刹那、拘束プレイからの脱出
刹那サイド
「よし、行こう!」
考えも纏まり、僕は剣の影から飛び出してコポルクを解除した。僕の襲撃にギルガメッシュさんは驚いた顔をしながらも武器を飛ばす。
「おのれ、死にぞこないが!」
「そこだ!」
再び懐まで潜り込み、彼に腕を振るう。だが、軽く後ろに下がられ、その手に握られた剣が僕に迫る。そして次の瞬間、
「な、何だと・・・」
「せ、セーフ・・・」
ギルガメッシュさんの剣と僕の手に握られた"折れた筈の夫婦剣"がぶつかり合っていた。そのまま僕は畳み掛ける。ギルガメッシュさんの剣は折れ、その頬に傷を付ける。攻撃を続けようとした瞬間、僕の足元に歪みが現れたので、急いで下がる。僕のいた場所から武器が発射された。
「危な・・・」
「貴様、何故その剣を持っている。確かに折れて転がっている筈だ」
そう言ってギルガメッシュさんが視線を向ける先には僕が置いた折れた夫婦剣が転がっていた。教えろって視線が凄いので、諦めて教える。
「これは僕の家系、ベル家の魔法の特徴です」
「貴様の家系だと?」
「ベル家の使う魔法は主に強いイメージを必要とします。自分の中のイメージを魔力で具現化したものがベル家の魔法の基本となります」
僕は魔力を練り、周りにイメージして具現化させた辺りに散らばった武器と同じ物を出す。地に刺さった状態だったり、空中に浮いている状態で出現させた。その光景を見て、ギルガメッシュさんが僅かに眉を歪める。
「"常に最強の自分をイメージする"。これこそが僕達の戦闘スタイルです」
「偽物を創り出した程度で図に乗るな!」
ギルガメッシュさんが激昴しながら撃ち出した武器を同じ本数で相殺する。
「確かにこの武器達は偽物です。でも、"偽物が本物に勝てない道理は無い"!」
「貴様ァ!あの《贋作者(フェイカー)》と同じ事を抜かすか!」
「贋作で結構!僕達人類は何時だって先人達の技術や生き方を模倣して生きて来た!人の生き方そのものが贋作の様な物だ!」
互いの武器を限界まで撃ち合う。先程よりも恐ろしい怒りの表情でギルガメッシュさんは怒鳴る。
「何故真面に武器の質も理解していない貴様が我を押す!?」
「理解?そんな物はいらない。"僕の方が強い"。その思いだけあればいい!」
「なんだと!?」
僕の周辺を幾つもの剣が埋め尽くす。リミッターがあろうと僕の魔力はほぼ無限。幾つでも創りだす!僕は夫婦剣を構え、叫ぶ。決意は固まった。
「行くぞ英雄王、武器の貯蔵は充分か!」
「贋作風情がぁ!」
歪みから飛んでくる武器を僕も飛ばして相殺しながらギルガメッシュさんと斬り合う。決して意識は逸らさない。何度も何度も剣を振るう。
「あの女だけでなく貴様も立ちはだかるのか!」
「仕掛けてきたのはそっちだろう!自業自得だ!」
「この・・・《天の鎖》!」
「お返しだ!《天の鎖》僕バージョン!」
「ガハッ!?」
再び出て来た鎖を僕も真似して創り出し、相手の鎖ごとギルガメッシュさんを拘束する。バインドを応用すればコレくらい何ともない。ベル家舐めるな!
僕は魔力を最大まで引き出し、最大魔法を放つ。
「コレで終わりだ!《バオウ・ザケルガ》!」
----バオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!
「おのれおのれおのれえええええ!」
放たれた僕の最高の一撃がギルガメッシュさんを飲み込んだ。その瞬間、世界が閃光に包まれる。
「・・・まさかこの我が親子揃って負けるとはな」
「僕の・・・勝ちですね」
地に仰向けになって足元から金色の粒子となってギルガメッシュさんは消えて行く。その顔は笑っていた。
「約束通り、我の負けだ。この宝物庫と中身、全て持っていけ」
「・・・ありがとうございます」
「何を泣いている。別に我は死んでも此処で終わるわけでは無い。泣く暇があれば前を向け、この我を倒したのだ。胸を張れ、貴様の母親は我をこの後縛って箱庭中に引きずり回したぞ」
「お母さん・・・」
僕は頭を抱える。死体蹴りじゃないか。・・・ん?前も?
