if〜刹那君は引きこもり〜   作:猫舌

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第39話

刹那サイド

 

 

人が風呂から上がって良い気分になっていた所でまた面倒事が舞い込んで来た・・・。

 

 

「あ、じゃあ僕達はそろそろお暇させてm「刹那君!なのはを助けてくれ!」デスヨネー」

 

 

高町さん(父)の土下座を見て僕は諦めた。嫌な予感をひしひしと感じながら答える。

 

 

「良いですけど、僕から条件があります」

 

「分かった!取り敢えず一緒に来てくれ!」

 

「え!?あ、来い魔導書!」

 

 

僕は魔導書を出してアインス達に隠れてもらう。今から行く所は管理局の奴らのホームグラウンドだ。面倒な事になられても仕方がない。僕は魔導書を収納すると、人の事を抱え上げてくれちゃっている高町さん(父)に言った。

 

 

「あの、一つお願いが・・・」

 

 

刹那サイド終了

 

 

三人称サイド

 

 

~ミッドチルダ総合病院[病室]~

 

 

次元世界《ミッドチルダ》の総合病院。そのとある一室ではお通夜の様な空気が流れていた。全員が項垂れている中心で一人の少女が眠っている。

その少女の名は《高町 なのは》。管理局の次代のエースオブエースとも呼ばれている地球出身の魔導師の少女である。

 

 

「なのは・・・」

 

「クソッ!また守れなかったのかよ・・・!」

 

 

体中に包帯が巻かれ、痛々しい姿の彼女の傍で駈けつけた友人達は各々嘆く。そんな中、病室のドアが開かれる。そこにはなのはの家族達がいた。全員が泣きそうな顔でなのはを見る。

 

 

「なのは・・・どうしてこんな事に・・・!」

 

「《桃子》・・・」

 

 

なのはの母親である《高町 桃子》がなのはの姿を見てその場に崩れ落ちる。それを士郎が支える。その隣では姉である《高町 美由希》が兄の恭也と悔しそうに拳を握っていた。

暫くして、医師が部屋に入って来た。その表情は暗く沈んでいた。

 

 

「先生!なのはは・・・なのはは無事なんですか!?」

 

「落ち着いてください。・・・残念ですが、彼女の傷は相当なものです。最低でも数年間は安静にしていないといけません」

 

 

その場の全員が絶望する。数年前、なのはが小学5年生の時も無理が祟って大怪我をした事があった。その際よりも傷が深く、恐らく腕や足も満足に動かせないと言われた。士郎達は絶望する。医師は気まずさと、家族の時間を考えて足早に退室していった。医師が出てから暫くして、士郎が"肩に担いでいたバッグ"を下す。

 

 

「お願いできるかい・・・?」

 

『・・・今回だけですよ』

 

 

突如バッグから聞こえた声に全員が驚愕する。士郎がゆっくりとチャックを開くと、中から白い髪の人物が出て来る。そしてその場で伸びをする。

 

 

「ん~・・・楽じゃなかった。さて、始めますか」

 

 

その正体《如月 刹那》はバッグから下り、なのはの前まで出る。そして・・・、

 

 

「おい、起きろ」

 

「へぶっ!?・・・刹那君?」

 

「ああ。また迷惑掛けやがって・・・この親不孝者が」

 

 

あろう事か死に体の人物にビンタを叩き込み、強制的に意識を戻した。そしてなのはの患者衣の襟を掴み、睨みつける。その目には怒りの炎が燃え上がっていた・・・。

 

 

三人称サイド終了

 

 

刹那サイド

 

 

僕は目の前の馬鹿を睨みつける。実は月村家で高町さん(父)に僕をバッグに入れて運ぶ様に頼んでいたのだ。理由は局員に色々言われると困る&他人に見られたくないの二つだ。病室にいる面々は全員顔見知りなのでどうでもいい。

トリエラも戦闘機人だから面倒事を避ける為に地球でお留守番中だ。セシア達と合流したらそのまま待機させる様に言ってある。セシアも金剛も高性能すぎて確実に目を付けられる。

馬鹿に近づいて僕は言った。

 

 

「お前、どうしてこうなった?」

 

「えっと・・・たしか《AMF》の中に入っちゃって、後ろからあの時と同じ機械に・・・」

 

