if〜刹那君は引きこもり〜   作:猫舌

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これは、彼がまだこの世界で理不尽に打ちのめされる前の物語・・・。


番外編せかんど!
番外編せかんど! 《刹那君も異世界から来るそうですよ?》 第1話


刹那サイド

 

 

「本当に大丈夫?」

 

「大丈夫だよ!一人でできるもん!」

 

 

僕、《如月 刹那》は、転生者です!今日は僕が3歳になった年のクリスマス。思い切ってお母さんに一人でお使いに行くと言った所です!

 

 

「・・・じゃあ、コレがお財布ね。後は、説明した通りにね?」

 

「うん。じゃあ、行って来ます!」

 

「うぅ・・・やっぱり心配だ」

 

 

涙目でこっちを見るお母さんに少しチクチクした感情を感じながら僕は家を出る・・・前にお母さんに止められた。

 

 

「ほら、刹那。お母さんに何時ものちゅー♡」

 

「わ、分かったよ・・・ん」

 

「よっし!行ってらっしゃい!」

 

 

精神が年齢に引っ張られてるとはいえ3歳にもなって恥ずかしいよ・・・。そう思いながら僕は家を出て歩く。歩きながらお母さんに渡されたメニューを見ながら歩く。

 

 

「えっと・・・人参に、じゃがいも、玉ねぎ、牛乳」

 

 

暫く歩いていると、目の前に手紙が落ちていた。僕はそれを拾う。警察に届けないと・・・。手紙の裏を見ると、[如月刹那殿へ]書かれていた。僕に?と思い、つい手紙を開けて読んでしまう。そこには・・・

 

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。

その才能(ギフト)を試すことをのぞむのならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの"箱庭"に来られたし』

 

 

気が付けば、僕は空の上に居た。全く理解が追いつかないまま、下へと落下する。雲を抜けると、目の前には見た事も無い世界が広がっていた。異世界と言うべきかもしれない光景に僕は少しワクワクしてしまった。少し落ち着いた時、目の前にお兄さんが一人、お姉さんが二人落ちていた。あ、あの人猫抱えてる。僕は急いで飛行魔法で近付いて三人を持ち上げる。

 

 

「むむむ・・・!」

 

「おお!?踏ん張れ白髪ロリ!」

 

「お、重い・・・」

 

「ちょっと失礼ね!?」

 

「騒いでる場合じゃない・・・」

 

 

頑張って支えながら降りていく。やがて湖が見えて来た辺りで、僕の気力が限界に達して魔力が上手く使えなくなり、どんどん高度が下がる。何か何時もより魔力が使えない・・・!

 

 

「このままじゃ揃ってドボンだぞオイ」

 

「も、もうダメ・・・ごめんなさい!」

 

「「「うおっ(きゃあ!/わっ)」」」

 

 

残り高度数メートル辺りでありったけの魔力をクッション状にして三人に纏わせて放り投げる。上手く地面に着地してくれたのを見た所で、体が水に叩きつけられる感覚と共に、意識を落とした・・・。

 

 

刹那サイド終了

 

 

三人称サイド

 

 

「し、信じられないわ!まさか問答無用で引きずり込んだ挙句、空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。あの白髪ロリが居なかったら今頃ゲームオーバーだ。まだ石の中に呼び出された方がまだ親切だ」

 

「・・・石の中に呼び出されては動けないでしょう?」

 

「俺は問題無い」

 

「そう。身勝手ね」

 

 

少年と、少女の一人が話し合っていると、もう一人の少女は抱えていた三毛猫に声を掛けていた。そしてふと気付く。

 

 

「あれ、あの子は?」

 

「あん?アイツなら俺達を投げて・・・」

 

「確かザッパンって・・・」

 

 

そう言いながら三人が湖へ視線を向けると、底の方からコポコポと気泡が出ていた・・・。

 

 

「おいおいマジかよ!」

 

 

そう言って少年は湖へ飛び込む。すると、視線の先に沈んでいく刹那が居た。少年はあっと言う間に追いつき、刹那を拾い上げ、水面へと急ぐ。

 

 

「ぷはっ!おい!しっかりしろ!」

 

「・・・けほっ」

 

「よし、生きてるな」

 

 

少年は刹那が息をしている事に安堵し、岸へと泳いでいった。岸へ着くと、少女二人が刹那を心配そうに見る。

 

 

「大丈夫なの?」

 

「息はしてっから大丈夫だろ。あと少し遅かったらやばかったかもな」

 

「・・・あ、この子の名札だ」

 

 

刹那の背負っていたリュックに迷子になった時用の名札が付けられていた。三人は刹那の名札を見る。

 

 

「へえ、コイツまだ3歳じゃねえか」

 

「流石にそんな小さな子に私達は重いわよね・・・」

 

「・・・可愛い子」

 

「そういや確認しとくが、お前達にも変な手紙が?」

 

「そうだけどまずは"オマエ"って呼び方を訂正して。私は《久遠 飛鳥》よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱えている貴方は?」

 

「・・・《春日部 耀》。以下同文」

 

「そう。よろしく春日部さん。最後に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な《逆廻 十六夜》です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

 

「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

 

「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

 

