ギフトゲーム、開幕。
刹那サイド
今、僕の目の前でアルゴールの魔王が絶叫している。それを見て、くろ姉とジン兄が苦悶の表情を浮かべ、いざ兄は少し悲しそうな表情でアルゴールの魔王を見ていた。
「さあ、アルゴール!あのチビを潰せ!」
「G、GYAAAAAAAAaaaaaaaaaa!」
ルイオスの言葉を引き金に、アルゴールの魔王はその巨体で僕に突っ込んで来た。僕はその場から動かず、手を翳す。
「《クエアボルツ・グラビレイ》」
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaa!?」
「な、何!?」
僕が魔法を発動すると、アルゴールのm・・・長いからアルゴールで良いや。アルゴールの周りに巨大な重力の壁が出現し、アルゴールの動きを止める。アルゴールはギギギ、と反抗しているが、指一本動かせない。その光景に、上空から見ていたルイオスも驚いていた。
「セイッ!」
「GAGYAAAaaa!」
魔法を解除し、再び顎を上空に蹴り上げる。ロケットの様にアルゴールは飛んで行き、
「ヒッ!こ、こっち来るnげぼらっ!?」
「ナイスショット!」
ルイオスに当たり、二人揃って目の前に落ちる。僕はその間に後ろのいざ兄とくろ姉に話し掛ける。
「いざ兄!くろ姉!」
「「なんでございましょうか!刹那様!」」
「なぜ敬語?・・・ちょっと力入れるからジン兄連れて下がってて!具体的にはもっと端っこ!」
「「サーイエッサー!」」
何故二人は震えながら離れるんだろう?別にアルゴールとかルイオスとか怖くないのに・・・。
「お、お前ええええ!」
「フンッ!」
「ファッ!?」
ルイオスが放った炎の弓を裏拳で弾き返す。弾き返された矢はルイオスの弓に当たり、破壊される。これで本気を出さざるを得なくなった。
「さて、どうしてくれようか・・・」
「チッ!調子に・・・乗るな!」
叫びながらルイオスはギフトカードから一本の鎌を取り出した。それを僕に振り下ろして来るのを避ける。
「刹那!ソイツは星霊も殺せる《ハルパー》!お前でも触れれば御陀仏レベルの代物だ!」
「大丈夫!《ソルド・ザケルガ》!」
「グッ!そのデカさで速すぎだろ!」
雷の大剣を振り回して、反撃する。ああ、これならもっとトリエラに教わるんだったよ!
「《ザグルゼム》!」
「しまった!・・・あれ?」
僕の手から放った雷のエネルギー弾がルイオスのハルパーに当たる。だが、何も起こる事はなく、ハルパーが雷を帯びただけだった。
「ふ、ハハハ!まさか失敗するとはなぁ!」
「・・・ザグルゼム」
「無駄無駄無駄ぁ!英雄の武器に勝てる訳ないだろ!」
「うるさい。ザグルゼム」
「だから意味ないんだよ!アルゴール!」
ルイオスの叫びに力無く立ち上がるアルゴール。僕はアルゴールにもザグルゼムを当てる。そして再びルイオスのハルパーに手を翳す。
「《ザケルガ》!」
「だからmな、何だ!?うわっ!?」
「GYAAAAAAAAaaaaaaaaa!?」
ザケルガをハルパーに当てた瞬間、ハルパーは砕け散り、そこからアルゴールへと電撃が続く。そしてアルゴールは再び痛みに絶叫し、地に伏せた。
ザグルゼムは電撃の威力を高めたり、ザグルゼムを当てた場所同士で連鎖させる事も出来る。但し、ザグルゼム自体に威力は無いのがネックだけど・・・。
「英雄の武器が、なんだって?」
「この、バケモノめ・・・!」
「皆を守れるならバケモノで結構だ」
「・・・何故ノーネームを庇う。あんな落ちこぼれ集団、消えるべきだ!俺は大手コミュニティだぞ!あんな雑魚消えて当然なんだよ!」
「・・・ふざけるな」
僕は魔力を高める。もっと・・・もっとだ・・・もっと来い!その瞬間、僕の中で枷の外れる音がした。リミッターを無理矢理壊したのだ。僕の髪は本来の金髪になり、目の色も聖王の象徴であるオッドアイになる。
そのまま僕は怒りをルイオスにぶつけた。
