if〜刹那君は引きこもり〜   作:猫舌

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第40話

刹那サイド

 

 

決闘もサクッと終わったので、僕達は病院に戻る。戻るのだが・・・。

 

 

「あの!サイン戴けませんか!?あとお写真を!」

 

「あ、あの・・・離れてください」

 

 

さっきからカリムさんが何処から取りだしたのか、色紙とカメラを持って僕に詰め寄って来る。真希達に救援を求めたが目を逸らされた。この人の熱意に引いたのだろう。

 

 

「特権故にお会いできる事は一生無いと絶望していましたが、今は希望に溢れています!この感動を生涯形に残す為にサインください!」

 

「・・・分かりました!」

 

「やりました!」

 

 

もうヤケクソだった。さっさと色紙に名前を書く。希望された、[カリム殿へ]、[聖魔王より]とかのオプションも書いて渡す。それをカリムさんは嬉しそうに両手で抱える。・・・ちょっと可愛いとか思ってしまった。

最後に写真を撮ったのだが・・・なんか姉弟での記念撮影みたいになってる・・・。

 

 

「本当にありがとうございました。これは大切に聖王の記念館に飾らせていただきます」

 

「やめてください死んでしまいます。精神的な意味で」

 

 

他人に写真見られたい放題とかそれなんてイジメ・・・。プライバシーを守ってください。

 

 

「ソレは絶対に他人に公開しないでください。お願いします」

 

「は、はい!」

 

 

取り敢えず殺気を出して睨む。よし、こうかはばつぐんだ!

 

 

「それでは、僕達は戻ります。どうしても外せない用事があるので」

 

「ご用事ですか?」

 

「はい。・・・"元友達"として最後の忠告を」

 

 

僕達はカリムさんと別れて病院へと歩き出した。え、ピンク?なんかイラッとしたから地面に埋めて来ましたが、何か?

 

 

 

 

 

~病院[病室]~

 

 

「さて、答えは決まったかい?」

 

「・・・うん」

 

 

部屋に戻ると、高町は憔悴しきった表情をしていた。ご家族の方々も疲れ切った表情をしている。そんな中、高町は死んだ魚の様な目を僕に向けてゆっくりと口を開いた・・・。

 

 

「・・・私の傷を、治してください」

 

「ん。分かった。魔導書よ」

 

 

魔導書を出現させて、ページを開いて白紙のページを千切る。そしてそのページを高町の鳩尾あたりに貼りつける。すると、一瞬で白紙のページが光出して魔法陣が刻まれて行く。光が消えた所で、そのページを魔導書に近付けると、千切った部分が再生した。ベル家の術式で、相手の魔導師を無力化させる為の物だ。

 

 

「最後は治療だ。《サイフォジオ》」

 

「・・・暖かい」

 

 

出現された回復魔法の剣を高町に刺して、回復させる。高町は少し嬉しそうに回復魔法に身を委ねていた。傷が全快すると、高町は自分の胸に手を当てて目を瞑り出した。そして目を開くと、苦笑する。

 

 

「にゃはは・・・なにも感じないや」

 

「そりゃリンカーコア取っ払ったからね。自業自得さ」

 

「そうだね。でも、もうちょっと頑張れば沢山救えたのに」

 

「そんな体じゃ誰も救えないよ」

 

 

こんなボロボロな体で戦った所で、今回みたいに油断して大怪我して死ぬのが関の山だ。僕は高町を見て、はっきり言う。

 

 

「率直に言おう。お前には魔法の才能は無い」

 

「・・・はっきり言うね」

 

「言うさ。自分の力を理解しきれずに二回も大怪我したんだ。才能無しと言って何が悪い?」

 

「うっ、言い返せない」

 

 

そう言う高町を鼻で笑う。自分の実力も弁えずにバカスカ魔法撃つからこうなるんだよ。適度な休憩や、長期の休暇とか体と心を休めないと何事も上手く行く訳がない。

 

 

「ま、僕は帰るよ。何時までもこんな所にいるのはごめんだからね」

 

「うん。・・・迷惑掛けてごめんね刹那君」

 

「・・・それは家族と友人に言ってやりなよ」

 

 

僕はもう一度バッグの中に入る。そしてチャックが閉められ、運ばれて行くのを感じながら眠りに付いた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ん」

 

 

目を覚ますと、暖かい感覚に包まれていた。寝起き故に霞む視界で手を伸ばす。

 

 

むにゅっ

 

 

「あんっ♡」

 

「・・・むにゅ?あん?」

 

 

手の平が何か柔らかい物に沈む感覚と、誰かの艶のある声が僕を完全に覚醒させた。この状況・・・僕は昔に体験しているっ!まさか・・・まさかぁ!?

