if〜刹那君は引きこもり〜   作:猫舌

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第32話

三人称サイド

 

 

「むむむ・・・」

 

「あと少しです、刹那様」

 

 

手がかりを見つけてから数日、刹那の記憶は戻らなかったが、魔力は段々と回復して基礎中の基礎は使えるほどになった。だが、相変わらず車椅子の生活が続いている。魔力が戻り、身体検査をしてみると、刹那の体の中にベルトの様な装飾品に収められた天飛が確認された。

 

 

「・・・できました」

 

「お見事です。今日は此処までにしましょう」

 

「ありがとうございました、トリエラさん」

 

「いえ、刹那様のお役に立てたのならそれだけで・・・」

 

「そんな、僕なんか・・・」

 

 

そう言って刹那は暗い表情になる。記憶が無くてもこのネガティブさは変わる事が無かった。そんな刹那の手をトリエラは優しく握り、声を掛ける。

 

 

「刹那様は優しく、お強い方です。もっと偉そうにされてもよろしいのですよ。実際王族ですし」

 

「記憶があれば納得するのですが・・・やっぱり現実味が・・・」

 

「ですが、先程出した魔法陣こそベル家の証です。貴方は紛れもない王族。プリンセスです」

 

「プリンスじゃ無いんですか?」

 

 

トリエラの言葉に刹那は苦笑する。段々と刹那の警戒心も解れて来た様で、最近の如月家の面々の表情は明るくなった。当然、トリエラもその一人である。その後練習を終えて、汗を流した二人はリビングへと戻る。そこではセシアが入麺を作っていた。

 

 

「もう夏も終わったことですし、温かいものでも食べましょう」

 

「これなら刹那様も安心ね。セシア、ナイス」

 

「いえいえ」

 

 

そう言ってトリエラとセシアは笑い合う。それを刹那は羨ましそうに眺めていた。その視線に二人が気付く。

 

 

「どうしました、マスター?」

 

「いえ、お二人共仲が良いんだなと思いまして・・・」

 

「それはもう、マスターを愛する者同士ですから」

 

「それに、仲が悪いと刹那様を撫でる権利を剥奪されますから」

 

「・・・僕って何してたんですか?」

 

「マスターと言うより・・・」

 

「私達がやらかしてましたね・・・」

 

 

刹那の疑問に苦笑して答える二人。思わず刹那から呆れの様な溜息が出る。その瞬間、全員が固まった。

 

 

「あ、あの・・・ごめんなs「ソレ!ソレですよ!」・・・はい?」

 

「その呆れと侮蔑を含んだ溜息!」

 

「正しく刹那様の行動です。それだけでご飯5、6杯は余裕です」

 

「さあ!もっと侮蔑の視線を!私達を虐げて!」

 

「バッチコイ!」

 

「あ、あの・・・」

 

「来いよ・・・来いよ!」

 

「ハリー!ハリー!」

 

「いい加減にしろ!《ザケル》!」

 

 

バチバチバチバチッ!

 

 

「「ありがとうございますっ!」」

 

 

刹那の手から雷が放たれ、二人を焦がす。駄バイスと駄従者の丸焼きが二つ完成した。自分の手を見つめながら刹那はポカンとなった。

 

 

「今の、何処かで・・・」

 

 

何処か懐かしさを覚えた感覚に刹那は思考する。もしかしたらこの行為に記憶を戻すヒントが隠されているかもしれないと・・・。そして刹那は床でヤムチャ状態になっている二人に声を掛けた。

 

 

「あの、もしかしたら記憶が戻る方法。見つけたかもしれません」

 

「「へ・・・?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数分後~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ザケル!」

 

「あべしっ」

 

「《ザケルガ》!」

 

「びゃあああああ!?」

 

「《テオザケル》!」

 

「「アジスアベバ!?」」

 

 

訓練場で刹那の魔法を受けながら二人は逃げ惑う。魔法を放つ刹那は、魔法を使う毎に、どんな魔法が使え、どの様に使用するのか思い出し始めていた。因みにこの行為、記憶を無くす前にセシア達にお仕置きでやっていた物である。(罪状:部屋への不法侵入、下着の盗難、盗撮、刹那をモデルにした薄い本制作、etc...)