「我や竜殺しは特殊な存在だ。死ねば英霊の座に帰り、次の自由を待つかどこぞの雑種共に召喚されるかだ。殺すと言うよりは還すに近いな」
「還す・・・ですか」
「ふん、今更取り繕うな。あの女の子供らしからぬ行動だ」
「むっ・・・じゃあ、《ギル》さん」
「・・・あだ名を付けろと言った覚えは無いが?」
「勝者の特権だよ♪」
「王らしい事を言うではないか」
そう言ってギルさんは愉快そうに笑う。でも何故だか彼の目が孤独そうに見えた。それはとても悲しかった。僕はギルさんに言う。
「ギルさん、一つだけ良い?」
「死に体の我に頼み事か・・・良いだろう。言ってみよ」
「僕と、友達になってくれませんか?」
「・・・」
沈黙が続く。何秒?いや、もっと経っているかもしれない。そんな中、ギルさんは突然今までよりももっと大笑いをした。
「クハハハ!よもや英霊と友になりたいとは面白い奴も居たものだ!・・・良いだろう。興が乗った。友になってやろうではないか」
「うん。よろしくね、ギルさん♪」
「・・・感謝するぞ、優しき王よ」
そう言ってギルさん、《英雄王ギルガメッシュ》はこの世界から消え、英霊の座へと還って行った・・・。僕のポケットからはみ出たギフトカードには新たに、
《王の財宝(ゲートオブバビロン)》
《天の鎖(エンキドゥ)》
《天地乖離す開闢の星(エヌマエリシュ)》
《英雄王の守護》
と四つのギフトが追加されていた。僕はカードをポケットに仕舞い、ジークの元へ向かう。ジークは僕を見て、唖然としていた。
「まさか英雄王に勝つだけでなく友になるとは・・・」
「だから言ったでしょ、信じて待っててねって」
「そうだな・・・俺のマスターは無敵か」
「それほどでもないよ。さ、急ごうか」
こうして僕とジークはサウザンドアイズへと駆けて行った・・・。
~現在に至る~
「と、こんな事があったんだ」
「あの英雄王に勝ったのかよお前・・・」
「でもあのギフトの一つ、一切出なかったから本気出してなかったんだと思う」
「それは違うぞ刹那よ」
いざ兄に言った僕にしろ姉が頬を引き吊らせながら言った。
「あやつのそのギフトを使用するには、ある程度時間が掛かる。だが、おんしの攻撃速度に力を貯める暇がなかったのだろう。つまりは英雄王をこれまでになく追い詰めたと言う訳だな」
「えっと・・・それって」
「お前がとんでもないチートだって事だ」
僕を見ながらその場の全員がドン引きする。自分の家系がどれだけ異常なのかを痛感するよ・・・。
「さてと、そろそろ帰r・・・」
「刹那さん!?」
立ち上がった瞬間、体に力が入らなくなり、倒れそうになるのを黒ウサギさんに受け止められる。
「あれ・・・力が入らない」
「あの英雄王と戦ったのだ。疲れるのも無理はなかろう」
「刹那さん、後は黒ウサギがお運びしますからゆっくりとお休みください」
「・・・お願いします」
「YES♪お任せください」
その言葉を聞いて僕は夢の世界へダイブした・・・。
刹那サイド終了
三人称サイド
サウザンドアイズを出て、ノーネーム本拠へと帰る一行。刹那は黒ウサギに抱っこされた状態で、身長ゆえに黒ウサギの胸を枕の様にして眠っていた。それを見て十六夜は刹那に羨ましげな視線を向ける。
「くそっ、そこ変わって欲しいぜ」
「駄目ですこのお馬鹿様」
「なあ、聖女様。言い値で払うから俺にも」
「やりません」
何処かで見た様なやり取りを小声で行う。今日、いや、新生ノーネームで常に活躍して来た刹那を誰もが労う。そんな中、話題は刹那が乱入して来た時の事へ変わった。
「それにしてもあの時の刹那君、格好良かったわね」
「全くだな」
「ええ、本当にもう・・・素敵でした」
「これは・・・」
「恋愛に疎い私でも分かりますよジーク」
「「(この兎、落ちたな・・・)」」
頬を赤く染めながら微笑む黒ウサギを見て、ジークとジャンヌは思った。隣で見ていた十六夜達も同じ事を考えていた様で、本格的に黒ウサギにジャージを着せる件について話し合い始めていた。
「お嬢様、兎ってのは万年発情期の生き物だ。そんな奴が恋して尚且つあんな格好してるんだぜ?」
「幾ら相手が三歳児といえど手を出すのは時間の問題ね」
