if〜刹那君は引きこもり〜   作:猫舌

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第31話

三人称サイド

 

 

如月家の階段に足音が響く。その正体の手には水と食事の乗った盆が握られている。階段を上りきり、部屋の前に辿り着く。そして部屋のドアをノックした。

 

 

「あ・・・どうぞ」

 

 

部屋の主の返事を聞き、ドアを開ける。そこには・・・

 

 

「セシアさん・・・おはようございます」

 

「おはようございます・・・マスター」

 

 

弱々しく笑みを浮かべる"車椅子に乗った"主、如月 刹那の姿があった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----あれから数週間、刹那の記憶は戻ってない。

 

 

この事実は如月家の全員に重く伸し掛った。それだけでなく、刹那は記憶どころか自分の力で立つ事も出来ず、呼吸器官と心臓も弱くなっていた。幸い消化器官等が無事だったお陰で栄養には困らなかったが、時々咳が止まらない事もあった。

 

 

「マスター、食事を持ってきました」

 

「ありがとうございますセシアさん」

 

 

そう言って刹那は力無く微笑んで食事を始める。セシア"さん"、と言う他人行儀な呼び方にセシアは悲しみを感じていた。彼女だけでなく、他の家族や真希も同様である。記憶を失くした刹那と対面した当初の全員の涙する姿は今でも忘れる事が出来ない。

 

 

「・・・っ!けほっ!」

 

「マスター!お水です」

 

「ご、ごめんなさい・・・」

 

「大丈夫ですから、ゆっくり食べてくださいね」

 

「はい・・・」

 

 

咳き込んだ刹那を介抱しながら食事を見守る。アインス達はあれから時間を見つけては管理局のデータにハッキングを繰り返し、治療法を探している。ディアーチェ達も学校から帰ってきてはアインス達の持ち帰ったデータに目を通し、治療法を考える日々だ。あのレヴィすらも文字ばかりが羅列しているデータから目を逸らさない。そんな中、セシアとトリエラは一つ気になることがあり、調べていた。

あの時の異常な感覚の魔力が原因の一つと考えたセシアとトリエラは数年前の事を思い出していた。刹那が澪の持ち帰った輝石を飲み込んだ時に発動した鎧。その時の魔力に微かに似ていたと思った二人は地下室で澪が生前に残したロストロギアの文献を片っ端から漁っていた。澪自身で調べ、書き残したノートを中心に地球で確認されたロストロギアを調べていたが、輝石については少しの情報しか出てこなかった。

解決法を模索していると、刹那が食事を終えて空を見上げていた。

 

 

「マスター、外に出てみますか?」

 

「いえ・・・それは・・・」

 

 

刹那はそう言って自分の肩を抱きしめて震える。目の端には涙が溜まっていた。

 

 

「外を見ると、綺麗なのに出たくないって・・・怖いって感情が溢れて来て震えが止まらなくなるんです・・・」

 

「マスター、大丈夫です。大丈夫ですから・・・」

 

 

セシアは優しく刹那を抱きしめる。記憶を無くしても過去のトラウマは彼の奥深くまで傷跡を残していた。刹那は暫く泣いた後、泣き疲れたのか眠ってしまった。刹那の体をベッドへ移すために抱き上げる。その体は本当に軽く、腕や足は今にも折れてしまいそうな程に細い。セシア達は刹那が記憶を無くしてから彼の心からの笑顔を見た事が無かった。今の刹那の笑顔は相手の機嫌を損ねない様に気を伺う愛想笑いに近かった。今や彼の中に信用できる者は居ない。その事実が更にセシア達の心を締め付ける。

 

 

「何故・・・何故彼だけがこんな事になるのですか・・・!」

 

 

セシアの涙は止まらない。マスターを支える存在であるデバイスであるにも関わらず、何も出来ない自分に嫌悪感を感じていた。刹那をベッドに寝かせてから食器を片付けたセシアは再び地下の書庫に篭った。隣ではトリエラがノートを読み漁っている。

 

 

「・・・刹那様の容態は?」

 

「食事はちゃんと摂ってくれました。ですが・・・」

 

「警戒心は無くならない・・・か」

 

 

