刹那サイド
目を覚ました僕は体調が安定したので部屋でネトゲをしている。セシアは待機状態で机の上に、ディアーチェは僕を隣から見ている。どうしても心配らしい。
「あの・・・だからもう大丈夫だって」テイトクオソーイ!
「あんな事があったら暫くは安心できん」
「そ、そうですか・・・あ、ゴルドラが来る時間だ」
僕はパソコンから携帯へとシフトする。石がそろそろ切れそうだ・・・夜に買いに行こう。家の近くがコンビニで良かった・・・。今度はパソコンへ戻ってゲームを変える。何時もの癖で人払いもせずに僕はエロゲを始めてしまった。ディアーチェは顔を赤くしながらも画面を食い入る様に見つめる。其処にはヒロインの女の子がうさ耳を付けてバニーのコスプレをしているシーンだった。ディアーチェはそれを見ながら僕に聞いてくる。
「その・・・刹那はこの様な格好が好みなのか・・・?」
「嫌いじゃ無いけどそれだけじゃダメなんだ」
僕の言葉にディアーチェが首を傾げる。
「こう言う格好をした女の子が好きなんじゃ無くて、こう言う格好をした,二次元の,女の子が好きなんだ」
「・・・お前」
「だって選択肢さえ間違えなければ悪口とか言わないし殴っても来ないし・・・。でもツンデレとか暴力系ヒロインとか嫌いなんだよね。普通にウザい奴にしか見えない」
「ツンデレ・・・ウザい・・・素直に・・・」
僕の言葉にディアーチェはブツブツと何かを呟きながら反応しなくなる。結果オーライなのでそのままゲームを進めた。
「たっだいまー!」
「ん。お帰り・・・」
「何のゲームやってるnってにゃああああ!?////」
「レヴィうるさい」
帰宅して来たレヴィが僕のパソコン画面を見て顔を赤くする。其処には主人公とヒロイン達が絡み合っている所謂濡れ場の映像が広がっていた。この子変な所で初心なんだよなぁ・・・。
「み、皆で何て・・・」
「僕どのエロゲやってもハーレムエンドにしかならないんだ。なんでだろう?他のシーンも見たいんだけどな・・・飽きちゃったよ」
「ほ、他の!?あ、飽きたぁ!?シュテるんー!ユーリー!刹那が!刹那がぁ!」
「もう、何ですか騒々しい」
「レヴィ、近所迷惑ですよ」
廊下から声が聞こえる。
「せ、刹那がい、いっぱいの女の子とえ、エッチしてた!」
「ちょっと待ってちょっと待ってレヴィさん!それは誤解d「「刹那」」ひっ」
僕に怒りの形相でシュテルとユーリが僕に近づく。
「看病したい気持ちを抑えて学校から帰って来てみれば何ですか一人酒池肉林ですか?現実の女の子に興味を持ったんですか?なら話は早いです。私を抱いて下さい」
「そうです。今更二人増えても問題ないですよね。さあ、どうぞ!」
「うん、ちょっと落ち着こうかそして服を脱ぐな其処の肉食系女子二人」
「何ですか?もしかして逆レがお望みですか?良いでしょう」
「話を聞けこの変態!中学生が黒の下着を穿くな!」
僕は引き出しからハリセンを取り出してシュテルの頭を叩く。
「刹那、私はイチャラブが良いです」
「君もか!って言うかパンツを穿けよぉ!」
「だって・・・刹那に見られてると思うと・・・ぁん♡」
「コイツが一番ヤバかったー!?目を覚ませこのおバカ!」
ユーリの頭にも超エキサイティングッ!二人は頭を抑えながら床へと沈む。僕の周りにはブツブツと呟くディアーチェと一人慌てふためくレヴィと床でヤムチャのポーズで倒れているシュテルとユーリと大変カオスな場が広がっていた。
「何このカオス・・・ふわぁ」
『マスター。眠った方が宜しいかと』
「でも僕寝るの好きじゃ無いんだけど・・・」
『それなら私が睡眠魔法で深い眠りに入った状態にするので夢は見せませんよ』
「それじゃあ・・・お願い」
僕は睡眠魔法を掛けて貰い、深い闇の底へと潜って行った。
「・・・んぅ?」
目を覚ますと部屋は真っ暗で、手元の携帯の電源を入れると午後7時を回っていた。僕は起きてフード突きのパーカーを着てバッグに財布を入れて肩に掛ける。そして部屋を出た。リビングのメンバーに声を掛ける。
「ちょっと・・・コンビニ」
