貯めに貯めた聖晶石にマジで感謝!
では、どうぞ!
刹那サイド
あれから暫く経ち、今度の今度こそゆっくり休める。・・・そう思っていた時期が私にもありました。
「・・・職業体験、ですか?」
「ああ。2泊3日で東京行きだ」
織斑先生は僕の家に来て、書類を出す。なんでも3年に上がってからはこう言ったイベントにはなるべく出ないと進学が危うくなるらしい。流石にそれは焦った僕は書類を見るが、織斑先生の言った行き先と同じ事が書かれている事実にショックを受けた。
「・・・体験は良いですけど、何故に東京のアイドル事務所なんですかねぇ」
「最近はアイドルブームだったのは知っているか?」
「はい。東京の方でスクールアイドルなんてのが流行ってましたね。レヴィが熱心に見てましたよ」
「私の弟と妹もだ。それで生徒達の間でも将来はアイドルになりたいだの、プロデューサーをやりたいだのと言うのでな、蒼乃のご両親にお願いをして勤め先の事務所を紹介してもらったんだ」
「なるほど・・・それで、何故僕なんですか?」
「向こうからの条件だ。是非、如月に来てほしいと言われたが・・・向こうの誰かと面識でもあるのか?」
「い、いえ!知りませんね!あはは・・・」
僕は全力で誤魔化す。まさか沖縄の時の人って・・・真希のお父さんかアレぇ!?
「とまあ、後は蒼乃が全力で如月の隣を勝ち取った。来週から如月と蒼乃の二人には東京へ行ってもらう。引率は山田先生が着いて行くのでよろしく頼む」
「わ、分かりました。・・・あ、コレ弟さんに。頼まれていた織斑先生のおつまみ用のレシピです」
「すまないな。ありがたく戴こう」
「自分で作ってくださいよ・・・」
「私に出来るわけないだろう」
「威張らないでくださいこのズボラ教師」
この担任、家事はてんで駄目で何時も弟さんと妹さんに任せているらしい。二人とも今は同じ学校に通っているそうだ。
「では、細かい連絡は後日に」
「はい。お気をつけて」
織斑先生を玄関で見送った僕は溜息を吐きながらリビングのソファーへダイブする。
「・・・行きたくねえ」
「良いではないですか。またアイドルの方々に会えるんですよ?」
「いやだって神埼さんスキンシップ激しいし・・・おもちが凄く当たるんだよ」
「アイドルとボディタッチとかファンが知ったら殺されますねソレ」
「て言うか有名人が多数いる中に放り込むとか鬼畜でしょ」
その後、帰宅した全員に話すと凄く羨ましがられた。僕からすればただの地獄への片道切符なんですけど・・・。
「ねえねえ!神埼蘭子のサイン貰って来て!」
「レヴィ・・・少しは僕の精神を案じてほしいな」
「だって最近の刹那、変わって来たよ?良い方向に」
「そう・・・かな?」
「うんうん!皆だってそう思うよね?」
レヴィの言葉に皆が頷く。・・・まあ、学校じゃないだけマシか。
そんな事を考えながら僕はソファで寝転がり、目を閉じる。そんなこんなで、あっという間に時は過ぎ、出発の日となった。
朝、待ち合わせ時間に家の前へと行くと一台の車が止まっていた。後ろの窓が開くと、真希が顔を出した。
「おはよう刹那。さ、乗って乗って!」
「ん。あ、お願いします」
「ああ。よろしく頼むよ。俺は真希の父親の《蒼乃 祐樹》だ。この前の沖縄では後輩が世話になったね」
「あ、いえ、どうも・・・」
良かった。あの時の人じゃなかった。祐樹さんの隣の席には山田先生が座っていて、こちらへ手を振っていたので、挨拶を返す。
「それじゃあ、行こうか。なに、東京と行っても大した距離じゃないからすぐに着くよ」
「お父さん、私達ってアイドル寮に泊まるのよね?」
「ああ。部屋割は向こうで説明するよ」