「《AMF(アンチ・マギリング・フィールド)》か。つまりはドジやらかして無様にボコられたと・・・阿呆の極みだね」

 

 

AMFは一定の範囲内で魔力の出力を下げるフィールドで、最近はよく次元世界で犯罪やらかしている奴らが対魔導師用に使っているらしい。

僕は馬鹿をベッドに押し戻し、さきほどの医師の言葉を一言一句変えずに話した。馬鹿の表情は絶望に染まる。僕は椅子に座り直し、馬鹿に提案する。

 

 

「まあ、君の父親には恩が出来たばかりだし・・・傷を治してやらない事もない」

 

「私の傷を治せるの!?」

 

「うん。寧ろ怪我する前よりも健康的な状態まで持って行けるまである」

 

「じゃあおねg「ただし!条件がある」・・・何かな?」

 

 

僕を期待した目で見る馬鹿に僕は条件を突き付けた。

 

 

「高町なのは・・・"魔法を捨てろ"」

 

「・・・え?」

 

「聞こえなかったか?魔法、つまりはリンカーコアを捨てろと言ったんだ」

 

 

リンカーコアとは魔力の大元となる器官であり、コレがなければ魔法は使えない。つまり僕は、コイツに魔法から手を引けと言ったのだ。

 

 

「僕ならお前のその目に見えてボロボロなリンカーコアも修復出来る。だがする気はさらさら無い。それにどの道その状態じゃ一生復帰なんてできない」

 

「刹那!お願いだからなのはのリンカーコアも治して!」

 

 

金髪姉妹(妹)が僕に怒りの形相で言う。僕は思わず笑ってしまった。

 

 

「馬鹿か?僕がそこまでする義理はないよ。体を動かせる様にする程度だ。良いですよね、高町家の皆さん?」

 

 

僕が聞くと、高町家の面々は頷いた。それを見て馬鹿が焦る。

 

 

「どうして!?皆私の夢を応援してくれるって言ったじゃない!?」

 

「なのは・・・私達は間違っていたんだよ」

 

「そうよ。本当ならこんなに危ない所に行かせるべきではなかった・・・」

 

「なんで・・・お兄ちゃん!お姉ちゃん!」

 

「・・・俺達は魔法を便利な物と勘違いしてしまっていたんだ」

 

「本当はこんなにも脆い物だったんだね・・・」

 

 

まあ、自分の娘が二回も死に掛ければこうなるよね。僕は目の前で絶句している馬鹿を見てもう一度聞く。

 

 

「良いか?魔法はお前達の考えている様な優しい物なんかじゃない。簡単に人の命も奪えるし、状況によっては自分の命すら奪う。魔導師っていうのはそういうもの全部承知の上で魔法を使う物なんだ」

 

 

そうだ。僕がこの前暴走して局員を皆殺しにして、記憶喪失になった様に魔法は生半可な覚悟で使用して良い物ではない。大いなる力には大いなる代償が伴う。

そんな事も理解せずにこの馬鹿共は碌でもない理想を掲げて二回も家族を心配させたのだ。

僕の様な無駄に丈夫な体と違って、コイツは魔力があるだけのただの人間だ。魔力を取ったら何も無い平凡な人間だ。特別なレアスキルがあるわけでもない。高町家の剣術を扱える訳でもない。本当にただの一般人と大差無い人間なのだ。

 

 

「魔法はあれば何でもできるみたいな事言ってさ・・・。なら僕の母親を生き返らせろ。お前ら管理局が奪った僕のお母さんを返せ!」

 

「・・・それは」

 

「出来ないよね。そうだ、魔法は万能じゃない。それにAMFがあればお前等なんてただの有象無象の一つに過ぎないんだよ」

 

 

馬鹿・・・高町は泣きだす。その瞬間、僕の首に剣の刃が添えられた。剣の持ち主に視線を向けると、ピンクの髪をした女性が殺気をガンガンに出して僕を睨む。ああ、僕が武器にして振り回した狸の所の・・・ニョクマムだっけ?