「・・・大丈夫なのか?」
「だいじょうぶだいじょうぶ・・・ふわぁ」
「我が付いて行こう。流石に寝ぼけてる刹那を外へ出すのは危険だ」
「んゅ・・・れっつご~・・・」
僕は寝ぼけ眼を擦りながらディアーチェとコンビニへ向かい、課金用のネット通貨を10万円分購入し、コンビニを出る。そして、
「あ・・・」
「んみゅ・・・あ・・・ダッシュ!」
「ちょ、待ちなさい!」
目が完全に覚めた僕はディアーチェの手を引いて全力でその場を離れた。目の前にいた人物《蒼乃 真希》から逃げる為に・・・。
「ハア・・・ハア・・・せ、刹那・・・ストップだ・・・」
「あ、ごめん。・・・もう来てないな」
僕はディアーチェのペースも考えずに走ってしまい、気が付けば家から少し離れた海沿いの公園に来ていた。空には星たちが輝き、その光だけが周りを照らしている。僕とディアーチェは休憩がてらベンチに座って星を眺める。
「完っ全に目ぇ覚めたよ」
「あの小娘は・・・」
「蒼乃真希・・・僕の元友達だよ」
「そうか・・・」
ディアーチェは無言で僕を抱きしめた。僕は突然の行為に驚く。
「ど、どうしたのさディアーチェ」
「刹那・・・手、震えているぞ」
「あ・・・本当だ」
ディアーチェに言われるまで気づかなかった僕の手は震えていた。自覚すると全身に震えが走る。するとディアーチェの抱きしめる力も強くなった。
「大丈夫だ・・・刹那は我らが守る」
「うん・・・ありがと」
僕は体を捻ってディーアチェを見上げる。優しい表情をしたディアーチェが微笑み返してくれ、自然とお互いの唇が近づいて・・・
「やっと見つけたわ」
「「わっ!?////」」
「人が必死に探し回っている間にイチャイチャして・・・挙げ句の果てにはキスまで・・・!私だって妄想の中でしかした事ないのに!」
「ま、待って!まだしてないよ!」
「まだって事は今しようとしてたんじゃない!私にもしなさいよ!」
「ひっ・・・へ?」
「小娘・・・今なんと言った?」
「だから・・・私にもしなさいって言ってるの!」
蒼乃さんの声が大きく響き渡った次の瞬間、彼女の顔が星明かりでも分かる位に真っ赤に染まる。
「えっと・・・僕を虐めに・・・来たんだよね?」
「ち、違うわよ!い、いやキスはしたいんだけdじゃなくて!あーもー!」
「お、落ち着いて!ディアーチェ、ちょっと宜しく。僕ジュース買ってくる!」
僕はダッシュで自販機へと向かう
「お、おい待て!我と小娘を一緒にするでない!」
ディアーチェの声がした気がしたが、僕は何も考えず自販機へと向かった・・・。
刹那サイド終了
ディアーチェサイド
刹那が我を置いてから小娘を宥めさせるのに大量の労力を使った。今はベンチに座り落ち着いている。
「さて、本当に何しに来た小娘」
「・・・何で貴方が此処にいるのよディアーチェ」
「質問を質問で返すな。此方の要件にさっさと答えろ」
「・・・謝りたかったのよ」
「ほう・・・」
「数年前・・・刹那が虐められていた時・・・私は何も出来なかった。それどころか刹那を疑って・・・あんな事をして・・・だから刹那を見た時、謝りたくて・・・」
「だがそれにしても自分にもキスしろとは何事か?」
「・・・初・・・だから」
「む・・・?」
「初恋・・・だから・・・」
我は一瞬目を見開いた。この小娘、刹那に・・・。
「・・・そうか。だが刹那は貴様を許さないし好きにもならないと思うが?」
「そんな事分かってるわ。だから決めたの・・・謝ったら諦めようって・・・」
「そもそもどう言う経緯で刹那に惹かれた?我はその頃の刹那を見てないからな」
「そうね・・・見た目は出会った頃から変わってないわ。真っ白な髪で、可愛い目で・・・愛らしかったわ。初めて見た時、キュンってなっちゃって・・・」
「確かにあの見た目は女として負けた感じはあるな」
「そうそう。それで・・・話してみたら凄い良い子で純粋だった。寧ろ惚れるなって方が無理よ。なのは達も好きだしね。今でも・・・」
「そうか・・・だが刹那は」
