if〜刹那君は引きこもり〜   作:猫舌

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前回のあらすじ


刹那ママチート説


番外編せかんど! 《刹那君も異世界から来るそうですよ?》 第6話

刹那サイド

 

 

よー姉は軽く準備運動してからグリフォンに跨ろうとする。僕は急いでリュックからある物を出した。

 

 

「よー姉、これ使って」

 

「マフラー・・・ありがと」

 

「頑張ってね。応援してるから」

 

「大丈夫。弟の愛があれば負けとか無い」

 

 

そう言ってよー姉は僕を撫でてグリフォンに跨った。僕は不安になりながらまた猫を抱き上げる。猫も不安そうに鳴いていた。

 

 

「よー姉・・・」

 

「にゃぉ・・・」

 

 

そしてとうとうよー姉を乗せたグリフォンは空へと羽ばたいた。その光景を見て僕は驚く。

 

 

「あれ飛んでない・・・"空を踏みしめて走ってる"!?」

 

「ほぅ、一目であやつの飛び方を見抜きおったか」

 

「やっぱりアイツ面白ぇな」

 

 

僕を見ていざ兄達が話しているが、全く耳に入ってこなかった。でも、段々自分の中で不安が消えて行く。よー姉なら勝てる。何故だかそんな考えが頭を支配する。そしてよー姉は見事に湖畔を回り切る。その瞬間、よー姉の手がグリフォンから離れて落ちた。

 

 

「春日部さん!?」

 

 

黒ウサギさんが慌てて行こうとするのを僕といざ兄で抑える。

 

 

「御二人様何を!?」

 

「「まだ終わって無い!」」

 

 

僕といざ兄は思わず叫んでよー姉を見る。するとよー姉は空中で体を翻し、その足で"空を踏みしめて"降りてきた。

 

 

「・・・なっ」

 

 

僕といざ兄以外の人達が絶句した。何となく予想はしたけど、まさか的中するとは・・・。

 

 

「お前、気づいてたんだな」

 

「確信してた訳じゃないよ。ただ、よー姉の自信とゲーム中の目を見てそうなんじゃないかって思ったんだ」

 

「そうか。流石は箱庭最強の息子だ」

 

「・・・ありがと」

 

 

いざ兄に言われて僕は少し照れくさくなる。僕は降り立ったよー姉に走り寄る。そして猫が僕の腕から勢いよく飛び出して、僕はバランスを崩し、顔から地面にスライディングした。

 

 

「刹那!?」

 

「にゃっ!?」

 

「・・・いひゃぃ」

 

「鼻血が出てる・・・ティッシュ」

 

「ありがと・・・」

 

 

よー姉がポケットからティッシュを出してくれて、僕はそれを鼻に詰めた。強く打っちゃった・・・。

 

 

「よー姉、大丈夫?」

 

「うん。それより刹那も大丈夫?」

 

「何とか無事です・・・」

 

「ほら、《三毛猫》も謝って」

 

「にゃー・・・」

 

 

よー姉が言うと、三毛猫と呼ばれた猫は申し訳なさそうな声で僕に頭を下げた。僕は猫を撫でながら言う。

 

 

「大丈夫だよ。こっちこそ気が回らなくてごめんね」

 

『こっちこそすまんな。お嬢が心配でなぁ』

 

「ふえっ?」

 

「どうしたの刹那?」

 

「今・・・この子お嬢って」

 

「っ!三毛猫の言葉分かるの!?」

 

「い、今急に聞こえて・・・」

 

 

そう言う僕に白夜叉さんが聞いた。

 

 

「刹那。おんし、見様見真似で大抵の物事はできるか?」

 

「は、はい。一回見せてもらえればある程度は・・・」

 

「間違いない。おんしのそれはギフトだな。この箱庭に来た事でそれが更に強化された、と言う事だろう」

 

「そ、それって人のギフトを真似できるって事ですか!?」

 

 

白夜叉さんの言葉に黒ウサギさんは驚いた。僕が驚きたい位なんですけど。人のギフトを真似するって何?何そのチート。でも、動物と会話できるって嬉しいかも。僕はグリフォンに近づいて話す。

 

 

「あ、あの・・・」

 

『・・・何だ』

 

「さ、触っても良いですかっ!?」

 

『む・・・構わん』

 

「で、では・・・ほわぁ」

 

 

始めての感触だった。硬すぎず、かといって柔らかすぎる訳でもない。気持ちいい・・・。ずっとこうしてたい。

 

 

「はう・・・」

 

『・・・良ければ背中に乗るか?』

 

「いいんですか!?是非!」

 

 

するとグリフォンは僕を加えて背中まで運んでくれた。感動だよ・・・僕は今グリフォンに乗ってるんだ!