「くろ姉達がお前達に何をした!?お前の様に誰かを傷付けたか!?お前みたいに弱い者から大切な何かを奪ったか!?消えるのはお前の方だ!木偶の坊!これ以上僕の"仲間"を侮辱してみろ!お前のその口、切り裂いてくれるぞ!」
「だ、黙れ黙れ黙れぇ!アルゴール!宮殿の悪魔化を許可する!奴を殺せ!」
「RaAAaaa!!LaAAAAAA!」
謳うような不協和音が響き渡る。途端に宮殿は黒く染まり、壁は生きている様に脈を打つ。宮殿全体まで広がった黒い染みから蛇の形を模した石柱が僕に襲いかかる。僕はそれを無表情で殴り壊す。脆い・・・。
「こんなのあったんだ・・・」
僕を見て、ルイオスは追い詰められた某夜神さんみたいな表情で叫んだ。
「もう生きて帰さないッ!この宮殿はアルゴールの力で生まれた新たな怪物だ!貴様には最早足場一つ許されていない!貴様らの相手は魔王とその宮殿の怪物そのもの!このギフトゲームの舞台に、貴様らの逃げ場は無いと知れッ!」
ルイオスの絶叫と、魔王の不協和音。それに合わせて魔宮は変幻し、外壁や柱を蛇蝎の如く姿を変えて襲いかかってくる。だが全て僕の拳で砕かれる。今僕めっちゃ怒ってる。ああ、クリリン馬鹿にされた悟空ってこんな気持ちだったんだろうか。
「----それじゃあ、こうすれば良いよね?」
「「え?」」
僕の言葉に後ろからジン兄とくろ姉の声がした。僕は魔力を腕に集中させて放つ。
「砕け!《バオウ・ザケルガ》!」
----バオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!
瞬間、金色の龍が吼え、闘技場の床を砕いた。そしてそのまま四階を巻き込んで三階まで穴を開ける。魔力の込め方が甘かったか・・・!僕は心の中で舌打ちをする。
ジャンヌ達にはあらかじめ念話で話したので、既に回避済みだろう。
「馬鹿な・・・どう言う事なんだ!?この闘技場は防備の為に結界が張ってあるんだぞ!?」
「あんなシャボン玉レベルの結界で防げると思うな」
「あの結界をシャボン玉・・・だと」
「まさか、コレでネタ切れ?」
「・・・っ・・・!」
まだ宮殿の怪物は生きている。でもきっとこのままだと好転する事は無い。僕から見ても彼は未熟すぎる。僕より二歳年上のトリエラの方がもっと強い。
少し悔しそうな表情を浮かべた後、ルイオスは一瞬真顔に戻ってから凶悪な笑みを浮かべた。
「もういい"終わらせろ"アルゴール」
恐らく石化のギフトを開放したのだろう。再びアルゴールは不協和音を響かせながら僕に褐色の光を放つ。アルゴールを魔王へと至らしめた根幹。天地に至る全てを褐色の光で包み、灰色の星へ帰る星霊の力。
「----しゃらくさいっ!」
僕はそれを"殴って打ち消した"。
別に比喩した訳じゃない。物理的に壊したのだ。褐色の光はガラスの様に砕け散って、影も形も無く吹き飛んだ。
「ば、馬鹿な!?」
ルイオスが叫ぶ。まあ、叫びたくもなるよね。僕も同じポジションだったら多分なるもん。
「まさかギフトを破壊した!?」
「ありえません!ギフトを砕くなんて・・・」
「アイツまさか俺のギフトを真似て・・・!ヤハハ!やっぱアイツ最高の義弟だぜ!」
後ろから三者三様の声が聞こえてくる。まさかいざ兄の拳をイメージしたら出来たなんて言えないよねこの空気・・・。
「さあ、続けようかゲームマスター。王の判決を言い渡す」
僕はルイオスに向かって右手を挙げ、指を指して叫ぶ。
「感謝しろ。絶滅タイムだ!」
母が良く口にしていたセリフを言ってみる。するとどうだろう。ルイオスは歯の根も合わないのかガチガチと鳴らして震え、漏らしていた。そんなにビビらなくても良いでしょうに・・・。
「刹那さん、もう彼には何の手立てもありません」
「・・・嘘でしょ?」
「本当です」
くろ姉の声に振り向く。ええ・・・?もう何も無いの?第二形態とかあるでしょ?ドラクエの歴代ボスだって第二形態は基本だよ!?