トリエラは一瞬だけ苦悶の表情を浮かべ、作業に戻る。セシアも新しい書物を探して本棚を漁る。すると、上の棚から一冊のノートが落ちて来た。まさかと思ったセシアは必死にそれを読む。そして遂に真実に辿りついたセシアはトリエラに向かって声を上げた。

 

 

「ありました!マスターを救うヒントが!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、刹那が寝た後にセシアとトリエラは家族全員をリビングに集めた。家族が椅子に座っている中、一冊のノートを机に置いた。

 

 

「これは今日新たに見つけたお母様が残したノートです。この中にマスターの記憶喪失や衰弱の原因についての情報が記されていました」

 

「それは前に言っていた刹那が飲み込んだという輝石についてか?」

 

 

ディアーチェの言葉にセシアは頷いてノートを捲り、話を始めた。

 

 

「マスターが飲み込んだ輝石の名は《天飛(アマダム)》と呼ばれる古代の輝石です」

 

「その輝石は一体どの様な物なのですか?」

 

「天飛は嘗て古代の戦士が使っていたロストロギアです。四つの輝石それぞれに特殊な能力が備わっています」

 

「能力?どんなものがあるの?」

 

 

シュテルの次にレヴィが直様質問する。セシアは顔を顰めながら答えた。

 

 

「それがお母様にも分からなかったみたいで天飛を見つけた遺跡に掘られていた古代文字をそのまま解読してメモしたみたいなんです」

 

 

その古代文字はどの文化圏にも無い文字で、それを解読しただけでも澪の能力にその場の全員が脱帽した。そしてセシアはメモされた文字を読み始めた。

 

 

「----邪悪なる者あらば、希望の霊石を身に付け、炎の如く邪悪を打ち倒す戦士あり」

 

 

そう書かれたページには《赤の天飛》

 

 

「----邪悪なる者あらば、その技を無に帰し、流水の如く邪悪を薙ぎ払う戦士あり」

 

 

次のページには《青の天飛》

 

 

「----邪悪なる者あらば、その姿を彼方より知りて、疾風の如く邪悪を射抜く戦士あり」

 

 

その次は《緑の天飛》

 

 

「----邪悪なる者あらば、鋼の鎧を身に付け、地割れの如く邪悪を斬り裂く戦士あり」

 

 

最後に《紫の天飛》の説明が記されていた。

 

 

「・・・これがノートに書かれていた解読された文字です」

 

「他には無いのか?」

 

「実は、どうやら輝石は使用者の感情に大きく左右されるみたいなんです」

 

「感情だと・・・それはマズイな」

 

「マスターは心の中に大きな闇を抱えています。今回、それが引き金です」

 

 

セシアは全員に向き直り話す。

 

 

「今回の原因は確実に天飛の物です。これからは天飛を中心に各自調査をお願いします」

 

「ならば金剛、明日から世界中の考古学のサイトを漁るぞ」

 

「分かりまシタ!提督のmemoryは必ず取り戻しマス!」

 

「我等は学校が終わり次第、セシア達を手伝おう」

 

「お願いします。レヴィ、明日学校から帰ったらマスターに付いていてもらえますか?」

 

「良いけど、何で僕?」

 

「少しでも元気な子が近くに居ればマスターも気が楽かと思いまして・・・」

 

「う~ん・・・刹那はそう言うの苦手だと思うけど・・・分かった!」

 

「ありがとうございます。それでは皆さん、明日からお願いします」

 

 

セシアの言葉に全員が頷いた。方針は決まった。見え始めた希望にセシア達はより一層気合が入っていた。近く、自分達の主の記憶が戻る事を信じて・・・。

 

 

三人称サイド終了

 

 

刹那サイド

 

 

バオウに飲み込まれてから僕は暗い闇の中を沈んでいた。あの後に何が起きたのか分からない。ボーっとする中、沈んでいく感覚だけを感じていた。時々意識がハッキリする時があるが、直ぐに朦朧となって深い眠りに落ちていく。

 

 

「皆・・・無事か・・・n・・・」

 

 

今もまた・・・ボーっと・・・し・・・t

 

 

刹那サイド終了




久々の投稿です。
これから刹那はどうなるのか?
次回も是非読んでください!
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