if〜刹那君は引きこもり〜   作:猫舌

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第38話

刹那サイド

 

 

あれから僕達はリムジンに乗せられ、月村邸へと案内された。相変わらずのデカイ家だなここ・・・。

僕達はとある一室に通された。広い部屋で、僕達は椅子に座る。ああ、他人多いな・・・皆視界から消えないかな・・・。鬱な気分になっていると、月村さんの姉である《月村 忍》さんが部屋へと入って来た。そして僕に話し掛ける。

 

 

「久しぶりね、刹那君」

 

「・・・ども」

 

「会ったのは、小学校以来かしら?」

 

「そっすね・・・」

 

「最近h「さっさと要件を進めろ」・・・分かったわ」

 

 

僕の心情を察してくれたのかディアーチェが待ったを掛けてくれた。月村さん(姉)は真剣な眼差しで此方を見る。

 

 

「貴方が会った《月村 安次郎》が迷惑を掛けて本当にごめんなさい」

 

 

そう言って此方へ頭を下げて来た。

 

 

「もう別に良いです。あの程度なら普通に勝てますし」

 

「でも一族の問題に関係ない子を巻き込んでしまったのは事実よ」

 

「僕はまあ、面倒事には慣れてますからそれはバニングスさんに言ってください」

 

「強いのね、刹那君は・・・」

 

「僕は弱いですよ。面識のない他人に囲まれたら最後、気絶しますから」

 

 

僕の言葉に月村さん(姉)と、何時の間にか彼女の傍にいた男性二人が絶句する。主にアンタ等の家族も原因の一部なんですがねぇ・・・(憤怒)。

内心怒っていると部屋のドアが開き、めぐみんが涙目で僕に飛び込んで来た。

 

 

「刹那ぁ!」

 

「ごふっ!?ちょっ・・・くるしい」

 

「ごめんなさい!私の所為でこんな事になってしまって本当にごめんなさい!」

 

「分かったから・・・離れろ!」

 

「はうっ!」

 

 

チョップを叩き込んで僕から離す。マジで意識落ちるかと思った・・・。

 

 

「まあ君の所為って事は否定しないけど代わりに早期解決には至ったし良いよ」

 

「刹那・・・」

 

 

めぐみんを取り敢えず落ち着かせると、男性二人組の一人が話し掛けて来た。

 

 

「刹那君、僕の事覚えているかい?」

 

「・・・お久しぶりです高町さん」

 

 

そう声を掛けて来たのは、あの高町なのはの父親である《高町 士郎》さんその人だった。数年前から全く変わらないそのイケメンフェイスに少々戸惑う。目の前のイケメンは苦笑する。

 

 

「やっぱり名前では呼んでもらえないんだね。それだけの事を此方はしてしまったんだ。当然か・・・」

 

「あ、いやその・・・」

 

 

僕はボソボソと言い淀む。僕を見て目の前の三人は首を傾げる。僕は深呼吸をしてから言いなおす。

 

 

「正直、もう怒ってはいないんですよ。あの時の事」

 

「「「はあっ!?」」」

 

「こうなるから嫌だったんだ・・・」

 

「いやいやいや!刹那君は正直もっと怒って良いのよ?」

 

「いやだって聞いたでしょう?全ての元凶」

 

 

僕の言葉に三人が頷く。真希が言うには、既に葉山達の事は高町家やその他諸々に報告があり、僕が完全に被害者であったと改めて確認してもらえたそうな。

 

 

「まあ、アイツの魔法無駄に巧妙でしたから一度信用すればそりゃまあ騙されるでしょうね」

 

「なら何故皆から距離を取るんだい?」

 

「僕が単に一歩踏み出せないだけですよ。あ、でもお宅の娘さんやその友達のパツ金痴女と狸とは一生相容れませんがね」

 

「うん、そう言うとは思っていたよ」

 

「て言うかですね。なんで管理局に入れたんですか?まだ小学生だったんですよ?」

 

「・・・今思うとなんであんな事言ってしまったんだろうか」

 

 

そう言って高町(父)が落ち込む。だってそうじゃん。あんな命捨てに行く様な組織に小学生で入るって馬鹿の極みだろうに・・・。

 

 

「そもそも管理局ってブラック企業より質悪いですよ。まず三権分立がありません」

 

「・・・それは本当かい?」

 

「はい。法を作るのも、法で裁くのも、他の事も基本的には全て管理局がしますし。不正し放題ですよ」

 

「なんて事だ・・・そんなの独裁政治となんら変わらないじゃないか」

 

「まあ、そこはお互いの価値観の違いですよね。向こうは魔法っていう兵器を持ってるんだ。欲に溺れた馬鹿共がやりそうな事ですよ」

 

 

部屋を静寂が支配した。いまさら後悔したって遅いだろうに。とっくに高町達は管理局の理念だとかくだらない事に感動を覚えてしまってるし。完全に国家の犬状態だ。管理局が全て正しい。魔法があれば何でも出来る。魔力持ってる奴は皆保護という名の拉致。

馬鹿じゃねえの?