どう見てもくっ殺要因ですね分かります。

 

 

「今すぐ高町を治療して謝罪しろ。拒否権は無い」

 

「・・・嫌だね。まだコイツの答えを聞いてない」

 

「まだ分からないか。今貴様の命は私の手の中にあるのだ」

 

「コイツも高町病かよ・・・」

 

 

高町病とは、言葉の通り高町なのはの魔法万能説に病的なまでに心酔してる馬鹿共の事である。葉山達がいなかったら僕もこうなってたのかもしれないと思うと吐き気がする。

僕は溜息を吐いて、首元の剣を握る。手の皮が切れ、血が滴るが気にしない。そのまま剣を握りつぶした。

 

 

「僕の命が・・・何だって?」

 

「ッ・・・!?」

 

 

殺気をばら撒いて、この病室全員の動きを止める。あ、後ろにいた真希が泡吹いた。やっべやりすぎた。桃子さんには行かない様にしてたけどミスったな・・・。めぐみんも泡吹いてるし。その他は・・・まあ、戦場慣れしてるから恐怖で動かない程度か。

 

 

「今の行動は見なかった事にしておくよ。お前のふざけた行動が主の首を締め付けるって事をよく覚えておけ」

 

 

僕に危害を加えた。つまりは特権を破った事になる。その場合、下手すると狸が極刑なんて事もありえる。元友人が死ぬのはあまり見たくはない。外野は放って高町を再び見る。

 

 

「君の理想は絵空事にも満たない。くだらないプライドに縋っているのなら・・・そのまま理想を抱いて溺死しろ」

 

「・・・私、は」

 

「選べ。魔法を捨てるか、人生全てを捨てるか。君の命だ、自分で決めろ」

 

 

僕は放心状態の高町から視線を外し、自分の掌を見る。血に濡れたその手は既に完治していた。置いてあったウェットティッシュで血を拭き取る。それから気絶しているめぐみんの頬を優しくぺちぺちと叩く。

 

 

「おーい、しっかりしろー」

 

「・・・はっ!?今爆裂魔法の法則が乱れました!」

 

「よし、平常運転だね」

 

 

同じ要領で真希も起こし、再び椅子に戻る。高町は未だに放心状態だ。

 

 

「・・・ダメだ。僕が言ってもどうにもならん。高町家の方々にお任せします」

 

 

そう言って真希達と屋上へ行く。この時間帯なら誰もいないし。屋上でベンチに座って溜息を吐く。

 

 

「何でこんなに苦労しないといけないんだ・・・」

 

「・・・バックれますか?」

 

「それはマズいんじゃないかしら?」

 

 

帰りたい気持ちを抑えていると、屋上のドアが開けられた。そこには狸とその騎士達が立っていた。

 

 

「刹那君。何でなのはちゃんにあんな事言うんや」

 

「あんな事?至極真っ当な正論を述べただけだけど?」

 

「違う!なのはちゃんは何も間違っておらへん!」

 

「間違いだらけだよ。高町も、君達もね」

 

 

そう僕は吐き捨てる。やっぱりコイツ等とは一生相容れない。すると、僕に刃を向けて来たピンク髪が僕に言う。

 

 

「ならば私と決闘だ。私が勝てば高町を治療しろ」

 

「は?嫌だね。君達と戦う理由が無い」

 

「こちらにはある。着いて来い」

 

「ねえ、僕の話聞いてた?」

 

 

結局僕の話は聞いてもらえず、諦めて着いて行く事にした。道中、狸の騎士達が話し掛けて来た。

 

 

「その、はやてとシグナムが迷惑掛けてごめんな」

 

「・・・今に始まった事じゃない」

 

「アタシはヴィータってんだ。アタシ達は基本参加しないからアイツぶっ飛ばしてくれ」

 

「いいの?仲間でしょアレ?」

 

 

疑問に思うと、ヴィータと名乗った少女の隣にいたもう一人の女性が話す。

 

 

「仲間だけど・・・正直シグナムには着いて行けないわ。はやてちゃん至上主義だから疑う事もしないの。だから一度お灸を据えないと」

 

「そこは大いに賛成だ。丁度試したい魔法があるし」

 

「シグナムでも実験台扱いなのね・・・。あ、私は《シャマル》。よろしくね」

 

「ん。で、そこのデカい犬耳さんは?」

 

「・・・《ザフィーラ》だ」

 

 

残ったガチムチの犬耳男はそう言ってまた無言に戻る。おい狸、お前の家族なんか内部分裂してるぞ。家族崩壊には気をつけろよ。

さて、真希の発案した新魔法が何処まで使えるか・・・。

 

 

「着いたぞ。此処だ」

 

「随分とまあ立派な事」

 

 

