もう刹那一人で良いんじゃないか。
刹那サイド
たっぷりと寝た翌日、ご飯を食べた後に庭先を散歩していると、ある物を見つけた。大人の掌サイズ程のクマの人形だった。誰かの落とし物かな?子供達の物だよね。ジン兄に聞いてみよう。そう考えた僕は人形を抱えて屋内へと戻った。
「う~ん・・・こんなの持ってる子いなかったよ」
「えっ?でも庭に落ちてたよ?」
「でもそんなの見た事無いし・・・」
ジン兄は子供達の持っている物をある程度把握しているみたいで、僕の抱きしめている人形を見て首を傾げていた。そんな中、いざ兄が人形を見て言う。
「ならお前が貰ったらどうだ?」
「いや、それは・・・」
「見るからにボロボロだし、捨てるのもアレなんだろ?だったらお前が持っていた方がソイツも幸せな気がするぜ」
「・・・分かった」
僕は椅子に座って人形を撫でる。可愛いなこの子・・・。こんな子を捨てるなんて酷い人も居たものだ。そんな事を考えていると、
「・・・うぅ。此処は・・・」
「「「ファッ!?」」」
突然人形が喋りだし、僕達三人は驚愕の声を上げる。
「え、えっと・・・クマさんが喋った?」
「ん?おお、もしかして嬢ちゃんが俺を拾ってくれたのか?」
「う、うん。でも僕は「いや~、助かったぜ。あと十歳くらいあったら愛を囁いてたよ。でもコレはコレでアリだな」・・・」
「刹那、コイツ今すぐ燃やすぞ」
「ノ~!目を覚まして早々バーベキューとか酷くないかオマエ!?」
「行き成り義弟にナンパしてる時点で有罪だエロ熊」
無表情でいざ兄が人形を握る。人形は叫びながらジタバタと動いている。僕は少し可哀想に思い、いざ兄を何とか説得して事なきを得た。
「男だったとは・・・コレが男の娘って奴か。・・・その見た目もしかして、如月澪・・・」
「お母さんを知ってるの?」
「ヒギャアアアアアアアアア!?俺が悪かったぁ!もうアンタをナンパしねえからあの男の目は!目だけはぁ!死の線をなぞられるぅ!」
「お、落ち着いてクマさん!?僕何もしないから!ねっ?」
僕はクマさんをギュッと抱きしめて、落ち着かせる。暫くしてクマさんは落ち着いてくれた。
「・・・本当に何もしない?」
「うん。しないよ」
「如月澪の彼氏みたいに死の線をなぞらない?」
「しのせん?そんな力無いし、変な事しないって約束する」
「じゃあ、信じる。いきなり慌ててゴメンな」
「大丈夫だよ。ねえ、君の名前は?」
僕の言葉にクマさんは右手を挙げて答えた。
「俺の名前は《オリオン》だ!よろしくな」
「うん。僕は如月刹那。よろしくね」
「まさかあの最強の息子がこんなに可愛いとは・・・てっきりムキムキのヤバい奴かと思ったぜ」
「アハハ・・・」
オリオンの言葉に僕は苦笑する。確かにあのお母さんの腕力とか色々規格外な所を考えると、そんなイメージを持たれても仕方ないと思う。僕でもこんな存在、勘違いすると思うし・・・。
「ねえ、オリオンは何で此処に来たの?」
「おん?ああ、嫁にブッ飛ばされちまってな」
「オリオンお嫁さん居るの!?」
「おうよ。メッチャ可愛いぜ」
「お前、嫁がいるのにナンパしてたのかよ」
「まあな。何時どの時代どの世界でも不倫は文化だ」
「今全世界の女性に喧嘩売りましたねこの熊」
オリオンの答えにジン兄がツッコミを入れた。何て事を言うんだろうかこのクマさんは・・・。なんかお母さんが好きだった、テ・・・なんだっけ?喋るクマの人形の映画を目の前で見てる気分だ。
「取り敢えずこれからどうするの?お嫁さんの所戻る?」
「いや、今戻ったら間違いなく殺されるからな。アイツが怒り忘れて寂しくなるまで此処に居させてくれ」
「僕は良いよ。ジン兄は?」
「構わないけよ。但し、このコミュニティ内でのナンパは禁止」
「オッケー分かった。認めたくないが背に腹は代えられねえ」
こうしてオリオンが一時的に仲間になった。僕はオリオンを頭に乗せて再び散歩を再開する。
「オ~リオンをな~ぞる♪」
