if〜刹那君は引きこもり〜   作:猫舌

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第47話

刹那サイド

 

 

未だに驚愕の表情をしている三人を連れて地下へのエレベーターを降りる。目的の階で停止し、外へ出る。そこには転移用のポータルが一つ配置されただけの殺風景な部屋であった。

僕は三人へポータルへ乗るように促し、自分も含めて目的地へと転移した。光が視界を覆い、それが晴れると目の前には朽ち果てた都市が広がっていた。

何もかもが無と化し、消滅する筈である虚数空間の中に一つの巨大都市が確かに浮いているのだ。建造物の様な物は全て植物と苔に覆われ、上空では鳥の鳴き声が聞こえる。後ろの三人を見ると、フリーズしていた。

 

 

「おーい、目を覚ませ~」

 

「はっ!?こ、これがアルハザード・・・」

 

「何と言うか、壮大だな・・・」

 

「あれ?あの鳥って絶滅した魔導生物だった気が?」

 

「お。良い所に気が付いたね金髪(姉)」

 

 

上空を旋回している鳥を見てワナワナと震える金髪(姉)に僕は笑う。

 

 

「如何にも此処はアンタ達がロストロギアを強奪した事で滅びた世界の種族を集めて保護してる場所だよ」

 

「強奪なんて人聞きが悪いわね」

 

「どうだか。次元世界の中にはロストロギアの恩恵があってこそ生きる事の出来た種族だってわんさかといるんだ。ハッキングして得た情報によれば君達がそうやって滅ぼした世界の幾つかが隠蔽されていたよ。それで入手したロストロギアもオークションで高値で取引されてる」

 

「そんな・・・」

 

 

僕の言葉に管理局の二人が呆然となり、織斑先生は話に着いて行けずに顔を顰めていたので、簡易的に纏めた資料が表示された端末を渡す。

それを見て織斑先生もその場に立ち尽くしていた。

 

 

「取り敢えずさっさと回復してこっちに来てください」

 

 

三人を無理やり再起動させて苔だらけの建造物の扉に手を翳す。何かを読み取る音が聞こえた後、ロックが解除されて扉が開いた。何気に此処の機械はまだ生きてるんだよね。

暫く歩くと、大きなディスプレイが設置された部屋に出る。スイッチを入れると、アルハザードに各ブロックの監視映像が表示される。

 

 

「取り敢えずお母さんが連れて来てアルハザードを改造して色んな生物に合わせた環境ブロックを作ったんだ」

 

「まるで巨大なジオラマだな」

 

「まあ、殆ど作ったの僕だけど」

 

「本当か?」

 

「本当ですよ。僕の能力と魔法でアルハザードを大きくして、地形を作ってから植物を植えて繁殖させてから湧水が出る様にしたり、海作ったりしてから生物を投入しました」

 

「何と言うか・・・生徒がムツゴロウ王国以上の世界を創っていたのだが」

 

「織斑先生、こんなんで驚いてたらこの先持ちませんよ」

 

 

僕の言葉に織斑先生が冷や汗を流し始めた。そんな先生を無視して、とあるブロックの映像を映す。そこは雪山で、一匹の巨大な龍が"脱皮していた"。

錆色の体から脱皮し、銀色に近い体となって羽ばたいて行く。その光景に誰もが唖然となった。見慣れている僕はどうとも思わなかったけど。

次に写し出されるのは砂漠。その中心に水晶の塊が存在していた。そこへ中々な大きさの虫が近付くと、水晶が動き出して何かが飛び出す。それは巨大なサソリだった。全身から水晶が生えていて、先程露出していた水晶が尻尾の部分にあった。そして虫を一瞬で捕食して再び砂へと潜って行った。

 

 

「ね、凄いでしょ?」

 

「これを平然と見れる貴方が凄いと思うわよ・・・」

 

「神霊の類を見てからだとインパクトに欠けるんだよね」

 

「いや、これ以上のインパクトはいらん」

 

「ですよねー」

 

 

それぞれの呟きに苦笑しながらアルハザードを後にする。リビングへ戻ると、帰っていたのかディアーチェ達が金髪(姉)とその母親を睨みつけていた。

何時の間にか織斑先生はセシア達と紅茶を飲んでいる。

 

 

「さて、これ以上一触即発な空気は勘弁なんで帰ってもらっても良いですか?」

 

「待って。最後に聞かせてちょうだい」

 

「なんですか?」

 

「どうして貴方の家にアルハザードが存在しているの?」

 

「簡単ですよ。アルハザードは元々ベル家が造った研究施設なんです」

 

「まさか・・・命を掛けて探した理想郷が王族の研究施設なんて」

 

「因みに人を蘇生させる術なんてありませんよ。それこそロストロギアでも使わない限りね。ただ、それでも望み通りに行くとは思えないけど」

 

 

僕の言葉にテスタロッサさんは自虐的な笑みを浮かべてから挨拶して娘と帰って行った。勿論口外はするなと言っておいたし、あの人は比較的利口な人だろう。織斑先生にも一応口止めしてからお帰りいただいた。

三人が帰ってから僕はディアーチェの膝を枕にして撫でてもらう。

 

 

「あ~、癒される~」

 

「そうかそうか。我の膝はそんなにも極上であるか」

 

「うん。なんて言うかこう、癒される~」

 

「刹那。語彙力がなくなっているぞ・・・」

 

 

だって折角の引きこもりタイムを潰されるし。ファウードとか面倒そうな代物の話出て来たし。お母さんから聞いた昔話だったけど凄いよね。

お父さんの武勇伝を聞いた時も凄かったな~。なんだっけ・・・貪食ドラゴンとか言う巨大な魔導生物をワンパンしたとか。お母さんもお母さんで、オーフィスとか言う訳分からん幼女を僕の前でボコボコにしてた。

可愛そうに思って回復魔法掛けてから飴玉上げたらなんか懐かれたな。そういえばあの子、[もっと強くなって、刹那と結婚する]なんて言い残してから何処か行っちゃったけど、元気でやってるかな?

 

 

「思ったんだけどさ・・・」

 

「どうした?」

 

「僕ってもしかして知り合い多い?」

 

「今までの話を聞く限りでは多い方だと思うぞ」

 

「そっか」

 

「ふふ・・・少し眠ると良い。今日の夕餉はセシアなのだろう?」

 

「うん。じゃあ・・・おやすみ」

 

 

ディアーチェに言われるがままに僕は意識を落とした。

 

 

刹那サイド終了

 

 

三人称サイド

 

 

とある次元世界の研究室。その一角で一人の男性が如月家をサーチャーで外から監視していた。

 

 

「彼が今代の聖王にして魔王か。ただの子供にしか見えないがね」

 

 

そう独り言を漏らしながら刹那に関する詳細データを整理する。そして男性はデータの処理を終えてからその研究所を後にする。誰もいない廊下を一人で歩きながらその口を三日月に歪めた。

 

 

「これも上からの命令なのでね。悪く思わないでくれたまえよ、聖魔王」

 

 

こうして《無限の欲望》と呼ばれる男性は一つの研究所からとある場所へ向かう。

その場所の名は、《地球》。

 

 

三人称サイド終了

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