「アルゴールが拘束具に繋がれている時点で気が付くべきでした。・・・ルイオス様は星霊を支配するには未熟すぎるのです」
「ッ!?」
くろ姉に憤怒の表情を向けるルイオスだが、声には出さなかった。まあ、思うところはあるんだろうな・・・。でも流石にこの事態は予測していなかった様だ。まあ、名無し風情と馬鹿にしている奴らに此処まで叩きのめされたんだもんね。
反省もしていないし後悔もしていないから謝りもしないけど。
「ハッ。所詮は七光りと元・魔王様。長所が破られれば打つ手なしってことか」
「・・・」
いざ兄の言葉にルイオスは完全に沈黙し、くろ姉が勝敗が決したと感じたのか手を挙げようとしたところを僕は止める。そしてルイオスに話しかけた。
「・・・このままゲームに負けたら、君の旗印。どうなるか分かってるよね」
「な、何?」
僕達はレティシアさんを取り戻す為に来たんだ。まあ、そんな反応するだろうね。でもコイツをこのままで放っておくのもなんか癪だ。
「それは後でも出来る。それよりも、旗印を盾にして即座にもう一度ゲームを申し込む。----そうだね、次は君達の名を戴こうか」
ルイオスの顔から血の気が一気に引く。そして彼は周りを見回す。そこには砕けた宮殿と石化した同士達が転がっている。僕はわざと口の端を釣り上げて話を続ける。
「その二つを手に入れた後"ペルセウス"が箱庭で永遠に活動できないように名も、旗印も、徹底して貶めてあげる。たとえ君達が起ころうが泣こうが喚こうが、コミュニティの存続そのものが徹底的に。"徹底的"にだ」
「や、やめろ・・・!」
絶望した表情をルイオスは僕に向ける。
「良いか。コレがくろ姉達が受けた痛みだ。気まぐれで全てを奪われ、貶され、涙を流してきた。でも彼女達はそれを乗り越えて此処にいる。七光りの君には無い確かな"強さ"を持ってるんだ」
「くっ・・・!」
「いいのかい?このまま君の言う"名無し風情"に負けたままで」
「・・・言い訳、無いだろう!」
「----なら、方法は一つだけだよね」
僕はルイオスを見て構える。僕を睨み付けるルイオスの目は先程までの"七光り"の甘えた目ではなく、紛れもなく"ペルセウスのリーダー"たる確かな決意の瞳だった。
「来い、ペルセウス。命を賭して掛かってこい!」
「負けない・・・負けられない、負けてたまるか!奴を倒すぞ、アルゴォォォォル!!」
ルイオスとアルゴールの翼が共に羽ばたく。今確かに二人の間に"繋がり"を始めて感じた。その二人に僕も全力で立ち向かう・・・!
「ハァ・・・ハァ・・・!」
「僕の・・・勝ちだ」
僕の拳がルイオスの顔面に入り、ノックダウンさせる。ルイオスは息を切らしながら僕を見た。敵意の無い、純粋な目だ。
「ははっ・・・まさか本拠での初陣がこんな結果なんてね。リーダーとして情けない」
「でも、最後の踏ん張りは良かったよ」
「年下に言われても嬉しくないね。はいはい、僕の負けだ」
そう言ってルイオスは笑う。出し切った満足感と、旗印を奪われる悔しさが織り交ざった。
「さあ、旗印でも何でも持っていけよ。部下だけは見逃してほしいけどね」
「さっき能無しとか言ってなかった?」
「殴り合ってて自分の方が無能だと思い知らされたよ。確かに僕は七光りだね。一人じゃ何もできやしない」
「そっか。まあ、全部を取るつもりはないから安心してよ」
僕の言葉にルイオスはポカンとした表情になる。そして急に笑い始めた。百面相だなこの人。
「どれだけ頑張っても君には追いつけそうにないよ」
「お褒めに預かり光栄だよ」
僕はその場に座り、年齢魔法を解除する。僕の本来の姿を見て、ルイオスは再びポカンとなった。あ、リミッター何とかしなきゃな・・・。
「こんな子供相手にボコボコにされたのか僕は・・・」
「まあまあ。ナイスファイトだったよ」
「腹立つ・・・!言い返せないから尚更腹立つ・・・!」
ルイオスを笑った後、その少し先に視線を向けるとアルゴールが光の粒子となって、崩れ始めていた。
「・・・やっぱり逝くんだね」
