if〜刹那君は引きこもり〜   作:猫舌

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第52話

刹那サイド

 

 

あれから数時間。家族で食事を摂ってから様子を見に行くと丁度三人が目を覚ましていた。驚いた顔で僕を見て来たが取り敢えず無視の方向で一方的に会話する。

 

 

「まだ安静にしていてください。死にかけてたんですから」

 

「き、君は・・・」

 

「食事を持って来るので待機。以上」

 

「待っ」

 

 

よく見たらあの三人管理局の有名な魔導師じゃないか。あのまま捨ててくれば良かった・・・。マジでやっちまった・・・。

リビングで雑炊を三人分持って部屋へと戻る。そして三人に渡した。

 

 

「毒なんて入れてないんでさっさと食べてください」

 

「あ、ああ・・・」

 

「あら、美味しい」

 

「食べやすくて良いわね」

 

 

此方に疑いの目を向ける男性を余所に、女性陣はモグモグと雑炊を食べていた。男性もゆっくりと食事を始め、やがて食器を空にした。

 

 

「「「ごちそうさま」」」

 

「おそまつさま」

 

 

食器を片して僕は三人に事情聴取を始めた。

 

 

「自己紹介しておきます。僕は如月刹那。ちょっと事故であの場所へ転移した時に貴方方を見つけたので治療させていただきました」

 

「・・・《ゼスト・グランガイツ》だ。時空管理局で魔導師をやっている」

 

「同じく、魔導師の《クイント・ナカジマ》よ」

 

「更に同じく、魔導師の《メガーヌ・アルピーノ》。よろしくね」

 

「どうも。それで、どうしてあんな事に?」

 

 

僕の言葉に場の空気が引きしまる。そしてゼストさんが口を開いた。

 

 

「俺達はとある違法研究所の取り締まりの任務だった。だがそれは罠で、戦闘機人の集団に襲われてあのザマだ」

 

 

予想通りの解答だった。あの銀髪の目の傷はその戦闘で付いたものか。余計な事したな本当に。

そう思っていると、今度はクイントさんが言った。

 

 

「悪いのだけど、私達をミッドへ戻す事は出来ないのかしら?」

 

「出来ますけど、確実にパニックになりますよ」

 

「パニック?」

 

「これを見てください」

 

 

僕は端末を操作してとあるデータを表示する。それは管理局のデータベースで、この三人が死亡または行方不明の扱いにされているという内容だった。これに三人はワナワナと震える。

他にも事実と違う事が書かれている辺り、管理局が一枚噛んでいるとしか思えない。そうやらそれは理解している様だった。

 

 

「正直、此処で大人しくしてた方が身の為ですよ?下手に動こうものなら、次こそ死にます」

 

「だが俺にはやるべき事が・・・!」

 

「怪我人がゴチャゴチャ騒ぐな鬱陶しい。そもそも僕があの場にいなかったら貴方達は人生からログアウトだ」

 

 

なんか敬語で話すのも面倒になって来た。なんでこう僕の周りにはファンネルの如く面倒事が飛び交っているのだろうか。それが不思議でならない。そういうのは高町達だけにしてくれ。お前主人公だろ?

僕は精々モブとして生きるから。大丈夫。僕はちょっと家系が凄いってだけの目立たない村人A程度の存在だから。

考える僕にクイントさんが再び聞いて来た。

 

 

「せめて家族には会えないかしら?夫と娘達に無事を知らせたいの」

 

「その旦那さんは管理局の関係者か?」

 

「ええ」

 

「ならアウト。計画的に殺した奴の関係者なんだから当然監視は付く。バレない保証なんてないし、最悪の場合・・・家族の方が殺される」

 

「そんな・・・」

 

「私にも娘がいるのに・・・」

 

「まあ、此処は割り切る事が大事だよ」

 

 

僕の言葉に三人は納得できない表情をする。いや、女性陣は家族と言うワードで止まったからマシな方だ。問題はゼストさん。今にも飛び出しそうな表情だった。

 

 

「バレても構わん。俺はアイツに会いに行く」

 

「こっちが困るんだよアホ」

 

 

取り敢えずバインドを掛けて縛る。すぐにゼストさんは抵抗を止めた。

 