病院から歩いて5分もせずに大きな建物の中の闘技場へ着いた。

 

 

「私の所属する《聖王教会》の闘技場だ」

 

「それ僕の家系崇拝している所なんじゃ・・・」

 

「安心しろ。私は貴様を王とは認めん」

 

「アンタに認めてもらう気はないよ」

 

 

僕はさっさと終わらせようと、闘技場へピンクと向かう。すると道中、金髪の女性が走って来た。なんで僕の周りは金髪率が高いんですかねぇ・・・。

 

 

「騎士シグナム!こんな夜遅くに何事ですか!?」

 

「止めないでください。私はどうしても勝たなければいけないのです」

 

「・・・なんかすいません」

 

「あ、いえ・・・子供?」

 

「小さくて悪かったですね!」

 

 

ブチ切れた僕は年齢魔法で慎重を伸ばして闘技場に上がる。そしてピンクがデバイスをセットアップして僕に剣を向けて来た。

 

 

「私は烈火の将《シグナム》!いざ尋常に勝負!」

 

「・・・如月刹那。行きまーす」

 

 

適当に答えて決闘が始まる。瞬間、ピンクが一気に接近して剣を振るって来るが、全て躱す。隙ができたので、蹴り飛ばすと防御の構えを取られて距離を離される。

そこで僕は新しく創った魔法を使う為に魔力変換資質《大地》を発動する。すると地面から巨大な大砲が出現し、僕の腕に装着される。

 

 

「撃ち抜け、《鉄(くろがね)》!」

 

「ぐっ!?《レヴァンティン》!」

 

 

大砲から岩の弾丸が発射されるが、ピンクの剣が蛇腹剣に変形して弾丸を削り取る。そして僕に鞭の様になった刃が迫る。

僕は鉄を解除して大地の魔力を込めた腕で地面を殴る。

 

 

「《威風堂々(フード)》!」

 

 

次の瞬間、巨大な籠手を装備した腕が地面から飛び出して刃を弾く。

 

 

「このっ・・・レヴァンティン!カートリッジロード!」

 

 

元の形に戻したピンクが叫ぶと、デバイスから薬莢が排出される。その瞬間、一気に魔力が上がり、剣に炎が宿る。変換資質持ちか・・・。

 

 

「仕方ない・・・《旅人(ガリバー)》!」

 

「なんだ!?」

 

 

闘技場の地面を緑色の線が駆け巡り、大量のマスが創られる。僕は一応行っておく。

 

 

「あ、そのまま魔法使ったら負けますよ」

 

「寝言は寝て言え!どの様なものでも斬り捨てる!」

 

「・・・知らないよ」

 

「行くぞ!《紫電一s」

 

 

そう言いかけた瞬間、ピンクの足元のマスからパネルが顔を出して組み合わさり箱になってピンクを閉じ込めた。そして箱の中で炎が燃え盛る音がした。炎が収まると箱が開き、黒こげになったピンクが膝を付く。

新魔法の一つである《旅人》はマスの上で相手が動いた瞬間に発動し、拘束する。地面にいる時にしか使えないのがネックではあるが、目の前の猪突猛進な相手にはちょうど良い技だ。しかもコレ、基本的に僕の任意でないと開かないし、外から僕が箱に攻撃すれば普通に相手にダメージが入る。

アイディアは真希が前世で読んだマンガらしい。

 

 

「もう飽きた。・・・《唯我独尊(マッシュ)》」

 

「がはぁっ!?」

 

 

最後に地面から巨大な口をしたキューブが飛び出し、ピンクに噛み付く。ピンクはそのままグッタリと気絶した。

思ったんだけど、なんでこの人飛ばなかったの?飛行魔法の適正あるよね?見れば分かるし・・・。流石猪突猛進。

 

 

「終わったし病院戻るか。いい加減終わってるでしょ」

 

「あ、あの!」

 

「・・・なんですか?」

 

 

さっきの金髪の人が僕を見て、お辞儀をして来た。何だよ・・・。

 

 

「《セツナ・ベル・ゼーゲブレヒト》様!そうとは知らず御無礼をお詫びいたします!私、《カリム・グラシア》と申します!」

 

「・・・あ!」

 

 

此処が聖王教会だった事を思い出し、僕はやっちまった感に捉われる。ああ、誰か僕に平穏をください・・・。

 

 

刹那サイド終了

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