僕の言葉にアルゴールは頷く。宮殿を破壊したと云えど、まだ修復出来る範囲に留まっているし、ルイオスとも始めて繫がる事が出来たのに、アルゴールは消滅を選んだ。ルイオスもそれには何も言わない。
僕はアルゴールに近付いて抱き付く。
「大丈夫。きっとルイオスは正しいリーダーになれるさ。その時は、全力全快の状態で戻ってあげなよ」
「----ありがとう」
「・・・え?」
始めて聞いたアルゴールの綺麗な声を最後に、金色の粒子が全て空へと消えていった。そこにはもう、何も無かった。僕は何も言わずに、空を見つめていた・・・。
「このゲーム、ノーネームの勝利と致します!」
くろ姉の言葉を最後に、僕の視界は再び一転した・・・。
刹那サイド終了
三人称サイド終了
あれから暫く、レティシアは見事ノーネームへ戻る事が出来た。だが、彼女の受難はむしろそれからであった。所有権がノーネームへ移り、彼女を受け取った彼らは直様屋敷の大広間へ運び、石化を解いた途端、問題児三人が口を揃えて、
「「「じゃあこれからよろしく、メイドさん」」」
「え?」
「え?」
「・・・え?」
「え?じゃないわよ。だって今回のゲーム、活躍したのは私達だけじゃない。貴女達はくっついて来ただけだったもの」
「うん。私なんて力いっぱい殴られた挙句、石にされたし」
「つーか挑戦権持って来てアイツ倒したの刹那だろ。だから所有権は俺達で等分、7:1:1:1でもう話は付いた!」
「何を言っちゃってんでございますかこの人達!」
最早ツッコミが追いつかない黒ウサギは混乱していた。ジンもその一人であり、話の当事者であるレティシアは冷静だった。
「ん・・・ふむ、そうだな。今回の件で、私は皆に恩義を感じている。コミュニティに帰れた事に、この上なく感動している。だが親しき仲にも礼儀あり、コミュニティの同士にもそれを忘れてはならない。君達が家政婦をしろというのなら、喜んでやろうじゃないか」
「れ、レティシア様!?」
「そ、それに刹那へのご奉仕が必要だろう?あ、朝のウェイクアップの確認を!」
「このお馬鹿様!」
遂に黒ウサギがレティシアを叩いた。その光景に一同が盛り上がる。そんな光景を刹那は遠目から眺めていた。"包帯まみれ"の体で・・・。
「・・・もう動いて良いのか?」
「うん。心配してくれてありがと、オリオン」
ギフトゲーム後、無理矢理リミッターを外したツケが来た刹那は全身がボロボロになって倒れ、白夜叉が手配した医師によって治療されたのだ。一応の為、包帯を巻いているが、傷は完治している。
「全く。留守番してて帰ってきたと思えば血だらけで帰って来るから心配だったんだぜ」
「ごめんね。ちょっと無理しちゃった」
「ジャンヌちゃん達もずっと看病してくれたんだからよ」
「うん。ありがと、ジャンヌ、ジーク」
「マスターが無事でなによりです」
「あの時直ぐに気づかなくて、すまない・・・」
二人に礼を言っていると、レティシアが刹那の方へと歩いて来た。
「刹那、今回は本当にありがとう」
「気にしないでください。レティシアさんが戻って来る事が出来て良かったです」
「・・・うん。やはり違うな」
「違う?」
レティシアの言葉が気になった刹那は聞いた。するとレティシアは嬉しそうな表情で言う。
「失礼な話、最初私は刹那にレオを重ねていた。だが今は違う。私を全力で救ってくれた刹那個人に惚れたんだ」
「・・・はい?」
「よし、改めて私と結婚しよう。大丈夫だ、これでも家事全般は得意だし、夜のアレコレも・・・」
「よる・・・?」
「マスターに何吹き込んでるんですか!」
ジャンヌがレティシアに戦旗を振るう。ジークも剣を抜いていた。
「フフフ・・・やはり英霊達が立ちふさがるか。良いだろう!その試練を乗り越え、私は刹那を手にしてくれる!」
三人の戦闘を他所に、刹那はその場から離され、黒ウサギ達とのお昼寝タイムに突入していた。何だかんだで、まだ三歳である。
~三日後~
刹那達は子供達も含めて水樹の貯水池付近に集まっていた。そんな中、黒ウサギが声高々に叫んだ。
「えーそれでは!新たな同士を迎えた"ノーネーム"の歓迎会を始めます!」