「その歌止めてくれ。前に物理的にオリオンをなぞられてるから」
「お父さん何したんだ・・・」
「如月澪の彼氏、つまりはお前の親父さんは凄かったぞ」
「そんなに?」
僕が聞くと、オリオンは語りだした。
「母親の方も凄いが、こっちの方も強かった。男神のみのコミュニティ《漢達の集い》を数分で潰したからな。あ、一応そこ箱庭のナンバー2だった所な」
「何て規格外な親なんだ・・・」
「幾つかギフトを持ってたが何より恐ろしいのはあの"目"だ。魔眼の類になると思うが、あの目の前じゃどんな神も瞬殺だ」
「そんなに凄いの?」
「ああ。何せ防御もお構いなしに斬り刻んじまうからな。俺もその被害者の一人で・・・!」
「よく無事だったね・・・」
「ああ。一回死んだが、俺も英霊の端くれだからな。あの金ピカに話聞いたんだろ?」
「うん。ギルさんと同じなんだねオリオンって。でも英霊って感じしないや」
「ひっでぇ・・・」
二人で話しながらコミュニティの門の前まで来ると、いざ兄が丁度出掛ける所だった。僕はいざ兄に駆け寄る。
「いざ兄!今からお出かけ?」
「おう。昼飯の材料調達に街の方にな。何でもギフトゲームに勝つとタダで貰えるらしい」
「そうなんだ。何だかお得だね」
「勝てればな。何だったらお前も来るか?」
「うん!」
「だ、そうだ。後は任せろよ聖女様方」
いざ兄が言うと、ずっと霊体化していたジャンヌ達が出てくる。ジャンヌのあの表情、オリオンの事苦手だな・・・だから出てきてくれなかったのか。
「じゃあ、行って来ます」
「はい。十六夜さん、お願いします」
「任せろ。ジーク、後で模擬戦させろよな?」
「分かった。マスターを頼んだぞ」
こうして僕達は街へと歩いて行った・・・。
「チクショー!持ってけドロボー!」
「やった!お野菜ゲット!」
「ま、また勝ちやがった・・・」
街に着いた僕達は八百屋さんでギフトゲームをしていた。ゲームの商品の沢山の野菜と果物を貰ったギフト《王の財宝》の空間内に収納する。この中には色々入るから便利だ。
「やった♪これで5連勝目だよ」
「お前強いなマジで・・・」
因みに此処までにして来たゲームは、
一軒目:魚屋で鰻のつかみ取り
二軒目:肉屋でミノタウロスと闘牛
三軒目:玩具店でメンコ勝負
四軒目:洋服屋で裁縫勝負
五軒目:八百屋で収穫勝負
である。ちゃっかり皆へのお土産も手に入れたし、ちょっと思いついた事もあったから良い収穫だった。僕は別の所でゲームに勝ったいざ兄の所へ向かう。
「いざ兄、勝ったよ!」
「お前俺より勝ってるじゃねえか。偉いぞ」
「えへへ♪」
「・・・何この可愛い生き物」
「俺の自慢の義弟だ」
オリオンが何か言ってるけど、いざ兄に撫でられていい気分だった僕は気にしなかった。そしてホクホク顔で僕達が帰路に着いていると、道の岩に座って如何にもブルーな空気を漂わせている女の子が居た。背中には黒と白の羽が生えている。僕は気になって近づく。
「あの、大丈夫ですか?」
「ふえっ?あ、うん・・・大丈夫、かな?」
「何かあったんですか?」
「多方迷子とかじゃねえのか?」
「ぎくっ・・・うん」
何とも言えない空気に包まれる。いざ兄もやっちまったって顔をしていた。僕はこの空気から抜け出す為に打開策を用意する。
「えっと、貴女のご家族の持ち物とか持ってませんか?」
「・・・確かさっき喧嘩した時にもぎ取った髪の毛が」
「何やってんの!?」
え、その髪の毛何か血が滴ってるよ!?まさか頭皮ごと逝っちゃったパティーン!?ご家族の方今頃病院なんじゃ・・・。
「え、えっと。コレに魔力を・・・」
「おお・・・光った!」
「・・・《アイテム・サーチ》」
魔法の名を呟くと、髪の毛と同じ感覚を街の向こうから感じ取った。僕は少女の手を取る。
「こっちです」
「あ、うん!」
「やれやれ。お人好しな奴だ」
暫く街中を歩いていると、髪の毛と同じ反応を示す男性を見つけた。何より、一部が大きく禿げてしまっているのが何よりの証拠だ。少女は男性を見ると、一目散に駆け出す。
