if〜刹那君は引きこもり〜   作:猫舌

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第37話

刹那サイド

 

 

体を乗っ取られるなんて無様な事件が起きてから数日、自分でも何が何だか分からないけど・・・。

 

 

「・・・」

 

「せ、刹那君・・・ごめんね?」

 

「本当に悪いと思ってるから睨まないでよ・・・」

 

 

なぜ僕は月村さんとバニングスさんと"誘拐"されてるんでしょうか?神様、僕何か悪い事しました?

事の始まりは今から数時間前に遡る・・・。

 

 

 

 

 

~数時間前・自宅~

 

 

「刹那!外へ行きましょう!」

 

「・・・は?」

 

 

めぐみんの言葉に僕の手が止まる。気がつけば手に持ったゲーム機の液晶画面にはガメオベラなんて文字が浮かんでいた。あとちょっとで新記録だったのに・・・。若干不機嫌にゲーム機を置いてめぐみんを見る。

 

 

「前に説明したよね?僕は外に出たくないの。できればカード買う以外外出は却下したいんだ」

 

「それでは私が爆裂魔法を撃った後誰が運んでくれるのですか!?」

 

「知らないよ・・・シュテル達の誰かに頼んでよ」

 

「頼んだら、もうしないって言われました・・・」

 

「そりゃあ、派手に巻き込まれたらそうなるでしょ・・・」

 

 

この前シュテル達がめぐみんの回収&運搬役に着いて行ったらしい。場所はこの街の山にある巨大な空き地。結界を念入りに張って、母の持っていた魔力隠蔽のロストロギアを使用して夜中に撃った。その日シュテル達はギャグ漫画みたいに黒こげになって帰って来た。

それ以来めぐみんは爆裂魔法を撃てず、毎日家に入り浸ってシュテル達に頼み込んでいるが、無視されている。

 

 

「我慢しなよ。地下の訓練場の修復もあと数週間だからさ」

 

「待てません!私は一日に一回爆裂魔法を撃たなければ死んでしまう呪いに掛っているんですよ!」

 

「んな呪いあってたまるか!?」

 

「あたっ!?」

 

 

めぐみんの頭にチョップを叩き込んで部屋を出る。シュテル達になんとかしてもらおうと計画しながらアプリゲームをする。・・・あ、このイベントガチャ4時で終わりじゃん・・・。

時計を見ると午後3時を示していた。だが、何時も買い溜めしてある筈のカードのストックが切れている事に気が付く。現在家には僕しかいない。ディアーチェ達は学校、アインスと金剛、トリエラは相変わらずのバイト。セシアは近所のご婦人方と日帰り温泉ツアー中。

うん、完全に詰んだね!

 

 

「・・・仕方ないか」

 

 

僕は覚悟を決めて部屋へ戻る。中ではめぐみんが涙目で僕の布団に包まって、いじけていた。みの虫かお前は・・・。

 

 

「めぐみん。君に付き合ってやる」

 

「ほ、本当ですか!?感謝します!感謝します刹那!」

 

「ただし、条件がある。課金用のカードを今すぐコンビニで買って来てほしい」

 

「カード、とは刹那が何時も使っているあの林檎とかが写っているカードですね?」

 

 

僕が頷くと、めぐみんはガッと僕の手を掴んで走り出した。身長差の所為か、僕はぬいぐるみを乱雑に扱うかの様に運ばれる。

 

 

「分かりました行きましょう!すぐ行きましょう!」

 

「待って!?行くのは夜だから!今は一人でカード買って来てよ!」

 

「もう我慢できません!刹那があんな事言って誘うのが悪いんです!」

 

「変な言い方するな!ちょ、ま、アッーーーー!?」

 

 

~数分後~

 

 

「ありがとうございましたー」

 

「・・・結局来てしまった」

 

「さあ、早く撃ちましょう!」

 

「うん、もう勝手にして・・・」

 

「あ!その前にトイレ行ってきます!先に行ってください!」

 

「大声で言わない・・・」

 

 

コンビニへ戻って行くめぐみんを見て溜息を吐きながら何時の間にかめぐみんが持って来ていたパーカーのフードを深く被って歩き出す。歩きながら課金をしてガチャを引く。

 

 

「・・・また星3鯖か」

 

 

レア度の低いキャラばかりで、若干諦めムードになった所で僕は溜息を吐く。最近はガチャ運が無いし乗っ取られるし、金剛を作ったシステムが勝手に起動してた形跡があったけど、なにもいなかったし・・・。もう一度溜息を吐いて顔を上げると、暫くぶりの顔見知りがいた。

