if〜刹那君は引きこもり〜   作:猫舌

30 / 74
第30話

三人称サイド

 

 

刹那がバオウに呑まれた瞬間、黒い闇が刹那とバオウを覆い尽くす。その衝撃波に局員達は身動き一つ取れずに踏ん張る事しか出来なかった。やがて闇の中から刹那が姿を現す。だがそれは、局員達の予想を遥かに超えていた。

 

 

「・・・」

 

 

無言で立ち尽くすその姿は、子供の身長ではなく大人の身長になり、服装もボロボロの金のラインが所々に入った黒衣を身に纏い、腰には金色の装飾品の中に黒い石が嵌め込まれていた。そして彼の白かった髪は深い闇の様な黒に染まり、赤い目も同じ色に染まっている。その目に、感情など無かった。

 

 

「・・・くっ、怯むな!殺れ!」

 

 

局員の隊長が命じると、局員達はデバイスの非殺傷設定を解除し、刹那を殺しに掛かる。捕縛と言う行動から本能の感じたままに排除と言う行動に切り替えたのだ。そして刹那へと大量の魔力弾が放たれる。だが、迫りって行く魔力弾の雨は刹那の視界に入った瞬間、霧散し、消滅した。

 

 

「ひっ・・・た、隊長!」

 

「怯えるな!奴のレアスキルだ!遠距離がダメなら接近戦で行くぞ!」

 

 

そう言って隊長を筆頭に局員達は魔力刃を作り、刹那へと肉迫する。丸腰相手なら此方にも勝機がある。そう思った隊長は目の前の光景に思考が止まる。何故、目の前の少年の手には"黒い大剣"が握られているのか?その考えが浮かんだ時には局員達は吹き飛ばされていた。刹那の剣擊による物だった。背後の木に叩きつけられ、呼吸に困難しながらも隊長は立ち上がった。そして目の前には、地に倒れ伏し、その体を赤に染めた局員達の姿があった。そしてそれをまるで路傍の石ころの様に目を向ける事無く、黒に染まった少年が隊長へと向かって来る。

 

 

「くそっ・・・ちくしょう・・・バケモノめええええええええ!」

 

 

隊長はデバイスを握って殴りかかる。だが、刹那の剣のひと振りによってデバイスは弾かれ、後ろへと飛んでいく。だが、隊長は諦めずに魔力を込めた拳を刹那に叩き付けた。その拳は見事刹那の顔面を捉える。

 

 

「へへへ・・・やった・・・あ?」

 

 

だが、同時に腹部への熱を感じ、其処へ目を向けると自分の体を黒衣の腕が貫いていた。

 

 

「・・・」

 

「うそ・・・だ・・・ろ・・・」

 

 

無言の刹那を睨みつけながら、隊長は遂に力尽きた。只の肉へと成り下がった物から腕を抜き、地面へと放り投げた後、刹那は死体の海へと手を向ける。そして次の瞬間、死体の海は炎に包まれた。

 

 

「・・・」

 

 

中には辛うじて生きている者もいたが、成す術無く業火に焼かれ消えて行く。地に体を擦りつけても炎は消える事は無い。火元は自分達の体の中身なのだから。そんな光景を一瞥する事すら無く刹那はその場から姿を消した。其処の地域の結界は解除され、其処には何も残っておらず、静寂だけがその場を支配していた。そう、何一つ残さずに・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~如月家前~

 

 

結界の貼られた中、如月家を攻撃して中へ突撃せんとする作戦が未だに続いていた。局員達が何人も集まって攻撃を続ける。だが、特殊な加工を施した如月家はビクともせず、局員達の表情に焦りが浮かんでいた。

 

 

「おいそこ!何時までもヘバッてないで攻撃を続けろ!」

 

 

現場の指揮を任されていた、局員の副隊長が怒鳴る。隊長が塵と化したのも露知らず、部下に命令を下し、自分は後ろでふんぞり返っていた。

 

 

「ふん!何故この私がこんな小僧一人の為に指揮など・・・」

 

「副隊長!全く変化がありません!」

 

「一々報告などしなくても分かっている!黙って続けろ!」

 

 

そんな副隊長の怒号に返事する事なく、部下の局員は"眉間に穴を開けて"その場で事切れた。そして穴の開いた眉間に古代文字の様な紋様が浮かび上がり、その体が爆ぜる。その光景に全ての局員の動きが止まる。だが、それがいけなかった。それから一人、また一人と局員達が同じ死に方を続け、最後には副隊長一人となった。副隊長は恐怖に震えながら如月家の影に隠れる。

 

 

「な、何なのだ今のは!何処から狙っている・・・!」

 

 

パニック状態になりながら銃撃が飛んで来た方向を覗く。部下の眉間が出来たり倒れたりした位置から計算すればこの位置なら狙われる事はない。見る限り誰もいない事に安堵し、顔を引っ込めて目線を元に戻すと、目の前に黒髪の人物が立っていた。その手には"黒いボウガン"が握られている。それを見て副隊長は察した。察してしまった。だが時は既に遅く。副隊長は首を握られ、へし折られる。そしてその体は内側から発火し、消滅した。周りには焼け跡一つ残らない。その他の局員も既に燃やされていた。結界を維持していた者は死に、世界は正常に動き出した。一人の少年を除いて・・・。

 

 

「・・・」

 

 

少年はその場から再び消える。その魔力に気付いた如月家の住人達が外へ出た頃には、少年の姿は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~次元空間[停泊中次元航船内]~

 

 

「第一、第二部隊、全員反応ロスト!」

 