 

「魔力が・・・」

 

「魔力を吸収するバインドだからね。大人しく話を聞け」

 

「・・・分かった」

 

 

抵抗しなくなった所でバインドを解除して話を続ける。

 

 

「そこで僕からの提案がある」

 

「提案、だと?」

 

「僕にも貴方達を保護した責任がある。だから僕からは衣食住を提供しよう」

 

「それは願っても無い事だけれど・・・?」

 

「此処の地下に居住スペースがある。そこを自室として使ってくれ。食事の時も呼ぶし、風呂もあるから。衣服は通販で頼むから問題ない。後でカタログを渡すよ」

 

「それで、私達は何をすれば良いの?君の雰囲気からして何もさせない訳ではないでしょう?」

 

「実は、その地下でやっている事の手伝いをしてほしくてね」

 

「お手伝い?」

 

 

僕は地下。アルハザードの説明をする。最初は驚いていたが、話を聞き終わって納得してくれた。こうして一段落付いた時、僕は一つ思い浮かんだ事があった。

 

 

「アルピーノさん、だったっけ?」

 

「ええ。メガーヌで良いわ」

 

「貴方の家族は娘一人なの?」

 

「ええ。《ルーテシア》って名前の娘よ」

 

「ふむ・・・ちなみに魔法適正はミッド式?ベルカ式?」

 

「ベルカ式の召喚術だけど・・・」

 

「それなら望みは薄いけど、その子だけなら此処へ保護する方法がある」

 

「本当!?」

 

 

僕の言葉にメガーヌさんはグイッと近付いて来る。それから距離を取って、僕は話す。

 

 

「本当はナカジマさんの家族もなんとかしたいけど複数はキツイ。流石に怪しまれる。でも天涯孤独の状態のメガーヌさんの娘なら誘拐と言った形で連れて来れるよ」

 

「誘拐?」

 

「その子は恐らく、聖王教会の傘下の孤児院にいると思う。魔法適正がベルカ式だから向こうが引き取るだろうし。局員の家族とか関係なくベルカに関係あれば手を出そうとする組織だからあそこ」

 

 

カリムさんは良い人だから平気だけど、他の上層部なんて碌な奴がいない。聖王の思し召しだのなんだの出鱈目言って、不法な事やりたい放題だからね。まあ、管理局も関わっているから表沙汰には出てないけど。

そんな事を考えながら僕はカリムさんに連絡を取る。番号?ハッキングしたに決まっているだろう。数コールもない内にカリムさんが出る。

 

 

『は、はい!』

 

「カリムさん。勝手に御連絡してすみません。刹那です」

 

『お、お久しびりです陛下!』

 

「どうも。あ、この前の件ありがとうございます。情報操作助かりました」

 

『陛下からその様なお言葉をいただけるなんて・・・感激の至りにございます』

 

「狂信者みたいな感じなんで止めてください。それで、また頼み事しても良いですか?」

 

『はい!なんなりとお申し付けください!・・・犯罪の方向では』

 

「あ~・・・説明しますね」

 

 

カリムさんに事情を説明すると、笑顔で答えてくれた。

 

 

『そう言う事でしたらすぐに手配致します。日時は明日の正午は如何でしょう?』

 

「分かりました。その日に攫いに行くので、上手くやってください。後の事は僕からもバックアップするので」

 

『分かりました。では、明日会えるのを楽しみにしています♪』

 

 

そう言ってカリムさんは笑顔微笑み、苦笑しながら通信を切った。緊張感無いなあの人・・・。こうなりました、と視線で伝えると三人がポカンとしていた。

 

 

「どうしました?馬鹿みたいに口を開けて」

 

「・・・何故聖王教会の者と繋がりが?」

 

「・・・あっ!?」

 

 

思い出した僕はもう一度自己紹介をする。

 

 

「改めて、真名セツナ・ベル・ゼーゲブレヒト。古代ベルカの王族の末裔です。どうぞよろしく」

 

「「「・・・ファッ!?」」」

 

 

僕の言葉に三人が目玉でも飛び出しそうな表情で驚愕する。こうして人生初の誘拐計画が幕を開けた。変装用のバリアジャケット考えなきゃ。

 

 

セツナサイド終了

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