「わーんっ!《ガレア》ーーーー!」
「《マール》!無事だったか!」
喧嘩していた、と言う話が嘘の様に二人は駆け寄る。その姿は迷子を見つけた親の様だった。男性はマールと呼ばれた少女から話を聞いて、僕達に話しかけた。
「マールが世話になった。《ガレア》と言う」
「僕は如月刹那です」
「ほう。あの如月澪の・・・」
「ありがとね、刹那"ちゃん"!」
「・・・僕は男です」
「えっ!?こんなに可愛いのに!?」
「ぐはっ!?」
「しっかりしろ刹那!傷は浅いぞ!」
「何か心臓に必中の槍が刺さった気がする・・・」
オリオンの励ましに蹲りながら答える。何故皆僕を女と言うのだろうか。ああ、男らしくなりたい・・・。
「あー・・・ごめんね?」
「もういいです慣れました」
「あ、私は《マール》!ガレアと一緒にコミュニティ《ホワイト・キャット》に所属してるんだ!」
「僕達はノーネームに所属してます」
「ほう、あのフォレス・ガロに打ち勝った新生ノーネームか。噂は聞いているが、まさか君達とはな」
「ねえねえ!刹那君はどんなギフト持ってるの!?」
「マール。人のギフトを聞くのはマナー違反だぞ」
「ちぇっ。分かったよ~」
「あの・・・どうぞ」
僕はギフトカードを手渡す。別に見られて困る訳では無いし、良いかなと軽い気持ちで渡したのだが、ガレアさんから驚いた顔で見られた。
「良いのかそんな気軽にギフトカードを見せて」
「えっと、何かマズい事でもありました?」
「・・・ギフトカードに書かれたギフトは謂わば己の魂を書き示していると言っても過言ではない。つまり、相手にギフトを見られると言う事は君の弱点や、最悪の場合過去の事等を知られる事になるんだ」
「それは・・・忠告ありがとうございます」
「安心してくれ。マールは悪い子ではない。君のギフトを見ても悪用する事は無いだろう」
「ありがたいです」
ガレアさんにそんな事を教えて貰っていると、マールさんが僕のギフトカードを見て震えていた。それを不思議に思い、ガレアさんが僕に許可を取ってギフトカードを覗くと、冷や汗を垂らした。
「一つ、聞いても?」
「はい。どうぞ」
「何故英雄王のギフトが?」
「ああ、刹那は英雄王を倒したんだよ」
「「はいっ!?」」
いざ兄が僕の代わりにドヤ顔で答え、ガレアさん達が素っ頓狂な声を上げる。
「あ、あの英雄王をこんな幼子が!?」
「あの最強夫婦の息子だぜ?」
「「ああ、納得・・・」」
「どう言う意味ですかソレ!?」
「どうどう。落ち着けよ刹那」
「うう・・・酷いよ皆して」
本格的に凹みます・・・。暫く話をしていると、僕達はある事に気が付いた。
「あ、お昼ご飯!?」
「やっべえ!刹那、転移魔法!」
「うん!あ、僕達帰ります!」
僕は魔法陣を展開して転移魔法を発動させる。魔力を集めていると、マールさんが近寄って来た。
「刹那君ありがとね」
「いえ、困ってるの見てたら放っておけなかっただけですから」
「ふふっ♪ねえ、目閉じて」
「いいですけど・・・こうですか?」
「・・・今日はありがと。んっ」
「なっ!?」
「おおっ」
「やるねえ・・・」
「・・・ふへっ?」
目を閉じた瞬間、僕の頬に柔らかい感触が触れた。も、もしかして・・・。僕の顔は一瞬で熱くなった。マールさんは僕に二カッと笑い掛けた。
「私のギフトは人にラッキーを与えるの。だから助けてくれたお礼に、とびっきりのラッキーをあげる。また会おうね!」
その言葉を最後に、僕達の見ている景色は街からコミュニティへと変わっていった・・・。
「・・・はぅ」
「流石最強の息子。強い男に女が惹かれるのは世の常だ」
「義弟の将来が怖くなって来たぜ・・・」
まさかあんな事されるなんて・・・。もっと普通の渡し方無かったんですかマールさん!?顔を赤くしたまま僕達はコミュニティへと、戻って行った。
✽この後、遅いと怒られました(泣)
刹那サイド終了
次回からペルセウス戦に入りたいと思います!