「くそっ!失敗しおったか役立たず共め!」

 

 

オペレーターの言葉に館長の男性は握り締めた拳を艦長席の肘掛に叩き付ける。そして、爪を噛みながら叫ぶ。

 

 

「くそっ!このままでは聖王教会に取り入る計画が水の泡ではないか!」

 

「艦長・・・やはり特権を破るのは」

 

「黙れオペレーター如きが!あのガキ一人捉えて聖王教会にチラつかせれば大量の金だって手に入るし、恩だって作っておける!そんな物を放って置ける訳無いだろう!」

 

「で、ですが彼はまだ子供で・・・」

 

「あんな女の子供、普通ではない!現に部隊を全て潰されたではないか!」

 

 

そう叫んだ瞬間、館内の電気が全て落ちた。急に暗くなり、全員が驚く。そして誰もが黙り込み、静かになった。すると、司令室の外から声が聞こえてくる。

 

 

----ひっ、く、くるなああああああ!

 

----あ、あついいいいいいいいいい!体がああああああ!

 

----た、たすけて、お母さん!きゃあああああああああああ!

 

 

その声はより司令室内の者達の恐怖を煽った。やがて声が聞こえなくなり、何者かの足音が近づいてくる。そしてそれは、司令室の前で止まった。そして、

 

 

「きゃああああああああああああああああ!?」

 

 

司令室内に突然現れ、"黒いロッド"が叩きつけられ、局員の一人が弾け飛ぶ光景を見てオペレーターが叫ぶ。次の瞬間、オペレーターの首から上が消し飛んだ。血濡れになった刹那は闇に染まった目を残った局員達に向ける。刹那に向かって艦長は叫んだ。

 

 

「お、お許しを聖王様!わ、私は上の者に命じられていただけなんです!」

 

「・・・」

 

「そ、そうだ!一緒に管理局を倒しましょう!私も不本意だったのです!だから!」

 

 

薄っぺらな言葉を並べる毎にバタバタと局員達が事切れていく。やがて艦長は下半身からアンモニア臭とそれとはまた違った不快な臭いを漂わせ、逃げようとする。

 

 

「い、いやだああああああああ!私は・・・私は・・・!」

 

 

あと少しでドアへと手が届く。そう思っていた瞬間、体の胸部に空虚感を感じた。その状態に震えながら振り向くと、黒衣の侵入者はえぐり取られた艦長の心臓をその手に持っていた。艦長はパニックになりながら心臓を取り返そうと刹那へと近づく。だが、その手に握られていた心臓は簡単に握りつぶされた。艦長は涙を流し、血を撒き散らしながら死んでいった。少年は艦内の至る所を発火させ、姿を消した。次の瞬間、艦は大爆発を起こし、全ては虚数空間へと沈んでいった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~地球[如月家]~

 

 

「マスター・・・」

 

 

局員が転移して来た時、少女を守るために咄嗟に転移魔法を発動させたセシアは、葉山達のマンションへと転移していた。そして少女の記憶を少し弄り、葉山達の記憶を消して他の女性達と同じ場所に寝かせた後、如月家の中へ転移した。すると、リビングでディアーチェ達が固まって外からの襲撃に耐えていた。

 

 

「皆さん!無事ですか!?」

 

「セシア!我等は無事だ。それよりも刹那は?」

 

「マスターは局員と交戦中です。私は人質を逃がしていました」

 

「そう・・・あのクズはそんな手を・・・!」

 

「ですが私達が下手に戦うとマスターの足を引っ張りかねません。待機していましょう」

 

「そうだな、刹那なら大丈夫だ」

 

 

そう言って外からの衝撃に耐えていると、禍々しい魔力を全員は捉えた。だが、この魔力の波長を感じた瞬間、全員の表情は絶望に変わる。

 

 

「アインス・・・この魔力!」

 

「ああ・・・刹那だ」

 

「刹那様!?」

 

 

やがてその魔力はこちらへと近づいて来て、局員達の魔力が消えて行く。刹那の魔力も消え、外へ出た時には何も無く、誰も居なかった。それからセシア達は街中を走り回り、刹那を探す。日が登り始めた頃、海沿いの公園に血濡れの刹那は倒れていた。白かった髪は所々が黒くなっており、アンバランスな配色に。何よりも体の衰弱が激しかった。セシア達は直ぐに如月家に備えられている緊急治療室へと刹那を運び、治療した。それから約一ヶ月後、ひぐらしの鳴く夕暮れに刹那は目を覚ました。刹那の看病をしていたユーリが読んでいた本を落として刹那に声を掛けてから部屋を出る。

 

 

「せ、刹那が目覚めました!」

 

 

その言葉に如月家全員が駆けつけた。真希も連絡を聞いて転移魔法で跳んでくる。そして全員が刹那の元へと押し寄せた。各々が声を掛ける中、遂に刹那の口が開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・僕は・・・誰・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉は、家族達を絶望させるには充分すぎる言葉だった。

外からひぐらしの声が大きく響いていた・・・。

 

 

三人称サイド終了




はい、30話でした!

次回はrainバレルーkさんの作品《人外になった者》とのコラボをさせていただく事になりました。
なので次回を読む時は、rainバレルーkさんの《人外になった者》を是非お読みになってから読んでいただけると分かりやすいと思います。


今回の刹那君の暴走形態は知ってる人は知ってるネタだと思います。
文才無いけどきっと気付く人は気付いてるよね。


刹那「まあ、ぶっちゃけアr」


では、また次回!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。