if〜刹那君は引きこもり〜   作:猫舌

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第25話

刹那サイド

 

 

翌日目を覚ました僕は図書室でキヨマロさんとこの時代と僕達の時代の建造物や文化等について話していた。キヨマロさんは考古学の知識がある人で、僕もその手の話は嫌いでは無い。時間を忘れて二人で話していた。アインス達も最初は聞いていたが、僕達の会話に着いて来れなくなり、ティオさん達と街へ向かった。現在は、首元にセシアが待機している。

 

 

「成程・・・刹那の言う地球と言う世界は魔法文化無しで其処まで進んでいるのか・・・興味深いな」

 

「僕からすればこの世界の魔法文化も面白いと思いますよ。まさか木と水槽が一緒になってるなんて・・・」

 

 

そう言って窓の外に生えている巨大な金魚鉢を木が覆い、中で魚が泳いでいると言う奇想天外な光景を見て口の端を僅かにヒクつかせる。

 

 

「俺達からすれば普通の光景なんだけどな・・・」

 

「思いっきり不自然ですよアレ。魔法世界でも中々無いですよ」

 

『マスターのお母様が集めて来たロストロギアや骨董品にもありませんしね』

 

「えっと・・・刹那のお母さんはロストロギアを集めてたのか?」

 

「はい・・・収集癖がありまして・・・」

 

 

家の母はロストロギアや珍しい物を集めてくるのが趣味な人だった。ある時はそれぞれ特殊な造りをした十二本の刀を持ってきたり、妖怪が宿ってるとか言う槍を持ってきたり、赤だったり黄色だったり緑だったりしたメダルを持ってきたりとか、流石に魔法世界から人魚を連れて来た時は馬鹿じゃないのかと思った。(その日連れて来た人魚はしっかりと魚拓を取ってから魔法世界に返しました)

だが、母は片付けや整理の出来ない人で、何もかも一箇所に纏めて置いた所為で今回の騒動の原因の大掃除となったのだ。僕達をこの時代に連れて来たあの石も母が集めた何かなのだろう・・・。

 

 

「変な生物も連れてくるんですよねぇ・・・」

 

「・・・お前も大変だったんだな」

 

 

キヨマロさんの優しい表情が痛い。本当どうやったら最強とか呼ばれてるらしいドラゴンとか連れてこれるんだろう。でも見た目幼女だったけど本当にドラゴンだったのかアレ?確か・・・オーフィ・・・何だっけ?あの子の名前・・・。悩んでいると、図書室の扉が乱暴に開かれる。其処には息を切らした。この城の兵士だった。

 

 

「た、たいへん・・・です・・・!城下の村の近くに山賊が出たと報告が!」

 

「「なっ!?」」

 

 

息を整えた兵士から出た言葉に僕とキヨマロさんは驚愕する。話によればその村は僕が助けた少女の村の近くらしい。危険な魔導生物が消えた事で進撃して来たのだろう。

 

 

「キヨマロさん、行きましょう」

 

「ああ。まずはガッシュと合流だ」

 

「その心配は無いぞキヨマロ!」

 

 

兵士の後ろから赤い本を持った祖父が現れた。キヨマロさんは本を受け取って僕達と外へ向かった。キヨマロさんと祖父は馬に二人乗りになる。

 

 

「刹那はこっちの馬を・・・」

 

「いえ、僕にはコレがありますから」

 

 

そう言って僕はポケットから一つの錠前を取り出し、開錠して投げる。すると錠前は形を変えて巨大化し、桜を模した一台のバイク《サクラハリケーン》へと変形した。僕は付属のヘルメットを年齢魔法で身長を上げてから被り、バイクに跨る。

 

 

「セシア、村までどれくらい掛かる?」

 

『マスターのバイクでなら五分程かと』

 

「了解。キヨマロさん、ガッシュさん、先に行きます」

 

「お、おう分かった。直ぐに追いつく!」

 

 

キヨマロさんから返事をもらってから僕はバイクを走らせる。免許?そんな物は無い。はたしてネット知識で何処まで操縦できるか・・・。余計な思考を振り払い、僕は荒地の中を進み、森へと入る。セシアを此処でセットアップし、新しいモードになる。バリアジャケットは白いコートにセシアが変化したリボルバーを腰に下げる。(イメージはトライガンのバッシュの服を白にした感じ)

 

 

『マスター』

 

「分かってる。西の方角に人の気配が30・・・43・・・まだ増える」

 

『あの・・・距離100km以上あるんですけど』

 

「コレくらい如月家のトレーニングで嫌でもできる様になるよ」

 

『魔力強化すらしてませんよね?』

 

「当たり前でしょ」

 

 

腰の銃から溜息の様な声が聞こえる。僕は再びバイクを走らせ、目的の場所へと向かった。暫く走ると、森を抜けて再び荒地へと出る。すると目視できる距離の先に馬に乗った本当に漫画に出てきそうな見た目の男達の集団が来ていた。僕は彼らの前に出て、1、2km程の距離になった所で、セシアを腰から抜き、上空へと引き金を引いた。銃口からは実際の銃と同じ回転を掛けた魔力弾が放たれ、曇り空の雲へと叩き込まれ、一気に雲が払われて青空になる。

 

 

「強すぎたかな・・・?」

 

「な、何だお前は!?」

 

 

集団は止まり、リーダーらしき男性が僕に聞く。

 

 

「君達に名乗る名は無いよ。とっとと叩き潰されてもらうよ」

 

