if〜刹那君は引きこもり〜   作:猫舌

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第34話

三人称サイド

 

 

ある日、刹那はセシアに提案していた。

 

 

「外に出たい!?正気ですかマスター!?」

 

「はい。確かに外へ出るのは怖いです。でも、このまま記憶が戻らずに皆さんを泣かせる方がもっと怖いんです・・・」

 

「・・・分かりました。では、夜に行きましょう。その方があまり人と遭遇しないですしね」

 

「ありがとうございます。それで、行きたい所なのですが・・・」

 

 

そうして刹那が提案した場所へ夜に出掛ける事となった。やがて日は沈み、刹那とセシアは外へと繰り出して行った・・・。

 

 

~墓地~

 

 

母の墓の前で二人は手を合わせていた。此処までの道、誰とも会う事なく進み、刹那の記憶に強く刻まれている場所の一つへ辿りついた。

 

 

「それにしても今日は寒いですね」

 

「そうですね。急に霧も出てきましたし・・・」

 

 

刹那の言葉にセシアが返す。二人の周りは濃い霧に覆われていた。気づけば互いが見えなくなるレベルに霧が濃くなっている。

 

 

「せ、セシアさん・・・?」

 

 

無言。刹那の呼び声に答える者は居なかった。すると、霧の先から僅かに青い光が見え、刹那はそこへ向かって車椅子を動かす。やがて光の先へ着くと、そこにセシアはおらず、一人の少女が巨木の根元で膝を抱えて俯いていた。その目には何も映っておらず、表情は苦しそうだった。刹那は不思議と恐怖を感じる事は無かった。ゆっくりと近付いて話し掛ける。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「・・・誰?」

 

「えっと・・・通りすがりの中学生?です」

 

「私は・・・分からない」

 

 

そう言って少女は刹那に話し出す。

 

 

「気が付いたら此処でずっと座ってた。・・・今までの事が何一つ思い出せないんだ」

 

「・・・僕と同じですね」

 

「君と・・・?」

 

「はい。僕も此処一ヶ月位前までの記憶が無いんです」

 

 

刹那はそう言うと、少女は少しだけ驚いた様な表情を浮かべる。刹那は苦笑した。

 

 

「何と言いますか・・・記憶を失う前に大分無茶したらしくて」

 

「へぇ・・・多分私もそう。気が付けば服もボロボロだし」

 

「あっ・・・ごめんなさい」

 

 

よく見れば、少女の服はボロボロになったセーラー服で、豊満な体つきを覆うには少々布地が足りていなかった。刹那はそれに気付き、直ぐに目を逸らす。その光景を見て、思わず少女の口から笑みが溢れた。

 

 

「ふふふ・・・面白いね、君」

 

「そうですか?確かに変わってるとは思いますけど・・・」

 

「何て言うか、うん・・・可愛い」

 

「男なのに可愛いって言われた・・・」

 

「えっ!?男の娘!?」

 

「何か発音に悪意を感じますけど・・・男です」

 

 

刹那は頭の中でこの人の素はセシア達と一緒だと悟った。それと同時に彼女が少しずつ元気になっている事に気が付いた。刹那は少しでも元気づけようと話を続ける。

 

 

「その、良ければ家に来ませんか?」

 

「良いの?私みたいな得体の知れない娘連れても」

 

「同じ記憶喪失仲間じゃないですか。セシアさん達も分かってくれますよ」

 

「そっか・・・ありがと、"刹那"君」

 

「え・・・何で名前・・・」

 

 

少女の言葉に刹那が疑問を抱くと、少女の制服のポケットから一枚のハンカチが落ちた。それを見た瞬間、二人の頭に激痛が走り、倒れ込む。

 

 

「うぐぅ・・・せつ、なく・・・」

 

「あが・・・か、のん・・・s」

 

 

気付けば口からは記憶に無い人名を上げ、刹那は少女へと手を伸ばす。少女は痛みの余り、悶えて刹那の名を呼ぶだけだ。刹那はその手を届かせる為に痛みに耐えながらも這いずって進み、少女の手を掴む。

 

 

「しっかりしてください、華音さん!」

 

「あ・・・刹那君」

 

「良かっ・・・った・・・」

 

「刹那君!?」

 

 

少女の頭痛は収まり、靄が掛かった様だった頭の仲がクリアになって行く。そして思い出す。復讐を果たした後、悪霊にも成りきれず、只この木の下で蹲っていた日々を。そして何も考えられなかった頭の中で一つだけぼんやりと残っていた想い人の笑顔を・・・。