「分かってるわよ。でもあの写真を見たりしてから刹那の事を疑って・・・」
そう言って小娘は涙声になる。
「貴様は・・・その騒動の犯人は分かっているのか?」
「ええ。葉山と神城の二人よ」
「ほぅ・・・我は話でしか聞いた事が無いが随分と利口な様だな。貴様・・・」
「私の能力で偶々分かったのよ。刹那が学校に来なくなってから怪しいって思って色々調べたりもして確実にコイツ等って分かって・・・」
「それで先程の場面を謝罪と真相を伝える為に来た、と・・・?」
「ええ。刹那の事は嘘って分かったんだけど皆葉山達が犯人って信じなくて・・・」
「話を聞くに其処まで刷り込みをされていたのなら誰も信じないだろう。で、その塵芥共は今どうしている?」
「葉山と神城には性格を更正させて普通の生活を送っているわ。私達に復讐がしたいのなら何も言わないし何でもする。私達はそれ程の事をやったんだもの」
「・・・ならば刹那の記憶を体験してもらおうか」
我が言うと小娘は目を見開く。
「何だ、できぬのか?」
「違うわよ。そんな事・・・できるの?」
「可能だ。刹那の能力なら余裕で出来る。我も一度刹那の記憶を体験したが、三日は起き上がれなかった。あれは廃人寸前になる」
「そんな思いを・・・刹那は・・・」
「あの・・・何この状況?」
声がした方向に振り向くと、缶ジュースを数本持った刹那が立って冷や汗を流していた・・・。
ディアーチェサイド終了
刹那サイド
缶ジュースを二人に渡してベンチに座る。そして缶を開けて一飲みしてから話し出す。
「あー・・・何で蒼乃さんは僕の記憶を体験する事になったんだっけ?」
「名字・・・わ、私への罰よ。私達は貴方に酷い事をしたわ。本当にごめんなさい」
「・・・で、その罰で僕の記憶を体験しろと其処の王様に言われたんだね?」
僕が言うと、蒼乃さんが頷く。僕は溜息を吐いて忠告した。
「別に良いけど・・・僕は満足しないし辛いよこの記憶・・・それでもやる?」
「やるわ」
即答だった。僕は意を決して相手に記憶や知識、感覚を体験させたり共有する能力《過去共有》を発動させると、指の先に光が灯る。
「じゃあこれを今から君の額に付けた瞬間、記憶の体験が始まるよ。・・・痛みも来るから頑張って」
「ありがとう」
僕が蒼乃さんの額を軽く突くと、蒼乃さんは目を閉じて動かなくなる。暫くすると、彼女の表情が険しくなり、体をモゾモゾと動かし始める。魘されてるなコレ・・・。
「ねえ、やっぱり止めた方が・・・」
「ダメだ。これは小娘への罰だ。本来なら一生この状態をループさせても良いんだぞ?」
「いや流石にそれはダメだ。彼女が可哀想すぎる」
「刹那・・・妙にこの小娘に優しくないか?あの女と扱いが違うぞ」
「えっ・・・ま、まさか!そんな筈は・・・」
「そうか?まさかとは思うが・・・好きだったのか?」
「えっ!?そ、そんな事は・・・!////」
「そうか・・・図星か。顔を赤くしおって・・・」
ディアーチェはそう言って涙を流し始める。
「え?え?な、何で泣くのさ!?」
「うるさい!何故我ではないのだーーーーっ!」
「ど、どうすれば・・・?」
結局ディアーチェは僕がギュってしたら止まって僕にしがみついたままだ。僕に頬を擦りつけながら話す。
「・・・で、だ。小娘はお前の初恋の相手だった訳だな?」
「・・・うん。でも引き篭ってから吹っ切れちゃったけどね。あと二次元じゃないと彼女とか嫌だし・・・ん?」
「どうした刹那?」
「アレ・・・何?」
僕が指を刺した方向には地面でキラキラ光っている何かがあった。
「アレは・・・まさか!」
「ちょ、ちょっとディアーチェ?」
ディアーチェが駆け出した方向へ着いて行く。光る物の場所へ行くと、其処にあったのは何かの破片だった。
「ディアーチェ・・・これは?」
「・・・夜天の書の管理人格の記憶データだ」
「よく分かんないんだけど?」
「つまりは我のオリジナルの魔道書の管理人格の記憶だ」
「へえ・・・ってえええええええええ!?」
そ、それってもしかしなくてもヤバイ事なのでは・・・?