 

 

「あ、如月君・・・」

 

「こんな所で何してるのよ?」

 

「あ、あー・・・巻き込まれた?」

 

「何故に疑問形?」

 

 

目の前にいる月村さんとバニングスさんに苦笑しながら返す。まあ、この子達なら人見知りはないか・・・。そう思っていると、目の前に黒塗りの高級車が止まる。次の瞬間、ドアが開き、明らかカタギじゃないスーツ姿の男達に二人と一緒に車へ押し込まれる。そして口元に布を当てられた瞬間、意識を落とした。

そして気が付くと、どこかの倉庫の中で3人仲良く縛られていましたとさ・・・。

 

 

 

 

 

~回想終了~

 

 

「よし、転移して帰ろう」

 

「ま、待ちなさいよ!私達置いてくつもり!?」

 

「悪いなのび太。この転移魔法一人用なんだ」

 

「誰がのび太よ!?せめてしずかちゃんポジにしなさい!」

 

「え、そっち!?」

 

 

ツッコミどころそこかい・・・。ふざけていると、僕達の所へいかにも悪そうな男性と先程僕達を攫いやがったスーツ共2人が近づいて来た。あの目、欲望しかない汚れきった目だ。あの時の葉山達と同じ目をしている。悪そうな男性が月村さんを見てニヤニヤする。

 

 

「久しぶりやな、すずか」

 

「安次郎おじさん・・・」

 

「すずか、知り合いなの?」

 

「うん。私の親戚の人・・・」

 

 

そうやら月村さんの知り合いらしい。これ明らか金持ち同士のいざこざに巻き込まれたっぽいな。他人も数人いるし、もう帰りたい・・・。

 

 

「手荒で悪いな。でもワシも余裕がないんや」

 

「こんな事までしてお金が欲しいんですか!?おじさんだってお金持ちなのに!」

 

「うるさい!子供が知った様な口利くな!」

 

「きゃっ!」

 

「すずか!ちょっと!すずかになんて事するのよ!」

 

 

月村さんにおじさんはキレてビンタを喰らわせる。おお、痛そう。するとおじさんは僕を見て首を傾げる。

 

 

「そこの嬢ちゃんはバニングスの一人娘って分かるんやけど、そこのちっちゃな嬢ちゃんは誰や?」

 

「偶々居合わせた子供らしく、口封じの為にも一緒に連れて来ました」

 

「そか。嬢ちゃん、悪いけどワシ等に少しつきおうてもらうで」

 

 

取り敢えず無言で頷いておく。そしておじさんは再び月村と会話を始めた。バニングスさんめっちゃ無視されてる・・・。

 

 

「ワシはお前や《忍》みたいに綺麗な顔もなければ才能があるわけでもない。そんな連中は金しかないんや。だから精々良い金蔓になってくれよ」

 

「そんな!」

 

「そこの嬢ちゃん達の命も忍が金を払うか、払わんかや。お前ら、すずかは傷付けるんやないで」

 

「分かってますよ」

 

 

そういっておじさんはその場を離れ、スーツ共が僕とバニングスさんに近づく。

 

 

「な、何よ!近づかないで!」

 

「命を取らなければ後は好きにしても良いって言われてるんでねえ。楽しませてもらうぜ」

 

「じゃあ、俺この白い娘な」

 

「お前ロリコンかよ。趣味悪いな」

 

「でもコイツ見てみろよ。ロリコンじゃなくても落ちるって」

 

 

なんかロックされたんですけど!?僕は後ずさる。

 

 

「へっへっへ・・・お兄さんと遊ぼうぜ?とっても気持ちいいからさ」

 

「ひっ!?」

 

 

ああ、吐き気がする・・・。僕は何時ぶっ飛ばしてやろうかと考えながら怯える演技をして後ろへ下がる。後ろで縛られている縄をこっそり外して、何時でも動ける状態になった。よし、コレで・・・

 

 

「刹那にナニしようとしてんのよこの変態がぁ!?」

 

「くぎゅぅ!?」

 

 

何時の間にか縄を引きちぎったバニングスさんがスーツの一人に回し蹴りを叩き込んだ。スーツの一人は首から嫌な音を出して泡を吐いて倒れた。

 

 

「なっ!?このガキ!」

 

「アリサ!伏せて!《レイス》」

 