「今日から黒ウサギへの警戒を強めるぞ。この世界での刹那の貞操と安全は俺達が守るんだ」
「そうね。コミュニティに戻ったら春日部さんやジン君にも声を掛けましょう」
「俺は明日にでも白夜叉に掛け合ってみる。アイツなら聞いてくれるだろう」
何と言うか、新生ノーネームはブラコンの宝庫だった。その後、コミュニティに着くと、刹那はベッドへ寝かされ、ジャンヌとジークの見張りと言う最強の布陣が配備された。セコムより恐ろしい・・・。
~数時間後~
「ん・・・お風呂」
刹那は寝ぼけ眼で目を覚まし、着替えを持って風呂場へと向かう。フラフラと歩く刹那を心配に思い、ジャンヌが付いて行った。浴場の前まで来ると、十六夜が丁度風呂へ向かおうとしていた。
「よう聖女様、刹那は・・・大丈夫じゃなさそうだな」
「まだ眠い様で・・・」
「それじゃあ、俺が風呂に入れてやるよ。男同士の方が良いだろ」
「はい。それじゃあお願いしますね」
刹那を十六夜に任せ、ジャンヌは部屋へと戻る。十六夜は未だに半目の刹那の手を引いて浴場へと入った。刹那の服を脱がせ、自分の服を脱いで風呂へと入った。風呂は前のコミュニティメンバーの趣味なのか綺麗な大理石で出来ていた。お湯は刹那の手に入れた水樹によって供給され、透明感のある湯が蝋燭の光を反射していた。
体と頭を洗ってから湯船に浸かる。刹那は小さいから溺れない様に自分の膝の上に乗せていた。
「はふぅ・・・♪」
「良い湯だな・・・」
「ごくらくぅ・・・」
「見事に蕩けてんな」
体を洗い始めて目を覚ました刹那であったが、湯の心地良さに再び微睡んでいた。今にも溶けそうなほどリラックスしている姿を見て十六夜は面白そうに笑う。十六夜や刹那の様な強靭な肉体を持っていると云えど、休息は必要だ。互いに風呂好きであったので、ゆっくりと体を休める事が出来た。
暫くして風呂から上がると、十六夜は刹那を連れて食堂へ行った。食堂へ行くと、そこで待っていた黒ウサギがコップに入った。飲み物を差し出した。
「どうぞ、湯上りの一杯は格別ですヨ」
「サンキュ」
「ありがとうございます。・・・甘い♡」
「帰る前に白夜叉様から頂いたフルーツ牛乳です。お風呂上がりに丁度良いと思いまして」
「銭湯に行った時を思い出すぜ」
「僕言った事ないや・・・」
「マジか。一回行ってみろよ。良い所だぜ」
十六夜の言葉に刹那はキラキラと目を光らせながらフルーツ牛乳を飲む。その光景は正に子供のそれと変わりなく、あんな戦闘能力を持っているとは思えなかった。笑顔を向ける刹那の頭を黒ウサギはニコニコと撫でていた。
「黒ウサギさん、なんかお姉ちゃんみたいですね」
「なら私も姉呼びが良いな~なんて・・・私だけ敬語ですし」
「あ・・・」
「今気付いたんですか!?」
「まあ、誘拐犯紛いの痴女兎に警戒しない方が可笑しいだろ」
「だからコレは白夜叉様に・・・うぅ」
「えっと・・・くろ姉?」
「はうっ♡な、何て魅力的な響き・・・!」
十六夜の言葉に打ちのめされた黒ウサギへ刹那がモジモジしながら呼ぶ。その姿はとても愛らしく、母性本能を刺激するには充分であった。
「ようやく距離が縮まった気がします!」
「ま、良かったな。刹那、片付けてそろそろ寝ようぜ」
「うん。くろ姉、フルーツ牛乳ありがと」
「いえいえ。それでは御二人様、良い夢を!」
「「おやすみ」」
こうして三人はそれぞれ眠りに付き、夜が更けて行った・・・。
ペルセウスとの決戦は近い・・・。
~とあるコミュニティにて~
「ダーリンまた浮気したでしょ!?」
「ち、違えよ。ただちょっとあのお胸に失礼しただけで・・・」
「ダーリンの・・・馬鹿ぁ!」
「ぶにゅっ!」
とあるコミュニティで一人の女性がダーリンと呼んだ"熊の人形"を殴り飛ばした。女性の腕力が強いのか、クマの人形は気持ち悪い声を出しながら窓から空の彼方へと飛んで行き、やがてノーネームの敷地内に落下する。
「うぐぅ・・・ナイスパンチ・・・がくっ」
クマの人形はその場で気を失う。そして翌日、刹那に拾われるのであった・・・。
三人称サイド終了
刹那君は最強ってハッキリ分かんだね。
次回からペルセウス戦です。この番外編は原作一巻とオリジナルの話で終わりにしようと考えています。
次回もお楽しみに!