 

 

『娘と少し話がある。大人しくしていてくれ』

 

「はい。・・・ほわぁ」

 

『見事。お前が得たギフトは、私に勝利した証として使って欲しい』

 

「うん。大事にする」

 

『さて、もう終わりだ。下ろすぞ』

 

「はい。ありがとうございました」

 

 

僕はグリフォンに下ろしてもらう。優しい人だなぁ・・・人じゃないけど。そう思っていると、白夜叉さんがよー姉に話し掛けた。

 

 

「いやはや大したものだ。幻獣と言葉を交わすだけでなくその特性をも物にするとは」

 

「それを真似する刹那も凄いと思うけど・・・」

 

「澪の息子なら出来ても不思議ではない。あやつは神を殺めた女だぞ」

 

「なにそれ怖い」

 

「・・・ところで、おんしの持つギフトだが。それは先天性か?」

 

「違う。父さんに貰った木彫りのおかげで話せる様になった」

 

 

そう言って首に掛かっている木彫りを見せるよー姉を見て白夜叉さんは首を傾げた。そんな白夜叉さんに三毛猫が説明する。白夜叉さん分かるのかな?分かりそうだな・・・。

 

 

『お嬢の親父さんは彫刻家やっとります。親父さんの作品でワシらとお嬢は話せるんや。まさか、木彫り無しで話せるのがおるとは思わなかったわ・・・』

 

「ほほう。少し見せてもらっても?」

 

「うん。どうぞ」

 

 

そう言ってよー姉が差し出した木彫りを皆で見る。其処には何やら複雑な文様が刻み込まれていた。

 

 

「複雑な文様ね。何か意味があるの?」

 

「意味はあるけど知らない。昔教えてもらったけど忘れた」

 

「・・・これは」

 

 

白夜叉さんだけでなく、黒ウサギさんやいざ兄も真剣な顔で木彫りを見る。表と裏を何度も見て、文様を指でなぞる。そして黒ウサギさんがよー姉に聞いた。

 

 

「材質は楠の神木?神格は残ってない様ですが・・・この中心を目指す幾何学線・・・そして円状の空白・・・もしかしてお父様の知り合いには生物学者がおられるのでは?」

 

「うん。私の母さんがそうだった」

 

「いざ兄。これって系統樹とか言うやつかな?本で読んだ事があるような・・・」

 

「ああ。しかも生物学者って時点で確定だ。そうだろ、白夜叉?」

 

「うむ・・・ならこの図形はこうで・・・この円形が収束するのは・・・コレは凄い!凄いぞ娘!本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ!まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかもギフトとして確率させてしまうとは!コレは正真正銘《生命の目録》と称して過言ない名品だ!」

 

 

興奮気味に白夜叉さんは声を上げる。よー姉のお父さんって凄いんだ。そんな白夜叉さんによー姉は聞いた。

 

 

「系統樹って、生物の発祥と進化とかを示すアレ?でもお母さんの作った系統樹の図はもっと樹の形をしていたと思うけど」

 

「うむ、それはおんしの父が表現したいモノのセンスが成す業よ。この木彫りを円形にしたのは生命の流転、輪廻を表現したもの。再生と滅び、輪廻を繰り返す生命の系譜が進化を遂げて進む円の中心、即ち世界の中心を目指して進む様を表現している。中心が空白なのは、流転する世界の中心だからか、生命の完成が未だに視えぬからか、それともこの作品が未完成の作品だからか。----うぬぬ、凄い。凄いぞ。久しく想像力が刺激されとるぞ!実にアーティスティックだ!おんしさえよければ私が買取りたいくらいだの!」

 

「ダメ」

 

 

よー姉はあっさり断って木彫りを取り返す。白夜叉さんは子供の様にしょんぼりとしていた。何か可愛い・・・。

 

 