少女は気絶した刹那を膝枕し、その頭を優しく撫でた。未だに右手には刹那の手が握られていた。

 

 

「また、救われちゃったね」

 

「----マスター!っ・・・貴方は」

 

「この子をお願いね」

 

 

霧が晴れ、刹那を見つけたセシアは同時に少女を睨みつけて警戒する。少女は刹那をセシアへ渡し、刹那の手からその手を"すり抜けた"。

 

 

「まさか・・・」

 

「うん。刹那君に、コレは何時か必ず返すからって言っておいて」

 

 

そう言って少女は足元のハンカチを拾い上げて、歩いていく。周りは霧に包まれて行き、やがてその姿は消えていた。寒さも、霧も、少女の姿も・・・。この日、ようやく一人の少女《村雨 華音》は少年の手によって開放された。

 

 

三人称サイド終了

 

 

刹那サイド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・またか」

 

 

暗い闇の中で僕は目を覚ます。何度目かも、時間さえも分からない黒一色の壁も床も天井も無い世界で僕は漂っていた。そんな僕の目の前に巨大な雷の龍《バオウ・ザケルガ》が姿を現す。

 

 

「・・・バオウ」

 

『まさかそんなに早く目を覚ますとはな』

 

「やっぱアンタか。僕の体に何した?」

 

『何、お前の中に眠る《鎧》に少しな・・・』

 

「鎧・・・聖王の鎧か」

 

『随分と面白い事になったな。ロストロギアと一体化させた鎧とは』

 

「ファッ!?」

 

 

えっ何それ僕聞いてない!?そう思っていると、目の前の巨大な龍は困った様な顔をする。

 

 

『まさか、気付いていなかったのか?』

 

「うん。えっと・・・何時だそれ・・・あ、あの飴か!?」

 

『飴?かどうかは分からんが、それが原因では無いのか?』

 

「で、アンタがそれに細工をしたと?」

 

『うむ』

 

「ふざけるな!何勝手な事してるんだ!」

 

『だってお前言う事聞いてくれないし・・・』

 

「暴君か!?」

 

 

何この老害。マジでぶん殴りたい・・・。

 

 

『何年もこの中にいると暇なのだ!偶には外へ出させろ!』

 

「そんなに最大魔法撃てる訳無いでしょうがこのお馬鹿!」

 

『出させてくれればこの状態を直してやろう。あと、無礼も許す』

 

「ふざけんな。良くて半年に一回だ」

 

『・・・三ヶ月で戻そう』

 

「縮めんな」

 

『一ヶ月!一ヶ月で良いから頼む!もう暴走させないと約束しよう!嫌がらせもしない!』

 

「・・・約束だよ?」

 

『うむ!では、直ぐに意識を戻そう。幸い、記憶が戻りやすい様になっているからな』

 

 

そう言ってバオウが吠えると、僕は上へと引っ張られる感覚が走り、そのまま意識をシャットダウンさせられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・知ってる天井だ」

 

 

目が覚めると自室に居た。夜中らしく、真っ暗だった。しかも体がダルい。足にあまり力が入らないし、凄くお腹が空いた。台所に何かあるかな・・・。皆を起こさない様にコッソリとリビングへ降りる。戸棚を漁っていると、レヴィが買い貯めしたらしきカップ麺を見つける。レヴィはまだ全部無くなってないのに新しいの買ってくるから一つ位もらってもバレないよね。

 

 

「~♪~♪」

 

 

小声で鼻歌を歌いながら魔力変換資質で創った熱湯を注ぐ。これなら給湯器いらずだ。三分待って出来たカップ麺を啜る。うん、美味い!暫くすると、家のドアが開く音がした。金剛かな?

 

 

「只今帰りまシタ・・・って誰も答える訳無いデスネ」

 

「お帰り金剛。カップ麺食べる?」

 

「・・・提督?」

 

「むぐむぐ・・・うん、そうだけど?」

 

「テェェェイトクゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

 

「むぐっ!?苦しい・・・胸で息できない・・・」

 

「memoryが戻ったんデスネ!?」

 

「め、めもりー?記憶って事?ああ、バオウのアレってそう言う・・・」

 

 

金剛の言葉でピンと来た。どうやら僕は色々と心配を掛けてしまったらしい。取り敢えず今はこの拘束から抜け出さないと本格的にヤバイ。あ、そろそろ意識が・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・で、また此処に戻ったのか?』

 

「あの一番艦・・・!」

 

 

刹那サイド終了

 

 

✽この後ちゃんと起きますた。




次回は番外編!
刹那が3歳の頃のお話です!
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