「きゃあ!?」

 

「ガハッ!?」

 

 

僕は銃を取りだしたスーツに重力の魔力弾を放つ。見事に命中し、スーツは吐瀉物を撒き散らしながら気絶した。うわ、汚い。

縄から抜け出して月村さんの縄も解く。

 

 

「てかバニングスさん。名前で呼ばないでよ」

 

「なによ!?アンタもアリサって呼んだじゃない!」

 

「あ、あれは・・・つい咄嗟に」

 

「今はそんな事言ってる場合じゃないでしょ」

 

「そうだけどなんか腹立つ・・・」

 

 

複雑な心境を抱えていると、外から轟音が聞こえた。木と鉄がぶつかり合う音や、銃声が響く。すると、さっき出て行ったおじさんが血相を抱えて走って来た。

 

 

「な、なんで縄から抜けてるんや!?・・・そんなのどうでもええ!すずか、いますぐ来てもらうで」

 

 

そう言っておじさんは月村さんに銃を向ける。その目には焦燥が映っていた。

 

 

「すずかさえいればこっちのもんや。はよこっち来い!」

 

「すずかは行かせないわよ!」

 

「何故こないなバケモノ庇う必要があるんや?」

 

「すずかがバケモノ?何言ってるのよ!」

 

 

バニングスさんの言葉におじさんは笑う。月村さんは顔を蒼くして震えていた。バケモノ?一体何言ってるんだこの人は・・・?

 

 

「ええか?すずかや忍はな、《夜の一族》っちゅう吸血鬼の一族なんや。人の血が大好きなバケモノや!」

 

「いやああああああ!言わないで!」

 

「すずかが・・・吸血鬼?」

 

「・・・ほう」

 

 

吸血鬼ってこの世界にもいたのか・・・。かつて異世界に跳ばされた時に会った事がある僕は別段驚く事はなかった。そんな僕等を余所に、おじさんは話を続ける。

 

 

「コイツといれば何時かはこないな面倒事にまた巻き込まれるで?だからさっさと渡してk「ふざけんじゃないわよ!」なっ!?」

 

 

おじさんに向かってバニングスが小石を投げ付けた。その目は怒りの色一色である。

 

 

「すずかがバケモノ!?たとえそうだとしてもすずかは私の友達よ!アンタなんかには渡さないし、幾らでも巻き込まれてあげるわ!」

 

「アリサちゃん・・・」

 

「くっ・・・ならサヨナラや」

 

 

そう言っておじさんはバニングスさんに銃を構えた。月村さんがバニングスさんを庇う様にして立ち上がる。その前に僕は二人の前へと出た。

瞬間、銃声と共に銃弾が発射され、それをジャンプして素手で掴む。

 

 

「な、なんやて!?」

 

「流石に目の前で流血沙汰は嫌だからね」

 

「な、なにもんや嬢ちゃん!?」

 

「まずは嬢ちゃん止めろ。僕は男だし、後ろの二人と同い年だ」

 

「ファッ!?」

 

 

驚くおじさんにムカついた僕は年齢魔法で成長してから近づいて殴る。

 

 

「あーもうムカついた。取り敢えず殴る」

 

「こ、このガキ・・・!お前もすずかと同じバケモノかぁ!」

 

「ハッ!月村さんがバケモノ?馬鹿言わないでよ」

 

 

僕はゆっくりと近づきながら口を開く。

 

 

「その程度どうって事ない。バケモノって言うのはこういう奴の事さ」

 

 

僕は手刀で自分の反対の腕を軽く斬る。具体的には神経が切れるか切れないか位。その光景に目の前と後ろから息を飲む音が聞こえる。すると十秒もしないうちに腕の中身の傷は塞がり、傷口には薄皮が張り始めていた。それを見てその場の全員が絶句する。

 

 

「僕の方がよっぽどバケモノだ。月村さんなんてちょっと特殊な人間程度だよ。見た所、崖から落ちれば一発でしょ。僕は死ねなかったけど」

 

「で、出鱈目を・・・!」

 

「ならその銃で僕の頭を撃ちぬいてごらんよ」

 

「あ・・・うあああああああああ!?」

 

 

おじさんは必至な顔で僕へと銃を乱射する。結局銃弾は一発僕の頬を掠めただけで、残りは全て外れた。僕はその場にへたり込むおじさんの目の前に立つ。

 

 

「さて、そろそろ終わらせて帰ろうかな」

 