「で、これはどんな力を持ったギフトなんだ?」

 

「それは分からん。今分かっとるのは異種族と会話ができるのと、友になった種から特有のギフトを貰えるということぐらいだ。これ以上詳しく知りたのなら店の鑑定士に頼むしかない。それも上層に住む者でなければ鑑定は不可能だろう」

 

「え?白夜叉様でも鑑定できないのですか?先程鑑定すると・・・」

 

「グッ・・・あの澪の息子の手前でできませんなど言えるか!?」

 

「あ、あの・・・何かごめんなさい」

 

「お、おんしの所為ではない。罪悪感がヤバい・・・」

 

 

仕方あるまい、と呟いて白夜叉さんは僕達をジーッと見てから聞いて来た。

 

 

「うむ、四人共に素養が高いのは分かる。しかしこれではなんとも言えんな。おんしらは自分の力をどの程度に把握している?」

 

「企業秘密」

 

「右に同じ」

 

「以下同文」

 

「えっと・・・分かりません!」

 

「うおおおおい?いやまあ、仮にも対戦相手だった者にギフトを教えるのが怖いのは分かるが、それじゃ話が進まんだろううに。刹那はまだ幼いから良いとしてだな・・・」

 

「別に鑑定なんていらねえよ。人に値札貼られるのは趣味じゃない」

 

 

ハッキリと拒絶したいざ兄にあす姉達が頷く。僕は正直、知りたい。自分の貰った能力を把握できないでいる。そんな僕達に白夜叉さんは困った表情を浮かべた後に、妙案が浮かんだ様で、ニヤリと表情を変えた。コロコロ変わるなこの人。

 

 

「ふむ。なんにせよ主催者として、星霊のはしくれとして、試練をクリアしたおんしらには《恩恵(ギフト)》を与えねばならん。ちょいと贅沢な代物だが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度良かろう」

 

 

白夜叉さんがパンパンと手を叩くと、僕達の前に光り輝くカードが現れた。そのカードにはそれぞれの名前と、それぞれのギフトが記されていた。

 

 

コバルトブルーのカードに、

 

逆廻十六夜・ギフトネーム

《正体不明(コード・アンノウン)》

 

 

ワインレッドのカードに、

 

久遠飛鳥・ギフトネーム

《威光》

 

 

パールエメラルドのカードに、

 

春日部耀・ギフトネーム

《生命の目録(ゲノム・ツリー)》

《ノーフォマー》

 

 

そしてクリアホワイトのカードに、

 

如月刹那・ギフトネーム

《十五の魔眼(機能停止)》

《王の雷》

《王の鎧》

《アテナの祝福》

《スキルメイカー》

《ジャンヌ・ダルク》

《ジークフリート》

 

 

それぞれの名前とギフトネームが記されたカードを受け取った。黒ウサギさんは驚いた様な、興奮した様な声で僕達のカードを覗き込んだ。

 

 

「《ギフトカード》!」

 

「お中元?」

 

「お歳暮?」

 

「お年玉?」

 

「ムシキング?」

 

「ち、違います!と言うか何で皆さんそんなに息が合ってるのです!?ギフトカードは顕現しているギフトを収納できる超高価なカードなのですよ!耀さんの生命の目録だって収納可能で、それも好きな時に顕現できるのですよ!」

 

「つまり素敵アイテムって事でオッケーか?」

 

「だからなんで適当に聞き流すんですか!あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」

 

 

黒ウサギさんの怒りをスルーしながら僕達はカードを見ていた。僕だけギフト多すぎない?何か凄い事になってるんだけど・・・。そう思っていると、白夜叉さんが僕のカードを見て、素っ頓狂な声を上げた。

 

 

「《アテナの祝福》とな!?」

 

「ふえっ!?」

 

「おい白夜叉。刹那を怖がらせんな」

 

「す、すまぬ・・・。その、おんしは女神アテナに会った事があるのか?」

 

「え、えっと・・・はい」

 

 

流石に間違って殺されました~、なんて言えるわけもなくプルプルと震えながら返事する事しか出来なかった。

 

 

「そうか・・・女神アテナはこの箱庭で《乙女の聖戦》と呼ばれるコミュニティに所属していてな。普段は別の仕事で居ないのだが、彼女達が戦えばまず負ける事は無いと言われておる。まあ、おんしの母親に一分で潰されたがな」

