り出して華音さんの涙を拭いた。木の根に座って暫くしてようやく泣き止む。
「落ち着きましたか?」
「うん。ごめんね迷惑かけちゃって」
「む、ごめんね禁止。ほら笑ってください」
そう言って僕は華音さんの頬をムニっと引っ張る。おお、伸びる伸びる。暫くこねくり回して遊んでいると、華音さんは自然に笑い出した。
「ふふっ、くすぐったいよ」
「やっと笑ってくれましたね」
「うん、ありがとう」
「やっぱり笑顔が一番似合いますよ」
「・・・もう少し早くに聞きたかったなソレ」
「え?何か言いました?」
「ううん、何でも無い」
そう言って華音さんは立ち上がり伸びをする。やっぱり髪と目の色は違うけどこの人、艦これの《村雨》にそっくりなんだよね。何気無しに腕時計を見ると、かなり時間が経っていた。
「あ、もうこんな時間だ!すいません、僕もう行きますね!」
「ちょ、ちょっと刹那君!ハンカチ!」
「ソレあげます!捨てるも使うも自由にしてください!」
これはセシアの説教コース確定だ!くそう!あの時間は正直休憩無しで一日修行してた方が楽なんだよな・・・。
「華音さん!それじゃあ、また何時か!」
そう叫んで僕は来た道を引き返して行った・・・。
刹那サイド終了
華音サイド
私は《村雨 華音》。転生者だ。前世で本来あり得る事の無かった交通事故により、死んでしまった私は特典として艦これに登場する《村雨》がモデルの容姿と幾つかの能力を貰って普通に暮らしていたそんなある日、私は一人の少年に出会った。出会ってしまった。その少年は己と私の事を転生者と言った。私が何かを言おうとした時にはもう遅く、少年の催眠魔法に掛かり、良い様に穢され、そしてボロ雑巾の様に扱われた後に殺された。気が付けばこの墓地の自分の墓場の前に立っていた。それから私は幽霊として此処を彷徨っている。普通地縛霊か悪霊になると思っていたが転生者故かそんな事は無く、実体化もできた。日に日に転生者に対する憎しみが深まっていたそんな時、私の耳に誰かの啜り泣く声が聞こえた。其処へ行くと墓の前で一人の少女、いや、少年が泣いていた。長い白い髪に赤い目。その少年はひたすらに泣いていた。その少年の気配で私はすぐに察した。この子は転生者だと・・・。憎い奴の筈なのに私は声を掛けていた。
----大丈夫?
----お姉さんも僕を虐めるの?
私に答えた彼の目には光が宿っていなかった。見てるのに見ていない。どこまでも深い闇が続いている。空虚な目をしていた。思わず私はその小さな体を抱きしめる。その体は震えていた。彼は一体どんな人生を歩んできたのだろう。その小さな体に、どれだけの絶望を背負ってきたのだろう。憎しみなんて感情は吹き飛んでいて、ただ彼の心を安心させてあげたかった。やがて彼の震えは収まり、私に無垢な笑顔を向けてくれた。
----ありがとう、お姉ちゃん
その笑顔と声に私の心はキュンとなった。何この可愛い生き物。そう思わざるを得なかった。落ち着いた彼の話を聞くと、信じていた友達に裏切られたと言っていた。それを聞いた私は自分を穢した転生者と彼を裏切った者が同一人物だと確信した。そんな子を放っておけず、私は少年《如月 刹那》に積極的に話し掛ける。気圧され気味だったが彼は楽しそうに笑ってくれた。私はそれが嬉しくて話を続けた。それから彼が来る一年毎に姿を現す事にした。そして年を追うごとに彼の周りに家族が、光が増えて行く。もう私はいらないかな?そう思っていた今日、彼はハンカチを握った私に言ってくれた。
----それじゃあ、また何時か!
彼の目を見て私も光の一つと気付いた瞬間、涙が止まらなかった。待ち続けよう。彼が私を覚えてくれている限り、私は彼に話し掛け続けよう。ハンカチを握る力を強めて私はそう誓った。
「じゃあね、刹那君♡」
華音サイド終了
三人称サイド
~如月家、地下室書庫~
誰も入らなくなった書庫の本棚。其処で一つの白い本が輝き始めた。白い本はやがて金色へと変わり、また白へ戻り、光が消える。そして本は胎動するかの様に再び光っては消え、と繰り返す。全ては王の為に。新たな歯車が、歴史が動き出そうとしていた。それが王である彼にとって吉と出るか凶と出るかは分からない・・・。
三人称サイド終了
~次回予告~
久しぶりに書庫の掃除をする刹那達
刹那:「何これ?本・・・と石?」
不思議な石に導かれ刹那達は古代ベルカ時代へと迷い込む
???:「ウヌ?オヌシは誰なのだ?」
刹那:「貴方は・・・まさか!?」
そこで出会った人物とは!?
今、過去と現在(いま)が交差する!
次回、第22話
お楽しみに!