「ははっ!お前一人に何が出来る!この人数相手によ!」

 

「どうかな?あまり僕を、いや、”僕達”を舐めるな。行くよセシア!」

 

『はい、マスター!』

 

 

僕はバイクを収納してから僕はセシアを構えて撃つ。先程より威力を抑えた回転弾を叩き込まれた山賊の一人は馬から落馬し、悶える。僕は銃口を山賊に向けてセシアと言った。

 

 

「『さあ、(お前ら/貴方達)の罪を(数えろ/数えなさい)』」

 

 

キヨマロさん達が到着する頃には全てが終わっていて、山賊は全員捕縛。祖父の国に引き渡され、裁判に掛けられるそうだ。恐らく彼らは死刑になるだろう。奪ってきた命は数知れずだ。祖父はその事に不満があるらしいが、そんな事民衆が許さない。例え裁かれる事に不満を持つ者が居ようと見せしめが無いと満足しない人間も居る。被害者やその家族、友人等の親しい関係なら尚更だ。悪いけど今回祖父を援護する事は出来ない。この山賊達は罪を犯しすぎた。彼らに残された道は裁かれる事だけだ。

 

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

『・・・』

 

 

城に帰った僕達は玉座の間で無言になる。山賊達の判決が決まったのだ。早すぎる気もしたが対応が迅速なのだろう。彼らは結果死刑となった。祖父は悔しそうな表情をする。

 

 

「私が・・・私がもっと早く説得していればあの者達は道を踏み外さなかったのかの・・・」

 

「ガッシュさん、それは逆効果ですよ」

 

 

僕の言葉に祖父は顔を上げる。

 

 

「彼らだって自分達が間違ってる事くらい分かってますよ。でもそれ以外に道なんて無かったからこうなったんです。そんな彼らに貴方が説得なんて言ったらどう思います?逆ギレされて終わりですよ」

 

「う、ウヌ・・・」

 

「そもそも何もかも話し合いだけで済まそうっていうのが無理なんですよ。そんな簡単に解決するなら山賊なんて居ないし、僕自身もあんな事にはなりませんよ・・・」

 

 

僕は溜息を吐きながら部屋へと戻る。部屋にはアインス達が戻ってきていて心配そうな表情で僕を見る。

 

 

「・・・大丈夫だよ。ちょっと疲れただけだから」

 

 

僕は誰の言葉も聞かず、ベッドの中へと潜り、意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見ていた。僕の目の前に僕が居る。それは愉快そうに唇を歪めて此方を見ていた。

 

 

----やあ、僕

 

----君は・・・誰なの?

 

----僕は君さ。君の中にある他人を憎く思ったり妬ましく思う気持ちの集合体

 

----僕の憎しみ・・・妬み・・・

 

----そう、憎いだろう?あの転生者の二人が。君を否定した全てが

 

 

彼の言葉に僕の中でどんどん黒く、禍々しい何かが貯まって行く。僕の中で蠢く。暴れる。欲望のままに全て壊せ、と。何も残すな、と。その衝動に身を任せようと思った瞬間、頭の中にふと家族達の姿が浮かぶ。僕は思わず笑ってしまった。そしてもう一人の僕の体がガラスの様に割れ始める。

 

 

----な、何故だ!?何故お前は暴走しない!?

 

----きっと数年前の僕ならそう思っただろうね。

 

 

僕は目の前の”幻影”を睨みつけて叫ぶ

 

 

----でも今は復讐なんかよりも、守りたい家族が・・・僕の”世界”があるんだ!

 

 

その瞬間、目の前の僕は砕け散り、目の前に巨大な龍《バオウ・ザケルガ》が現れる。そして夢の中の微睡みの様な感覚は消え、意識がクリアになった。

 

 

「これは試練かな・・・バオウ・ザケルガいや、初代魔王《バオウ・ベル》」

 

「うむ、見事だ」

 

 

巨大な龍は姿を変え、初老の男性へと姿を変える。彼こそが僕達魔王のルーツにしてバオウ・ザケルガを創り上げた最強の魔法使い、《バオウ・ベル》その人である。

 

 

「と言ってもまだ何かありそうだけど・・・」

 

「その通り、バオウの試練は一つではない。だが全てを乗り越えたその時、君は本当のバオウの使い手となり、更に強くなれるだろう」

 

「・・・ない」

 

「何?」

 

「気に食わない、と言ってるんだ」

 

 

僕から出る殺気に初代魔王はたじろぐ。僕は殺気を強めて睨みつける。

 

 

「いきなり人の夢に出て来て悪夢見せて、それで試練?強くなる?巫山戯るな!」

 

 

世界に罅が入る。初代魔王は後退りを始める。その姿に最早魔王としての風格など無かった。そんな魔王に僕は叫ぶ。

 

 

「僕はお前の実験動物なんかじゃ無い!試練なんかどうでもいい!さっさと僕に力を渡せ、この老害風情が!」

 

 

その瞬間、世界は壊れ、僕の意識は引き戻される・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「後悔するぞ・・・バオウは必ずお前を・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

老害の声を最後に僕の視界は白に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ん」

 

「goodmorning提督!」

 

「・・・おはよう。そしておやすみ」

 

 

目が覚めると金剛に抱かれていた。鼻を優しい匂いが擽る。僕はそのまま目を閉じる。今度こそゆっくりと眠れそうだ・・・。

 

 

刹那サイド終了

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