 

「へえ、どんな奴らがいるんだよ?」

 

「他には、《天照大神》、《アルテミス》、《パンドラ》、《伊佐波》、《アンドロメダ》、《エウリュアレ》、《ヴィーナス》、《アストレア》、《クシナダヒメ》、《カーリー》・・・女神以外にもまだまだいるな」

 

「悪い、多すぎて訳分かんなくなって来た」

 

「まあ、全て瞬殺されたが・・・」

 

「刹那のお袋ヤバすぎだろ。自信なくすぜ・・・」

 

 

そう言っていざ兄は膝から崩れ落ちた。何かが砕ける様な音がしたけど、大丈夫かな?そう思っていると、いざ兄の手から落ちたカードを見た白夜叉さんが目を見開いて固まった。どうしたんだろうか?その後、僕達は帰る事になり、店の前まで出た所で、耀姉が挨拶をした。

 

 

「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」

 

「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦する時は対等の条件で挑むんだもの」

 

「ああ。吐いた唾を飲み込むなんて、格好付かねえからな。次は渾身の大舞台で挑むぜ」

 

「今日は色々とありがとうございました。お土産までもらっちゃって・・・」

 

「よいよい。向こうで皆と分けるんじゃぞ。・・・ところで」

 

 

そう言って白夜叉さんは急に真剣な表情になった。

 

 

「今更だが、一つ聞かせてくれ。おんしらは自分のコミュニティがどう言う状況にあるか、よく理解しているか?」

 

「ああ、名前とか旗印の話か?それなら聞いたぜ」

 

「ならそれを取り戻す為に魔王と戦わねばならん事も?」

 

「聞いてるわよ」

 

「では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」

 

 

白夜叉さんの表情を見て黒ウサギさんは視線をそらした。

 

 

「そうよ。打倒魔王なんてカッコいいじゃない」

 

「カッコいいで済む話ではないがの・・・全く、若さゆえのものなのか。無謀というか、勇敢というか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだろう。それでも魔王と戦う事を望むなら止めんが・・・そこの娘二人。おんしらは確実に死ぬぞ」

 

 

二人は言い返そうとしたが、白夜叉さんの威圧感に何も言えないでいた。

 

 

「魔王の前に様々なギフトゲームで力を付けろ。小僧と刹那は兎も角、おんしら二人の力では魔王のギフトゲームは生き残れん。嵐に巻き込まれた虫が無様に弄ばれて死ぬ様は、いつ見ても悲しいものだ」

 

「ご忠告ありがと。肝に銘じておくわ。次は貴女の本気のゲームに挑みに行くから、覚悟しておきなさい」

 

「ふふ、望むところだ。私は三三四五外門に本拠を構えておる。いつでも遊びに来い・・・ただし、黒ウサギをチップに賭けてもらうがの」

 

「嫌です!」

 

「ハハハ。そして最後におんしに確認だ刹那」

 

「はい?」

 

「おんしは怖くないのか?幾ら澪の息子で力があるとは言えまだ幼子。無理矢理戦場に連れ出す事は無いと思うが・・・」

 

「確かに怖くないって訳ではないです・・・でも」

 

 

僕は目を閉じて深呼吸して、落ち着いてから目を開ける。

 

 

「助けられる誰かを助けられないのはもっと怖いから・・・僕は戦います」

 

「・・・《レオ》」

 

「れお・・・?」

 

「はっ!?な、何でもない。おんしの父親と同じ事を言うものだからつい、な・・・」

 

「お父さんと・・・」

 

「記憶が無かろうとも、あやつの思いは受け継がれていると言う訳か」

 

「あの、また今度お父さん達の話を聞かせてください!知りたいんです、お父さんの事とか・・・」

 

「良かろう。いつでも来い。その時にはもっと美味い茶菓子と食事でも用意しよう。それから、堅苦しい呼び方は良い。澪の様にシロちゃんとでも呼ぶといい」

 

「そ、それは・・・しろ姉で・・・」

 

「しろ姉・・・悪くない。うむ、ではまたな!」

 

 

こうして僕達は白夜叉さんと別れ、コミュニティへと歩いて行った・・・。

 

 

刹那サイド終了

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