そう言って祐樹さんは車を走らせ、僕達は東京へと向かい出した・・・。
~高速道路《パーキングエリア》~
真希と山田先生がお手洗いへと向かっている間、僕と祐樹さんは来るまで待機していた。そんな中、祐樹さんが僕に話し掛ける。
「刹那君、真希を助けてくれてありがとう」
「っ!?し、知ってたんですか?」
「ああ。昔に魔法関係に首突っ込んでるとか、前世の記憶持ってるとか全部話してくれたんだ」
「そう、ですか・・・」
「ああ。君のご両親も知っているんだろう?」
「まあ、魔法関係者でしたから」
「ん?でした?・・・すまない」
「あ、良いですよ。もう何年も前ですし」
祐樹さんの顔を上げさせる。実際の所はまだ立ち直れていない。時々お母さんの死に目を夢に見てパニックを起こす事もある。でも、此処まで引きずるのは僕の心が弱いからなんだろうな・・・。僕は皆ほど強く生きられない。
「おまたせ。さ、行きましょ」
「はいはい。それじゃあ、出発だ」
僕達は再び東京へ向けて走り出した。
~東京[アイドル事務所前]~
「此処が僕の職場だ。真希は何度も来てるよな」
「ええ。蘭子達いるかしら?」
「ははは。今日からGWだし、きっといるさ」
階段を上ると、事務所へ続くドアを祐樹さんが開ける。僕達もそれに続いて入っていった。事務所に入ると緑色の服を着た事務員さんが挨拶をして来た。
「ようこそ《346プロダクション》へ!私は此処で事務員をしている《千川 ちひろ》です」
「この度、引率を務めさせていただきます山田麻耶です」
「改めまして、蒼乃真希です」
「・・・如月刹那、です」
「「「よろしくお願いします」」」
「はい♪よろしくお願いしますね」
千川さんは笑顔で僕達を歓迎してくれた。そして挨拶が終わると僕をジロジロと見て来る。
「あの・・・なんですか?」
「あ、ごめんなさい。真希ちゃんから聞いてはいたけど、こんなにちっちゃくて可愛い子だったなんて・・・。本当に男の子?」
「正真正銘100%男です」
「さあ、もうすぐ今日の仕事をしにアイドル達が来るから荷物を置いて準備しなさい。こっちだよ」
祐樹さんの指示に従い、別室に荷物を置いてから必要な物を取り出す。そして部屋へ戻ると、数人の少女達が来ていた。
「おはようプロデューサー。あ、真希達もう来てたんだ」
「ああ。皆、彼女は《渋谷 凛》。高一だから皆の先輩だ」
「渋谷凛だよ。よろしくね」
「凛さん、お久ぶりです。ハナコは元気ですか?」
「うん。元気すぎて散歩の時大変だよ」
元々知り合いである真希は渋谷さんと楽しそうに話す中、僕は山田先生とヒソヒソと話していた。
「如月君、私緊張して来ちゃったんですけど・・・」
「大丈夫です。僕なんて初対面の時点でもう無理ですから」
「えっと・・・君が如月刹那君、かな?」
「あ、はい・・・」
「今日からよろしくね。刹那って呼んでもいい?私も凛でいいから」
「分かりました。よろしくお願いします凛さん」
僕は凛さんと握手をする。何だ、思ってたより接し易い人だった。山田先生も頬を緩ませて握手している。すると、凛さんの後ろにいた人達がこっちへ来た。
「凛ちゃんばっかりズルい!」
「そうだそうだ!しぶりんだけで独り占めしちゃダメ!」
「したつもりは無いんだけど・・・」
「私、《島村 卯月》です!よろしくお願いします!」
「私は《本田 未央》だよ!よろしくね!」
「如月刹那です」
「山田麻耶です」
挨拶を済ませると、本田さんが急に僕を抱き上げて撫でまわし始めた。
「ああー!もう可愛いなこの子!写真で見た時からずっとこうしたかったんだー!」
「未央ちゃん!私も私も!」