先程から刹那は魔法を放つ度にどんどん笑顔になって行く。

 

 

「何だろう・・・楽しい!《ファノン・リオウ・ディオウ》!」

 

「「ファッ!?」」

 

 

行き成り飛んで来た巨大な魔法に殴られる寸前のエネルの表情を浮かべた二人が吹き飛び、意識を落とす。そして刹那はそれを眺めながら、恍惚の表情を浮かべていた。管理局の白い悪魔達も青ざめる魔王の爆誕であった。

後日、訓練場のカメラに収められた刹那の表情を見て新たなナニカに目覚めた者達が居たのは余談である・・・。

 

 

~数時間後[リビング]~

 

 

「わ、私達はとんでもないモノを目覚めさせてしまいました・・・」

 

「まさか刹那様にその様な感情があったとは・・・」

 

「と言うより日頃溜まってたんでしょうね、鬱憤」

 

「記憶の無い今だからこそ抑えが効かなかったのね・・・」

 

 

疲れた刹那を寝かせ付けた二人はリビングで轟沈していた。刹那の隠された感情に恐怖する半分、快感半分と言うHENNTAI成分高めの二人は黒焦げになりながら話す。

 

 

「思い出して来たとは言え、魔力の回復力も威力も上がってますね」

 

「そうね。もしかしたら天飛の影響が出てきたのかも」

 

「だとしたらマスターがまた今回の様に・・・」

 

「確率は高いわ。いや、確定でしょうね」

 

 

天井を見上げながらトリエラは悔しそうに呟く。仮に刹那の暴走の原因が突き止められても、正直な話、止められる戦力が無い。元々の戦闘力を考えても、現在刹那に勝てる者はこの次元世界に存在しない事は分かり切った事であった。自分達に出来る事は、天飛の力が発動する前に対処する短期決戦しかない。それはとてもハードルの高い目標だ。

 

 

「どうしたものか・・・!」

 

 

暫くすると、インターホンが鳴らされる。何時の間にか元に戻っていたセシアが確認すると、其処には刹那の担任である織斑 千冬と副担任の山田 真耶が映っていた。

 

 

「急にお邪魔してしまい申し訳ありません」

 

「いえ、それでご用件は・・・?」

 

「実は彼の成績の件でして・・・」

 

 

千冬の話によれば、そろそろ進路相談を始めなければいけない時期で、二者面談をしているのだが、刹那は引きこもりの為に、直接伺った形だそうだ。

 

 

「本来ならば連絡を入れるべきだったのですが・・・」

 

「蒼乃さんに連絡を入れると間違いなく逃げられるからこの方が良いと」

 

「・・・確かにそうですね」

 

「折角来て頂いた所を申し訳ありませんが、刹那は只今風邪を引いていまして」

 

「そうですか・・・ではまたn『ぴゃっ!?』っ!?如月!」

 

 

帰ろうと立ち上がった所で、二階から刹那の悲鳴が聞こえた千冬は思わず駆け出していた。階段を上がり、音のしたドアを開ける。其処には、修学旅行の下見の時以上にやせ細り、一層小さくなった様に見える白髪の少年が床に転んでいた。

 

 

「大丈夫か如月・・・こんなになって」

 

「あの・・・何方ですか?」

 

「何を言っている?お前の担任の織斑だ。忘れたのか?」

 

 

そう言って刹那に近づき手を伸ばすと、

 

 

「ひっ!?あ、あの・・・大丈夫ですから」

 

 

刹那は怯えながら体を引き摺って距離を取る。その光景を見て千冬は動けずに居た。何時の間にか来ていた真耶も同じ様子だった。

 

 

「お前・・・足が」

 

「それにこんなに細く・・・」

 

 

ようやくフリーズ状態から回復した千冬が立ち上がり、セシア達に質問する。

 

 

「どうして如月はこんな事に・・・?」

 

「・・・色々あったんですよ」

 

「何ですか色々って・・・」

 

「我々は如月の担任と副担任です。知る権利はありますよ・・・」

 

「・・・そうですね。但し、この事を誰にも話さないと誓いますか?」

 

 

セシアが言った瞬間、部屋の空気が変わった。セシアと、刹那を抱き上げて落ち着かせている筈のトリエラから明確な敵意が発される。返答次第ではタダでは済まない・・・。そう言っている様だった。千冬達は圧倒されながらもコクコクと頷く。すると玄関から声が聞こえた。それは千冬達にとって聞き慣れた声だった。その声の人物達はリビングに行った様で、セシアは千冬達を其処へ行かせた。リビングに入ると、声の主達がそこに居た。だが、千冬達の知っている人物とは少し違っていた。

 

 

「高町達・・・では無いな」

 

「当たり前です。私達をアレと一緒にしないでください」

 