 

 

「そこの所一回家族で話し合った方が良いですよ?少なくとも中卒で就職はアウトです。もし管理局が潰れたら何処も雇ってくれませんし」

 

「そうだね。そろそろ進路の話も出て来る頃だし・・・今度話してみるよ」

 

「そうしてください。そして主に僕への被害と負担を減らしてください」

 

「本当にごめん。・・・《恭也》、何時までも緊張していないでお前も何か話しなさい」

 

 

そう言われ、もう一人の男性である高町の兄の《高町 恭也》さんがカチコチの表情で僕を見る。そして突然目の前で土下座をかまして来た。

 

 

「すまなかった!」

 

「え、いきなりなんですか?」

 

「俺達はお前を助ける事ができなかった!本当なら俺達が信じて助けるべきだったのに・・・本当にすまなかった!」

 

「別に良いですよ。それに信じてもらえないって最初から分かってましたし」

 

「刹那、それは違うわよ」

 

 

真希の言葉に僕は首を傾げる。

 

 

「私と一緒に色々情報を集めてくれたの、士郎さんと恭也さんもいたのよ」

 

「・・・はい?」

 

「忍さんと《美由希》さんもよ」

 

「ごめんちょっと待って僕今混乱してる」

 

 

美由希さんとは高町の姉の事である。つまり何?僕が全員に対して敵対心持ってる中、あの人達は色々してくれていたって事?

 

 

「でも葉山の刷り込みは・・・」

 

「あの高町家の人達よ?魔法一筋ななのはなら兎も角、日々心身共に鍛えてるこの人達に効くと思う?私だって最初は驚いたわ。一人で調べてたら、手伝うって言って来るんだもの」

 

「段々と彼の言動や刹那君の事に疑問を持ってね。ある時に、真希ちゃんが一人で調べている所を見て、私達も参加させてもらったんだ」

 

「それなら言ってくれれば・・・」

 

「調べたから許してくれ、なんて言えるわけがない。だから真希にはギリギリまで黙っていてもらったんだ」

 

 

最後まで聞き、僕は唖然とした。それはアインス達も同じだった様で、ポカンとなっている。僕は取り敢えず頭を下げる事にした。

 

 

「いや、なんかありがとうございました」

 

「君が謝る必要はない。誰だってあんな状況になったら誰も信じられなくなるさ」

 

「はあ・・・」

 

 

なんか色々ありすぎて訳分かんなくなってきた。あ、レヴィが処理落ちした・・・。大丈夫、僕も落ちそうだから。

 

 

「できれば今度美由希に会ってほしんだが・・・」

 

「勘弁してくださいお願いします」

 

「・・・やっぱり苦手かい?」

 

「はい・・・正直葉山関連関係なしにちょっと」

 

 

そう、僕は高町美由希が苦手だ。なにせ初対面でいきなり抱き締められたり、会う度に膝の上に乗せられ、撫でくり回され、挙句の果てにはひたすらに女の子の服を延々と着させられる。昔、高町家でのお泊まり会。僕は高町さん(兄)と一緒に寝る筈だったのに何時の間にか彼女と同じ部屋、同じ布団で寝る事になったのだ。寝ていると、抱きしめられるわ足を絡められるわ、本当に大変だった。

僕も癖で抱きしめてしまったからあまりそこは強く言えないが・・・。

以来、過度なスキンシップで此方の体力をガリガリ削って来るあの人は僕の苦手な人ランキングの上位にずっとランクインしている。

なにせ自分の親に苦笑されるレベルだ。

 

 

「まあ、電話でならいいですけど会うのはちょっと・・・」

 

「ああ。俺の妹がすまないな・・・」

 

 

互いに溜息を吐くと、ドアが開いて月村さんとバニングスさんが入って来た。月村さんは頬に湿布を貼っていた。まあ、強めにやられてたしね。

 

 

「如月君、助けてくれてありがとう」

 

「別に。僕もあのままだと最悪な事になってたしね」

 

「だとしても私達を助けてくれたのは事実よ。本当にありがとね」

 

「・・・どういたしまして」

 

 

照れくさくなった僕は視線を逸らす。皆から微笑ましい目で見られている気がする。止めろ、こっち見んな。

暫くすると、月村さん(姉)が再び話を始めた。

 

 

「刹那君とアリサちゃんが揃った所で私達一族の事について話したいの」

 

 

そう言って話が始まった。

月村さん達は《夜の一族》と呼ばれており、所謂吸血鬼の仲間らしい。だが別に日に当たるのがタブーとか、十字架がダメとかは無いらしく、少し身体能力が高いだけらしい。偶に血が飲みたくなるらしいが、輸血パックがあるから大丈夫らしい。月村さん(姉)は高町さん(兄)と付き合っていて、彼からもらっているそうな。

 

 

「・・・というのが、私達一族の正体よ」

 

「まあ、運動神経の良い人間って認識で良いですね?」

 

「え、ええ・・・思ってた反応と違うわ」

 

「忍さん。刹那にそういうのあまり効果ないです」

 

「そっか・・・刹那君も魔法使いなのよね」

 