 

 

「えへへ・・・せっちゃんのえっち♡」

 

「いやああああああああ!?」

 

「ええっ!?普通反応逆じゃない!?」

 

 

なんで僕はモンスターの腕の中にいるんだああああああああ!?誰かあ!ヘルプミー!

 

 

「な、なんdむぐっ!」

 

「まだ朝早いんだから静かにして!」

 

「ん~!ん~!?」

 

 

ヤバい。怖すぎて涙出て来た。服も何時の間にか着替えさせられていた様で、ブカブカノ女物のパジャマだ。解せぬ。

 

 

「おい美由希。こんな朝早くからうるs・・・」

 

 

高町さん(兄)が部屋に顔を出して固まった。それを見て僕は今、彼の目に映っているであろう光景が安易に想像できた。

良い大人が、小学生低学年にも満たない身長の子供の口を塞いで押し倒しているのだ。しかも涙目&おはだけのおまけ付き。

気が付けば僕の体は高町さん(兄)に抱えられていた。おお、今の動きめっちゃ速い。

 

 

「大丈夫か、刹那?」

 

「あ、はいどうも。できれば状況説明を求めたいのですが」

 

「分かった。取り敢えず下へ行こう。此処ももうじき腐海と化す」

 

「酷くない!?」

 

 

なんか喚いている変態を無視して、僕達は下へと降りて行った。着いた先は高町家のリビング。椅子に座らされていると、高町さん(兄)はココアを淹れて来てくれた。

 

 

「確かコーヒーは苦手だったな」

 

「よく覚えてますね、そんな事」

 

「覚えているさ・・・俺の弟分だからな」

 

「ふん・・・美味しい」

 

「お前が若干猫舌なのも覚えているぞ」

 

「・・・余計な事を」

 

 

少し顔が熱くなるのを感じながら僕はチビチビとココアを飲む。暫くして、僕は高町さん(兄)から話を聞いた。

昨日は地球に戻った時には夜中で、僕の家より高町家の方が近かった為に僕の家へ連絡してセシアに許可を貰って、今ここだ。真希達も別室で泊まっているらしい。

 

 

「店を開く前に父さんが家まで送ってくれるそうだ」

 

「そうですか。何から何まですいません」

 

「こっちこそ、なのはを救ってくれてありがとう」

 

「別に。リンカーコアさえ無ければ僕に迷惑が来る事無いですし」

 

「だとしてもだ。本当に、ありがとう」

 

「・・・どういたしまして」

 

 

なんか調子狂うな・・・。顔を逸らしながら、ココアを一口飲む。そうしていると、ドアが開かれ、高町さん(母)こと《高町 桃子》さんが姿を現した。相変わらず三児の母とは思えない顔してるよな・・・。

不老なんじゃないかと言われたら信じてしまいそうな若作りだ。

 

 

「あら、刹那君おはよう」

 

「おはようございます。この度はお世話になりました」

 

「いいえ。お世話になったのはこっちの方よ。なのはの事、ありがとう」

 

「・・・もうその話はお腹いっぱいです」

 

 

適当に流して外を見る。煩わしい位に太陽が照っている。まだ朝の5時だぞ・・・。

 

 

「刹那、よければ一緒にランニングに行かないか?」

 

「嫌です無理です却下です」

 

「よし、行こうか!服は俺の古い物を貸すから年齢魔法を使ってくれ」

 

「いや、話し聞いt・・・聞いてないし」

 

 

結局外を走らされる事になり、高町さん(兄)のランニングに付いて行く。時々僕を見ては速度を速めたりして意味が分からなかった。最後に、長い石の階段を登り切ると目の前には神社があった。

僕は此処に来るのは何年ぶりであろうか。小学校以来来なかったけど、全く変わってない。油揚げが大好きだったあの狐は今どうしてるだろうか・・・?