ワッと子供達から歓声が上がる。周囲には運んで来た長机の上にささやかながら料理が並んでいる。本当に子供だらけの歓迎会だったが、それでも刹那達は悪い気はしていなかった。
「だけど、どうして屋外の歓迎会なのかしら?」
「うん。私も思った」
「黒ウサギなりに精一杯のサプライズってところじゃねえか?」
「楽しみだねー♪」
そう言い合う四人だが、頭の中では冷や汗ものだった。正直な話、ノーネームには財政的余裕は一切無い。もうすぐ金蔵が底をつく。刹那が街で稼いできた分も限度がある。食料に関しては、刹那が貯水池を利用して魚の養殖池を造ったので、暫くは持つだろう。
「無理しなくて良いって言ったのに・・・馬鹿な子ね」
「そうだね」
耀も苦笑で返す。二人が話していると、黒ウサギが大きな声を上げて注目を促す。
「それでは本日の大イベントが始まります!みなさん、箱庭の天幕に注目してください!」
刹那達を含めたコミュニティの全員が、箱庭の天幕に注目する。その夜も満天の星空が広がっていた。星々は今日も燦々と輝いている。そんな星々に異変が起こる。
「・・・あっ」
コミュニティの誰かが声を上げた。それから連続して星が流れ、皆が口々に歓声を上げる。黒ウサギは皆に言い聞かせる様な口調で語る。
「この流星群を起こしたのは他でもありません。我々の新たな同士、異世界からの四人がこの流星群のきっかけを作ったのです」
「え?」
その言葉に、刹那達が驚きの声を上げる。黒ウサギは話を続けた。
「箱庭の世界は天動説の様に、全てのルールが此処、箱庭の都市を中心に回っております。先日、同士が倒した"ペルセウス"のコミュニティは、敗北の為に"サウザンドアイズ"を追放されたのです。そして彼らは、あの星々からも旗を降ろす事になりました」
刹那達は完全に絶句した。
「まさか、あの星空から星座を無くすというの・・・!?」
そして、一際大きな光が星空を満たした。
そこにあった筈のペルセウス座は、流星群と共に跡形もなく消滅していたのだ。ここ数日で様々な奇跡を目の当たりにした彼らだが、今度の奇跡は訳が違った。そんな彼等を見ながら黒ウサギは進行を続ける。
「今夜の流星群は"サウザンドアイズ"から"ノーネーム"へのコミュニティ再出発に対する祝福も兼ねております。星に願いをかけるもよし、皆で鑑賞するもよし、今日は一杯騒ぎましょう♪」
嬉々として盃を掲げる黒ウサギと子供達。だが四人はそれどころではなかった。
「星座の存在さえ思うがままなんて・・・あの全てが箱庭の舞台装置とでも言うの?」
「そういうこと・・・なのかな?」
空を見上げて二人は騒然としている。
「・・・アルゴルの星が食変光星じゃないところまでは分かったんだがな。まさかこんな仕掛けとは思わなかったぜ・・・」
「キラキラしてて綺麗だな~♪」
訂正、二人ほど平常運転だった。
すると、二人の前に黒ウサギがドヤ顔出来た。
「ふっふーん。驚きました?」
「やられた、とは思ってる。まさか此処まで凄い物が見られるとはな」
「うん!おかげで大きな目標もできたしね!」
刹那が嬉しそうに言う。
「大きな目標ですか?」
「さっきから目をキラキラさせながら言うんだよ。全く、随分と馬鹿デカイ目標を掲げたモンだぜ」
二人の言葉に刹那は純粋な瞳で上を見上げながら、ペルセウス座の位置していた場所へ指を向けて言った。
「"あそこ"に僕達の旗を飾るんだ!・・・どう?」
刹那の言葉に、黒ウサギ達は絶句する。そして次の瞬間、弾ける様に笑い声を上げた。
「それは・・・とてもロマンが御座います」
「だな」
「でしょ♪」
満面の笑顔で返すが、道のりははまだまだ険しい。奪われた物を全て奪い返し、その上で、コミュニティを盛り上げなければいけないのだから
だが、残りの二人も反対はしないだろう、とそんな予感が黒ウサギと十六夜にはあった。
"家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い"
それだけの対価を支払った彼らの生活は、まだ始まったばかりなのだから。
「・・・」
だが、そんな彼らに別れの時がゆっくりと確かに近付いて来ていた・・・。
三人称サイド終了