心からケラケラと笑う逆廻十六夜。

傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。

我関せず無関心を装う春日部耀。

びしょ濡れで気絶している如月刹那。

そんな彼等を物陰から見つめていたウサ耳の女性《黒ウサギ》は思う。

 

 

「(うわぁ・・・問題児ばかりの以前に一人死にかけているのですが)」

 

 

彼等を召喚したのは紛れもない彼女であるのだが、どう見てもあの3人の方は協力してくれそうに無かった。

十六夜は苛立たしげに言う。

 

 

「で、呼び出されたのはいいけど何で誰もいねえんだよ。箱庭について説明すらねえのか?」

 

「そうね、なんの説明も無いままでは動きようが無いもの」

 

「・・・この状況に対して落ち着きすぎているのもどうかと思うけど」

 

「(全くです)」

 

 

こっそりツッコミを入れる黒ウサギは中々出るタイミングが計れないでいた。

 

 

「(まあ、悩んでいても仕方がないデス。これ以上不満が噴出する前にお腹を括りますか)」

 

 

向こうの反応が怖いが、黒ウサギは勇気を出して動こうとしたその時、

 

 

「・・・あれ?エビぷり大納言様は?」

 

「お前、どんな夢見てんだよ・・・」

 

「そっか。僕溺れて・・・あ、ウサ耳」

 

「(即バレデスか!?)」

 

 

目を覚ました刹那は茂みに見えた黒ウサギのウサ耳に目を向けた。黒ウサギがドキッとする中、十六夜達も茂みに視線を向けていた。

 

 

「ま、直ぐに分かるわな」

 

「なんだ、貴方も気づいてたの?」

 

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの猫を抱いてる奴も気づいていたんだろ?」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

「・・・へえ?面白いなお前」

 

 

そう言って笑う十六夜の目は全く笑っていなかった。三人は理不尽な招集を受けた腹いせに殺気の籠った冷ややかな目線を黒ウサギに向ける。黒ウサギはやや怯んだ。

 

 

「や、やだなあ御三人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」

 

「断る」

 

「却下」

 

「お断りします」

 

「あっは、取りつくシマもないですね♪」

 

 

ビビビビビビビビビビビビビビビビッ!!

 

 

「な、何なのですか!?」

 

 

突然の音に黒ウサギが視線を向けると、刹那がこっちを見ながらリュックに付いた防犯ブザーを鳴らしていた。ブザーはけたたましく鳴り響く。

 

 

「ハハハッ!コイツ不審者扱いされてやがる!」

 

「まあ、そんな格好してたら当たり前よね」

 

「・・・通報レベル」

 

「失礼な事言わないでください!?あ、あの・・・黒ウサギは悪いウサギでは無いですヨ?だからそれを止めてくださると嬉しいなって・・・」

 

「・・・」

 

 

刹那は無言で子供携帯を取り出す。連絡先は勿論警察・・・。

 

 

「電波通じねえだろ此処」

 

「あ・・・」

 

 

警察への連絡手段を失った刹那はショボンとしながら携帯を仕舞う。相変わらず黒ウサギを警戒したままだ。刹那の警戒心の強さに十六夜は少し違和感を覚える。

 

 

「なあ、どうしてそんなに警戒するんだ?」

 

「お母さんが、もうスカートが短い人には近づくなって言ってたから・・・」

 

「もうって何かあったのかよ・・・」

 

「前にあんな感じの人にお医者さんごっこしようってトイレに連れ込まれたから・・・」

 

「あっ・・・(察し」

 

 

刹那の言葉に十六夜は黒ウサギを可哀想なものを見る様な目で見る。

 

 

「そんな目で見ないでください!あの、本当に悪いウサギではないので!」

 

「ぴっ!?」

 

 

ついムキになった黒ウサギに驚き、刹那は十六夜の足にしがみついた。十六夜は笑いを堪えながら刹那の頭を落ち着かせるように撫でる。

 

 

「おいおい。子供を怖がらせてんじゃねえよ」

 

「そ、そんなつもりでは・・・」

 

「それよりも、気をつけろよ」

 

「へ?気をつけろってなn「えい」フギャ!」

 

 

耀が行き成り黒ウサギのウサ耳を根元から鷲づかんで、引っ張った。

 

 

「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」

 

「好奇心の為せる業」

 

「自由にも程があります!」

 

「へえ?このウサ耳って本物なのか?」

 

 

刹那を後ろに庇いながら十六夜も反対の耳を引っ張る。

 

 

「・・・じゃあ、私も」

 

「ちょ、ちょっと待」

 

 

今度は飛鳥も加わり、左右から力いっぱい引っ張られた黒ウサギは言葉にならない叫び声を上げ、刹那が再びブザーを鳴らした・・・。

 

 

 

 

 

~一時間後~

 

 

「もふもふ♪」

 

「や、やっと警戒を解いてくれたのデスヨ・・・」

 

「もっふもっふ♪」

 

「あっ♡ちょ、ちょっと何でそんなに上zふぁっ♡」

 

「・・・アイツすげえな」

 

 

刹那の撫でテクに目にハートを浮かべて蕩けた表情を見せる黒ウサギに、十六夜は冷や汗を流しながらも見つめていた。その背後から女子二人が十六夜に冷たい視線を向ける。この後、黒ウサギが元に戻るまで更に一時間掛かったという・・・。

 

 

三人称サイド終了

 

 

 

 

 

 

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