「ディアーチェ、この人達って・・・」

 

「刹那の担任と副担任だな」

 

「始めて見ました・・・」

 

「まさか今日来るとは・・・完全にミスったわ」

 

 

如月家の面々と、お邪魔していた真希が苦い表情を浮かべる。そしてセシアも来て、全員を椅子に座らせた。事情を軽く話し、全員が理解した所で此処までの経緯を話し始めた。

 

 

 

 

 

~デバイス説明中~

 

 

 

 

 

説明を終えると、千冬と真耶は顔を青くさせていた。魔法の存在、刹那の真実、葉山達の業の深さ等、自分達の知らない所で起きていた悲劇に青ざめる事しか出来なかった。

 

 

「・・・何か私達に出来る事はありませんか?」

 

「現状ありません。あるとしたらこの事は他言無用です。当然あのクズ二人の事もです」

 

「分かっています。まさか如月がそんな事に・・・」

 

「そんなの悲しすぎます・・・!」

 

 

刹那の引き篭った原因に真耶は涙を流していた。刹那の事件は聞いた事があり、刹那には少し警戒心を持って接していた所があった。だが、真実は残酷で、教師なのに子供を信じる事が出来なかった上に葉山達の表の顔に騙されていた自分に腹が立った。それと同時に刹那に対して罪悪感が溢れてきた。するとリビングのドアが開き、トリエラに車椅子を押してもらって刹那が入って来た。

 

 

「あの・・・先程はすみませんでした」

 

「いや、此方こそ本当に済まなかった」

 

 

刹那に対し、千冬と真耶は土下座する。刹那はその光景に慌てていた。

 

 

「あの・・・頭を上げてください・・・!」

 

「そんな事出来ない。私達は教師であるのに君を信じる事が出来なかった」

 

「本当にごめんなさい・・・!」

 

 

必死に土下座する二人に対し、刹那はトリエラに車椅子から下ろしてもらい、千冬と真耶の傍に座って二人に話す。

 

 

「僕は気にしてないから大丈夫ですよ」

 

「そんな訳無い。本来ならば生徒や教師に復讐しても可笑しく無いことを私達は・・・」

 

「多分、記憶があった頃の僕も復讐は考えなかったと思いますよ」

 

「何でですか?」

 

「そんな事したって自分も相手も悲しいだけじゃないですか」

 

 

刹那の言葉に二人は更に涙した。こんなにも優しい少年を自分達はずっと放置して来たのか、関わろうともしなかったのか、と・・・・。目の前の少年は二人の頭を撫でながら優しく話す。

 

 

「きっと前の僕は争い事とか嫌いだったんだと思います。だからそれから逃げる為にこの家に逃げたんですよ。敵の居ないこの家に・・・」

 

「そうしてしまったのは私達だ・・・」

 

「・・・そうですね。僕がこうなったのは貴方達の所為だ」

 

 

刹那が言うと、二人はビクッとなる。真耶は兎も角千冬は嘗て小学校の担任をしていた事があり、刹那の事件を近くで見ていた事があった。その時は特に虐めの様な光景は見なかった。それ故に尚更涙しか出ない。刹那はそんな二人を更に撫でながら言った。

 

 

「だから、もう繰り返さないでください」

 

「繰り返・・・さない」

 

「そうです。もっと皆を信じてよく見てあげてください。僕みたいな子を二度と生み出さない為に・・・」

 

 

そう言う刹那の体は震えていた。記憶には無い筈の過去の恐怖を思い出し、震えていた。そんな刹那を千冬と真耶は抱きしめた。刹那の震えは段々収まり、止まった。千冬は刹那を抱え上げ、車椅子に戻す。

 

 

「如月、私はもう二度と過ちを繰り返させないと此処に誓おう」

 

「私もです!」

 

「もし、この誓いを破った時はこの首を切り落としてもらって構わん」

 

「はい!そうdってええええ!」

 

「む、嫌なのか山田君」

 

「い、いえ・・・どうぞ!」

 

 

二人の表情を見て、刹那は笑顔を浮かべて安心する。

 

 

「分かりました。・・・貴方達が担任で本当に良かった」

 

 

刹那の笑顔に二人は顔を赤くする。相手は生徒、見た目は完全事案レベルなのに顔の紅潮と動悸が止まらない。二人を見て皆は「また堕ちたか・・・」と記憶が無くなっても健在の刹那の天使っぷりに何も言えなかった・・・。

 

 

三人称サイド終了

 

 




暫く主人公サイド無しで続きます・・・。
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