「まだや・・・まだ終わってへん!《イレイン》!このガキを殺せ!」

 

「おっと・・・しつこいな」

 

 

殺気を感じて後ろへ跳ぶと、腕にブレード状の武器を装着した女性が地面に穴を開ける。まあ、良くできた人形だこと。

 

 

「コイツは最強の自動人形や。行けイレイン!あのガキを八つ裂きにせえ!」

 

 

おじさんの命令で攻撃を再開するイレインの周りから五機程同型の自動人形が現れる。一斉に跳びかかって来るが、遅い。こんなのにベル家の魔法とか超いらない。それじゃあ、新しい魔法でも使いますか。僕は最近考えた魔法を発動する。すると、跳びかかった状態でイレイン達が停止する。

 

 

「な、なんだよコレ!動かねえ・・・!」

 

 

イレインが苦悶の声を上げる。ていうか喋れたんだこの子。イレイン達が動けない理由は、僕の両手の指先から出ている"魔力の糸"にあった。

魔力を細く、濃く生成する事で束縛や攻撃にすぐ転用できる糸を創った。自分のイメージ通りに動いてくれるから、細かい動作はいらない。そのままイレイン達を締め上げる。

 

 

「ぐがっ・・・!」

 

「弱すぎ・・・コレが本当に最強なのか?」

 

「凄い・・・イレインがあんなに簡単に・・・」

 

 

後ろで月村さんが何か言っているが無視して目の前の敵を締め上げる。だが、流石は機械。人間ならばとっくに気絶しているのに、未だに殺意マックスで僕を睨みつけながら抵抗を続ける。

そろそろ終わらせようと思った瞬間、外で一際大きな爆発音が起こった。

 

 

「な、なんや!?」

 

 

----刹那様ぁ!今参ります!

 

 

「・・・まあ、こうなるよね」

 

 

外からはトリエラの叫び声や、ディアーチェ達の怒号が聞こえて来る。自惚れだが、僕が誘拐されて何も起きない訳がない。少なくとも如月家の全員がマジギレ状態で来るだろう。魔力反応からしてマテリアルズとトリエラ、アインス、真希と言った所か。まあ、セシアには気を使ってくれたんだろう。

今日の事黙っていてもらわないと・・・。セシア落ち込むと長い時あるんだよな・・・。後ろからは引きつった笑い声が聞こえて来た。気にするな、これが我が家のデフォだから。

 

 

「さて、じゃあ後は任せますか!」

 

「げっふぉあ!?」

 

 

イレイン達をおじさんにぶつけて外へと、放り出す。壁を突き抜けておじさん達は地面をバウンドしながら転がっていった。僕達も後を追って抜けると、そこには・・・。

 

 

「吐け。刹那様は何処だ?」

 

「答えろ下郎。その頭、吹き飛ばすぞ」

 

「十秒だけあげます。焼かれたくなければ答えなさい」

 

「答えないと首飛ぶよ?」

 

「早く答えてください。断頭してサッカーしますよ?」

 

「知っているか?人間、断頭後は暫く意識があるらしい」

 

「ていうかもう殺っていいと思うわよ」

 

 

もうおじさん気絶してるよ・・・。倉庫から出てテクテク歩いて皆に近づく。

 

 

「皆、思ったより早かったね」

 

「めぐみんが教えてくれましたから。彼女は体力切れでそこで横たわってます」

 

 

シュテルに言われて目線を向けると、めぐみんがグテッとなっていた。コイツ体力なさすぎだろ・・・。

 

 

「おーい・・・生きてる?」

 

「だ・・・だいじょーぶです・・・」

 

「死に体じゃん。体力なさすぎ」

 

 

落ちてた木の棒でめぐみんをツンツンとつつく。あ、結構面白いなコレ。暫く堪能したあと、改めて周りを見回すと倒れ伏した大量のスーツ共とこちらを見てあんぐりしている男性二人組がいた。その二人を見て僕は自然と警戒心が出た。なにせこの二人、あの高町なのはの家族なのだから・・・。

面倒事になる前に逃げよう・・・。

 

 

「すずか!アリサちゃん!」

 

「お姉ちゃん!」

 

「忍さん!」

 

 

反対側から駆けて来る女性を見て、もう逃げ場がないと悟った僕は取り敢えず・・・。

 

 

「・・・誰か胃薬持ってない?」

 

 

キリキリと痛む胃の痛みを抑える事に専念する事にしました・・・。

 

 

刹那サイド終了

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