「な、撫でないでください。あと下ろしてください」
「あとちょっとだけ!はい、しまむーの番ね」
「やったー!ああ、柔らかくて髪の毛もサラサラして可愛い・・・」
「せ、刹那?生きてる?」
「・・・かろうじて」
島村さんから下ろしてもらった時にはグロッキーな状態になっていた。なんとか体調を持ち直して、祐樹さんの所へ戻る。そこには何というか・・・いかにも猫って感じの人が居た。
「あ、この子が真希ちゃんの言ってた刹那君にゃ!?」
「・・・あ、この人知ってる」
「おお!?アイドルに関して一切興味の無かった刹那が覚えているなんて!」
僕の言葉に真希が驚く。止めろ、アイドル事務所で僕がアイドルに興味無いとか暴露するんじゃないよ。まあ、実際そうだけど。
「こ、これは《みく》も有名になって来たって事にゃ!それでそれで?どんな所で知ったのかにゃ?」
「よくネットでファン辞めますって言われてる人ですよね」
「え、酷くない?」
僕の言葉に相手は固まる。
「あ、それ私も知ってるわ。一時期ネットで騒がれたわね」
「実は・・・私も」
「酷すぎるにゃー!」
そう言ってその場に蹲る。皆がそれを見て、実は知ってただの、私も、だの言っていた。うん、現実って残酷だね。
「おはようございまsってどうしたみく!?」
「うっうっ・・・《りっくん》!」
「おうっ!?取り敢えず泣き止め。ほら、ハンカt「ズビーッ!」そんなベタな・・・」
あの時の男の人が入って来た。そしてみくと呼ばれた人を慰めていると、僕に気付く。
「あ、刹那君じゃないか!久しぶりだね」
「どうも。あの時はご迷惑をお掛けしました」
「いやいやこちらこそ。流石に蘭子が君を釣り上げた時は焦ったけどね」
「あはは・・・」
「自己紹介がまだだったね。俺は《前川 りく》。そこで泣いてる《前川 みく》の兄だ。よろしく」
「どうも」
まさかこの人のお兄さんだったのか・・・。そんな事を考えていると、祐樹さんが僕達を呼んだので、向かった。
「さあ、今日の仕事は主に書類作業とレッスンの見学だ。行くぞ」
僕達は彼に着いて行き、事務所の中にあるレッスン場へ着いた。そこではトレーナーらしき人達が既に準備していた。
「ほう。今日は随分と可愛らしい見学者だな。さあ、準備運動が終わったらレッスンを始めよう」
「「「「はい!」」」」
凛さん達の表情が真剣になり、準備運動を終えてレッスンが始まった。曲に合わせて全員が床を鳴らしながらステップを踏む。あ、島村さん少しズレた。レッスンを見てた僕は気付けば小さくステップを真似していた。
「・・・刹那君、やってみるか?」
「いや、その・・・」
「良いじゃないか!例のライブの件、聞いているよ。さあ、是非君の動きを見せてくれ」
トレーナーさん達に言われるがままにレッスン場へと立たされる。諦めの気持ちしかない僕は曲に合わせて見様見真似でやってみた。曲が終わると、その場がシーンとなる。ああ、やっぱり酷かったか。
「あの、すm「凄いよ君!」・・・はい?」
「一度見ただけであの動き!刹那君!」
「な、なんでしょうか?」
「私達と一緒にトレーナーをやらないか!?」
「遠慮します」
トレーナーさんの突然のスカウトに戸惑いながらも断る。結局名刺も渡され、凄く期待された目で見られたが、正直勘弁してほしい。
「す、凄い・・・」
「完璧でしたよね今」
「あの小さな体であそこまで動けるって凄いなー」
「あ、みくの負けですね分かります」
なんだかアイドルの方々からの視線がめっちゃ怖いんですけど・・・!
こんな感じで、僕の職業体験が幕を開けた。
ああ、生き残れる予感がしない。
刹那サイド終了