「昔にもっと凄い人外を沢山見て来たんで」

 

 

僕はある程度昔の話をする。かつて異世界で冒険をした事。そこで出会った月の兎や、恩恵を持った少年少女、嘗てこの世界で伝説を残した英霊達、懐かしさのあまりつい話しすぎてしまったが、月村さんはキラキラとした目で聞いてくれていた。ちょっと嬉しい。

その後、月村さん(姉)はこの事を誰にも口外せず過ごすか、記憶を消すかと聞かれたので拒否した。つい最近まで記憶喪失だったのにまた一部の記憶が消えるとかマジ簡便。

 

 

「まあ、僕からすれば月村さん達がどうだとかは問題ないです」

 

「私もすずかは大切な友達です!」

 

「そっか。ありがとう」

 

 

そう言って月村さん(姉)は安心した表情をする。すると再びドアが開き、メイドさんが紅茶を持って入って来た。確か・・・《ファリン》さんだっけ。

 

 

「皆さん、紅茶をお持ちsひゃわぁ!?」

 

「ファリン!?」

 

「《忍》さん!危ない!」

 

 

僕は思わず飛び出してメイドさんがズッコケて宙を舞った紅茶から忍さんを庇う。案の定頭から紅茶を被ってしまった。凄く熱いけど流石お金持ち、良い香りだ。

 

 

「ダージリンかなコレ?・・・へくちっ」

 

「せ、刹那君大丈夫!?《ノエル》!」

 

「はい。すぐにお風呂とお召し物を準備します」

 

 

何処に潜んでいたのかファリンさんの姉である《ノエル》さんがペコリとお辞儀をしてから出て行く。メイドって忍者の仲間だっけ?と考えていると、忍さんが僕の頭を拭いてくれた。

 

 

「ごめんなさい刹那君。大丈夫?」

 

「大丈夫です。これぐらいなら余裕です」

 

「ご、ごめんなさい~!」

 

「相変わらずで安心しましたよ・・・」

 

 

そうだ。この人昔からドジっ娘&天然属性持ちだった。暫くすると、ノエルさんが戻って来た。

 

 

「準備が整いました。刹那様、どうぞ」

 

「あ、はい」

 

 

僕は風呂場まで案内された。浴場はとても広く、なんかもう銭湯となんら変わらない。まあ、家もお母さんが趣味で魔法とかロストロギアで温泉引っ張って来ちゃってるからな・・・。

 

 

「よろしければお手伝いしましょうか?」

 

「いいです!一人で入れます!」

 

 

僕は着替えを受け取ってノエルさんに外へ出てもらう。あの人冗談言う人だったっけ?

 

 

「・・・惜しい」

 

 

彼女の呟きは僕に聞こえる事は無く、僕はお風呂にゆっくりと浸からせてもらう事にした。

 

 

「・・・あ!ガチャ引くの忘れてた!?」

 

 

刹那サイド終了

 

 

三人称サイド

 

 

刹那が入浴している間、先程の部屋では如月家と真希達の面々による刹那トークが始まっていた。

 

 

「やっぱり刹那の寝顔は最早兵器よ。この画像を見なさい」

 

「こ、これは・・・!」

 

「真希!これグループチャットに貼ってください。保存してポスターにします!」

 

「良いわよ。ユーリも代わりに刹那の欠伸画像を貼りなさい」

 

「分かりました」

 

 

そう言って何時ものメンバーがグループチャットの部屋に画像を貼り続ける。それをすずか、アリサは羨ましそうに見つめる。見かねたのか、ディアーチェが二人に手招きをする。二人はすぐに寄って来た。

 

 

「良いか?このグループ以外での写真の流出は厳禁だ。あの三馬鹿共に公開などもっての他だ。それが守れるのであればグループに入れてやる」

 

「刹那の先生もアリシアも入ってますし」

 

 

シュテルの言葉に絶句する。何というか・・・担任達とパツ金姉妹(姉)に先を越されていた。この日、二人は初めて嫉妬で人を殺せる気がしたという。

そしてその光景を大人組は微笑ましい目で見ていた。因みに父親の方は真希の取りだした刹那のウエイトレス服(女物)の写真を見て何時かスカウトする事を心に決めた。

 

 

「・・・はふぅ。良い湯だった」

 

 

そう言って刹那が戻ってきたのは実に一時間近く経っての事だった。長湯というのも考え物である。刹那は皆のチャットが目に入り、溜息を吐くが何も言わない。その目には諦めの色しかなかった。

 

 

「あの、お風呂ありがとうございました」

 

「こっちこそごめんなさい。迎えの車を用意させるわ」

 

「いや家には転移魔法で一瞬ですから大丈夫ですよ?」

 

「いや、でm「何だって!?」・・・恭也?」

 

 

突然声を上げた恭也に全員が注目する。恭也は携帯を持ったまま顔を真っ青にしていた。

 

 

「どうしたんだ恭也?」

 

「・・・なのはが、任務中に負傷して病院に運ばれた」

 

 

どうやら刹那の受難は一日では終わらないらしい・・・。

 

 

三人称サイド終了

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