改訂版などと銘打って連載を始めたのにもかかわらず、エタってしまい、楽しみにしてくださっている方々に大変ご迷惑をおかけしました。
今後もエタらない保証はしかねますが、精一杯頑張って簡潔を目指していこうと思います。
至らない部分が多い上に更新も不安定ではありますが、今後も応援の程お願いします。
うだる様な猛暑日が続き、セミたちが鳴く8月中旬のある日。
全国大会を終えた寛は大会前にした健夜との約束を果たしてもらうためにメモに記された雀荘を目指す。
場所は彼女の地元であり、寛が現在住んでいる土浦市街であったため比較的かんたんに移動はできているが、気温が気温であるため既にひろしの額は汗にまみれている。
「…暑さがやばいな。辿り着く前に熱中症で倒れそうだ。」
手持ちの水分がキレていることに気づいた寛は迷うことなく視界に入ったコンビニへと足を運ぶ。
「あれ、寛くん?」
店内に入り飲み物を選んでいると。唐突に声をかけられた。
「あ、こーこさんお久しぶりです。」
寛に声をかけたのは健夜と共に全国大会の解説を行っていたアナウンサーのこーこだった。
最初はちゃん付けで呼ぶように行っていたこーこだが、紆余曲折あり、さん付けに落ち着いた。
「今日だっけ?すこやんのところに行く日って。」
「はい。ただ、水分補給と休憩を兼ねてコンビニに入ったとこです。」
「なるほどね。あ、じゃあ乗ってく?私もすこやんの所にちょっと渡すものあったし。」
「お願いします。」
渡りに船、地獄に仏と言わんばかりの申し出に寛は迷うことなく飛びついた。
「シートベルトしめてね。」
「はい。」
コンビニ前に止めてあった車に乗り込み目的地を目指す。
「あ、折角だから一つ聞いても良い?」
「大丈夫ですよ。」
「じゃあさ、全国大会で優勝した藤原寛選手今の気持ちをどうぞ。」
普段のチャラけた雰囲気とは違い、アナウンサー然とした雰囲気で寛に問いかける。
先日行われた全国大会個人戦は寛の優勝という形で幕を下ろした。予選から圧倒的な強さを見せつけた寛を始めとした上位選手の大半が一年生であったことは全国の高校生麻雀ファン及び関係者を大いに盛り上がらせた。
しかしながら、女子の個人戦も一年生が優勝したことに加え、元々注目の薄い男子選手はコアな麻雀誌からの取材を除けばほとんど一言程度のコメントで終わらされており、本当の意味での寛の気持ちなどを聞く機会は今まで無かった。
「気持ちですか?…まあ楽しかったですよ。麻雀の打ち方一つとっても全く違う奴らと戦って、しかも勝てたのは嬉しいです。でも、まだまだだと思いました。来年も再来年も勝ち続けるには…運が悪かったなんて言わせないためにはもっと強くならないとって思っています。」
「え~っと確か前チャンピオンの本郷くんだっけ?」
「まあ正確に言うとそのチームメイトなんですけどね。」
夏の大会、準決勝で前チャンピオンを寛が負かした後、チームメイトの一人が本郷に運が悪かったという声をかけたのが多くの観客及び選手の耳に入ってしまい、そのことを寛は気にしていたのだ。
「なるほどね。じゃあすこやんの所で強くならないとだね。っと着いたよ。私は駐車場に車停めてくるから先に入っておけば?」
「ありがとうございました。」
寛は言われたとおり車を下りて指定された場所に入る。
「いらっしゃいませ!あ、藤原寛くんだね。健夜ちゃんから話は聞いてるよ。奥の部屋で待っててくれる?」
店内に入るや否や奥の部屋へと案内される。
半個室形式の雀荘でブースの用になっておりお互いの顔が見えないように配慮されているようだ。
◆
「おまたせ。ちょっとお客さんに挨拶してたら遅くなっちゃった。ごめんね。」
寛が待つこと数分、健夜が後ろにこーこを伴って現れる。
「いやホント待ちましたよ。」
「そこは嘘でもいま来た所って言うとこじゃないの!?」
「いやぁすこやんには私も早く行ったほうが良いって言ったんだけどね?すこやんが…」
「私のせいみたいに言ってるけど、こーこちゃんが8割くらい原因だからね!」
「あの…早く始めませんか?」
「この流れで!?」
ある程度健夜をいじった所でこーこと寛は満足したのか席に着く。
「いやぁなんか寛くんとは気が合うね。」
「そうですね。」
「私としてはこーこちゃんが増えたみたいで複雑だけどね…とりあえず始めよっか。まずは全国大会優勝おめでとう。」
先程までのいじられていた健夜とは違い、今寛たちの目の前に座っているのは国内無敗の記録を作り上げた正真正銘グランドマスターの小鍛治健夜だった。
「ありがとうございます。」
「でも、やっぱり荒削りなところは目立ったし、まずは全国大会の振り返りから始めよっか。牌譜はこーこちゃんに持ってきてもらっているから。」
「はい!すこやん先生お持ちしました。」
「…うん。これで全部だね。地方大会のぶんは私が用意してるから地方大会の初戦から見ていこっか。」
その後日が沈むまで寛の麻雀の検討は続いた。
「うん。時間的にもこのあたりが限界かな。次は来週の日曜日で良い?」
「はい大丈夫です。」
「じゃあそこで。あ、それからさ寛くんの学校って麻雀部一人でしょ?やっぱり実践あるのみだし、このお店にきて色んな人と打つのがいいんじゃないかな?一応プロ級の人も常連さんの中にはいるし。」
「いいんですか?」
「ちょうど人数埋めで普段打っていた人がしばらく来れないみたいだからバイトみたいなものかな。お給料はあんまり出ないけどね。」
練習場所を探さないといけないと思っていた寛にとってこの提案は利益しか無いものだった。
雀荘で練習をするとなると資金的な面でどうしても苦しい部分が出てくる。そして、練習試合を申し込むといっても個人戦の練習を受けてくれるような学校はほとんどない上に、県外への遠征となると部費が無いため結局費用が嵩んでしまう。
そのため、麻雀の試合をする場所を提供してもらえる上に給料までもらえるとなると首を縦に振る以外の選択肢は寛には存在しなかった。
「麻雀だけしてお金までもらえるなら幾らでもやります。ありがとうございます。健夜さん。」
「じゃあ私から店長には言っておくから明日からでいい?」
「はい!」
こうして寛は健夜に師事を仰ぎ、麻雀の上達を目指すと同時に練習場所兼バイト場所を発見したのであった。
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