「そ、それどうするの?」
「刹那・・・コイツを治す事は可能か?」
「・・・見た限りでは大丈夫だと思う・・・でも・・・」
「でも何だ・・・?」
「破片の残り方が綺麗すぎる。まるで・・・最初から此処で拾う為にある様な・・・計算された欠け方だよ。幾つかそう言った物を処理した事があるから間違いない」
何でこんな物が・・・。取り敢えず今はそれを持ち帰ろう。僕はバッグをカバンに入れてベンチへ戻った。ベンチへ戻ると、顔を青くした蒼乃さんが震えていた。僕はジュースを渡す。
「はい・・・大丈夫?」
「・・・ありがと」
「それで・・・どうだった?」
「今凄く自分で自分を殺したい気分よ。初恋の相手を彼処まで傷付けた自分が許せない」
「は、初恋?」
「そうよ。貴方は今でも継続中の初恋の相手よ。でも・・・私にその資格は無いわ」
「・・・刹那の初恋はお前だったそうだ」
ディアーチェが蒼乃さんの後に爆弾発言をブッ込んできた。その言葉に蒼乃さんは目を見開き僕は目を逸らす。
「で、でも僕今二次元にしか興味無いし・・・」
「ちょっと待ってて。今二次元の存在になってくるわ」
「ちょっ!?崖から飛び降りて平面になってもグロいのは愛せないよ!?」
「はなしてー!急いで刹那好みの女の子になるのー!初恋成就させるまで止まれないのーーーーっ!」
「ああもう成就しても良いから今すぐ止まって!100cmで君を抑えるのにも限界とかあるから!」
「ほ、本当?成就して良いの?私がしちゃって良いの?」
「いいから止まって!本気で限界だから!」
ようやく止まった・・・。僕はその場に仰向けに倒れる。ヒッキーに運動は辛いっす。ディアーチェに支えられながら立ち上がる。目の前には大号泣してる蒼乃さんがいた。
「あの・・・さ。ありがとね・・・僕の誤解解いてくれて・・・」
「ううん・・・私も本当にごめんなさい!」
「いや・・・もう良いよ。確かに最初は裏切り者!って思ったけど君はずっと調べててくれたんだよね?」
「でも・・・私は遅すぎたよ」
「そうだね・・・拒食症になったり死にたくても死ねなかったりしたもん」
「だ、ダメ!死んじゃダメ!」
「分かってる・・・少なくとも,今は,死なないよ」
僕達が話していると、僕の携帯に電話が掛かってくる。家からだった。
「もしもし?」
『刹那、今何処ですか?いや・・・海沿いの公園の展望台ですね?』
「な、何で分かるの?」
『愛です。刹那きゅん検定一級を舐めないで下さい』
「そんな検定聞いた事無いよ!?て言うか誰も持っとらんわそんな検定!」
「我は持っているぞ。一級だ」
「私は準二級ね」
「何で持ってるの!?」
『今知らない女の声がしました。レヴィ、ユーリ、狩りの時間です。待っていてください。直ぐに行きますから』
一方的に言われ、電話を切られた。僕とディアーチェは蒼乃さんを見て十字を切った。
「わ、私・・・殺さr「「「見ぃつけた・・・」」」た、たすk」
アッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?
この日、僕達の街に一人の少女の悲鳴が鳴り響いた。
刹那サイド終了