 

 

「はあ・・・はあ・・・刹那、水飲むか?」

 

「大丈夫です。それよりも大丈夫ですか?汗凄いですよ?」

 

「あ、ああ(俺の本気の走りに息切れなしで付いて来たのか・・・!?)」

 

「・・・ぷっ。変な顔ですよ"恭也"さん」

 

「っ!今俺の事名前で」

 

「あっ・・・今のはずるいです」

 

 

何か騒いでいるヤバい人を放っておいて、石段から街を見渡す。数年間、目を向ける事も無かった街は何時の間にか沢山の建造物が並んでおり、海の近くでは自然が多くなっていた。海の向こうからは日が昇っていて、綺麗だった。

そんな中、茂みの中から懐かしい顔が出て来た。

 

 

「・・・くぅ?」

 

「ん?あ、お前もしかして《久遠》か!?」

 

「くぅ!?くぅーーーっ!」

 

「わぷっ。ははは、くすぐったいよ」

 

 

小学校の頃、よく遊んでいた狐の《久遠》が僕に跳びつく。僕の事、覚えててくれたんだ。嬉しいな。なんだ、僕の事を敵として見てない奴らも存外いるのか。まあ、外に出る理由にはならないけど。

朝早くじゃなかったら今頃ショック死してる自信あった。アテナさんの所に逝く自信あった。

 

 

「ごめんね。今日は油揚げ持って来てないんだ」

 

「くぅ?くぅくぅっ!」

 

「・・・別に良いって言いたいの?」

 

「くぅ!」

 

「そっか・・・ありがと、久遠」

 

 

僕はモフモフしているその体を優しく抱きしめる。獣らしからぬ良い香りがするんだよなこの子。ああ、持ちかえりたい。今すぐテイクアウトして部屋でずっと抱きしめていたい・・・。

そんな事を考えていると、背後から足音がしたので思わず振り返る。そこには巫女服を来た女性が僕を見て、何故か泣いていた。

 

 

「刹那君・・・だよね?」

 

「・・・《那美》さん、ですか?」

 

「やっぱり刹那君だ・・・!」

 

「もぎゅっ・・・!」

 

 

次の瞬間、僕は那美さんに抱きしめられていた。この人は、僕が小学校の頃からこの神社にいた巫女さんで、此処の近くにある《さざなみ寮》と言う場所で色んな人達と生活している。

無理やり動いてなんとか呼吸を確保する。一息吐くと、僕の耳には那美さんの鳴き声が入って来た。

 

 

「急に来なくなって・・・心配したんだよ!」

 

「・・・ごめんなさい」

 

「私だけじゃないよ。さざなみ寮の皆も凄く心配してたんだから」

 

「そんなにですか?」

 

「そうだよ。《ゆうひ》さんなんか一時期歌えなくなったんだからね」

 

「大惨事じゃないですか!?」

 

 

ゆうひさんとは、さざなみ寮の住人の一人である。世界的に有名な歌手であり、小学校の頃はよく一緒に歌を歌って遊んだ。偶にもう一人の住人であり同じく歌手の《フィアッセ》さんも一緒になって歌ったりしていた。

何度か、今度のステージでデュエットしない?とか誘われたけど丁寧にお断りした。絶対無理。沖縄でのライブだってトラウマになり掛けてるのに・・・。

因みに、僕はゆうひさんを《ゆー姉》。フィアッセさんを《ふぃー姉》と呼んでいる。

 

 

「あ、あの・・・そろそろ離してもらえません?」

 

「だめ。もうちょっとだけ」

 

「・・・見られてるんですよねぇ」

 

「へ?・・・きゃあっ!?」

 

「・・・なんか、すみません」

 

 

顔を真っ赤にして飛び退く那美さんに対し、凄く申し訳なさそうな顔をする高町さん(兄)。威厳をこれっぽちも感じない。

 

 

「そろそろ戻りましょう。人が増え始めますから」

 

「あ、ああ。それじゃあ行こう」

 

「刹那君!・・・また、会えるよね?」

 

「・・・はい」

 

 

僕は目を逸らしながら答える。正直無理だ。外に出たくないし、出れたとしても早朝か夜中だけ。昼間になんて絶対無理だ。

最終的に振り替える事無く、高町家へと戻って行った・・・。

その後、高町家で朝食を御馳走になり車で家まで送ってもらった。車から下りると、高町さん(父)が窓を開けて声を掛けて来る。

 

 

「刹那君、今回の事は本当にありがとう」

 

「いえ。それなら今後娘さんを僕に近付けないでください。姉妹両方」

 

「ははは・・・すまなかった」

 

「全く・・・酷い目に会った」

 

 

苦笑する高町さんに背を向けて家に入る・・・前に止まり、僕は口を開いた。

 

 

「でも・・・僕の味方でいてくれた事は、嬉しかったです。ありがとうございました、"士郎"さん」

 

「刹那君・・・」

 

「それでは。なるべく会わない事を願いますよ」

 

 

僕は今度こそ、家の中に入って扉を閉めた。ようやく帰った我が家。リビングへ行くと、セシア達が出迎えてくれる。魔導書を開いて皆も出した。そして何時もより少し気の晴れた状態で僕達はセシア達に言った。

 

 

----ただいま。

 

 

刹那サイド終了

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